たぶん平穏なる日々とその崩壊
■ 彼女
今日から6月である。
私が彼の告白を受けて…いや、受け続けて2ヶ月が過ぎようとしている。
日々が過ぎるのはこんなにも早かっただろうか。
毎日が彼の告白という奇怪な行動のせいで目まぐるしく過ぎていく。
そう、私はまだ彼の告白を受け続けているのだ。
いい加減、この曖昧な関係をハッキリさせようとは思っているのだが、シャイな私は中々素直になれず、つれない態度を取り続けている。
今わかってきているのは、彼に対する見方がマイナスでなくなってきているということ。
こんなにも冷たい反応を返しているのに、彼は告白をし続けている。
これはもう、からかいとは程遠く離れた行為だと判断する。納得せざるを得ない。
未だに何故彼のような神々しい存在が地味でちんけな一般人である私に興味を持っているのか疑問に思わずにはいられないのだが。
だがしかし、彼の誠実な想いだと判断したからには、いくら恥ずかしくともそれ相応の答えを返さなくてはならないだろう。もう、逃げられないのだ。向き合うしかない。
つきあうつきあわない云々はおいといて、…おいといて、今の私の正直な気持ちを彼に伝えようと思う。
…こう決意できたのは、まぁ、先ほどの妹との会話で自分の気持ちに気づけたからなのだが…我が妹には言うまい。
さあ、反撃開始だ。
■ 彼
緑がよりいっそう美しく見える5月が過ぎ、僕の愛すべき季節の一つ、そう、雨がよく降る6月がやってきました。
静謐な雰囲気を醸し出す雨。ああ、なんと素敵な時期が来たのでしょう。
毎年この季節になると妙にウキウキになれる僕なのですが、今年ばかりはあまり降ってもらいたくないのです。
奈々先輩に告白をし続けてもう2ヶ月が過ぎようとしています。
先輩に告白するたびに、僕の気持ちを言葉以外にも実感してもらおうと思って毎回手づくりのプレゼントを贈っています。
そのプレゼントはどれも繊細に作ったものだから雨に濡れただけですぐグシャグシャになってしまうのです。
それに…考えすぎかもしれませんが、雨が降っているとき周りって見えにくいでしょう?
僕の想いが雨によって先輩まで届かないかもしれないって思ってしまうのです。
…重症ですよね。
けれど、どうか。
僕の気持ちがハッキリとあの人に届くように、先輩を雨で隠さないでください。
(ああ、でも雨さん!僕は貴方のことが嫌いというわけではないのです!むしろ大好きですよ!!あ、奈々先輩と比べるとやっぱり先輩の方が…って、ちょっとまって怒らないでください!ただ貴方に嫉妬しているだけなんですから!
■ 自称親友
俺の愛しの親友は今日も今日とてあの高嶺の花を我がものにしようと頑張っている。
…ほんっとに、よくやるよなぁ。
ま、鉄の仮面の君もまんざらじゃあなさそうだしな。
本気でコウちゃんのことが嫌いなら、ここまでこんな茶番付き合うはずがないし。
って、もう6月になるんだなぁ。
でも、そろそろ決着つかないとヤバいんじゃあないのか?
今まで大人しくしていたみたいだが…ヤツら、コウちゃんのファンはそろそろ堪忍袋の緒が切れそうだぜ?(ファンと言うより親衛隊か)
親友としては、どうフォローに回るかが微妙なとこなんだが…ここは鉄の仮面の君の妹君にでも頼ってみっかな。クラスメイトだし。
うわっ!いい口実つくった俺!
実のところ、あの超絶美人のお姉さんよりも気さくなクラスメイトの妹さんの方が気になるんだよな。
これがきっかけになって仲良くなれば一石二鳥だぜ。
やるぜ、俺。
■ 妹
…マズいわ。
ヤツら、今の今まで天使くんの愛の行動とお姉ちゃんの様子を黙認してきたみたいだけど(ありえない組み合わせだから大丈夫だと高を括っていたのかしら)…最近、二人の間で少しずつだけどピンクなオーラが漂い出してきたと察知したみたいね。
ま、この間のお姉ちゃんの反応を見れば、そう遠くないうちにくっつくだろうとは思ってはいたのだけど。
女は人の恋には妙に敏感だしね。それに的はあの有名な天使くんだし。
でもホント、そろそろだとは思っていたけど行動に出そうね。
さっき話しかけてきたクラスメイト…えっと、なんだっけ…あ、たっつんって言ってた人(へんなあだ名、にやけ顔がキモかったわね)、あいつが言ってた通り、ヤツらは我慢の限界かもしれないわ。お姉ちゃんのこと、気にくわない存在だろうしなぁ。
自分たちの愛する天使くんがある意味有名なあたしの姉とくっつきそうになっているんだもの。
ハタから見れば毎日ちわげんかしてるみたいなバカップル同然な感じだし。
あたしでもイラっとくるほどよ。
でも、あたしから見れば、ヤツらの存在自体が気にくわないんだけどね(特にあのエセ嬢様がいるってこと時点でサイアク)。
…たく。
我が愛しの鈍感で恥ずかしがりやのお馬鹿な姉上のためにも人肌脱いでやりたいとこなんだけど、はてさて、ヤツらはどう仕掛けてくるのかしら。
ま、あの高飛車馬鹿女が大将なら、ちんけな作戦だろうけど。
受けて立ってやろうじゃないの。姉の恋路を邪魔する者は、馬に蹴られてあたしに殴られるべきなんだから。あー、楽しみっ。
■ヤツら
みなさん、ごきげんよう。
6月1日の今日、こうして朝早くお集まりいただいたのは他でもない、我らが崇高する天使くんの危機が発生しそうだからですわ。
皆さんもご察しの通り、そう、あの倣岸不遜でつり目で高慢ちきな鉄仮面女とのことです。
彼女、甚だしくも天使くんを狙っているとのことじゃあないですか!
4月の入学式から「愛天使同盟」をつくり、天使くんの快適な生活を作ろうと日々健気に努力してきたわたくしたちにとって、あまりに酷くはありませんか。
あの魔女の魔の手から天使くんの純潔を死守するために、一同奮起することを提唱しますわ。はい、皆さん賛成ですね。そうですよね?まさか嫌だとは言いませんよね?
…皆さんがわたくしの意見に同意を示していただけて、わたくし、本当に嬉しいですわ。
それでは改めて。
これから天使くんを悪の道へと行かないよう、我々の手で清く正しい道を歩んでいただけるように一同奮起することを宣誓しますわ。
指揮を取るのは会長であるこのわたくし、安部川天利奈でよろしいですわね?
作戦は既に作っておりますわ。
今日の昼休み、調査書通り普段天使くんと魔女の密会場所である中庭の噴水前で待ち伏せし、天使くんが現れる前に魔女を追放するのですわ。ふふ、なんて名案でしょう。
さあ、ゆきますわよ!
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