(ずっとそうだと思ってた。新一の隣は私だと思ってた。なのに…)
「悪い…蘭。お前の隣にはいてやれない」
そして新一は好きな奴がいると言った。
私には理解できなかった。ずっと待っててくれと言っておいて…やっと帰って来たと思ったらこの仕打ち。
私は新一を責め立て、新一の言葉も曖昧に走り去った。
◆◇◆◇
そして現在、私が部屋で泣いているとお父さんが呼びにきた。
「おい蘭。電話だぞ」
こんな時に電話に出る気になんてなれない。断ろうと思ったが、
「なんか新一のことだそうだぞ?」
お父さんの言葉に目が開いた。新一のこと?でも新一じゃない。じゃあ誰?
そんなことを考えている間にも私は受話器を取った。
「…はい」
「毛利蘭さんかしら?」
「…はい」
女性の声がした。
「初めまして。宮野志保といいます。工藤君のことで話があるの」
◆◇◆◇
「工藤君のことで話があるの。これから阿笠博士の家に来れないかしら?」
彼女との電話を切った後、私は阿笠博士の家に向かった。彼女が新一の好きな人なの?もう付き合っているの?そんな考えを巡らしていると歩調が遅くなった。
(そうだったら?もしそうだったらどうするの?
彼女の意図はわからないけど、もし私の考えが当たっていたら私はどうするの?)
私の考えはまとまらないが、足と本能は阿笠博士の家へと向かっていた。
◆◇◆◇
ピンポン
「いらっしゃい。どうぞ」
出てきた女性を見て驚いた。茶髪のショートヘアに整った顔立ちでスタイルの良さ。これだけでも驚く人は多いと思う。しかし、
(哀ちゃんにそっくり…)
みょうに大人っぽく、コナンと同じく海外に住む両親のもとへと帰った少女。灰原哀にそっくりだった。
私は彼女の言われるが間々にリビングへと入った。
「ごめんなさいね?急に呼び出しちゃって」
「あ、いえ…」
彼女の言葉に上手く答えられなかった。初めて会ったのに、向こうには私のことが全て見透かされている気持ちになった。
「本題に入るわね。今日は工藤君のことで来てもらったの」
ドクン
脈が激しくなるのがわかった。
◆◇◆◇
蘭は先程まで圧倒されていた気持ちがなくなった。
「あなたは新一のことを知っているのですか?」
私は食ってかかるように問い掛けた。
「えぇ。彼とはある事件で関わったの」
「事件…ですか」
私は彼女の次の言葉を待とうとしたが、私の本心は穏やかではなかった。
「あなたが新一の好きな人なんですか?」
私がそう聞くと彼女は悲しそうな表情をして答えた。
「工藤君に好きと言われたわ」
その言葉に私は彼女に怒りをぶつけようと思った。
だが…彼女のその悲しそうな表情がそのまま消えてしまいそうに見え、私の気持ちも薄くなっていった。
「それで…あなたは新一のことをどう思っているのですか?」
彼女は少し間を置いて話し始めた。
「…悲しいことに私も工藤君のことが好きなの」
蘭は先程まで考えていた自分の考えと同じになった。
二人は両想いだった。
「でもね?彼は事件の時にあなたのことを一番大切に思っていたの。それを私は見てきたの」
蘭は彼女の強さを感じた。また、彼女の弱さも見えた気がした。
「彼から好きと言われて嬉しかったわ。でも…私は工藤君と結ばれるのはあなただと思うの」
蘭はもう何も言うことができなかった。どうしてこんなことを言えるのかわからなかった。
「事件のせいで私と工藤君は長い間一緒にいた。そのせいで、工藤君は私に同情と勘違いの気持ちを持っているのかもしれない」
その言葉に蘭は胸が苦しくなった。
「まだ工藤君のことを想っているのなら、もう少し待っててくれないかしら?」
あぁ…私じゃ駄目なんだ。私なんかがこの人から新一の隣は奪えない。そう思った。
私は自分のことしか考えていなかった。新一のことも、彼女…宮野さんのことも…。
「…私じゃダメです」
「え?」
「新一の隣は私なんかじゃダメなんです」
「どういう…こと?」
「新一の隣にはあなたが…宮野さんがいるべきです」
私の言葉に宮野さんの瞳からは涙が流れていた。
「どうして?どうしてそんなことを言えるの?私なんかより…」
その涙が宮野さんの弱さで強さでもある。そして…その表情はとても美しかった。
「私には新一以外にもっと相応しい人がいると思うの。でも…あなた達はあなた達でなきゃダメなんです!」
私の言葉に彼女は手で顔を覆った。
「…優しすぎるは…あなた達は…」
「宮野さんも優しすぎですよ。その優しにも新一は惹かれたんだと思います」
その言葉に宮野さんは涙声で囁いた。
「…ありがとう」
◆◇◆◇
「蘭!」
私達の気持ちの整理がついたところで新一が駆け付けて来た。
「新一…」
「電話でおっちゃんに博士の家に行ったって聞いて。もう一度蘭と話そうと思ってたんだ」
新一はチラッと宮野さんの方を見た。今は止まっているけど、新一には今まで泣いていたことがわかったようだ。
「蘭…俺は志保が好きなんだ。だから…」
新一の顔を見て思った。勘違いなんかではなく、本気で宮野さんのことが好きなのだと。
そして…私もまだ新一のことが好きだということ。
「…私は新一のことが好きよ。けど新一は宮野さんを選んだのよね?」
「…蘭には本当に悪いと思っている。でも…「ねぇ、新一?」」
私は新一の言葉を遮った。
「私達は変わらないで幼なじみでいられるわよね!」
「…俺も蘭とはずっと幼なじみでいたい」
その言葉に私は笑顔でこう言った。
「宮野さん、新一に回し蹴りをあげたいんですけど」
その時の新一の顔は忘れられないほど怯えていた。そして宮野さんに助けを求めていたが、
「えぇ。浮気をしないように強烈なのをお願い」
宮野さんの表情を見て、やっぱり綺麗だなぁと思ってしまう。
そして新一の方をむくと、どうやら覚悟を決めたようだった。
(新一…今までありがとう。宮野さん、新一をよろしくね。私もいい人見つけるから幸せにね?)
それぞれの新しい門出を祝い、蘭の回し蹴りは新一に炸裂した。
END
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