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五十九話だぜ!


なんとなく、赤壁編の構想が纏まったので連投。
59 日常の中で お手伝い編
フラフラ…フラフラ…。


ふふふ、未だに慣れない城をさ迷っている擬音さ…。

宴を終え、城の部屋で起きた俺は、日課になっている朝連をする為に中庭を目指している……はずだった。

しかし、どう間違ったのか迷子になってる。
昨日のうちに副長に中庭への道を尋ねておけば良かった、と思うが、後の祭り。

仕方ないのでフラフラしてた訳だ。

もういっそのこと壁をぶち抜いて…。


「あれ?良也さん、どうしたんですか?こんなに朝早く」

明命に声をかけられた。

「おー!助けて、みんエモン!」

すがりつく。

「ひゃわ!?良也さん落ち着いてください!」

真っ赤な明命。

ん?なんかデジャビュだな。昨日もこんな事があったような。

「すまん、ちょっと取り乱したみたいだ」

「は、はぁ…。それでどうかしたんですか?」

「うん、中庭に行きたいんだけど、道が分からなくてねぇ」

「新しい城ですしね!それじゃあご案内しますね!」

元気よく歩き出す明命。

ちょこちょこ歩く明命の後を追う。





「こちらです!」

何分もしないうちにつく。
……何故俺は迷子になってたんだ?


もしかしたら、方向音痴は進行する病なのか?


「悪いね、助かったよ」

「いえ!それでは、私はこれから遠征ですので!」

そう言って意気揚々と歩いていく明命。

朝も早よからご苦労さんです。


さて、俺も一汗流すか。



ヒュッ、フォン!

ビュ!シュッシュッ!


風切り音を鳴らしながら、拳を突き出す。

リズムに乗るように、足を動かす。



ヒュッ!


不意に背後から何かの気配。


「シッ!」


キィン!


振り返り様に、腕を振るう。

俺に向かってきたモノ、それは…矢。

「よく気づいた!まさか避けるどころか、叩き落とすとは思わなかったが」

「祭さん!コロスケ……間違った。殺す気なりか!?」

若干噛んだ。
カッカと笑う祭さんに文句を言う。

「なに、矢尻は潰してあるわ。……当たったら痛いじゃろうが」

ボソリと何か言う。

「もう、悪戯は止めてくださいよ」

「随分熱心にやっていたからのう。少し童心が疼いたのじゃ。許せ」

矢を射かける、童心ってどうなのよ?

「それで、良也。朝も早くから熱心じゃな?どういう心境の変化じゃ?」

自分の首を守るため、日々を必死に生きてるのです。

「蜀にいる時に自分の弱さを感じたんですよ。だから少しでも強くなろう、って」

カッコよく言い直す。

「ほぅ、良也にそう抱かせるとは……。やはり蜀にも随分骨のある奴がいるのじゃなぁ」

祭さんは、感心した顔で言う。

そりゃもう。骨ばかりでしたよ。


「どれ、どれほど強くなったか、見せてもらおう」

祭さんが、弓を構える。

「………祭さん。その矢、本物に見えるんですが……」

祭さんがつがえる矢は、どうみても鋭利で、本物のディテール。

「なにを言ってる。本物じゃからな」

ニコリと微笑む祭さんの後ろに、スペルカード名が見えた気がした。






祭さんの雨のような矢を捌き切る。

「ここまで避けきられるとは…。儂も鍛え直さなければなぁ…」

祭さんの残弾はようやく0。

残機0、ボム0で、ルナティックやってる気分だった…。


「どれ、少し休憩を挟むかのぅ」

そう言って、木陰に腰を下ろし、飲み物に口をつける。

俺も倣い、隣に腰を下ろす。

「ほれ」

祭さんから水筒を渡される。


喉が渇いていたので、グイッと煽る。

「ブーーー!!」

「おわ!なんじゃ、汚い」

「これ酒じゃないですか!?」

「ん?なんじゃと思った?」

いや、水に決まってるでしょ。
どこの世界に運動後に酒を煽る人が…。
この世界にはいるか……。
桔梗さんとか霞さんの顔が浮かんだ。

「冗談じゃ、ほれ。こっちは水じゃ」

もう片方の水筒を渡され、恐る恐る口をつける。
ほっ。これはちゃんと水だった。

ゴクゴクといただく。

「……良也」

「はい?」

汗を拭いていると、祭さんが、空を見ながら俺を呼んだ。

「これから決戦が近づく。『何か』があった時は、若い奴らを頼んだぞ」

最初は、祭さんの言う意味を図りかねた。


しかし、ふと思い至る。
黄蓋の一生一代の大芝居。
赤壁においての偽降。
そして、火計の先陣を切る。


すでに祭さんは、思い至っているのかもしれない。
自分が、赤壁の要になる事を。


「…はい、分かりました………でも」


「うん?なんじゃ?」


祭さんに促されるように、俺は続ける。

「俺は蓮華達だけでなく、祭さんも、助けますよ。全力で」


「………ふっ。それは頼もしい限りじゃ」

祭さんは少し驚いた後、何故か、頬を軽く朱に染め、そう言った。

「全く……本当に油断ならん」

祭さんは、何か呟く。

「あ、あと助言です」

「ん?助言?」

「韓当の占いコーナー」
やんややんや。

「こぉなぁ?なんじゃそれは?」

「まぁちょっとしたおまじないですよー」

「ふむ、ならばお願いしてみよう」

意外に乗り気な祭さん。

「むむむ!はい!神降臨!
黄蓋さん。色々見破られがちなお年頃。念には念を入れるどころか、色んな発想をして見るのが吉!」

「…………」

可哀想な子を見る目だ!

すると立ち上がり、俺に背を向けた。

「儂は飯でも食べに行くとしよう。良也はどうする?」

「あ、御一緒します」

華麗にスルー。
腹も減ったしな。

「ならば、儂が腕によりをかけて作ってやろう。楽しみにしておれ」

そう言って歩いて行く。
祭さんの背中を追いかけ、厨房までついていった。





「ぉぉおお…腹が重い…」

祭さんが用意した朝食は確かに旨かった。旨かったが…朝から本格的な中華はヤバい…。それに量もヤバかった。これでもかと食わされた。

「男の子ならば、これくらい完食せい!」とのこと。


腹ごなしにフラフラと、活気が出てき始めた街を歩く。


昼には調練を見に行かなきゃならないが、それまではゆっくりできるかねぇ…………

「あらー?良也さんお出かけですか?」

と思ってた時期が俺にもありました…。

振り返った先には穏。

「うん。昼までは暇…」

そこで穏のメガネがあらゆる物流法則を超えて輝いた気がした。

危険を察知した俺は

「…じゃないなぁ!!それじゃ!」

颯爽と身を翻した俺の腕を意外に強い力で穏が掴む。

「お暇なら手伝ってもらえますかぁ?」

「いや暇じゃ……」

「ありがとうございます〜♪ではでは逝きましょう〜」

話を聞いてください……。
そして、何故だか分からないが、字が激しく違う気がした。

手伝う概要が分からないまま引っ張られていく俺だった。





着いた先は城の書庫。
未だに膨大な量の本が乱雑に重ねられたままで、一種の要塞だ。


「明命ちゃんがお手伝いしていただける筈だったんですが、急な遠征が入ってしまって…」

なんでも、前の都にあった本をこの城の書庫に移動させた。が、問題があった。

運び込むまでは良かった。ただの兵にもできたから。

しかし、問題はそれから。

最低限の分類は必要。
しかし、分類するには知識が必要。

文官は非力な者が多く、この膨大な量の本を分類するのは、目処が全く立たない状況らしい。

「私も合間を見てやっていたんですが、中々…」

困ったような、いつもと変わらないような笑みで言う穏。

「それで、力もあって、分類できるくらいの知識がある、将に頼もうってことね」

「はい〜。是非お願いします〜」

まぁ書庫整理だったら全然構わないな。

そう思い、ちゃっちゃ終わらせようと、目録を受け取り、作業にかかる。





「これは…こっち…。これが…」


一度に分類をして一気に持って行く。


なんか結構終わりそうなんだけど?

量はあるが、本山ごとに分類は崩されていないようで、ほとんど運ぶだけ。

なんで終わらないんだ?とか疑問に思っていると。


「はぁ…はぁ…あぁん!」


…穏が片付けているほうから、艶声が…。

なるほど…。進まないわけだよ。



冥琳さん。この配役は、確実に間違いです。
しみじみ思った。


なるたけ、穏の声を聞かないように作業を続ける。



せっせと片付けていると、

「穏、いるか?」

冥琳さんが書庫に入ってくる。

「………」

返事がない。

「またか……」

書庫に入ってきた冥琳さんに声をかける。

「どうかしましたか?」

「おや、良也。手伝いか?」

「はい、体よく捕まりまして…」

苦笑いで言う。


「そうか、お疲れ様…」

非常に納得した顔。

「穏に書庫を任せるのは自殺行為かとも思ったが、人手が足りなくてな。
この後は亞莎に任せると伝えにきたのだが…これではなぁ」

床にエロい格好で転がっている穏を見て、ため息をつく冥琳さん。

読み?疲れて寝たのか?

「……それにしても、よく穏と一緒にいて、ここまで整理できたな…」

辺りを見回し、感心したように言う。

「まさか……良也。男色の気が…」
「ありません」

超マジな顔をして聞く冥琳さんに、即答で返す。

「そうか、ならいいのだが…」

まだ不安そうな顔をしている。
俺、ホモに見えるのかな……?すげーショックなんだが…。

「真剣に取り組んでいたら、周りは気になりませんから」

「ほぅ。大した集中力だ。この調子で頼む。時期に亞莎がくるから、一緒に頼んだぞ」

そう言って穏の首根っこを掴み、引きずっていく。
それでも目覚めない穏に感心しながら、整理を続けた。




「あれ?これはどこだ?」

一冊の本を持って途方に暮れる。

今まで順調だったが、山から外れた細々とした本の中には目録には無い本が混じっていた。


「それなら、こっちです」

「あ、亞莎ちゃん」

後ろから現れたのは亞莎ちゃん。

「良也さん、遅れてごめんなさい」
謝る亞莎ちゃんの頭の撫でながら

「大丈夫、大丈夫。それじゃ、ちゃっちゃと始めようか」

「はい!」


少し顔を赤くした亞莎ちゃんの力を加え、片付けを再開した。






亞莎ちゃんと一緒に片付け始めると、本は次々に片付けられていく。

目録にない本は、亞莎ちゃんが分類して、目録にある本は、纏めて俺が全部運ぶ。

書庫の半分くらいが片付け終わった所で、

「良也さん、そろそろお昼ですから、もう大丈夫ですよ」

おっと、もうそんな時間か。

「うん、それじゃ後は頼むよ」

「はい、手伝っていただけたので、大分早く終わりそうです」

にこやかに見送ってくれる亞莎ちゃんに手を振り、書庫を出る。




昼飯を軽くいただいて、調練場へ。


いつもと同じ、副長が指示を飛ばし、全体を纏めている光景が。


新しい兵も、俺達がいない間に大分まとまっていて、古参の兵に混じっていても、違和感ない。


「随分良くなったね」


「韓当様。ありがとうございます。
韓当様が蜀に行っている間にかなり増えて苦労していますが、ようやくここまで纏まりました」

俺に振り返り、副長が言う。

……たまに思うが、韓当隊というか、副長隊だよなぁ。
ほとんど副長が指揮してるし。


今や隊員は数千を数える。

数十人で旅をしていたのが懐かしい。
そしてあのヴォーヴォー言ってたお茶目な副長も懐かしい…。
それが今や…
「……?なにか?」

こんな凛々しく指揮をとっているのだ。

人は成長するなぁ。



「そういえば、副長、昼飯は食べたのか?」

「いえ、この調練が終わり次第、とろうかと」

これから飯か……。確か予定では朝からやっていたんだよなぁ。お疲れさん。



「………ヴォー」


「ん?副長なんか言ったか?」

「いえ、なにも」

そうか?

副長の目が、死んだ魚の目になっていってる気が…

「……副長?これから俺が指揮しておくから、ご飯食べてきていいよ?」

気を使って、提案する。

「気を使っていただき、ありがとうございます。それでは行って参ります」

神速で調練場を後にする副長。

はぇえ。

よほど腹が減っていたんだなぁ。


そう思いながら隊を指揮し始める。

「それじゃ始めようかー」


皆に向かって声を張り上げ始めた。





日常の中で、少しずつ進行する事態。



その日、街ではちょっとした騒ぎがあったらしい。

フラフラした男が支えていた男に噛みついた。
とかなんとか。


後日

「どうしたんだ?そのケガ?」

首に包帯を巻いている隊員Aを見かけた。

「いえ……財布を城に忘れたそうで、手遅れに……」
とそれ以上は語らなかった。
早く7月にならないかなぁ…。


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