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四十四話だぜ!


さて、この小説はどこに向かうのか…。
44 人ごみの中で
真っ暗な闇の中。

何処からか声がする。


……何故俺らが死ななきゃならない……


……お前なんかに……


……殺してやる……
殺してやる殺してやるコロシテ殺るコロシテヤル!!!


「うぁあぁぁ!!」


飛び起きるとそこは暗い闇ではなく、朝日が差した始めた劉備ちゃんが貸してくれている部屋の中。

「はぁ…はぁ…。またこの夢か…」

荒くなった息を整え、寝台から出る。

久しぶりに見た悪夢。

俺が殺した者が、俺を殺しにくる夢。

俺の『答え』が未だに見つからないのが原因なのか、ふとした拍子に命を奪った事を思い出すと、何時も見る夢。


命を奪うのには慣れた…いや、慣れてしまった。

だが拭いきれない泥のような罪悪感が、稀にこんな夢を見せる。



これならば、貂蝉と卑弥呼の夢のほうが何倍もマシだ……いや、どっこいだな。


寝汗で湿った寝間着が、肌に張り付き気持ち悪い。

「とりあえず体を拭いとこう」

気を取り直し、寝間着を着替え、手ぬぐいを持って部屋を出る。





まだ早い時間なので、誰ともすれ違わない。

厨房で桶に水を汲み、中庭に出る。
持ってきた手ぬぐいを水に浸し、体を拭く。

体はスッキリしたが、心のモヤモヤは晴れない。

少し体を動かすか…。



スッと構え、


「か〜め〜○〜め〜はぁぁぁぁ!!」

シーン。

ムカッ

「波○拳!正○拳!○功拳!ヨガ○ァイヤー!!」

出なかった。
そりゃもう出なかった。
後、最後のは違うわ。


おかしいな?予定ではそろそろ出る気がしたんだが。
これはやはり楽進に教えて貰わねばならぬか。
でも楽進は魏にいるしなぁ。

未だカメラ制作も暗礁に乗り上げているし(まだ諦めてない)。

平和になったら、一刀君と合作しよう。うん、決めた。


遠距離攻撃は諦めて、普段通り、エア格ゲー。



ヒュッ!ボボッ!ヒュン!

靄がかかった心を晴らすように、一心不乱に体を動かす。

(残雷○撃猿舞!!)

敵を浮かせてから、空中でフルボッコの後に地面に叩きつけ踏みつける技。…分かる人いんのか?


格ゲーの技を練習するのは、いい気晴らしになる。
戦闘に向いていない技が多いが、派手な立ち回りはやっぱり楽しい。


ふぅ、と息を整える。

少し汗をかいた。

これだったら、体を拭く前に運動すれば良かった。

とか思いながら、もう一度体を拭こうと振り返った時

「はい、どうぞ」

適度に湿った手ぬぐいが差し出される。

「ありがと……」

差し出された手ぬぐいで汗を拭っていて、違和感。

「ん?あれ?月ちゃん?」

そこにはいつの間にか月ちゃんの姿が。

「偶然そこを通りかかった時に良也さんの姿が見えたので、つい」

「そっかー。月ちゃん朝早いんだね」

「いえ、今日は偶々早く目が覚めてしまって。お仕事まで少し散歩を」

笑顔で話してくれる月ちゃん。にゃごむ。

…………ん?と言うか月ちゃんはどのタイミングで、ここに来たんだ?

「あの〜、月ちゃん?いつからここにいたの?」

「良也さんが、なにか叫んでいる時くらいですが…?」


NO!韓当恥ずかしい!!
穴があったら……掘りたい!!

ズゥーンと落ち込む。

「りょ、良也さん?」

「いいんだいいんだ…。恥ずかしい奴だよ俺は…。精神年齢40オーバーな俺がかめ○め波だってさ…。ぷ、笑っちゃうな、笑っちゃえよ……」

「りょ…良也さん?よく分かりませんが、何を叫んでいたかは、遠くてよく聞こえませんでしたよ?」

やさぐれモードな俺に月ちゃんは優しくフォローをしてくれる。

「そうか!よかった!」
すぐさま立ち直る俺。



話は変わり

「相変わらず、良也さんの武は、綺麗ですね…。まるで魅せるような武です」

まぁ、大元が格ゲーだしな。
魅せる武ってか、ただ単に派手なんだよね。

他の武人の方達は、無骨な…言うなれば殺す戦い方。
だから、格ゲーを大元にする俺の戦い方は、余計に派手で、異種に見えるのだろう。

「ありがと、月ちゃんに褒めて貰えるなら、頑張っている甲斐があるね」

軽く月ちゃんの頭を撫でる。

「へぅ……」

朝一番へぅをいただきました!今日は1日平和に過ごせそうだ!



「月ー」

廊下から、詠ちゃんの声。

「詠ちゃん。こっちだよー」

俺は詠ちゃんに声をかける。

「あ、月。そこにいたの。良也と一緒にいたのね」

中庭におりてくる詠ちゃん。

「ごめんね、詠ちゃん。勝手に出て行っちゃって…」

「それは別にいいのよ。月だって色々用事あるだろうしね」
何故か、詠ちゃんは俺を見て言う。

なんじゃらほい?


「へぅ……。きょ、今日は偶然だよ」

「はいはい、分かってるわ。それより、そろそろ仕事よ」

意外に時間が経ってしまっていたようだ。
朝日は完全に登り、元気に輝きを放っている。


「あっ、うん!それじゃあ良也さん、また」

「良也も暇なら、なにか手伝いなさいよー」


そだねー。今、絶賛穀潰しですから。何か、仕事がないか探してみよう。

二人に手を振り、見送る。
まずは、借りてた桶を返しに行くか。





とりあえず仕事を探すなら、孔明ちゃんか鳳統ちゃんかな?と思い、二人を探している。

途中で黄忠さんに会い、二人は街に出ていると情報を得たので、街に出てきた。


さてー。出てきたはいいけど、人多杉。

大通りは、活気で溢れて人がひっきりなしに行き交う。
ぶっちゃけこんな中人捜しなんざ無理っしょ。

別に今すぐでもなくていいから、孔明ちゃん達が、城に帰ってきてからでもいい気がしてきた。

まぁ出てきたもんはしゃあない。少しぶらぶらしてから戻ろうかな。

そう思い、店を冷やかしながら街中を歩く。

ぶらぶらしてると、俺の聴覚が聞き覚えのある声を捉える。

「朱里ちゃーん」

呼んでるのが孔明ちゃんの真名ってことは…。鳳統ちゃんか?



出どころを探してみると、大通りの脇に、鳳統ちゃん発見。

「鳳統ちゃん、どうかしたの?」

近寄り声をかける。

「ふぇ!?か、韓当さん?」

はい韓当さんです。

「いや、孔明ちゃんを探していたみたいだから、どうかしたのかなーって」

「そ…それが…、朱里ちゃんと街の区画調査に来たら、人ごみではぐれてしまって…」

あやや、そりゃ二人ともちっちゃいからなぁ。この人ごみは辛いか。

まぁ丁度二人を探していたことだし、俺にも都合がいい。

「それじゃ、一緒に孔明ちゃんを探すよ。俺も二人に相談があるから」

「相談?」

キョトンとする鳳統ちゃん。

「うん、ちょっと仕事を貰おうかなってね。とりあえずそれは置いておいて、孔明ちゃんを探そうか」

「…そうですね、まずは朱里ちゃんを探しましょうか」

方針は決まったが、如何せんこの人ごみ。探すのは容易じゃないなぁ。


まぁテキトーに歩くか。

「鳳統ちゃん。少し歩いてみようか」

「はい」



歩き始めて数歩。



「あわわわわ〜…」


「鳳統ちゃーーん!!」


人の波に攫われて行く鳳統ちゃん。

早いよ。捜索開始数秒で二次遭難だよ。

なんとか人ごみを掻き分け、鳳統ちゃん確保。

「鳳統ちゃん、大丈夫かい?」

「だ…大丈夫でしゅ〜」

目が渦巻き状態で言っても説得力ないぜ?


「うーん、しょうがないか。鳳統ちゃん、ちょっとだけ我慢して、俺と手を繋ごうか」

「へ!?かか韓当さんとでしゅか!?」

ビックリした様子の鳳統ちゃん。

まぁシャイガールだしな。最初から手を繋ぐのはハードル高いか。

「うん、イヤならしょうがないけ……」
「い、いイヤな訳じゃないでしゅ!ちょっと緊張してしまってまいましゅた」

俺の言葉を遮って鳳統ちゃんが言う。
まぁとりあえずもちつけ。


「そっか。んじゃ、はい」

俺は右手を差し出す。

すると、鳳統ちゃんはおずおずと右手で手をとる……って

「鳳統ちゃん?これじゃ握手だよ?」

「ひゃわ!ごごごめんなさい!」

慌てて離して、今度こそ左手で、手を繋ぐ。

「よし、んじゃ行こうか」

「ひゃい!」

小さい手を引き、街を歩きだす。

「孔明ちゃんとはぐれたのはどの辺りかな?」

「えっと、あそこの本屋さん辺りですね」

鳳統ちゃんが少し離れた本屋を指差す。
おー、流石軍師。穏と同じく難しい本を沢山読むんだろうなー。

「やっぱり、兵法書とか?」

「へっ!?そ…そうでしゅね!主に兵法書ですね!」

何故か焦って返す鳳統ちゃん。
別に兵法書なんて珍しくない気がするんだが?

まぁいいか。はぐれた辺りに戻って来ている可能性もある。本屋の前に向かおうか。

「それじゃ、とりあえず本屋に行ってみようか」

「はい」

鳳統ちゃんの手を引き、本屋に向かう。


丁度昼時なので、日一番のピーク時だ。
自分より背の大きい人ばかりな鳳統ちゃんにはキツいだろう。

「鳳統ちゃん、大丈夫?」

「はっはい!韓当さんに手を繋いで貰ってるので大丈夫です」

それは何より。
いやーそれにしてもこのシチュはおじさん嬉しいなぁ。なんだか父性が凄く刺激されるね。



「…なんだか、韓当さん不思議ですね…」

「ん?なんで?」

急に声をかけてきた鳳統ちゃん。

「自分で言うのも難なんですが…私は凄く人見知りで…特に男性の前では、緊張で上手く喋れなくなっちゃうんです」

うん。初対面なんか顕著だったね。

「でも、韓当さんとは、最初こそ緊張しましたが、こうして手を繋いでいると不思議と安心します…」

鳳統ちゃんは、すこし顔を赤らめながら。

「もし私にお兄さんがいたら…韓当さんのような人がいいですね…」

鳳統ちゃんみたいな子が妹なら、完璧にシスコンだな。いや、マジで。

「そうだね。鳳統ちゃんが妹だったら大層鼻高々だろうね」

「そんな、韓当さんがお兄さんだったら、私も鼻高々ですよ」

二人で褒め合いをして、それが何だか可笑しくて、クスクスと笑い合う。

「って、孔明ちゃん探していたんだった。本格的に探そっか」

「はい、行きましょう」



鳳統ちゃんと、和やかに会話しながら孔明ちゃんを探す。

あわあわする時もあったが、やっぱり基本的に頭の回転が段違いだ。
言いたい事、考えている事を見通すような思考。自分の考えと、相手の考えをすり合わせる柔軟さ。
戦から政まで行える頭脳。鳳雛の名は、伊達ではない。


「雛里ちゃーん」


おや、この声は。

喧騒でかき消されがちだが、確かに孔明ちゃんの声だ。

「鳳統ちゃん、多分あっちだよ。行ってみよう」

「え?あっはい」

鳳統ちゃんには聞こえなかったみたいだが、この喧騒じゃ聞こえる俺の方が特殊なんだよな。

人ごみを掻き分け、孔明ちゃん発見。

「あっ朱里ちゃん!」

「雛里ちゃん!探したよー。あれ?韓当さんもご一緒でしたか」

「うん、一緒に探して貰っていたの」

二人は手を取り喜ぶ。
まぁ二人にとって大冒険だったのだろう。

鳳統ちゃんは俺から手を放してしまったのはいささか寂しいが。

「見つかってよかったね、それじゃ俺は…」

「あの…」

去ろうとする俺に、鳳統ちゃんから声がかかる。

「よろしかったら、一緒に回ってくれませんか?」

ん?いいのかな?

「そうだね、二人だけだと、またはぐれちゃうかも知れないしね…、韓当さん、申し訳ないんですが、よろしければ、一緒に来てくれますか?」

「二人がいいのであれば、断る理由はないよ」

そりゃそうだ。屈指の美少女の誘いを断るほど俺も腐っちゃいない。

「ありがとうございます!それじゃまずは北区からです」

雛里ちゃんは自然に俺の手を取り歩きだす。

「はわわっ!雛里ちゃん大胆…」

頬を赤らめる孔明ちゃん。

「あわわ…ついっ!」

はわあわしだす軍師二人。
なにこれ、なごむ。


「まぁはぐれないように、緊急措置だよ」

そう言って孔明ちゃんにあいている手を差し出す。

「はわわ…。そう、ですね、緊急措置ですよね」

自分に言い聞かせるように言い、孔明ちゃんも俺の手を取る。

両手に花!わーわー!やんややんや!
……でもなんか、この状況って小学校の先生みたいだな…。

「しょっしょれではいきましょう!」

若干声が上擦っている孔明ちゃんの声を皮きりに歩き出す。

…そういや俺は仕事を貰いに来たんだった。
まぁいっか。




人ごみの中で、ロリ軍師と区画調査。




この後、無事に区画調査を終えた。
孔明ちゃんも手を繋ぐことに慣れ、時たま街に出る時に誘われるようになった。
…あ、仕事貰ってねぇ。
韓当の心象の話は、ぶっちゃけ所々に入れるべきだったのですが、すっかり忘れていますた。

まぁ…基本的に本筋がギャグなんで、軽くスルーしてやってください。




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