ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
お久しぶりでし。

なんだかエラく間が空きましたが、投稿と相成りました。

詳しくは活動報告にて。
韓当。仕事。猛特訓。
建業に帰ってきてからというもの、俺はバリバリ仕事をこなしている。

「副長、南の税収が随分落ちこんでるけど冥琳さんなんか言ってた?」

「はい、建業から遠い事もあって未だに賊の略奪もあり、討伐が追いついていません。それに加え、穀物が育たない何らかの理由があるそうです」

「何かの病気かな…。いいや、一度選抜隊を組んで遠征できるように冥琳さんに話を通しておこうか」

「はっ」

机仕事から色んな問題が分かってくる。

疫病、飢餓、不作……。

平和になったとはいえ、国を動かすというのは問題が続出するものだ。

あんまり机仕事は好きじゃないが、そんな事は言ってられない。

「あれ?新兵訓練の進行状況の資料は?」

ふと、気になる資料が見つかる。

「はい。これです。甘寧様が抜けていた事もあり、水軍の調練は滞っていましたが、私や周泰様が出ていましたから、目立って滞っているところはないはずですが…」

「いや、違う違う。滞っているとかじゃなくて、この調練内容だと、武官の選出がね…」

「…なるほど。失念していました。次世代に向けてですね」

呉の新しい力を選出するならば、多少は個人技を調べる必要がある。

資料上、副長は軍の動き。明命は隠密に特化した調練をしている。

明命なら多少はやっているだろうが、諜報系より武力特化の武官が何人か欲しいって冥琳さん言ってたしなぁ。

呉の人材は確かに文武に長けた将ばかりだが、だからこそ武力専属の将が欲しいって言ってた。
知将は冥琳さん達が選抜してるだろうしなぁ。


「まぁいいや、んじゃこの後俺見てくるわ」

「韓当様、午後は休みのはずでは…」

「あー大丈夫大丈夫。机仕事だけなんて体ナマるだけだし」

「しかし…」

副長は何か言いたげにするが、最後には黙る。

「………よし。んじゃ、遠征の許可もついでに貰ってくるわ」

「は?遠征にも行くつもりですか?」

「え?うん。自分から言い出した事だし。多分騎馬200で急げば5日もあれば行ってこれるし」

急ぎの用事はないし、確かなんぼか休みを潰せば迷惑はかけんだろ。


「…分かりました。では、騎兵の準備はしておきます」

「ありがと、んじゃ行ってくるわ」

そう言って、執務室を後にする。







~副長~


建業に帰ってきた韓当様は、精力的に……というか常人からみたらかなり無茶な仕事量をこなしている。


朝は誰より早くから起き、戦闘訓練、家族の散歩、朝食作り。ここまでは前とあまり変わらないが、そこから晩まで働いている。
暇さえあれば調練を見に行ったり、馬舎で全ての馬の世話をしてたり…。

最近は更に顕著で、自らの休日を潰してまで働いている。

確かに部下として頼もしいほどではある。
しかし、乱世の時の周瑜様とかぶるような仕事量。それに加え、遠征、調練、討伐、農業指導……。

体が資本の武官とはいえ、韓当様と同じ仕事をこなせば、屈強な武官とはいえ倒れる事は確実。



時たま程普さんや袁術、呉の武将と共に過ごしているところを見ると、酷く安心する。



少し周瑜様に言っておいた方がいいでしょうか…。
常人離れした体力を持っていたとしても、このままではいつかは倒れてしまう。
皆様も気づいてくれるといいのですが…。







~良也~



「ふむ、丁度いい。遠征を検討していた所だったが……良也、休みはいいのか?」

日程の内に2日ほど休みがある。

「あ、帰ってきたら休みますよ」

「ふむ…。そうか…では明日、出立してくれ」

「はーい」


返事をして執務室を後にしようとしたら、冥琳さんが声をかけてくる。

「良也、ちゃんと休んでいるか?」

「?はい。ちゃんと寝てますよ?」

流石に寝てはいるぜ。

「そうか…。私が言うのも難だが、最近働き過ぎのようだからな」

「冥琳さんも凄い働いているじゃないですか。俺からしたら冥琳さんの方が心配ですよ」

俺の倍は書類を片付けている冥琳さん。

「……うむ、私も自重しよう」

なにやら思案する冥琳さん。

「んじゃ、失礼しますね」


今度こそ執務室を後にする。






~周瑜~


良也は帰って来てからというもの、精力的に仕事をこなしている。

確かにどこぞの王様に見習わせたいくらいの働きぶりだが…。


帰ってきてから何度か遠征を頼んだ事もある。

その遠征を数日も早く終え、帰ってき次第すぐ次の仕事にかかる。

遠征に出立した兵は、かなり疲労が溜まり、最低でも1日は休養している。


少し気張り過ぎだ…。




「冥琳、いる?」

不意に扉を開けて入って来たのは、我らが王様。

「雪蓮が自ら此処にくるなんて珍しい事もあるな」

「できれば来たくないけど…ちょっち気になる事があってねー」

雪蓮の言いたい事は大体分かる。

「良也の事か?」

「そうよ。確か良也ってこれから休みのはずよね?」

「ああ、そのはずだが…」

またか…。

「さっき会った時に、お酒に誘ったら、調練を見たいからーって断られちゃったのよ」

今日の調練は穏の筈だ。

「はぁ…全然休んでないじゃない…」

溜め息一つこぼす。

「むしろ仕事があっても私が誘ってるんだから付き合ってくれてもいいんだけどねぇ」

そう言って出て行こうとする雪蓮。

「雪蓮にはちゃんと仕事があるわよ」

グワシッと肩を掴む。

「……私としたことが…」

雪蓮を仕事に引きずり込むのだった。






~良也~


雪蓮様に酒の誘いがあったが、丁重にお断りしておいた。

冥琳さんのお説教は嫌ですたい…。


調練場に向かっていると

「あら、亞莎ちゃん。なにしてるの?」

なにやら沢山の木箱の前で唸っている亞莎ちゃん発見。

「あ、良也さん。訓練用の刀剣を搬入してもらったんですが…」

搬入した人が南の倉庫と西の倉庫を間違ったらしい。

「それで今手の空いている兵を呼ぼうと思っていたところなんです」

「そか、んじゃ手伝うよー」

ヒョイと何箱か持ち上げる。
中身が鉄ばかりなので、かなり重量があるがバランスがとれる限りは問題にはならない。

「すみません。お手を煩わせて…」

「いいのいいの。これくらいしか役立たないし」

軽く笑いながら運び始める。



ヒョイヒョイと三往復ほどで運び終える。

「ありがとうございます、助かりました」

「いえいえ、んじゃ俺は調練場に用があるから。またねー」

「は、はいっ」

亞莎ちゃんに別れを告げ、今度こそ調練場へ。






調練場では、穏が隊列の練習に精を出していた。

「あれー?良也さん、どうかしましたか?」

穏の間延びした声。

「いやね、ちょっち気になる事があって…」

「あ、武官選出の事ですか?」

流石は穏。話が早い。

「うん、何か手伝える事あるかな?」

「はいー、やっぱりこういう事は武官の方の方が適任だと思いますので、誰か個人の武に長けた方を見繕ってほしいんですが」

「うん。んじゃ、陣構築が終わったら、少しやるよ」

「お願いしますー♪」


穏は、そう言って指揮に戻る。


陣構築自体は、弓兵を軸にした遠距離戦を想定した布陣。
恐らく放火魔呉軍の主力だろう。

何千の兵が乱れぬに動く様は、見ていて感嘆を覚える。

何度も見ているけど、名軍師が指揮を取ると、それぞれに特徴があって見ていて飽きない。




ふと辺りを見回すと、調練場の端に思春さんを発見。

なにやら鬼気迫った表情で剣を振るっている。
いつもと同じ…のように見えるが、そうじゃない。
もっと切迫した感じに見受けられる。

何かあったのかな?



「良也さんーお願いしますー」

「あ、うん。わかったー」

いつの間にか陣構築は終わっていて、穏に呼ばれる。




整列する兵の前に立つ。


「さぁ、楽しい楽しい訓練の時間だ…」

俺の訓練を知る兵は表情が引きつり、知らない兵は首を傾げた。




百人一組で向かってくる兵を千切っては投げ千切っては投げ…。

時たまいい動きをする兵は別の枠に組み込み、最終的に百人の兵まで絞り込む。

「さて、それじゃそれぞれ得意な武器をとってくれ。規定はない」

思い思いの武器を取る。


皆、意外と色んな武器を使う。

弓、槍、剣を始めとした武器から、三節棍やら双剣、、果ては俺と同じ鉄甲まで。


様々な武器を持つ兵と、今度は1対1。


「んじゃ、俺に一撃いれたら武官になれるぞー。頑張れー」


そう俺が告げる。








まぁ結果的に誰も一撃入れられなかったワケだが。

「これから伸びる人も沢山いるから、一概にはいえないけど、この兵達ならそこそこいけると思うよ」

穏は、兵の名簿に照らし合わせて記録していく。


「はい~、ありがとうございましたー」

のほほんと礼をする穏。

「うん、後は…祭さんの意見もあるだろうから、祭さんにも見てもらうといいよ」

「はい~」

穏に見送られ、調練場を後にする。



その後、馬舎の掃除やら倉庫整理の手伝い…。

色んな仕事をこなしていると、早くも深夜。


最近1日が早い。

まぁ朝から晩まで働いてりゃ早くも感じるかぁ。

部屋に入ると、なにやら寝台がこんもり盛り上がっている。


はて?入る部屋間違えたかしら?

ちょっと確認するが間違いなく俺の部屋。


「さてはて、どなたでしょうか…」

チラッと掛け物をめくってみると…

何故かシャオが寝ていた。

「ふむ…何故だ?」

思案するが思いつかない。
俺の部屋で寝るというジンクスがあるのだろうか?

寝ぼけて間違った可能性もあるか。

掛け物をかけ直し、部屋を後にする。


ちょいと資料室で、農耕について調べてから寝るか。

そう思って、そっと部屋を後にする。







翌朝。

結局資料室で寝てしまい、そのまま朝を迎える。

「ふぁあ…。よし、んじゃ日課をこなして出立の準備しとくか」

若干説明口調で活動を開始する。






日課を終えて確認しに来た時には、騎兵はすでに準備を終えていた。
流石副長、仕事が完璧だ。


兵站の確認をしていると

「韓当様。昨日はどちらにいらっしゃいましたか?」

副長がやってくる。

「ん?ああ、資料室にいたわ。なんか用事あったか?」

「いえ、尚香様が韓当様が昨夜帰ってこなかった、と仰っていたので…」

「あー。そっか、待っててくれたのか。悪い事したなぁ」

後で謝っておかなきゃな。

「韓当様、騎馬兵站共に準備完了です!」

「分かった。んじゃ、副長、ちょいと行ってくるわ。いつも通りみんなを頼む」

「はっ」



討伐&農業指導へ。






~副長~

「ふっくちょー!」

出立した韓当様を見送った後に城内を歩いていると、背後から尚香様が走ってくる。

「はい、何かご用でしょうか?」

「良也見なかった?昨日の事を問い詰めようかと思ったら、どこにもいないんだもんっ」

「韓当様ならば、先ほど南に遠征しに向かいましたよ」

「え?またー!?」

ビックリしたように言う尚香様。

「最近仕事仕事でシャオの事、全然構ってくれないっ!昨日だってこっそり忍び込んだのに……まさかっ!他に恋人がっ!?」

なにやら発想が明後日の方向へ向かう尚香様。

「いえ、昨夜は資料室で寝てしまったらしいです」

「そうなの?あー良かった……って全然良くなーい!」

韓当様が言う、のりつっこみ、というやつですね。

「もう!冥琳に言って仕事減らしてもらわなきゃ!」


尚香様は周瑜様の執務室へ走って行く。

周瑜様から言い付けられる、韓当様の仕事はそんなに多くはない。
韓当様が何かと仕事を見つけてやっている様子なので、周瑜様に抗議しても意味はないのですが…。

それを伝える前に走り去ってしまった。

はぁ…。どうしましょうか…。







~韓当~


建業が遠い所は、なにかと問題が多い。

まぁ魏や蜀もそうだが、都から離れれば離れるほど、民の信心が薄れ勝ちになる。
あまり治められてる実感が湧かないのが原因なんだろうけど…。



討伐自体は、かなり簡単に終わった。

村人からの情報にしたがい、アジトを強襲したらあっという間に終わった。

まぁ最近はほとんど討伐されている。数自体も少ない。
俺が率いている騎馬隊は、呉の中でも精鋭。こっちの倍いようが物の数じゃない。

あっさり討伐を終え、農業指導。


やっぱり出る前に資料に目を通しておいてよかった。
対処方法の項を覚えていて、大分助かった。


道中、違う賊やらも見つけ退治したりと、寄り道しながら建業へ舞い戻る。






冥琳さんに報告中。

「そうか…、やはり同じ症状だったか。やはり多湿が問題だな…」

「流石にこっちと同じ作物は厳しいかもしれませんねぇ」

やはり南になるにつれ、気候が変わる。海側はそうでもないが、大陸側は多湿になってくる。

「ああ、それも考えながら人材の派遣、税も調整しよう」

「はい、お願いします」

報告を終えて、後は休みだ。家と馬舎の掃除をして警邏がてら…

「良也」

「はい?」

「この後は、休み。だからな」

「はい。そうですね」

せっかく休みだし、みんなを手伝ってもいいな。

「分かってるのか分かってないのか…」

「?なにがでしょう?」
「なんでもないわ。ゆっくりしなさい」

「はーい」


執務室を出る。




ぶらりと場内を回っていると、


ヒュッヒュンッ!


中庭では思春さんが一心不乱に剣を降っていた。


そういや思春さんって帰って来てから暇さえあれば剣を振っているなぁ。

「良也、なんでそんな所に突っ立っておるのじゃ?」

「あ、祭さん」

後ろから祭さんが声をかけてくる。

「いえ、思春さん最近凄い頑張ってるなぁって」

思春に目線をやりながら言う。

「ああ、なにやら焦っているようだが…。大方、魏での主導権決定戦のせいであろうな」

「ん?なんかありましたっけ?」

「恐らく二戦とも敗北したのが理由じゃろ。別に気に病む必要はないと思うのじゃがなぁ…」

そらそうだ。
春蘭と恋ちゃんだったし…。

「なんなら相手をしてやったらどうじゃ?あの様子で振っていても鍛錬にもなりやせん。一発渇を入れてやれ」

「それなら…祭さんの方が…」

「年寄りが出張るより、同年代で高めあったほうがいいだろう。それに…」

祭さんは一升瓶を掲げる。

「儂には用事もあるしのぅ」

また酒ですか…。

「そういうワケじゃから、行ってやれ」

「はーい」


祭さんに促され、思春さんの元に。



「思春さん」

「…良也か…なんだ?…ッ!」

ヒュンッ!

手を止めずに答える思春さん。

「いやぁ熱心だなぁ…と」

「………武官としては当然だ」

俺に目を向けずに剣を振るう思春さん。

その剣筋はいつもの涼やかな剣筋ではなく、どちらかというと、雪蓮様のような猛るような剣筋。



特にそれ以上は何も言わずにただ見守る。


ヒュッヒュンッ


風切り音だけが辺りに響く。


「良也は…いつ頃から武を磨いている?」

手を止めないまま、思春さんが尋ねてくる。

「本格的に磨き始めたのは、二年前くらいですかね…。それまでは…嫌々やってました」

本当の意味で武を磨き始めたのは、旅に出てからだ。

それまでは、母に無理やり付き合わされた事がしばしば程度。

「私は生まれ立ち上がった時点から武を磨き始めた…。私と貴様の差は…何なんだろうな…」

不意に手を止め、独白するように呟く。



少し…心が痛い。

俺の力は、まさに天からの贈り物。
どんなに理屈をコネても、それは変わりない。

「私はどんな時世においても、蓮華様の剣…。それが切れぬ剣ならば、私には何の価値も…」
「思春さん」

思春さんの葛藤も分かる。だが、それだけは言わせたくなかった。




「一手、お願いします」


傍らにあった、訓練用の剣を手にとる。


「……ああ」


俺の意思が伝わったかのように、構える思春さん。


二人は相対する。


俺は剣の扱い方なんて知らない。


型もなにもあったもんじゃない。精々、力任せの一撃くらいだ。


「……フッ!」


ビュンッ!


整わない体捌き。

足元こそしっかりと踏み込めてはいるが、上半身はてんでバラバラ。

フェイントも、後先も、なにも考えないただの一撃。

「………ッ!」

如何に早い切っ先だろうと、思春さんは超一流の剣使い。
容易く読まれ、次の瞬間には潜り込まれる。

慌てて距離をとり迎撃しようとするが、ただ闇雲に振り回される剣など、思春さんの前では微風と同じ。
剣筋を容易く読まれ、逸らされる。

如何に強く打ち込もうとしても、無理な体制からでは力も乗らない。

確かに思春さんの剣筋は目で追える。普段から見えていて、捌いているのだから当然だ。
だが、それを剣で受けるのは話が違う。
手足のように扱えるならば捌けるだろうが、俺にはそんな事はできない。

剣の速さだけなら、確かに俺の剣は速い。

だが、そこに決定的な技術の差がある。
剣を自ら腕として使う事ができる思春さん。



やっぱり俺には剣は向いてねえや。


ヒュッ


体制を立て直すのに必死だった俺の目の前に切っ先が突きつけられる。



「負けました」

「…そのようだな」


負けた。だけど俺は嬉しかった。
いつもの思春さんの剣筋だったから。

冷静な剣筋。


「…ふぅ…やっぱり剣じゃ歯が立ちませんねぇ」

「自らの戦い方ではないからだろう…………そうか……」

どうやら俺が言いたかった事が伝わったらしい。

「私の方が……自らの戦い方すら忘れるほど熱くなっていたか……」


鈴音の刃筋を眺める思春さん。



「んじゃ、ありがとうございました。俺はここらへんで……」

「待て」

解決したかと思って中庭を後にしようかと思ったら、思春さんから待ったがかかる。

「せっかくだ。次はこれで相手になれ」

ポイッとマイ鉄甲を渡してくる思春さん。
あるぇー?


「イヤ、ソノ、オレ、イソガ…」

僅かにカタコトになる。
「構えろ」

鈴音を肩に担いだ思春さん。

はぁ…まぁしょうがないか。

渋々鉄甲を装備しようとしゃがみこむ。


「……感謝しよう」


「はい?なんか言いましたか?」

思春さんがなにかポツリと言った気がした。


「準備はまだか?」

「はいー!今すぐ!」

どうやら催促だったらしい。


慌てて準備をして、向かい合う。



その日の午後は、ずっと思春さんと手合わせしてた。

もう何度も首が飛んでいきそうな場面があって泣きそうだった。




「日が…落ちて…来ました…よ?」

体力は大丈夫だが、精神的にはもうヘトヘト。

「……そうだな。ここまでにするか…」

思春さんは剣を収める。


ふぅ…。良かった。


「付き合え」

「はぇ?」

手拭いで汗を拭きながら、思春さんは唐突に言った。

主語がないぜ思春さん…。

「飲みに、行くぞ」

「あ、はい、勿論喜んで」

ようやく理解する。

ん?つか思春さんから誘われるなんて、珍しいな。
雪蓮様が仕事をサボらないくらい珍しい。


べっ別にバカにしてる訳じゃないんだからねっ!

雪蓮様は奔放であればこそだよなぁ。



そんなツンデレってる俺を残し、さっさと街に向かう思春さん。


慌てて後を追う。






「…………」

「…………」


思春さんは、皆さんご存知の通り寡黙。


話題を提供しても…

「今日も星が綺麗ですね」

「…そうだな」


この通り。


例外はあるが、基本的には沈黙を守る。
まぁ俺は慣れちゃったけど。

なので、勇気を振り絞り実験。

「ですが、星より思春さんの方が綺麗ですよ…」

「…………」

ダメだった!

沈黙が痛いっ!


「…そのような囁きは蓮華様にしろ」

それだけ言って、スタスタ歩く思春さん。

いやまぁ実際、思春さん綺麗だしなぁ…。
鋭い美しさって言うの?そんな感じ。


思春さんの後を追って、一件の居酒屋風な店へ入る。


「店主、この店で一番良い酒を」

「へい」

開口一番カッコいい注文をする思春さん。

これは女なら惚れるわ。

というか、思春さんって全てにおいてクールだから型にハマるんだよなぁ。

「どうぞ」


店主は酒瓶と杯を二つ置く。

思春さんは、手慣れた感じでキュッと栓を開け、俺に酌をしてくれる。

「ども。じゃあ俺からも」

瓶を受け取り、思春さんの杯にも注ぐ。

そして揃って杯を傾ける。


………む。中々いい酒だ。老酒だな。

まぁ星さんや霞さん秘蔵の酒よりは深みが足らない気がするが、そこらの酒場で用意するには些か高い酒だろう。


静かに二人で杯を傾ける。

他の客もチラホラ。騒がしく飲んでいるが俺達が座る一角からは離れているので、たいして気にならない。


そういや、思春さんはなんで俺を飲みに誘ったんだろ?

「思春さん、なんで俺と飲みに?」

「……同僚と飲みに行くのに理由は必要か?」

む、確かに。
つか思春さんどっかの盗賊団みたいだな。

「まぁいらないですよね。思春さんとこうして飲めるの楽しいですし」

酒盛りには二種類ある、バカみたいに騒ぐ、静かに酒を楽しむ、の二つ。

騒ぐのも楽しいが、こうしてじっくり顔を突き合わせて飲むのも中々乙なものだ。

「私と飲んでも楽しくないだろう…」

「いやいや、好きな人と飲める酒はやっぱ上手いですし」

笑いながら言う。

思春さんは、数秒考え込んだ後、

「ゴホッ!ゴホッ!」

盛大にむせた。

「だ、大丈夫ですかっ!?」

「ゴホッ、貴様がおかしな事を言うからだ…ゴホッ」

酒が気管に入ったようで、かなりむせてる。
おかしな事言ったか?俺?

「だから、そのような甘言は蓮華様にしろ!」

怒られた…。

口を真一文字に結び、微妙に不機嫌そうな思春さんだが、その頬が赤いのは、酒のせいかあるいは照れからか。

「いやぁ、でも思春さんと飲んで楽しいのは本当ですよ」

「私のような無骨者より、蓮華様や小蓮様のほうが良かろう……というか、貴様は蓮華様だけ見てればよいのだ」

………ああ、肉の盾的な意味で?
まぁ確かにこれから王様になったら色々不届き者が出てきそうだしな。

「まぁ…頑張ります」

ふっ…忠臣として果てるのも本望さ!

「……それでいい」

「じゃあ尚更思春さんと仲良くせねばなりませんねっ!」

やっぱり思春さんは蓮華付きの武将だし。
密な連携により鉄壁ガード!

「な、何故そうなる…」

「まぁまぁ、はい、どうぞ、飲んでくださいなー」

トクトク注ぎまくる。

律儀に飲んでくれる思春さん。やっぱりいい人や。







「まぁ…ちょっと調子にノりすぎたワケですが…」

本当は軽く飲むだけだったろうに…。

俺がガンガン追加してガンガン注ぐので、数刻後には思春さんは潰れてしまった。

うむ。しょうがない。

「店主、会計」

「へい」

お代は中々値が張った。まぁいい酒ばっかだったしな。

「さて…とりあえず帰らないといけないワケですが…」

思春さんは机に突っ伏して寝ている。

まぁ担いで行くか。

ヒョイッとお姫様だっこをして店を後にする。






はて?前にもこんなシチュがあった気がする。

道中そんな事を思った。

確かその時は…。


思い出しているといつの間にか思春さんの部屋の前に。

そこでパチリと思春さんの目が開く。

「…………」
「…………」


あ。そうだ。思い出した。孫堅様の墓前での宴の時だ。

思春さんはスタッと俺の抱擁を抜け


「入れ」


NOーーー!!


案の定その後、説教を受けた。






後日。


思春さんの言う甘言というやつを他の人にも言ってみた。


雪蓮様の場合。


「あの星よりも雪蓮様の方が綺麗ですよ…」

「今、昼間なんだけど…」

失敗した。


シャオの場合。


「あの太陽よりシャオは綺麗だよ…」

「曇ってるよ?」

曇のバカヤロウ…。


蓮華の場合。


「あの雲より蓮華は綺麗だよ…」

「……何かしら?バカにされてる?」


怒られた。


俺なりに工夫したんだが…。
なりよりこの小説の売りは投稿の速さだった筈なのに最近滞り勝ちに…。

なによりもぉーーー!時間が足りない!
評価
ポイントを選んで「評価する」ボタンを押してください。

▼この作品の書き方はどうでしたか?(文法・文章評価)
1pt 2pt 3pt 4pt 5pt
▼物語(ストーリー)はどうでしたか?満足しましたか?(ストーリー評価)
1pt 2pt 3pt 4pt 5pt
  ※評価するにはログインしてください。
ついったーで読了宣言!
ついったー
― 感想を書く ―
⇒感想一覧を見る
※感想を書く場合はログインしてください。
▼良い点
▼悪い点
▼一言

1項目の入力から送信できます。
感想を書く場合の注意事項を必ずお読みください。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。