ヌルヌル更新中。
ネタを補給してるので、恋姫の方はかなりスラスラいけるな…。
だが…三作もやってると色々被るので、調整が大変…。
韓当。挨拶。呉編へ。
宴の夜が明け、魏の生活も終わろうとしていた。
唐突に始まり、唐突に終わろうとしている魏での生活。
感慨深くもあり、寂しさもある。
「なにやら真面目なお顔ですねぇ」
いつの間にか一緒に寝起きするのが定着した、風ちゃんが声をかけてくる。
「うん。凄く毎日楽しくて、それが唐突に終わるのはやっぱり寂しいなぁって」
多くもない身の回りの物を整理しながら言う。
纏めてしまうと、袋一つに纏まった。
勿論一刀君に貰った宝物(メイド服)はシワにならないように違う袋にしまった。計二袋。
「そうですねぇ…。良也お兄さんが来てからは、皆さんも一層拍車がかかっていましたから」
「まぁ…巻き込まれるにはかなりしんどかったけどね」
特に酒が入った彼女達は一層手に負えなかったっけ。
「ふふふ、良也お兄さんの周りも、お兄さんに負けないくらい騒がしかったですからね」
作業を見守っている風ちゃんが小さく笑う。
「騒がしくて、忙しない毎日も過ぎてみるとかけがえのない思い出だからね」
笑顔で時には怒りながら過ごした毎日は、眩い程鮮明に思い出せる。
「なんだか良也お兄さんの話を聞いていると、今生の別れのように聞こえますねぇ」
勿論そんな筈はない。
これから再び大使として魏に来たり、みんなが大使として呉に来ることもあるだろう。それに定期的に行われる三国集会にも。
「でも、それだけ楽しかったからね。感慨深くなるよ」
忘れ物がないか周りを見渡す。
俺の持ち物より風ちゃんの物が多かったのが少し可笑しかった。
昔から俺は持ち物が少ない。大事な首飾りと鉄甲さえ持てば、後は細々とした物を持てば済む。
何日も寝泊まりした部屋は、来たときと変わりなくそこにあった。
「…良也お兄さんが行ってしまったら、風は誰と寝ればいいんでしょうか?」
「…稟さんとか?」
「……良也お兄さんは、本当に鈍いですねぇ」
なして?
「風は一人で寝られないほど子供ではありません」
???
「うん、勿論知ってるけど…」
「……流石ですね。良也お兄さん…」
「え?うん、ありがとう」
よく分からんが誉められた。
「風は、また会える時を楽しみにしてます、それだけ、覚えていてくださればよいのです」
「勿論。俺だって楽しみだからね」
風ちゃんの頭を撫でる。
「……今はこれで満足しておきます」
目を細めた風ちゃんが小さくそう呟いた。
しばらく思い出話に花を咲かせた後
「良也お兄さん、皆さんにも挨拶しておいたほうがよろしいのでは?」
風ちゃんがそう言った。
気づかぬウチに大分時間が経ってしまっていた。
「うん、そうするよ」
最後に一撫でして部屋を後にする。
朝もまだ早いというのもあり、未だに静寂が支配していた。
歩き慣れた廊下はいつも通りで、ここを離れる実感は薄い。
「おや、良也殿。今日もお早いですね」
「稟さん。おはようございます」
廊下でばったりと稟さんに会う。
挨拶もそこそこに、歩きながら話す。
「稟さんはもう仕事ですか?」
「はい、蜀と呉の皆さんを送り出す時の物資の最終確認です」
あー。そっか。
物資の補給なんかは魏がしなきゃだもんなぁ。
「大変ですねぇ」
「いえ、さほど労力はいりませんから。桂花殿と風もいますし」
確かにあの二人がいりゃ百人力だ。
「良也殿がいなくなると、風が寂しがりますね…」
不意に稟さんがそう呟く。
「その分稟さんが一緒に寝てあげればいいんじゃないですか?」
懲りずに俺はそう告げた。
「……はぁ。まぁ良也殿らしいですが、良也殿は少し自覚を持つべきですね」
「??自覚?」
「人に好かている、という自覚ですよ。あまりに鈍感だといつか愛想を尽かされてしまいますよ」
好かれている自覚…かぁ。
そら好かれているんじゃないかと思ってはいる。
多少の好意が無ければ皆こんなに良くはしてくれないだろうし。
ましてや風ちゃんみたいに同じ部屋で寝る、なんて気を許してくれているからこそ。
でもそれは頼れる父親的な感情なんじゃないかと…。
あれ?でもさっきは子供じゃないって…。
ん?ん?
「良也殿には、押し倒す位の気概がなければならないのですかね…」
「はい?なんか言いましたか?」
考えに没頭してた俺は稟さんの呟きが聞き取れなかった。
「いえ、なんでもありません。
良也殿、今回の魏の滞在中の活躍、大変有り難かったです。改めて感謝致します」
急に慇懃に告げられ面食らうが、それに対する返事は俺には一つしかない。
「そんな畏まった礼なんていらないですよ。みんなが笑顔になる役に立てたなら、俺は本望ですから」
「良也殿らしいですね。
ですが言葉くらいは受け取ってください。他に何もできないですから」
稟さんはそう言って優しく笑った。
「他に何もできない、なんてないですよ。俺としてはもう報酬はもらってますから」
「報酬?」
稟さんは首を傾げる。
「稟さんが…みんなが笑顔なのが、俺には最高の報酬ですよ。それだけで俺は満足です」
「……本当に、良也殿は優しい方ですね」
稟さんは、何故か顔を背けながらそう言った。
「良也殿は挨拶に回っていたのですよね?」
「あ、はい。昨日は結局乱痴気騒ぎでマトモに話せませんでしたから」
まさに夜カオスだった…。
「先ほど凪殿を中庭で見かけましたよ。行ってみては如何でしょう?」
「そうですか、どもっす。んじゃ行ってみますね」
稟さんにそう告げ、中庭に向かう。
「おーい、凪」
「…?良也殿?」
一人で鍛錬をしていた凪が俺に気づき手を止める。
「邪魔になったかな?」
「いえ、丁度キリがよいところだったので」
そう言いながらも、様子からしたらこれからギアを上げるところだったのだろう。
「んじゃ、最後に少し付き合ってくれるかな?」
俺がそう言うと、凪は嬉しそうに
「はい!」
大きく返事をした。
「にしても、これでしばらくは凪と手合わせできなくなるんだ、なっ!」
会話しながら拳を交える。
「フッ!そうですね…。ほとんど毎日教授していただいてましたから…」
朝練に来ては手合わせし、暇な時間があれば誘ったり誘われたりと、本当に有意義な時間だ。
「でも、機会があればまた頼むよ。外気功の指南もお願いしたいしね」
右、右、ロー、ハイ、刻みながら打ち出される拳や脚を捌く。
「…シッ!はい、勿論です。きっと次に会う時には余裕を持って外気功に取りかかれるでしょうから」
「それは嬉しいなぁ」
念願のかめ○め波。うぉー、夢膨らむー!
「本当に…楽しかったです…」
不意に凪の拳から力が抜ける。
「?凪、どうかした?」
暗い表情を見せた凪にそう尋ねると
「……いえ、大丈夫です」
凪は暗い表情を振り払い、笑顔を作る。
「大丈夫って顔じゃないよ?俺で良かったら言ってみて?」
「……良也殿だからこそ…言えない事もあります」
「そっか…。じゃあしょうがないよね」
凪に近づき頭を撫でる。陰った笑顔が、少し悲しかったから。
「凪、また手合わせしてくれる?」
約束を取り付ける。再会の…まぁ嫌でも顔を合わせる機会は沢山あるが、それでもだ。
「…はい!」
陰りは消え、溌剌とした笑顔が戻る。
うむうむ、美少女は笑顔が似合う。
「…ちょ!?沙和!あんま押すなや!」
「むぅー真桜ちゃんで見えないの〜」
「そんな押したら…あっ!」
バターン!
急に物陰から現れた二人。
「沙和、真桜……なにしてんだ?」
「い、いやぁ〜、ちょっと沙和とじゃれとったら転けてもうてなぁ!」
取り繕ったようにそう言う真桜。
「べっ別に二人が良い雰囲気だから覗いてたワケじゃないの!」
そーなのかー。
「沙和…真桜…」
ゴゴゴッて背景を背負った凪が二人を睨む。
「ま、待てや凪、話せば分かる!話せば!」
「ななな凪ちゃん!そうなの!話せば分かるの!」
「問答無用…!」
凪が気弾を放つ。
チュドーン!
「沙和達こんなのばっかりなのー!」
「せやなぁ…」
ぶっ飛んでいく二人。
相変わらず仲いいなぁ…。
「痛たた…。凪、最近また強くなったんやない?」
「前まであんなに飛んだことないの…」
「自業自得だっ!」
俺はそれより、ぶっ飛んだハズの二人が何故一瞬で帰ってこれたかが気になる。
「それにしても、良也さんが帰っちゃうと寂しいの」
「せやなぁ…。兄さんと隊長の発想は聞いててタメになったんやけどなぁ…」
「まぁすぐにまた会えるさ。どうせすぐに宴なんかやるんだろうし」
三人の内、誰かが呉に来るかもだし。
「そうなんやけど…。まぁウチらより凪が一番寂しいやろう(ゴチンッ!)ガフッ!」
「余計な事は言うな!」
凪の拳骨が振り下ろされた。
「ぐぉぉぉ…」
ぐぉぉぉなんて女の子が言うもんじゃないですよ?真桜さん。
「最近の凪ちゃんは過激なの…」
「せやー!照れ隠しはほどほどにせぇー!」
若干涙目な真桜が凪に抗議する。
俺を盾にしながら。
「まーおーうー……」
再び凪に氣が満ちる。
ちょ!?俺いる!?
相変わらずの三人組とひとしきり漫才し終え、挨拶まわりに戻る。
ブラブラと城内を歩いていると
「あ、春蘭、秋蘭さん。おはよう」
夏候姉妹が何やら不審な動きをしているのを発見。
「む、良也か」
「おはよう、良也。早くから挨拶まわりか?」
「はい、ご明察です。みんなには色々お世話になりましたから……なんか探してるんですか?」
あまりに春蘭がキョロキョロしていたのでそう尋ねる。
「いや…一刀がな…見当たらないんだ」
一刀君?
「昨晩一刀の部屋に行ったのだがいなくてな。それで姉者が…」
探してるってか。
「まぁ一刀君なら心配しなくても…」
「いや、魏の将の元にいるならばいいのだが…」
春蘭が苦虫を噛み潰した表情を作る。
「いや、だって魏の将以外の所になんか………はっ!?」
まさか…。
「他国の…」
いや…一刀君と蜀と呉の繋がりはまだ薄いから…しかしそこは主人公属性。
完全に否定はできない。
「お?春蘭、秋蘭、それに良也も。こんな所でなにやってるんだ?」
うわーい、間の悪さも主人公。
「一刀…昨晩は一体どこに行っていた?」
ゴゴゴッと背景を背負う春蘭。
「へ?昨晩?ななななんの事かな?」
「魏の将に飽きたらず…他国まで手を出すとは…」
秋蘭さんが何故かわざとらしく煽る。…まさかとは思うが…秋蘭さん何か知ってるのか?
「ちょ!?他国の人には手を出してなんかないって!?」
「…他国の人“には”?」
「あ……」
まぁ…ドンマイだよね。
「北郷ぉぉぉ!」
いつもと同じく春蘭が一刀君を追いかけだす。
「春蘭!バリエーションがないよ!!マンネリマンネリ!」
「何を言ってるか分からんわぁぁぁ!」
走り去る二人を見送る。
「秋蘭さんは追わなくていいんですか?」
この場に残った秋蘭さんに問う。
「ああ、私の分まで姉者がシメてくれるだろうからな。まぁ…本来ならば怒る事でもないんだがな」
そう言って、ふっと笑う秋蘭さん。
「どうやら、姉者も華琳様ではなく、一刀自身に多少ながら嫉妬を覚えるまでになれたようだ」
「それはまた…ご愁傷様としか言えませんね」
毎回剣振り上げられて追いかけられるんじゃ、命がいくらあっても足らない。
「昨日、宴の終わった後にシメに一刀と飲もうと、姉者が肴を作って持っていったから、尚更腑に落ちないのだろうなぁ」
なーる。つか春蘭料理できんのか?
「可愛いなぁ…姉者は…」
…まぁ分からんでもない。小学生の男の子みたいで。
「そういや結局一刀君は昨日は何処に行ってたんでしょうね?」
「ああ、それなら、沙和と真桜の所だ。昨夜の宴の後、二人に連れられ街に消えるのを見たからな」
「わぉ…やっぱり知ってたんですね…。人が悪いですね…」
「ふふっ。ああして二人がじゃれているのを見るのが日課でな」
一刀君は愛されてるねぇ。
「そうだ、良也、改めて感謝しよう。此度の滞在は魏にとって随分助けになった」
「そんな、頭下げなくてもいいですよ。俺はやれる事をやっただけですから」
「言葉くらい受け取っておいてくれ。謙遜も行き過ぎると失礼だぞ?」
「そうでした。どう致しまして」
昔、紫苑さん達にも言われたわ。
「それに、姉者が一刀への当たり方が変わった事にもな。姉者が変わったのは最近だ。良也が何か言ってくれたのだろう?」
「あ~、あったような…」
元はというと切りかかり癖を治すはずだったんだがな…。
「姉者が一刀に積極的になり、普段から一刀、と呼ぶようにもなった。
時間の問題でもあったのだろうが、その一押しはきっと完全な第三者だからこそできたモノだろうしな」
まぁぶっちゃけかなりテキトーな説得だったが…。
「また魏にくる時を楽しみにしているよ」
「はい、俺も楽しみにしてます」
秋蘭さんはクールに手を上げ、二人が走り去った方に歩きだす。
皆が起き出し、街にも活気が出てくる時間。
昼を過ぎる頃に出立なので、まだ時間的には余裕がある。
早朝から色んな所を回っていたので腹減った…。
厨房を借りて何か作ろうと思ったのだが、先客が。
「あ、良也さん。おはようございます」
「うん、流琉ちゃん、おはよう」
流琉ちゃんが忙しそうに料理を作っていた。
「珍しいね、いつもはもっと早い時間から仕込んでるのに」
そう、朝食を準備するには多少遅い。
「それが…寝過ごしてしまって…」
あれま…これまた珍しい。
昨日は結構遅くまで宴をやってたからなぁ。
まぁその後二次会と洒落込んだ豪傑達も多々いるが…。
「んじゃ、俺も手伝うよ」
「すみません、お願いします…」
二人で協力して料理を仕上げる。
といってもメインはほとんど終わっているので、副菜やらを作るだけなのだが。
「助かります。呉と蜀の皆さんの朝食もありますから、時間的にギリギリだったので」
流琉ちゃんがみんなの分も作ってるのか。確かに絶品だしなぁ。
「いえいえ~。料理は好きだから。それに流琉ちゃんの手際は参考になるしね」
俺と流琉ちゃんは手を止めずに会話する。
「良也さんが来てからあっという間でしたね」
「うん、毎日騒がしくて、来たのが昨日の事みたいだよ」
光陰矢の如しとはよくいったモノだ。
「良也さんと最初に会ったのは、定軍山でしたね」
「そうだったねぇ。あの時は敵同士だったんだけど今はこうして肩を並べて料理しているんだから、人生なにが起こるか分からないよねぇ」
軽く笑う。
「そうですねぇ、あの時捕まったのが良也さんでなかったらまた違う事になっていたかもしれませんしね」
まぁ桃香ちゃんなら解放しただろうけどねぇ。
「流琉~、水くれへんか~?」
そんな時に現れたのは青い顔をした霞さん。
「霞さま、どうかしましたか?」
青い顔を見てビックリしたように、流琉ちゃんが尋ねる。
「いやぁ…ちょいと二日酔いでな…」
「珍しいですね。霞さんが二日酔いなんて」
「良也も一緒やったか…。祭と飲み比べしとったらつい飲み過ぎてなぁ」
祭さんの底なしっぷりは、凄いからなぁ。
雪蓮様でも負けるレベルだ。
祭さんに付き合ったら潰されるのが目に見えている。
「はい、お水です」
「すまんなぁ…。……んくっんく…」
喉を鳴らしながら水を煽る霞さん。
「…ぷはっ、あー人心地ついたわ」
若干回復した様子の霞さん。
「なんか食いますか?あっさりした物でも作りますよ?」
「ありがたいんやけど、今はええわ…」
ぐてーっと机に突っ伏す霞さん。
「食わないと昼まで保たないですよー。汁物作っときますから、気が向いたら食べてください」
「すまんなぁ…。ところで良也、嫁にきいひん?」
何がところで、なのか分からないっす。
「勿論嫌じゃないですが、呉には家族もいますから。帰らないと」
「なんやて!?…ッ~!」
急に大声を出して頭に響いたのか、頭を抱える霞さん。
「今は俺の隊の副長が世話してくれてるんですが、放ってはおけません」
「…世話?」
「はい、最近は象とかも増えましたから苦労かけてるでしょうねぇ」
屋敷に入らないレベルの家族もできた。
「あ…あ~。なんや焦らせんといてや…。恋と同じか…」
なにやら納得する霞さん。なんだと思ったんだ?
「せや…良也、今日帰ってまうんやったなぁ…」
寂しげに呟く霞さん。
「すぐにまた会えますよ。また大使になるかもしれないですし、集まりもあるでしょうから」
「はぁ…相変わらずそこんとこ鈍いなぁ…。月くらい正面からいかなあかんか…」
???
「なんでもあらへんよ。あー、頭いたいなぁ~」
霞さんは若干棒読みでそう言った。
なんだろ?
「流琉~お腹すいた~」
そんな厨房に季衣ちゃんがやってくる。
「ごめん、季衣。もうちょっとだけ待ってて!」
今厨房は修羅場。
まずは客人である、蜀と呉の分を作るのが先決。
「うー、お腹と背中がくっついちゃう…」
霞さんの横でぐったりする季衣ちゃん。
それを微笑ましく見ながら、俺も戦場の一端を担うのだった。
「はい、これで全員分です。お願いします」
「かしこまりました」
侍女さんが数人で料理を運んでいく。
「よし!季衣、とりあえずこれ食べてて」
流琉ちゃんは、配膳した料理の残ったおかずを皿に盛り、季衣ちゃんに差し出す。
「わーい!いっただきまーす!」
猛然と食べ出す季衣ちゃん。
流琉ちゃんは更に追加分を作り始める。
「う…。季衣、あっちで食べてくれへん?」
「……モグモグ。霞さま気分悪いんですか?」
「ああ…。ちょっち、今の状況じゃその食べっぷり見るだけであかんわ…」
まぁ季衣ちゃんの食べっぷりは、素面でも胸焼けを起こすほどの食べっぷりだからなぁ。
「うん、それじゃこっちで」
数席移動して、モグモグ食べ始める季衣ちゃん。
俺は俺で自分の食い扶持と、霞さん用の湯を作り始める。
「良也さんの分も作りましょうか?」
「いや、流琉ちゃんも季衣ちゃんの分で忙しいだろうしね」
「そうですか?」
俺の顔の二倍位大きな中華鍋を振り回している流琉ちゃん。
流石のパワーだぜ。
「うん、どうせ俺は炒飯と湯だけだから」
朝は軽めが好きな俺。
なによりすぐに出来上がるし。
「そうですか…。……よっ。はい、季衣、追加だよ」
「わーい!」
手早く作り終えて季衣ちゃんの前に再び食料が供給される。
タフだなぁ。
ほどなくして、俺の料理も終わり席につく。
流琉ちゃんもじきに終えて席につけるだろう。
「いただきます」
丁寧に告げて食べ始める。
天下の魏・厨房。揃っていたのは最高の材料だ。
それに見合うくらいの出来栄えだろう。
一人で満足しながら、食べ進める。
「…………(ジー)」
「な、なにかな?季衣ちゃん?」
「美味しそうだね…」
いやいやいや、季衣ちゃんの目の前にも最高の料理が山のように。
まぁ別にいいか。
「一口どうぞ」
「うん!ありがとー」
レンゲですくい、季衣ちゃんがパクリ。
「わー!流琉と違う味付けだけど凄く美味しい!」
そいつぁーなによりだ。
「もう一口…」
「…どうぞ」
炒飯の山がみるみるうちに、季衣ちゃんの胃に収まっていく。
「季衣!とっちゃダメでしょ!」
「えー、美味しいんだもん…」
「もう!
良也さん、よろしかったらこちらもどうぞ」
「お、ありがとう」
流琉ちゃんが炒めものを分けてくれる。
では早速。
………ムグムグ
「旨いっ!流石だね!」
「ありがとうございます!」
笑顔で答える流琉ちゃん。
「……なんや、楽しそうやなー」
ぐってりしながらも、こっちを見る霞さん。
「食べられそうですか?」
「むぅ…。少しなら…」
そう言って身を起こす霞さん。
「んじゃ、俺が作ったもんなんで保証はできませんが、どうぞー」
湯をよそい、霞さんに差し出す。
「………あかん!腕が言うこと聞かへん!」
なっなんだってー!
……それ本当に二日酔い?
「ってわけで、良也。食べさせてぇな」
「別にいいですけど…」
湯をすくって口元に持っていく。
「あーー……あっつぅ!!」
ああ…霞さんが往年のリアクション芸人みたいなノリに…。
「あっついわ!殺す気か!」
「いやお約束かと」
抗えない運命とも言う。
「今度はちゃんと冷ましますから。…フーフー。はい」
「…あーん。…ん、ええ味やわ。優しい味がする」
オフクロの味ならぬ、カントウの味。
「もっとくれー」
雛鳥の如く次をねだる霞さんに、ヒョイヒョイと餌付け。
「霞さまと良也さん、仲いいねー」
「しっ!季衣、黙ってなさい」
なにやらロリ二人が密談している。
「次やー」
「ほいほい」
そんな感じで朝飯を食べる。
朝食後、大分顔色が良くなった霞さんは馬の世話に、流琉ちゃんと季衣ちゃんも親衛隊としての仕事があると、その場を後にした。
えーと、後挨拶してないのは…。
華琳様と桂花、数え役満しすたぁずのみんなだな。
とりあえず天和ちゃん達の所にいくか。
トコトコと数え役満しすたぁずの楽屋兼宿舎へ。
今はかなり豪華だが、ライブ開始当初はかなりボロ小屋だったと、一刀君は言ってた。
「こんちわ、天和ちゃん達いる?」
もっそい沢山いる番兵達の一人に声をかける。
「いえ、今は蜀と呉の皆様を送り出す舞台の、りはーさるらしく、現在は城に出向いております!」
あら?すれ違い?
「そかー。分かった、ありがと」
つか、そんな事やるんだ。知らんかった。
城に戻るかー。
再びトコトコと城に向かう。
天和ちゃん達を探している途中、備蓄庫のほうから聞き覚えがある声が聞こえてきた。
「そっちは蜀の兵站よ!なにやってんのよ!!」
容赦ない罵声。間違いなく桂花だな。
「このグズ!こんな仕事も満足にできないなんて、脳が沸いてんじゃないの!?」
「サー、イエスサー!」
ヒョイッと覗いてみると、なにやら恍惚の表情を浮かべて軍隊式な返事をする兵が忙しそうに動き回っていた。
マゾ軍隊?
そういや沙和の新兵訓練が、古き良き海兵隊式の罵倒訓練方法だったなぁ。
あれの弊害か…。
「もっとキビキビ動けないの!?こんな事くらい自分で考えて動きなさいよっ!」
「サー、イエスサー!」
…まぁ本人達が幸せなら、いいんだよね。
様々な愛の形を思い知った気がした。
今顔を出すとなんとなく被害が俺にも及びそうなので、後で挨拶しにこよう。そうだ、それがいい。
そっとその場を後にしようと…
ガタッ
ガラガラー
後ずさりしたら、後ろの木箱に足をぶつけて、派手に倒してしまった。
うぁお…。こんなベタな事するとは思わなかった。
「良也じゃない、なにしてんのよ」
見つかった…。
「いや、みんなに挨拶まわりをね。桂花、滞在中は世話になったね」
なるべく愛想良く笑う。
「ふん。別に感謝なんかいいわよ。特に世話なんかしてなかったんだし」
………まぁ、確かに。
基本的に風ちゃんや霞さんが俺の世話役。
普段、桂花は遠目から監視していただけだし…。
「まぁそういわずに。謙遜し過ぎもダメですよ?」
「謙遜してるわけじゃないわよ!」
そうでした。
しかし予想外に罵倒らしい罵倒がない。
というか、仕事の話をする時や桂花から唐突に話かけられたりする以外に桂花に会話するのって、魏に来てから始めてじゃね?
俺のガラスハートを守るためにそっとしておいたのが主な理由だが。
「あー、いてて…。春蘭相変わらず手加減してくれないんだから…」
そんな場面に都合よくやってくる一刀君。
「あれ?良也、それに桂花。なにやってんの?」
「なによ?その目ん玉は節穴?相変わらず思考回路は下半身にしかないわけ?これだから万年発情してる種馬はイヤなのよ」
おぉう…。
マシンガン罵倒…。
「いや、話をしてるのは分かってるけどさ」
そしてサラッと流せる一刀君はやはり手練れだなぁ。
「桂花が普通に男と話しているなんて、天変地異の前触れな気がして…」
「五月蝿いわね。アンタみたいな閨でしか役に立たない男なんか相手にするよりずっと有意義よ!それに、良也は男じゃないわ!」
断定!?
いや確かに前からそんな事言われてたけど…。
「へ?良也!まさか女性だったのか!?言われみれば…見えなくも…」
いやいやいや。信じないでくれ…。
「そうだよな…。有名な武将はみんな女の子だし…韓当が女性なのも普通…」
「返ってきて一刀君!俺、男!メン!」
慌てて言う。
流石にヘンなフラグが立ちそうだから。
「そ、そうだよな。あれだけ語り合ったし…なにより俺のセンサーが反応しないからな…」
センサーってなに?
「というわけで、桂花。良也は男だぞ?」
「私は自分の目で見た物しか信じないのよっ!
丁度いいわ…今後、こんな機会は中々ないだろうから、この目で確認してあげるわっ!」
何故かプチキレた桂花が俺に飛びかかってくる。
「よっと」
軽やかにかわして後ろから抱き上げる。
しまった…つい。
「ちょっと!下ろしなさいよ!確認できないじゃないっ!」
ジタバタする桂花。
どうしよ…これ…。
「一刀くーん!助けてー!」
一刀君に助けを求めるが…
「これは呉の馬車に積み込んでくれー」
「サー、イエスサー!」
桂花がほったらかした、積み込みの指揮を取っていた。
いや確かに正しい事なんだが…。
「むきー!は・や・く、下ろしなさいー!」
ジタバタジタバタ…
あれ?なんか可愛い…。
「ほらー高い高いー」
高い高いEasyMode。
ぶん投げたりはしない。
「こんなので喜ぶのは、子供くらいよっ!!」
バカなっ!鈴々ちゃんや瑠々ちゃんは喜んでたぞ!
どうしようもないので、しばらく高い高いをしたまま過ごした。
下ろしたら危なそうだし。
結局、叫び疲れた桂花が根負けした形で事態は収集した。
去り際に「覚えてなさいよっ!」と言われたが、正直なにを覚えてりゃいいか分からなかった。
高い高い禁止って事か?
桂花はそのまま荷積みの指揮、一刀君はそれの補佐をするそうなので、挨拶まわりに戻る。
はてさて、どこにいるのかなぁ?
テクテクと城を歩いていると、聞き覚えのある旋律が聞こえてくる。
優しい音色と澄んだ歌声。
染み入るような音につられて発信源に向かう。
「~♪」
中庭の一角で、三姉妹が肩を寄せるように歌っていた。
いつもの舞台衣装を着込み、最後の音合わせと言ったところか。
邪魔しては難だし、しばらく見守る。
「~♪~~…うん、大丈夫だね!」
「ええ。大丈夫よ。
ちぃ姉さんも元の調子を取り戻せたようだし」
「私はいつも通りよっ!」
音合わせが終わったのか、三人でワイワイと喋りだす。
そろそろ話しかけても大丈夫かな。
「ちぃちゃん、良也さんが帰っちゃうって聞いた時から落ち込んじゃってたくせに~」
「えっ!?べっ別にそんな事…」
「や、みんな」
ん?なんかみんなビックリしてる。
「りょ、良也さん!?」
はい、良也さんです。
「相変わらずいい声だね。思わず聞きいっちゃったよ」
「ありがと~。でも、盗み聞きはよくないなぁ。これからみんなの前でも歌うのに」
少し頬を膨らませた天和ちゃん。
「ごめんごめん。いい歌声にふらふらーっとね」
「もう♪誉めても何も出ないですよ~」
テレテレとブンブン腕を振る天和ちゃん。
「それで良也さん。何かご用でしたか?」
「ああ、魏のみんなに挨拶をね。お世話になったし」
「そんな…。私達の方がご迷惑おかけしましたから。突然舞台に参加させちゃったりとか…」
申し訳なさそうに言う人和ちゃん。
「いやいや、それも貴重な体験だったし。良い思い出だよ」
恐らく人生に一度あるかないか位だ。
まぁ舞台に上がっても戦う事になるとは予想だにしなかったがな。
「良也さん…」
地和ちゃんがおずおずと声をかけてくる。
「私、頑張って歌いますね!」
「うん。楽しみだよ。頑張ってね」
グッと力をいれる地和ちゃんが激しく微笑ましい。
思わず撫でる。
「……///」
あっ。そういや
「三人って、これから呉とか蜀でも公演するの?」
人和ちゃんに話を振る。
「ええ。もう少し魏領で活動した後に呉と蜀でも活動する予定ですね。
すでに華琳様にも許可をいただいていますから、後は各国との調整次第ですね」
おぉー。三国でライブ。
これで数え役満☆しすたぁずは、不動の地位を築くわけだ。
「呉に来たら勿論見に行くよ」
「良也さんが来てくれたら、また前の公演と同じ事できるね!」
天和ちゃんが嬉しそうに跳ねる。
呉なら…雪蓮様か、思春さんが相手かな?
春蘭よりは断然話が通じるな。安心だ。
「あ、勿論その時は地和ちゃんから貰った券で行くよ」
せっかくだし。
「へっ?あ…」
地和ちゃんは朱が差した表情で
「……うん」
小さく頷いた。
「ちぃちゃん乙女だね~」
「ええ。普段なら、あんな表情は絶対しないわ」
なにやらボソボソと会話する二人。
ライブ、楽しみだなぁ。
三姉妹は中庭にセットする簡易舞台の調整に行く。
俺は玉座の間に赴く事にした。
華琳様なら玉座にいるだろう。
「失礼します」
声をかけて、大きな扉をくぐる。
「あら、良也。どうかした?」
「良也、華琳に用事?」
玉座には華琳様と雪蓮様がいた。
「雪蓮様も華琳様に用事でしたか?俺の用事は後でもいいんで、外しますか?」
「いいのよ。私の用事は終わったし。それに大した事じゃないしね」
王同士が玉座でサシで話すなんて、かなりただ事じゃないような…。
「…大した用事じゃないって…。
呉の次期王の話が大した事ないワケがないじゃない…」
ん?“次期”王?
「改めて話さなくたって、華琳なら分かっていたでしょう?それにしばらくは先なんだし」
「分かってはいたけど…。王が変わります、はいそうですか。なんて簡単に行くわけがないじゃない」
「勿論分かっているわよ。
でも、私が王として立つより、蓮華が王として立った方が多分上手く行くわ」
雪蓮様は嬉しそうな、それでいて微かに寂しそうな表情をした。
「雪蓮お得意の、勘?」
「ええ、それもあるわ。
なにより、私は戦いに、蓮華は治世に向いている。我ら姉妹の事ながら本当に似ていないわ」
確かに…。
性格的には真逆。保守的な蓮華と、攻撃的な雪蓮様。
………それに雪蓮様ってあんまり政務しないし…
「良也、なんか言った?」
「いえ、滅相もありませぬ」
雪蓮様の勘は、誰より鋭い。気をつけねば。
「今はまだ頭の片隅に置いておいてくれればいいわ。どうせ隠居なんかしないし。まぁ自由にはさせてはもらうだろうけど」
「あら?冥琳とどこかで隠居したいーって言ってなかったかしら?」
うん、俺も聞いた。
「良也も連れてなら山とか海沿いで隠居してもよかったけど、そしたら隠居先に呉の軍が攻めて来そうだから隠居は止めたの」
「んなアホな…」
「なるほど」
なんでそこで華琳様は納得するん?
「そういう事でこの話は終わり。良也も用事があるならさっさと済ましなさいよー。私は桃香の所にも行ってくるわね」
そう言って、玉座の間を出て行く雪蓮様。
「それで?用はなんだったの?」
「あ、はい。お世話になったので最後に挨拶を、と」
「相変わらず律儀ね。………なんだかこれだけ律儀だと、騙した私達が本当に悪者みたいね…」
「?なんか言いましたか?」
華琳様は何か呟いたが、口元に手を当てていたので聞こえなかった。
「なんでもないわ。
そういえば、報奨を渡していなかったわね」
「報奨?」
「ええ、五胡での戦績。魏領内での検挙、及び領内の治安維持に多大な功績。報奨を出す位じゃ済まないくらいの功績よ」
あー、そういや雪蓮様からも貰ったわ。
戦の後、てんやわんや中に貰った。まだ受け取り中だが。
「何が欲しいの?桂花は閨の権利10日だったわよ?」
その例は一体何なんでしょうか?
報奨金に関しては、受け取らざるを得ない。
王からの報奨金を断るのはすなわち愚弄する事だから。
「特に要求がないなら、普通に宝玉や金銀でいいかしら?」
「それはちょっと…」
「一番分かりやすくていいと思うのだけれど?」
いやそれが…
「昔、雪蓮様からそんな物を貰ったんですが…今は動物達の玩具になってんですよねぇ」
「は?」
特に玉系は丁度いい玩具。
「貰った物を売るのは気が引けるんですよ。だから家にほっぽりだしてたらいつの間にか動物達の玩具になってしまい…」
「…………。雪蓮からも報奨を貰ったのでしょう?何を貰ったの?」
「食料です。確か、五胡戦の報奨は向こう何年分くらいでしたね」
おかげで韓当家の食料事情は安泰です。
「…………。本当に欲がなさすぎじゃない?本当に人間?」
人間です。
「俺は毎日お腹いっぱいで過ごせれば幸せなんですよ」
このご時世、それだけでも破格と言っていいほど幸せだ。
欲はあるにはあるが、実はその欲は一刀君との約束で満たされる予定。
すでに一着は確保できてるし。
「…………はぁ。分かったわ。こっちで考えておきましょう。金銭や地位、それと食料も潤沢でしょうから、それ以外で」
「なんかすみません…」
「別にいいわ。…でも、報奨で悩んだのは初めてよ…」
すんません…。
「桂花は春蘭ほど分かりやすい者もいないけれど、良也ほど分かりにくい人もいないわね…」
「あの二人に比べられたら、大抵難しくなると思いますよ?」
「まぁ…そうね」
特にあの二人は華琳様がいれば幸せだろう。秋蘭さんもだろうけど。
「良也は出会った時から何一つ私の思い通りになった事はなかったわね」
「そうですか?」
「ああ、そういえば最近初めて思い通りに動いてくれた事もあったけど………あれは風の功績だものね」
???
「あのー、なんの話でしょうか?」
ドンドン話を進めてしまうので、俺の思考じゃ追いつけません…。
「気にしなくていいわ。アナタはそれでいいのだから」
「はぁ…」
生返事を返す事しかできない。
「とりあえず、今回の試験大使、ご苦労だったわ」
「はい、お役に立てたなら本望です」
華琳様はそう言って締めくくった。
さて、後は荷物の積み込みとか手伝って昼まで過ごそう。
そう思い、呉の兵が集まる所に向かうのだった。
沙和と真桜の話はいずれまた。後、桂花も。
凪と風に執着し過ぎた…。
恋姫も全然終わりが見えないんだが…。物理的な話数的な意味で。
終わり方は決めているんですけどねぇ…。
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