遂に十話だぜ!
初、前編、中編、後編。
分けると読みにくいかな?と思いましたが、分割のまま投稿します。
それでも大西洋のような広い心でばっちこ~い。と受け止められる方だけお進みくださいませ。
10 人の波の中で 前編
孫権様のもとを離れ、一カ月程経った。
俺は洛陽に向かっていた。
江東各地の村では高い税率や、飢饉の兆候などもみられ、食料を調達するのが困難だったが、ある程度北に抜けた所から、急激に治安が良くなっていた。
なんでもこのあたりのお偉いさんは優秀な人らしい、と村や街の人が口を揃えて言っていた。
地理に疎い俺には、誰が治めているのかは想像もつかないがな。
そして、一番の懸念が、黄巾の姿を良く見る様になったということ。
治安が良くなったとはいえ、俺の働き口が減らないのはそういう理由だ。
しかし、段々賊が大規模になっていき、正直手に負えなくなっているのも確かだ。ぶっちゃけ百数人単位なら、半日頑張れば追い散らせるが、千人規模になったらもうやる気すらおきない。
だってあれはもうすでに、人の壁だぜ?
いくら体力が有り余っているからといって、先に心が折れる。
俺は比較的少ない賊を相手に。もし、数が多い場合は、数人を血祭りにあげ、全員を追い返す、という感じで、依頼をこなす。
見せしめに血祭りに上げた方々はグロ注意な状態だ。
気分の良いものではないが、仕方ないと割り切らねば、流石にやってられない。
そんな事を考えながら、ひなた(馬)を走らせていると
「おっ!」
村だ!
意外に大きめの村が見え、ちょっとテンションがあがる。が、このすぐ後に、また面倒事に襲われる事になる。
うーむ。おかしい。
村に入った俺は首を捻る。まるで、これなんてサイレント○ル?と思わざるをえない。別に霧に覆われてはいないが。
人っ子一人見えないのだ。
ポクポクひなた(馬)と歩いていると、
「貴様!何者だ!」
鋭く声をかけられる。
なんか最近こんなのばっか…(泣)
振り向くと、そこには俺と同じ様な鉄甲を装備した傷だらけの女の子が、油断なく俺を睨んでいた。
敵ではないと、口を開こうと思ったが、それより先に
「凪ちゃ〜ん!待ってなの〜」
「凪!ちょっと待たんかい!」
更に後ろから聞こえる黄色い声。
「凪ちゃん、その人は多分ちがうの〜」
「そやで、黄色い布、どこにも巻いとらんやないか」
そう言って駆け寄ってくる。
最初にいた女の子が、少し顔を赤らめ
「すっすみません!てっきりヤツらの仲間かとっ!」
そう言って神速で頭を下げる。
「いや、大丈夫。別になんかされた訳じゃないし」
「よかったの~、凪ちゃん早とちりなの」
二刀をぶら下げた女の子が、胸をなで下ろす。
「んで、結局お兄さん、何者なん?」
おぅ関西弁。そしてドリル!ロマンだねぇ…。
関西弁使うのは張遼位だと思ったがそうでもないらしいな。
「っとごめん、俺は姓は韓、名は当、字は義公だよ、よろしく」
「私は楽進と申します」
「沙和は于禁なの~」
「うちは李典や」
おや、楽進は聞いたことある。確か魏にいた武将だ。それ位しか知らんがな!
「自己紹介しといて何やけど、悪いこと言わん、早くここから出てったほうが身のためやで」
そう言う李典。
「そうです。すぐにでもまた黄巾の賊が攻めてきます」
あやや、ここでもまた黄巾党の被害があるのか。可愛い娘をほっといて逃げる訳には行かねぇよなぁ~。
「もし良かったら、俺もなにか手伝えないかな?」
そう言うと、目を丸くする三人娘。
「しかし危険です!賊とはいえ、数千人規模、命の保証はd…「凪ちゃん、待ってなの!」」
「この人多分噂の人なの!」
……ま・た・う・わ・さ・か!!
商人どんだけ広めんてんだよ!
どうせ、鬼からまた酷い言い方になってんだろうなぁ…
「あっうちも聞いたことあるで、なんでも
海の果てからやって来た額に傷のある男が、各村を周り食料を得るために、千人以上の人間の、足をもぎ、腕を切り落とし、首をねじ切っている
って噂やろ?」
……泣いてもいいよね。予想以上に酷い伝わり方だ…その言い方じゃあ俺は人食ってるみたいじゃないか…orz
つかほとんど、特徴なんて、額の傷だけじゃねぇか…なんでこの娘っ子は判別できたんだ?
そろそろ心が折れる…。
「あっでもでも、本当に千人以上の賊を相手どれるならとっても心強いの~」
「そうです!出来れば助力願えませんでしょうか?」
楽進の上目使いに俺の心が満たされる!
「喜んでー!」
近年稀に見る清々しい笑顔でした。
「韓当殿、南門の防柵は完成しました!」
「西門も大丈夫なの~!」
よし、これなら多少は保つか。突貫工事なので不安は残るが。
「あちゃ~!東門の材料がたらん!えぇい!家ぶっ壊してでも材料調達してこんかい!」
無茶言うな。しかし、足りないのは事実だ。何とかしなくちゃ…
「報告します!」
義勇軍の見張りが息を切らせ、走ってきた
「北東から、軍勢です!おそらく陳留からの軍です!」
「それは、ありがたい!すぐに招き入れる準備を」
義勇軍の士気が上がる。陳留ってドコジャロ?
確か、星さん達が向かうって言ってた所だよな?
「兄さん!ぼやっとしてんと、はよ材料持ってき!」
「はっはい!」
顎で使われとるがな…。まぁ、力持ちだから、色々一度に持ってこれるしな。効率的な問題だ。…と信じたい。
信じがたい事に家を提供してくれる人がいるそうだ、そこに向かい
「韓当様!この家だそうです!」
そこに居たのは何人かの義勇軍と、髭をたくわえた老人。
「義勇軍の方々、お世話をかけます。私の家をどうぞお使いください」
「ほんとにいいんすか?マジで全部使っちゃいますよ?」
「いいんですよ、家はまた建てればいいのです。生まれたこの村を守るためなら安いものです」
と笑って、快諾する老人。豪快だ。
「それじゃ、ちゃっちゃとやりますか」
んでもどうやろう?家を解体なんかしたことない。まぁとりあえずやってみるか。
「家財道具とかは大丈夫ですか?」
「ええ、兵隊さんが全て運び出してくれましたから」
とりあえず、兵隊さんに剣を一振り借りる。
一人で家の中に入り、周りの柱を、バランスが崩れないように、叩き切っていく。
残りは中心の、大黒柱かな?だけになる。大分家自体も不安定だ。
さて、と中心の柱を抱え込む。
「セイヤァァ!セイヤァァ!エィシャオラァァァ!!」
細かすぎるかけ声とともに思いっ切り引っこ抜く。
ギギッ
バキバキバキッバキンッ
ググッ
擬音じゃ分かりにくいだろうが、家がそのまま丸ごと持ち上がった。
…ゴクリッこれが細かすぎる空手家の力か…。
周りで見ていた兵士さんや、老人がポカーンとしている。
「あっ、じゃあ貰っていきますね、誘導お願いします」
コクコクコク
頷きまくる老人と兵士さん。
そのまま歩き出す俺。
ズシンズシンッ
モーゼの十戒のように道をあける義勇軍の方々。
東門に向かってる途中
「韓当殿どこでs…」
あっこの声、楽進だ。
「おー、ここだよー」
道を歩く家に、ポカンとする楽進。俺からじゃ見えないんだけどね。
「なっ!?」
「ほぇ~」
なんだか、聞き慣れない、それでいて聞いたことがある声がした。
「秋蘭様~、家が動いて、喋ってますよ!」
「う…うむ、そうだな。それで、此方の家が韓当か?」
あら、もしかしなくてもこの声は夏候淵さんじゃありませんか。あと許緒。つうことは、陳留って曹操様の拠点か!!
つか夏候淵さんにしては珍しくテンパった質問だな。
「い…いえ、私の知っている韓当殿は人の形をしていました」
いや楽進ちゃん、俺は今も人の形をしてるがな。
「悪い、とりあえずこれ運んでからでいいか?」
ちょっとこれ降ろすと、ぶっ壊れて、運ぶの大変そうになりそうだし。
「は?分かりました…すみません、此方へ」
「わっ分かった。」
そう言って家について行く楽進、夏候淵、許緒。
そして東門。
「材料はまだか!?」
「すっすみません!それで最後です!」
木材がついになくなる。
「くそっ!まだ半分も出来とらん!」
このままではマズい、ロクに防壁もないんじゃ数に押され、なだれ込まれる。
「おーい、李典!材料持ってきたぞー」
「でかしたで!兄ちゃ…」
李典の言葉が止まる。
家が歩いてる。
「なんでやねん…」
ツッコまざるを得なかった。
「悪い、ちょっとそこ開けてくれるか〜」
あまつさえ喋る家。
「どないやねん…」
再びツッコまざるをえなかった。
集まって作業していた人が、避難し、スペースを作る。
「エィシャオラァァァ!!」
かけ声と共に家を投げる。
ヒューン
ドバキャッッッッ
凄まじい破壊音を撒き散らし、粉砕され木材になる家。
「「「「…………」」」」
「あれ?これじゃダメだったか」
なんのリアクションも返してこない李典に聞いてみる。
「い…いや、大丈夫や、これだけあれば充分なはずや」
良かった。持ってき損だったらどうしようかと思った。
「それで、楽進。またせてごめんな」
「…は…はい、此方が許緒様と夏候淵様です!」
おお!クールビューティー淵姉さまじゃないっすか!あとデコロリの許緒ちゃん!いや〜やっぱり、可愛いですね!
「お待たせしてすみませんでした。俺が韓当です」
「あ…あぁ、夏候 妙才だ」
「僕が許緒だよ!」
うん!元気があってよろしい!花丸をあげよう。
「曹操様より、援軍に参った、本隊も後で合流する」
「分かりました……ところでなんで、俺に?」
「いや、楽進達が言うには韓当が指揮をとっていると…」
…あるぇー?いつのまにか俺が指揮官になっとるがな。
確かに防衛の作戦立案はやった…現場の指示もやった…三人娘に指示もだした……
よく考えたら普通に指揮官やってるじゃん俺……。
「はい。間違いありません」
代わりの返答ありがとう楽進…。
「それでは、相談したいことがある、こっちだ」
あぁ俺の意思は何処へ…。
夏候淵、許緒、楽進に囲まれて急造の司令部へ連行される俺。
俺の意思は?ただ、少しばかり役に立とうと頑張ったのがダメだったのか?
なんか俺引っ張られてばっかりだなぁ…。
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