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学校日和2
作:めろん



第30回 いちころ日和


「あー、楽しかったー♪」

 試合が終わり、ココアは大きく伸びをしながら観客席へと戻ってきた。

「おかえりココアちゃん、お疲れ様♪」

「うむ。お疲れ、ココア」

そんな彼女を、胸キュンスマイルで迎えるポトフと、普通に迎えるプリン。

「……ただいまー……で、なんで膝の上?」

さも当然のように自分を膝の上に乗せたポトフに、その理由を尋ねるココア。

「なんでって――」

すると、

「――キミが好きだから」

ココアは耳元で甘く囁かれた。

「ひにゃあ?!」

「あっはっはっ! 真っ赤になっちゃって、ココアちゃんカワイ〜♪」

「……さむさむ……」

真っ赤になったココアと、楽しそうに笑うポトフと、寒そうに枕を抱きかかえるプリン。

「ん。みんふぉだ」

その隣で、メロンキャンディをくわえた死神が口を開いた。

「……食べ物を口に入れたまま喋るな」

彼にさらりと注意するプリン。

「かぽ」

すると、彼はメロン味のロリポップを口から出して、

「ミント、かなり怒ってるな。魂が乱れてる」

と、言った。

「……」

「……」

「……」

「あむ」

再びロリポップをくわえた死神を見ながら、え? こいつ魂見えるの? とか思う三人であった。

『さあさあ、チロル選手がタンカで運び終わりましたので、始めますよ第二回戦!! 赤リンゴコーナー、パセリ=ジュース!!』

 終わった試合には興味ないのか、チロルが医務室に担ぎ込まれたにも関わらずに、クー先生は早速第二回戦を始めた。

「「わああああっ!!」」

なかなか薄情者が多い国立魔法学校。
パセリの登場に、生徒たちは歓声をあげた。

『ではでは、続きまして紫リンゴコーナー、ミント=ブライト!!』

「……」

アナウンスが流れると、うつ向き加減で登壇するミント。
と同時に、会場がわあっと盛り上がった。
ついでに、薔薇の鞭ーとかいう声も聞こえてきた。

「……」

そんなからかうような声を完全に無視し、うつ向いたままステージの中央に向かうミント。

「では、戦闘開始だ」

両者がステージの中央で向き合うと、セル先生は小さなラッパを吹き鳴らした。

ぷー

「ふはーはは! ミント=ブライト! 此処で会ったが百年目ええ!! 俺ら、チロルちゃんファンクラブからチロルちゃんを奪ったお前をギッタンギッタンに―…」

「蓮華」

ババババババババババババババババババッシーン!!

「―…して……やる……」

ドサリ

「……なんか喋った?」

満身創痍になって倒れたパセリに、薔薇の鞭をしまいながら、ミントは酷く冷たい目を向けて尋ねた。

「……」

「……」

言葉を失う会場。

「……ジュース戦闘不能。よって勝者、ブライト」

静まり返った会場に、セル先生の判定が響いた。

『あ、圧勝ー!! ミント選手、ものの十秒でパセリ選手を倒しましたー!! 私が実況する間もなく終わってしまいましたー!!』

わ、わあっと盛り上がる会場。

「……」

ミントは降壇する際に、登壇した時に彼をからかった生徒たちがいた観客席にちらっと目を向けた。

「「っ!!」」

それは一瞬のことであったが、彼らは向けられたその目から、彼が言わんとしたことを読み取れた。
――次はテメェらだ、と。











「ただいまー」

「!」

 聞こえてきたその声に、ココアはピンと背筋を伸ばした。

「お、おかえりなさいませミント様」

「あはは、何やってんのさココア?」

そして深々と頭を下げたココアを見て、ミントは笑ってそう言った。

「あ、あははー、いや、なんとなくー……」

(あ、あれ? 機嫌治ってる?)

不思議に思いながら頭を上げるココア。

「ね、ココア、プリンとポトフとワタルは?」

そんな彼女に、席に座りながら質問するミント。

「あ、えっと、ポトフは次の試合で、プリンはその次の試合だから、さっき下に降りてったよー。ワタルは……えっと、分かんない」

そう言えば、死神はいつからいなくなったんだろう? と小首を傾げるココア。

「そっか。じゃあ、張り切って応援しなきゃね!」

そう言って、にこっと笑ったミント。

「あ、うん!」

それを見て完全に安心したココアは、

「ところで、帰ってくるのが随分遅かったけど、何してたのー?」

と、彼に尋ねた。

「え? ……ああ」

すると、ミントはにこっと素敵に笑って、

「ちょっとね」

と言った。

「……っ」

そのとっても素敵な笑顔を見て、ちょっと何して来たんだお前は?! と、何故か恐怖の念を覚えるココアであった。

『では、第四十九回戦を始めます!』

「あ! 始まったね!」

「う、うん。でも、なんか不吉な数字だねー?」

 クー先生のアナウンスを聞き、ステージに目を向けるミントとココア。

『では、選手に入場してもらいましょう!! 赤リンゴコーナー、ポトフ=フラント!!』

名前が呼ばれ、ポトフが登壇すると、

「「きゃああああ!!」」

と、観客席から黄色い歓声があがった。

「わは〜、相変わらず大人気だね〜?」

「……うん。そだねー」

それを見て、遠い目をしつつコーラを飲むミントと、若干複雑そうな表情になるココア。

『対して、紫リンゴコーナー、ペスカ=トーレ!』

名前が読み上げられ、ポトフの向かい側から、野球少年風味のペスカが登壇すると、

「「……」」

しらっと静まる観客席。

「うおい?!」

差が激しすぎる女子生徒たちに、ペスカが突っ込みを入れた。

「気の毒だね」

「うん。気の毒だねー」

そんな彼を気の毒に思うミントとココア。

『おおっと!? 何やら会場の反応がえらく違いますね!! ポリー先生、これは?!』

言わんでいい質問をするクー先生。

『……まあ、ほとんどの人間は、視覚に支配された生き物ですからね』

さらりとペスカの心の傷を深くするポリー先生。

「うおおい!? どういう意味ですか先生ええ?!」

そんなポリー先生に、半泣き状態で突っ込みを入れるペスカ。

『状況から読み取ってください』

なかなかシャープに答えるポリー先生。

「……ひどいや……」

打ち(ひし)がれるペスカ少年。

「……」

そんな彼に、セル先生は無言で近付いた。

「……トーレ戦闘不能。よって勝者、フラント」

そして、体操座りしてのの字を書きまくっている憐れな彼を見て、セル先生はそう言った。

「ええェ!?」

『なんとー!! ポトフ選手、不戦勝ー!!』

まだ何もしていないポトフがショックを受けているにも関わらず、クー先生はテンション高めで叫んだ。

「それほど盛り上がることでもないよねー?」

「て言うか、ペスカが負けたのって、ポリー先生のせいだよね」

盛り上がる会場とは対照的に、冷めた意見を述べるココアとミントであった。

『ではでは、続いて第五十回戦!』

 ポトフとペスカが降壇すると、早速次の試合を始めるクー先生。

『赤リンゴコーナー、プリン=アラモード!!』

プリンが登壇すると、

「「きゃああああ!!」」

先程と同じようにあがる黄色い歓声。

「……流石双子」

「だねー……」

なんだか笑けてきたミントとココア。

『紫リンゴコーナー、オリーブ=オイル!!』

クー先生がコールすると、反対側から可愛らしい少女が登壇した。
すると、先程とは違って、わあっと声援があがる観客席。

『さあ、中央に移動してー!』

クー先生に言われた通り、ステージの中央で向かい合うプリンとオリーブ。

「では、これより試合開始だ」

セル先生が、ぷーと可愛らしい音を鳴らし、試合が始まると、

すっ

「え?」

プリンが手を差し出してきたので、驚くオリーブ。

「僕はプリン=アラモードだ」

自分から名前を名乗り、相手と握手する。
それが、試合前の礼儀。

「お、オリーブ=オイルですっ! よ、よろしくお願いしますぅ!」

ハッとそのことを思い出したのか、差し出された彼の右手に、自分の右手を繋げるオリーブ。

「うむ。よろしく」

すると、プリンはふっと微笑んだ。

「!」

ので、

「しゅ、しゅてき……」

オリーブは顔を真っ赤にして、へなへなと力なく崩れ落ちた。

「ぴわわ!? だ、大丈夫か?!」

そんな彼女を抱え起こすプリン。
しかし、そんなことをしたものだから、

「ひゃいあ!!」

オリーブはボンッと顔を更に赤くし、幸せそうに気を失った。

「……オイル戦闘不能。よって勝者、アラモード」

『なんとー!! またもや不戦勝ー!!』

よって、またもや不戦勝で終わる試合。

「……」

「……」

「……まあ、プリンは狙ってやったわけじゃないんだろーねー?」

「うん。たぶん、プリン的には礼儀正しく接しただけなんだろうね」

「顔がいいって大変だね」

「ね」

観客席でココアとコーラをいただきながら、遠い目をするココアとミントであった。












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