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学校日和2
作:めろん



第12回 戦闘日和


 風を切るような速さで空を飛ぶドラゴンの背中に、一人の少年が乗っていた。

「お城……! ということは、あそこが王都市・シャイアでしょうか?」

燕尾服を身に纏い、シルクハットが風で飛ばないように白い手袋をした手で押さえている彼の名はフラン。

「イヴ、取り敢えず降りてみましょう」

『グオオ!』

フランの言葉を聞いた茶色のドラゴン、イヴは、バサバサと翼を動かし、ドシンと豪快な音を立てて着地した。

タッ

「……わあ、綺麗な街ですね」

イヴの背中から飛び降りて華麗に着地してみせたフランは、巨大な門の向こうに広がる王都市・シャイアを見て呟いた。

ズドドドドドドドドドドド

「おや?」

 白亜の城を眺めていたフランは、猛烈な砂煙がこちらに向かって来ていることに気が付いた。

「うおおおおおおおおお」

「は、はい?!」

砂煙の正体、気合いの入った声を発しながらこちらに向かってくる少年を見て、フランは思わず一歩下がった。

「おおおお、ファスチネイションサンダー!!」

フランが少年だと思った銀髪の国王、ルゥは、門の外に出ると同時に叫んだ。

「『?!』」

ドカアアアアアアアン!!

目も開けていられないような強い光が走ったと思った次の瞬間、豪快な音と共にフランとイヴの上に雷が落ちた。

「オレは――お前と戦いたくない!!」

「しょっぱなから最大魔法かましといてそれはないと思うぞ?」

かっこよく決めたルゥに、箒に乗って宙に浮いているシャーンがさらりと突っ込みを入れた。

「では訂正しよう。オレと戦え!!」

「どこの悪役だ」

などと、ルゥとシャーンが早速漫才を始めていると、

「い、いきなり何をするんですか、貴方は?!」

イヴが翼で守ったおかげで無傷なフランが、ルゥをズビシッと指さして叫んだ。

「ほほう、無傷とな? 相手にとって不足なしでおじゃる!!」

「お前は誰だ」

そんな彼に、馬鹿にしているとしか思えない反応を見せるルゥ。

「おい、そこのジェントルマンなドラゴン使い。いきなり攻撃して悪かったな。シャイアになんの用だ?」

ルゥにしっかり突っ込みを入れた後、シャーンはフランに話し掛けた。

「くっ……! 流石は女神様がいらっしゃる街……そう簡単には入れてもらえませんかっ!」

しかし、フランは勝手に盛り上がっていた。

「ですが、女神様にお会い出来なければ、この世界に来た意味がありません! 行きますよ、イヴ!!」

『グオオオオオオオ!!』

フランの言葉に答えるように、イヴは翼を広げ、迫力満点の雄叫びをあげた。

「いっひひ♪ そうこなくっちゃ!!」

「……いいもんね。無視されるの慣れてるから」

不敵に笑ってフォークを身の丈ほどに巨大化させるルゥと、悲しいことを呟くシャーン。

「先手必勝、イヴ!」

『グオオオオオオオ!!』

 フランの掛け声に合わせてイヴは口から火を吹き、先制攻撃を仕掛けた。

「トランス、スプーン!」

巨大フォークをスプーンに変身させ、その攻撃を防ぐルゥ。

「ええ?! スプーンになった!?」

『グオオ?!』

フランとイヴは、それに素直に驚いた。

「隙あり!」

「!」

その隙にイヴの背後に回ったルゥに、

「……ふっ、甘いですね」

フランは不敵な笑みを浮かべてそう言った。
――ドラゴンの鱗は硬いのだ。

「甘かねえ、よ!!」

ズドン!!

『ギャオオオオオオ!!』

しかし、ルゥは先程の炎で真っ赤になったスプーンをフォークに戻し、それでイヴの背中を貫いた。

「――いいえ、甘いです」

「?!」

すると同時に背後から声が聞こえ、ルゥがそちらに振り向くよりも速く、

ドスッ!!

「がはっ!?」

フランの手刀がルゥの頭と首の境目に入った。

「イヴ」

『グオオオオオオオ!!』

重力に従って地面に落ちていくフランの合図に合わせて、巨大なフォークが刺さっているのに無事なのか、イヴは全身に力を込めた。
すると、イヴを守る為の硬い鱗の盾が、鋭く尖った矛へと化した。

「ルゥ!!」

矛となった鱗がルゥを串刺にする前に、箒に乗ったシャーンが彼をイヴから引き離した。

「ルゥ、大丈夫か!?」

針山と化したイヴと油断なく距離を取りながら、シャーンは右腕にぶら下がっているルゥを見た。

「ゴホッ……い、ひひ……油断した……まさかドラゴンマスターが攻撃してくるとは……」

くらくらする頭を押さえながらも、ルゥは不敵に微笑んだ。

「……面白いじゃん!」

「面白いってお前、ここは一旦引いて―…」

「ああ、忘れてました。短足さんがいたんでしたね」

「おし、ぶっ飛ばすぞー」

フランに短足と言われ、シャーンは考えをコロッと百八十度変えた。

コロコロコロ……

 その時、戦場に一つのリンゴが転がってきた。

「『?』」

不思議に思ったルゥとシャーンとフランとイヴが疑問符を浮かべると、

「……"ぶっ飛ばす"?」

街の門の方から、確認するようなゆっくりとした声が聞こえてきた。
その声に、三人と一体がそちらに振り向くと、

「……って言うか、そのフォーク、ルゥのだよね?」

そこには、買い物袋を取り落とした茶髪のお兄さんが立っていた。

「そ、ソラ……兄……」

顔を真っ青にしたルゥが彼の名を口にすると同時に、

「爬虫類をいじめるなあああああああああああ!!」

「「は、はいいっ!!」」

彼、ソラが物凄い剣幕で怒鳴ったので、思わずフランまでルゥとシャーンと一緒に答えた。

「バーンバニッシュうううううううううううう!!」

「「ええええええ?!」」

ドッカアアアアアアン!!

が、結局彼らはソラの炎魔法の餌食となった。

「大丈夫、ドラゴン!?」

黒焦げになった三人を無視し、酷く心配した様子でイヴに駆け寄るソラ。

『ぐ、ぐおお……』

「そっか。よかった……」

取り敢えず頷いたイヴを見て、ソラはほっと胸を撫で下ろした。

「あら、チビキング。真っ黒焦げじゃない」

 すると、再び門の方から別の声が聞こえてきた。

「……ぶっ飛ばすぞ、パー子」

その声の主、門の下に立っている緑の髪の女性に力なく言い返すルゥ。

「ゲヘヘ♪ またボンバってるわね、シャーン」

「お……おうよ」

黒焦げでボンバーヘアのシャーンが返事をすると、

「見て見て、ジャンヌ! ドラゴン! 本物のドラゴンだよ!!」

ソラがキラッキラに瞳を輝かせながら彼女にそう言った。

「!? ジャンヌ様?!」

すると、フランの瞳がキラッキラに輝いた。

「あ、貴女が、メルヘンの女神、様……?!」

素早く彼女、ジャンヌの前に膝をついたフランが、確認するように尋ねると、

「おうよ」

ジャンヌは男らしい返事をした。

「〜っ!! かかか、感激です、女神様!! お会い出来て光栄です!! あ、あの、僕、フラン=スパンと申します!! って言うか、もう、は、ははあ〜〜!!」

そうしてフランは、ジャンヌの足元で何度も何度も額をついた。

「め……メルヘン崇拝者……」

「……オレ、あんなヤツに負けたのか……」

そんな彼を見て、顔を引きつらせるシャーンと、哀愁を漂わせるルゥであった。












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