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  The reason 作者:Liah
序章 4  彼女の憂鬱





 チクッとした痛みの後、ひとさし指の先に暗紅色の液体が盛り上がってくる。立ち上がってテーブルに固定してあるシリンダー上の漏斗に滴が落ちるよう腕を垂らし、手首から指先にかけて血を押し出すようにこする。
 解毒剤試作品投与後六十二分が経過していた。
 汗が気持ち悪くて入浴してしまい、その上不測の事態が起こってしまったけれど、とりあえず血中成分、呼吸、脈拍、心拍などを記録しておかなくては。皮膚片も少し採取したい。
 まったく最悪のタイミングだった。
 予定ははじめから狂ってしまった。ひとりでこっそりするつもりだったことを、一から説明しなければならないとはなんと気が重いことか。適当に言葉を濁して帰ってくれる彼とは思えない。
 玄関は確かに施錠しておいたのだから、彼は鍵を持っていたことになる。おおかた博士が心配して渡しておいたのだろう。
 こんなことならこの前老朽化した玄関ドアを取り換えたとき、以前のようなチェーンロック付きにすればよかった。
 
 最近はだいたいこんな感じですよ、とかわりにもうひとつ鍵がついたものを薦められた。上下に並んだ鍵のうち下の方はロックが二段階になっていてチェーンと同じ役割をはたすタイプのものだ。
 あの時は彼にも相談して、万一やつらが踏み込んでくるようなことがあってもチェーンは何の役にも立たないだろうが、外から誰かを早急に救出する必要がある時には障害になり得ると、その新しい型のものに決めたのだった。
 お年寄りがいらっしゃるご家庭では特にご安心ですよ、とその営業マンは博士を見てのたまった。
 見かけほど歳ではない博士はおおいに憤慨し、彼と私は営業マンの気の毒なミスに、博士に気付かれないように目を合わせ笑いをこらえた。
 結局博士は気付いてしまいしばらくの間拗ねていたのだが。

 それにしても彼は何をしているのだろう。あれから随分時間が経っているのに、階上からはコトリとも音がしない。髪を乾かしている間に帰ったのに気がつかなかったのだろうか。
 それならそれで好都合だ。どうせ、ひとこと相談しろよだの、俺にも飲ませろだの面倒なことを言い出すに決まっている。いちいち議論するのも疲れる。
 あれこれ考えつつ、脈拍を測り終え数値をパソコンに打ち込んでいると、ノックの音がした。


こんにちは。拙い小説をここまで読んでくださりありがとうございます。
なかなか新志的なカンジにならずスミマセン。
年内には微妙な雰囲気のところまでいけるといいなー、と思っています。
これからもよろしくお願いします。


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