第四章 3 彼の推理
「やっと話す気になったってわけか」
博士の唐突な重大発言に俺は苦笑したものの、今更ふざけるな、と怒鳴りたい気分だった。
しかし博士の観念したような顔を見ると、自分の想像はあながち外れてはいない気がしてひとまず話してみる事にした。
「灰原の事、会う前から知ってたんだろ。そして博士は実は宮野厚司さんとはかなり親しかった」
「新一君は気づいておったんか」
博士は驚いたふうもなく淡々と言葉を吐いた。
「いや、気づいていたというより疑ってもいたってとこかな」
博士と彼女を結ぶ線といえば、宮野博士以外に考えられなかった。
ふと隣の彼女を見てみると、目を大きく見開いて博士の顔を呆然と見つめている。
「博士が灰原の事を何か隠していると確信したのは昨日の電話のあとだ」
もはや彼女の前では電話の事を伏せておかなくてはならないとか、そういう事態ではないと思った。
「正確にいうと今日になってからだがな。
昨日博士は電話で灰原の事を、最初から大切な子なんだと言った」
彼女は今度は俺を見て、いったい何を言い出すのかという顔つきだ。
「だっておかしいだろ。なんで最初から、なんだ。
初めて灰原を見つけた時は見知らぬ子供。しかも灰原は組織を抜けて来たと言ったんだ。
そんな話普通すぐに信じるか。
それなのになぜ最初から大切な子ってことになるんだ。
なぜすぐに灰原を信用して一緒に暮らすことにしたんだ」
自分で博士を問い詰めながら、言葉にすることでこれまで漠然としていた疑いが頭の中で整理されてくる。
そうだ。彼女を特に疑うこともなく匿った事自体は最初から疑問に思っていたのだ。
あの時の博士の説明はとても納得のいくものではなかったが、実際彼女の事は他にどうしようもなかった。
その後俺自身も様々な出来事を通して彼女を信頼するようになり、それはやがてうやむやになって日常に埋もれていったのだ。昨日博士がうっかり口を滑らせるまでは。
「博士は灰原を信用してここに住まわせてやったわけじゃない。たぶん…騙されてもいいと思ってたんじゃないのか。
何か理由があって」
俺の言葉が途切れても二人とも言葉を発しようとはしなかった。
博士は眉間にしわを寄せたまま押し黙り、彼女は何度か瞬きを繰り返した。
あまりの静けさに壁にかかった時計の音が響いて聞こえる。
家の前を通り過ぎる車の音が、これは確かに現実なのだと思い起こさせた。
「普通雨の中で子供が倒れていたら、救急車か警察呼ぶよなって思ったんだ」
ふと思い出したことを呟いた。
「もちろんわしも最初はそうしようと思ったよ」
ようやく博士が口を開いた。彼女はそんな博士に再び目を向け、背筋を伸ばして顎をひく。
「じゃが哀君を助け起こした時に愕然としたよ。見覚えのあるペンダントをつけているのを見てな」
彼女は、はっと思い当たることがある顔をする。
「ペンダント?何だよ、それ」
「あれはわしが贈ったものなんじゃ。君のご両親の結婚祝いにな」
博士は俺の問いかけなど聞こえぬように、彼女に向って語りかけた。
彼女は唇をかみしめて、その博士が言うペンダントの感触を蘇らせるかのように、胸のあたりで手を握りしめる。
「哀君がうちの前で倒れていた時につけていたものじゃ。わしも二十年以上も前に見たきりで、それが本当に宮野に贈ったものかは半信半疑じゃったが。
初めて哀君を見た時は、歳も全然違うし宮野の娘とは思ってもおらんかった。
じゃが何か宮野とかかわりがある子かもしれないと。
哀君からそれまでの事情や、ご両親も組織の一員で事故で亡くなった事も聞いて、初めてわかったんじゃ。
ああ、この子はあの宮野の忘れ形見なんじゃとな」
博士は視線を漂わせながら、その記憶をたどるようにゆっくりと話し始めた。
お久しぶりです。更新遅くなってスミマセン^^;
しかも原作にはないアイテムまで出てきてごめんなさい。先に謝っておきます。
次の更新は何か不測の事態がない限り、ここまでは遅れないと思います。
ここんで読んで下さっている皆さん、本当にありがとうございます(*^_^*)
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