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  The reason 作者:Liah
序章 2  実験開始





 激しい痛みは急速に全身から去りつつあった。鼓動はまだ早い。身体中に汗をかいていて、それが今はひんやりと感じられる。
 広いリビングは薄暗くてかなり寒い。他に誰もいないこの部屋は静寂に包まれていて、壁にかかった時計の音だけが異様に大きく聞こえる。その時計の針は二時を少しまわったところだ。
 いつのまにかうつ伏せに倒れこんでいたソファの上で、そのまま手の指だけを少し動かしてみる。次に大きく開いてみた。
 見ると確かに子供の手ではない。
 身体を起こし両手をかざす。何度か裏返してみたり握ったりしてみた後立ち上がる。バスルームへ行けば全身が映る鏡があるのだ。
 少しふらついたような気がしたが、おそらく気のせいだ。急に数十センチも身長が伸びたため、見慣れた光景をいつもより高い位置から見たことで一瞬脳が混乱したに違いない。
 暗がりを歩くように壁を伝うが、思ったとおり五、六歩も歩けば慣れてきた。
 恐る恐るその大きな鏡の前に立つ。
 そこで見たのはやはり小学生の少女ではなかった。つい数か月前までの自分だ。
 思わず鏡に両手をついて顔を近づける。瞬きする両の瞳には、鏡を覗きこむ私自身がはっきりと映っている。
 本当にこれがあの日までの私なのだろうか。思い返せば子供の姿になる前は、これほど真剣に自分の顔を眺めたことなどなかったのではないか。
 あの日以来、ジンと対峙したあの雪の日以来はじめて元の身体をとり戻し、想像していたよりはるかに気分は高揚した。
 とはいえ完全に元に戻ったというわけではない。完全な解毒剤を作るための実験のようなもので一時的な事だ。どこで奴らと鉢合わせをするかわからないので、外を出歩くことは叶わないし、今の私を誰かに見せられるわけでもない。
 だとしても、こみあげてくる喜びは抑えようがなかった。いつのまにか笑みがこぼれる。
 すぐにバイタルを測定し血液サンプルを採取しなければ。そう思いつつ鏡の中の自分から視線がはずせない。

 今の私こそがたぶん本当の私だからだ。




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