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  The reason 作者:Liah
第二章 12  嘘つき
第一関門だ。

蘭はどこか不安げな面持ちだった。
まだ起きたばかりでぼーっとしていたので、ぼろが出ないよう早々に自分の部屋へ引き上げてきたのだが。

俺は蘭に気づかれぬよう深く息をしてから身体を起こした。
そして彼女と打ち合わせたとおり、コナンは博士を追って北海道へ行ったのだと、何でもないことのように言った。
予想通り蘭は、えーっ、と頓狂(とんきょう)な声をあげて驚く。

「どうして急に。博士やフサエさんにもご迷惑だし、だいたいよくチケットとれたわね」
「あいつ言い出すと聞かなくってよ。ネットでチケットとれないこと見せて納得させようとしたら、たまたまタイミング悪かったらしくてとれちまって」

かなり苦しい説明だが仕方がない。
この件について俺と彼女は最も時間をかけて話し合ったのだが、結局ふたりとも妙案は浮かばなかった。
実際にコナンが帰って来て土産話のひとつでもすれば、蘭も信用するしかないだろう。

「信じられない」
「だろ?俺も灰原も焦っちまったんだけど、博士とフサエさんに連絡したら歓迎してくれるって言うし、あわてて空港まで送ってってさ」
「じゃあ博士にお詫びの電話入れなきゃ」
「いや、それは俺がよく言っといたから。土産も持たせたし、フサエさんとも直接話したし、無事に着いたって連絡もあったしな」

博士にはまだ何も知らせていなかった。コナンのアリバイを決めたのが深夜だったからだ。
旅先では、携帯を目覚し替わりに枕許に置いておく可能性が高い。メールにしろ起こしてしまうかもしれず、それならば朝になるのを待とう、と彼女と話したのだった。

すぐに連絡して口裏合わせを頼まなくてはならない。
しかし一部始終を今伝えることは、非常に面倒なことに思われた。
博士を巻き込んでしまったからには、帰ってきてからの事情説明は必至だが、今はとにかく協力してもらうしかない。

蘭がどうにか納得して部屋を出て行ってから、俺は慌てて博士にメールする。詳しい経緯は端折って、とりあえず蘭から連絡があったら話を合わせてもらうよう頼んだ。
そうしながらも彼女からメールが返信されてこないのが気にかかる。

しかし温かいベッドの中で考えるうち、少しうとうとしたらしい。
気がつくと粥の匂いがしてきていた。

着替えて洗面も済ませてからリビングへ行くと、蘭はダイニングでテーブルを拭いているところだった。

「ちょうどできたところだよ」
「なんかいい匂いしてきたからさ。腹減ったなー」

大げさに腹をさすりながら椅子に座ると、蘭はようやく笑顔を見せ、湯気が立ち上る土鍋を注意深く運んだ。いつか彼女も食べた玉子粥だ。

「熱いから気をつけてよ」
「わーってるよ、ガキじゃねーんだから。うまそうだな」

そうだ。今日は子供のふりはしなくてもいいのだ。
しかし俺はコナンでいる時よりも、更に本音を心の奥へ追いやる。昨日と同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。

蘭の向かいで粥を食べながら、俺はクラスやサッカー部の連中の近況を尋ねたりした。
蘭はあれこれ話すうち、表情も和らぎくつろいできたように見えた。訪ねてきた時は、なぜか随分緊張した顔をしていたのだ。

だが俺の携帯に蘭がメールなどで知らせてきていた情報と、コナンとして直接聞いた情報がないまぜにならないよう注意する必要がある。やはり落ち着かない。

「そういえば」

話が一段落すると、蘭は今思い出したように顔を上げた。

「哀ちゃんのお姉さんにお詫びがしたいんだけど」

そう言いながらテーブルにあった包みを、俺に差し出して見せた。結び目をほどくと小振りの重箱が一段あり、中は昨日食べたものと同じおせち料理だった。
重箱を包んでいた不織布は蘭の家で見た記憶があった。ピンクのグラデーションがはいった和風の美しい花柄で、使い回しには見えない。

「昨日失礼な事しちゃったし、これ持って謝りに行こうと思うんだけど、新一はどう思う?」

博士の家はしめ飾りも鏡餅も飾られておらず、正月らしいことは何もしていないように思えた。
博士がいないからだろうが、そもそも彼女に正月を祝うという習慣があるのかわからなかった。その上蘭に会うとなるとまた余計なウソをつくはめになるかも知れず、(わずら)わしく思うだろうか。

しかし健気(けなげ)に準備してきた蘭の好意を無下にもできなかった。
一度自宅へ寄っておせちを詰めてラッピングまでして来たのだから、今朝は相当早く出て来たに違いない。

それに案外彼女も珍しくて喜ぶかもしれない。

「そうだな。俺が渡しといてやるよ」

メールも寄こさない彼女の事はずっと気になっていた。何か予期せぬ出来事でもあったのか自分で確認したい。だがなんとなく蘭とは会わせたくなかった。

「えーっ、どうしてよ」

しかし蘭は途端にふくれっ面をする。

「私が謝るのに何で新一が持ってくわけ?」
「いや…もともと俺の依頼人なわけだし、あいつ人付き合い苦手だし」

たじろぎながら答えると、蘭は彼女の予言通り何やかやと聞いてくる。

哀ちゃんのお姉さんて名前はなんていうの。
どういうきっかけて新一に依頼して来たの。

俺が言葉に詰まっていても、蘭は次々に疑問点をあげていく。

今は博士の家に住んでいるのか、歳は余り変わらないように見えるがいくつなのか、学生なのか社会人なのか等々。

昨夜の彼女との会話が鮮明に思い出された。

「ウソはひとつでも少ない方がバレにくいものでしょ。私のこと色々訊いてくるでしょうけど、何一つ答えてはダメよ。探偵の守秘義務で押し通すの」
「んなこと訊いてくるか?」
「必ず訊いてくるわ。彼女ならね」

蘭が聞きたがったことは守秘義務ではぐらかす事ができたが、押し問答の末これから二人でおせちを持って行くことになってしまった。
あまり気がすすまなかったが、これ以上俺が一人で行くことを主張するのは不自然だった。

「博士んちにいるかどうか聞いてからな」

蘭がテーブルを片付ける間に彼女に電話をしてみたが、数回のコールの後無機質な留守電のメッセージに切り替わった。
沖矢昴すら恐れて地下に引きこもっていたくらいだから、外出するはずはなく家にいる事は間違いない。
しかしこのまま訪ねて行っても、居留守を使われそうな気がした。

蘭に、彼女は不在、と言えば済んだことだった。
けれども、今彼女が何をしているのかどうしても確かめたい。

俺は裏口を使うのはやめて、蘭と連れ立って玄関から出る。

そしてあの時のように、素知らぬ顔でインターホンを鳴らした。








ここまで読んで下さりありがとうございます<m(__)m>

雑談用にブログを開設しました。

コナンやその他諸々の話、そのうちこの小説の裏話的なものも書けたらいいな、と思っています。
(まだ書いてないです^^;)

始めたばかりでほとんど記事もないですが、興味ある方いらっしゃいましたら、お暇な時に一度のぞいてみてください(*^_^*)

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