第二章 4 トライアングル
「工藤君、今日はお友達もいっしょだったのね」
咄嗟にそれだけを言った。
彼がいつ薬を飲んだのかまだ聞いていなかった。聞こうとする前にケンカのようになってしまったのだ。
最悪の場合、さっき一度帰った後すぐに服用したとすると、既に3時間近く経っている。
前回とは薬の成分は微妙に変えてあるが、耐性がついてきていることを思えば、いつ幼児化しないとも限らない。
「あ……い、いや……」
彼は、どういう設定だよ、とでも言いたげに視線を寄越す。
「いえ、違うんです。すみません。
私、毛利蘭っていいます。新一の幼馴染で博士とも知り合いなんです」
彼女は慌てて私に深々とお辞儀をする。
「新一がここにいるって聞いて、来てみたら中から声がしたんでつい……。
一応声はおかけしたんですけど、勝手に上がり込んで本当にごめんなさい」
彼女が数時間前の彼とそっくり同じ行動をとっていたことに思い至って思わず微笑した。
「あなたたちお似合いじゃない」
「バ……バカ、何言ってんだ、おまえ」
「いえ、新一と私はそんなんじゃ……」
私の意図するところがわからないまま、揃って赤くなり否定するところも同じだ。
しかし彼を外へ出すのは危険だし薬が切れる時間も迫っているかもしれないとなれば、やはり彼女には一刻も早く帰ってもらうしかないと判断する。
「申し訳ないけれど、私は工藤君の依頼人で今打ち合わせの途中なの。
手短にお願いできるかしら」
「じゃあ私、待ってますから。どうぞ先に打ち合わせなさって下さい」
彼女も簡単にはあきらめない。
いつも肝心なことを聞けないまま逃げられてしまうのだから、当然と言えるかもしれない。
どうする?と心で問いかけて彼を見る。
「蘭、悪いが今日は時間つくれそうにないんだ」
打ち合わせはまだこれからで、その後は資料作りなどがあるので遅くまでかかりそうだ、と彼はもっともらしく説明した。
「おまえも今日は妃先生の家に行ってたんだろ。戻った方がいいぞ。
おっちゃんもそろそろ合流するんだからさ。いくらなんでももう起きてるだろうし」
彼は私の内心を悟ったようだが焦って大きなミスをしていた。
「どうして知ってるの」
「へ?」
「どうして私がお母さんのうちに行ってたことや、お父さんが寝てたことまで知ってるの」
「いや、それは、あのメガネのボウズから……」
「そういえばコナン君は?
コナン君、博士んちに行くってメモ残してったらしいんだけど。 新一、会ったの?
一緒にお母さんのうちに連れて行こうと思ってたんだけど」
新たな問題が発生してしまい、延々と続きそうなやりとりにイライラする。
タイムリミットも迫っているかもしれないというのに。
今発作が起これば今度こそ彼女は彼を病院に連れて行くだろう。
「江戸川コナン君て子なら来たわよ。
博士が作った新しいゲームをやらせてほしいってね」
仕方がないので作り話をした。今はコンビニへ買いものに行っていることにする。
「今晩は工藤君が面倒みるって言ってたし、戻ったら連絡させる?」
「そうなの?」
彼女は訝しげに彼を見る。彼の口から聞かなければ納得できないらしい。
「ああ……まあ」
「大丈夫なの?新一がコナン君といっしょのところなんてほとんど見たことないけど」
「だ、大丈夫だよ、なんかあれば灰原も手伝ってくれるっていうし」
また話が長引く失言をする。
「灰原って……」
「私のことよ。灰原哀は私の妹だから」
「ああ、本当だわ。顔が哀ちゃんにそっく……」
「毛利さん、悪いけれど私打ち合わせの後用事もあるから早く始めたいの」
時間が無駄に過ぎるばかりなので、彼女の話を遮った。いつ発作が起きるかと気が気ではない。
「ごめんなさいね」
ダメ押しの一言を追加する。
「じゃあ明日は……明日はまだこっちにいるの?」
「明日か……」
今度の薬の持続時間を知らない彼は横目で私を見た。私は顔をそらす。
まだどうすべきか迷っていたし、彼女の前でこれ以上の意思の疎通は無理だ。
それを勝手にゴーサインと判断したのか確信犯なのかは、もうわからなかった。
「明日なら大丈夫かな、たぶん」
はっきりしない返事をしながらまた私を見る。
「たぶんじゃ信用できない。いっつも新一黙っていなくなっちゃうんだから。
絶対いなくならないって約束して」
彼女に潤んだ瞳で懇願され彼は抵抗できなかったようだ。
「わかった。明日は必ず時間作るから」
ようやく彼女は母親の許へ戻ることを承諾したのだった。
こんにちは。ここまでお読みくださっている皆さまありがとうございますm(__)m
先日設定ミスが発覚しまして…。確認したつもりだったのに見落としていました(´Д`;)
なるべく早く第一章1、2あたりを少し手直しするつもりでいます。ストーリーの流れ的には問題ありませんので、スルーして下さって大丈夫です。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。