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ご閲覧ありがとうございます。
作品中、主人公がヒロインに対して、心の中で乱暴な呼び方をしております。
特に、女性の方は不快感を強く持たれる方がいらっしゃるかと存じます。
主人公の心の変化によって、この呼び方がいずれ変わって行きます。
お眼障りかとは思いますが、暫らくご勘弁ください。
第4話 形勢不利?
挿絵(By みてみん)

部署に配属された当日、業務内容の詳細説明は一切ナシ。
 
よくそれで仕事が出来るなって?
 
俺の部署にはCADキャド図面が作成出来るPCパソコンが一人に一台ずつ宛がわれている。

業務の難易度に対応して、机上に並べられるディスプレイの数は最大で三台。

新卒の俺は、まだそのディスプレイは一台だが、そのうち三台並べてやるさっ!
 
で、そのPCには、インターネットはモチロン、ポータルサイトの社内情報やメール・チャット機能から部署毎のお助けマニュアルなんかの情報も当然リンクしてある。
 
馬鹿女は俺に一言、業務関連とお助けマニュアルのDBデータ・ベースがどこのフォルダに入っているかを教えると、後は総てPCで調べるようにとしか言わなかった。
 
……なんて大雑把な上司なんだ?
 
繊細そうな見掛けと中身が全然つり合ってねーぞ?

 
大雑把と言えば……
 
この前も馬鹿女は、俺に業者カタログの紙面情報を電子データ化するよう依頼して来た。
 
俺はその資料カタログがどこにあるのかを聞いたのに、「見ればわかるでしょっ?」と壁一面の資料キャビネットを指差して言い放った。
 
冷たく突き放された俺は、あんぐりと口を開けて立ち尽くしてしまった。

片側の壁一面を塞ぐようにして、床から天井まで何段にも分けている資料キャビネットがズラリと並んでいる。

まるで図書館みたいだ。

こっ、このフロア片面にビッシリと並んでいるファイルやカタログ資料の中から、取り扱い業者ファイルの数冊を探せってか?

ファイルは幅が十五センチくらいある分厚いモノだったが、そんなファイルはキャビネット中、ドコにでもあったし……


仕方なく膨大な量のキャビネットを俺は端から端まで延々と探したが、結局それは見付からなかった。
 
他の社員に聞けば、俺が探していたキャビネットとは全く関係の無い、別の場所にあるキャビネットにその資料があったんだ。
 
俺はその数冊の資料を探すのに、まる一日も掛かったんだぞーっつ!!!

お陰で、大体の資料がドコに置いてあるのかは判ったが……
 
自分の持ち場の資料置き場くらい、知っていろよな?
  

  *  *


「日高さん、この計算式これで合っているの?」
 
昨日提出していたフレーム強度の構造計算に、また馬鹿女がインネンを付けて来た。

「何度も見直したんですけど? 間違っていますか?」
 
俺の言い方が気に入らなかったのか、馬鹿女は不満そうに口を尖らせた。

「私は、合っているのかと訊いているのよ?」

「だから……」

「貴方が私に質問するの?」

「……」
 
言い掛けた出鼻をくじかれた。
 
俺はムッとなってクチゴモる。
 
最近、毎日がこんなカンジ。
 
俺は話の内容について議論したいのに、この馬鹿女は俺の言い草が気に入らなくて突っ掛かって来る。
 
自分で構造計算なんかササッと出来る頭持っているのに、馬鹿女は俺には特に冷たい。
 
部下のミスは上司のミスだろ?
 
もし、これで俺が間違っていたとしても、アンタが上に提出する前に黙って確認すれば良いじゃないか。

フォローしてやるってぇ意識はねーのかよ?
 
仕事しろよ。
 
あ〜〜〜うぜ〜〜〜っつ!!!


「……再確認させて下さい。ご返却願えませんか?」
 
俺は、渋々片手を出した。

「合っているのかと訊いているだけよ?」
 
ぶち!
 
らちの明かない押し問答につき合わされ、それでなくても栄養失調気味で苛々していた俺は、遂にキレた。

「だから返せよッ!」
 
俺のそのひと声に、タダでさえ静かだったフロアの誰もが息を潜めてシンとなる。

「何よその反抗的な態度は!」
 
馬鹿女も負けてはいない。
 
フィットで俺のインテグラを負かした時みたいな視線を投げ付けて、応戦して来やがった。
 
くう〜〜〜っつ!!! 
 
今、思い出しても頭に来る〜〜〜ッ!!!
 
興奮したせいか、手足の先がシビれて息が上がった。

「態度どうこう言うなよ! 大体課長は……はぁう?」
 
俺はそこまで言うと、急に身体が動かなくなった。モチロン、口も動かないから喋れない。

……

あれ?
 
ふら付き?
 
ナンだ? この浮遊感は???

ぐらりと視界が大きく傾き、目の前に居た馬鹿女の姿が一転して逆さまになった。

驚いて眼を見張りナニか叫んでいる馬鹿女。

っせーな。

静かに出来ねーのかよ? 

俺はスゴク眠いんだ。

目の前が瞬く間に暗くなり、部署内の雑音が遠退いて行く。

ああ……もしかして、俺……このまま死ぬのかな?

「きゃあぁあ―――!」
 
その場に居合わせた事務員の彩加(さやか)ちゃんと美紀(みき)ちゃんのかわいらしい悲鳴が耳に残った。

 
その日、余りの空腹に、俺は馬鹿女と言い争いをしている最中でありながら、眩暈めまいを起こして派手にぶっ倒れた。
 
部署内は一時騒然となった……らしい。


  *  *


あれっつ? ナンだこれっ?
 
自分の身体が変だ。
 
俺は自分自身の中に居た。
 
まるでSFの主人公が自分の感覚を切り離されて、サイボーグにでもなっているみたいな感覚って言えばイイのかな?
 
目の前の大木に女が居た。
 
その女はあの馬鹿女――

……ってぇ……

な、ナニぃい?
 
俺は焦った。
 
馬鹿女は奇妙にうねった大木に、両手を頭の上で合わせて荒縄で縛り上げれられている。
 
シャツ一枚しか着ていない馬鹿女の胸元は、乱れて大きく肌蹴はだけられていた。

白い柔肌がシャツの隙間……胸元からフトモモまでチラチラと見えているこの状態は……俺が脱がした設定かっつ???
 
普段なら、キレイな光る石の髪飾りできっちりまとめているハズの黒髪が乱れて、ジットリと汗ばんだ白い頬や首筋に貼り付いていた。
 
ぐったりとしたその表情で時折、甘く切ない溜め息を漏らしている。

うわ……

モノ凄い色っぽさに、俺は鼻血が出そうなくらいのぼせ上がった。

うん?
 
俺の利き手が何かを掴んでいる。

しかも断続的な振動を伴って……
 
不思議に思って視線を落とし、自分が掴んでいる左手のモノを見詰めた。

えっ? こっつ、こっつ、コレはぁ〜〜〜
 
手の震えが治まらねえええ〜〜〜っつ。

って、コイツがブルブルと震えているからなんだけど。
 
察するトコロ、馬鹿女はコイツで1(ラウンドを終え、汗にまみれて快感の余韻に浸っているのか?

チョッと待て……

こんなの俺じゃねーぞっつ??? 

……つか、るんならこんなコソクなマネなんかしねーよ!

モウロウとした途切れ々の意識の中で、馬鹿女は涙眼になりながら「お願い、もう止めて」とうわ言のように何度も繰り返してツブヤイた。
 
柳眉を寄せ、潤んだ瞳で、切なく俺を見上げて来る。
 
その表情がまたイイ!
 
俺の顔がイヤらしく笑った。

「まだだ。俺に公衆の面前であれだけの大恥を掻かせたんだ。その代償は大きいからな? 俺は最低限の生活さえままならなくなって、ヒト以下の生活を強いられたんだ……あの時、オマエのフィットさえ居なければ、俺はこんなに酷い目に遭うコトは無かった……全部オマエのせいだ!」
 
俺は自分に『非』が有る事でさえ、卑怯にも馬鹿女に転嫁して言い放っていた。


……何だよ? 

これって本当の俺? 

深層意識下での俺の本性なのか?
 
俺の声に、馬鹿女はいやいやと力無く首を横に振った。

「良いザマだ! こうして外で見ず知らずの奴等に、もっとオマエの恥ずかしいコトを見てもらえよ!」
 
いつの間にか、辺りには野次馬の人だかりが出来ていた。

って、○○プレイかよ?

「……い……いや……見ないで……」
 
声も絶え々に懇願する馬鹿女。

その表情を俺は満足そうに見下ろした。

「さあ、第2ラウンドだ!」
 
俺は馬鹿女の折れそうな細い両足を抱え上げた。
 
低いモータ音と小刻みの振動が、足を大きく開いた馬鹿女に潜り込む――
 
馬鹿女が身体を大きく仰け反らせた。
 
取り乱した淫らな姿が、俺の網膜に焼き付けられる――


  *  *


「ん……?」
 
ココどこだ?
 
……温かい。
 
俺は久しく味わっていなかった懐かしいベッドの感触にうるうるした。
 
さっきのは夢だったのか……? 

それにしても、妙に生々しかったよなぁ……
 
俺はまだ動悸どうきが止まらないでいた。

「……」
 
全身が汗ばみ、股間が凄く熱くてズキズキする。
 
やべーな……俺。

まさかこんな妄想でイッちゃったのかぁ?
 
両腕が何かの抵抗を感じながら、もぞもぞと動いて俺の分身に触れた。
 
いつもの存在感……ナンとかセーフだったみたい。

「……」
 
俺って、そんなに馬鹿女のコトが嫌いなの……か?
 
……まあ、少なくとも馬鹿女からはメチャクチャ嫌われているのは確か……だよな?

でなきゃ、仕事とは言えあんなに突っ掛かって来たりはしねーだろ?

それにしても、堪ンないこの感じ!

俺は自分に掛けられていた薄手の布団にスリスリと頬擦りした。

あ〜、久し振りだぜこの感触〜。

いつまでもこうしていたい〜〜〜。

でもこの布団、ダレのだ?

掛けられている布団は、もの凄く軽くって気持ちイイ。

これって、もしかして羽毛布団とかってヤツじゃね?

「……ん?」
 
モゾモゾ動いていたら、左腕に軽い重みと、妙に暖かい温もりを感じた。
 
俺はてのひらを返して、その温かい重みの原因をまさぐる。
 
むにっ!
 
柔らかい……

ってナンだコレ?  

……あっつ! コレは…… 
 
「えへへ〜」
 
覚えのあるこの堪らない感触に、俺の顔がだらしなく緩んだ。
 
けど、コレは誰の???


「……?」

ぱちっと眼を開けて左腕の方を見た。

「うごっ……☆」
 
俺は慌てて声を押し殺す。
 
時間的にどの位経ったのかは判らないが、俺の目の前にサッキまで俺と口喧嘩していたハズの馬鹿女が突っ伏して眠っていた。
 
俺の左手は、馬鹿女の片胸かたちちをしっかりと掴んでいたんだ。
 
夢でのコトもあって、俺は赤面しながら慌ててぱっと手を離す。
 
ひやぁああ〜! 

さ、さ、触っちゃったよぉおおお〜!!!
 
これって痴漢になるのか? 不可抗力だあぁあ!!!
 
えっ、えっ? ナンでココに馬鹿女?
 
俺は辺りをキョロキョロと見回した。

 
外から差込む月明かりが遮光カーテンから漏れ出て、辺りを薄暗く照らしていた。
 
八畳ほどの、俺にとってはメチャクチャ広いフローリングの部屋。
 
ベッドの反対側の壁は一面がクローゼットだった。
 
こんなにクローゼットが必要か? 

俺なんか衣装ケース一つで一年分、十分に間に合うぞ? 
 
庶民感覚の俺は、無駄に広いこの部屋に呆れた。 
 
察するところ、病院内ではないらしい。
 
どう見たって個人の寝室。

そして、目の前で眠っているのは馬鹿女。
 
これってこの馬鹿女の……部屋?

「ウソッ?」

マジで?

俺は慌てた。
 
……まさか襲われたりはしてないだろうな?
 
真っ先に頭に浮かんだ不安。
 
俺だってあんな妄想……つか、夢を見ていたんだ。

可能性としては十分在りうるかもだ。
 
俺はベッドの中でランニングとパンツ姿で眠らされていた。

って、誰に脱がされたんだよ?
 
ザワワと背筋に悪寒を感じながら、俺はそのベッドから馬鹿女を起こさないように、そーっと這い出して脱走する準備を……
 
ぐううう〜〜〜!☆

「!」
 
あっちゃー!
 
馬鹿馬鹿! 俺の腹の虫! 

こんな時に何で喚くんだよ?
 
たちまち馬鹿女の眼が覚めた。
 
ってぇ、このノリは何かの童話のハナシかよ?

「ウン……? あら、気が付いたの?」
 
まだ眠そうに眼をこすりながら、俺を呑み込もうとしそうなくらいの大きな欠伸をした。
 
ひいいい……
 
俺はもう半泣きだ。

「しっ、失礼しましたぁ!」
 
俺はそそくさと部屋から出て行こうとして、馬鹿女から首根っこを掴まれた。

「うあ?」
 
そのまま後に引っ張られ、情けなくベッドに引き倒される俺。
 
こういうシチュエーションって、普通男女逆じゃねーか? 
 
ナンで俺が引き倒されなきゃなんねーんだよッ? 

恥ズイじゃねーかっつ!

「どこに帰るの?」

「……はいい?」
 
その言い方は、既に俺がどんな状況で生活して日々を繋いでいるのかを知っている口振りだった。

「な、何……の、こと……?」
 
俺の愛想笑いが凍り付く。

「どこに帰るのかって、訊いているのよ?」
 
社内で俺と口論していた口調とは全く違っていた。
 
ナゼだか優しく聞えたのは、この馬鹿女が俺を救ってくれた女神様に見えたからか?
 
……き、気のせいにしておこう。

「……」

「また社内の仮眠室に戻って生活するつもり? いつまでもバレてないと考えない事ね?」
 
サスガの俺も、コレには言葉を失った。
 
……何でそんな事まで知ってンだよ?
 
幾ら俺よりも金持ちだって、幾ら俺よりも恵まれた環境だからって、幾ら俺よりも年上でキレイな美人だからって……

面と向かってハッキリ言うなよ。
 
それだけでヘコんじまうよ。

「……」

「黙秘するの? 黙っていたって時間の無駄よ? さっさと認めて謝れば?」
 
その言いようにムッとなった。
 
俺に逃げ道さえも作らせずに追詰める言い方……相変わらずキツイんだよ。
 
やっぱり、さっき優しいと思ったのは気のせいだ。

「ナンで個人的なコトまで、アンタに報告して謝ンないといけないんだよ?」
 
俺は口を尖らせた。
 
馬鹿女は一瞬、口籠くちごもって顔色を変えた。

「そ、それは……日高クンの上司として……」

「関係ねーだろっつ? モットモらしい理屈さえ思い浮かばねーのかよ?」
 
おっつ、形勢逆転かぁあ???
 
ぐううう〜〜〜☆

思いっ切り、俺のハラが鳴った。
 
ンがあああ!!!
 
せっかくのチャンスが台無しだ。

「くっくっくっ……あーっつははは……」
 
馬鹿女がまたしても馬鹿笑いをする。
 
ちえっ!
 
俺は赤面しながらそっぽを向いた。

「くすくす……ああ、ゴメン。笑ったりして……」
 
え?馬鹿女が謝った?
 
俺は自分の眼と耳を疑った。

「お腹、空いてるのよね?」

「ええ……まぁ」
 
俺はオトナシク肯定する。
 
つか、この状況下での否定は不可能だろっ?

「キッチンに食材があるから、何か作って?」

「……?」
 
俺は再度自分の耳を疑って固まった。

いぶかって眼を細める馬鹿女。

「聞えてる?」

「……はい。聞えてます」

「じゃ、作って?」
 
にっこりと余裕で笑った馬鹿女の表情は、今まで俺が見ていたコイツの表情の中でも一番の『素』だった。

ああ、コンナに優しそうに笑えるのな?

……って……☆

「はいい?」
 
何スかぁあ???
 
今、何て言った?

『作って』……だと?
 
俺、飢え死にしかけてるのに……

普通、こういった状態ならとっくに食事が出来てるってのが話のセオリーじゃねーのか???

「あの……」

「なに?」

「『作って』……って、俺が……ですか?」

「そうよ? 他に誰が居るの?」

アッサリと即答されて、言葉を失くす俺。

そんなぁ……ナンで俺なんだよぉおおお???

死にそーなくらい、ハラが減ってるってーのに。

「……」

チョッとしたモノくらい、出来ンだろ?
 
俺は黙って馬鹿女を指差した。

「アタシ? 無理。ほら、早く起きて作って? アタシだってお腹空いたんだから」
 
言うなり、俺は二の腕を掴まれて、無理矢理ひょいと引き起こされた。
 
俺よりも身体小せーのに、見掛けによらず、力強えーな?

「あの……無理……って?」

「だって、作れないもん」
 
はあああ???
 
しかも、『そんなの当たり前じゃん』ってぇ顔すんの、止めてくんない?
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