ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第28話 総会屋?
挿絵(By みてみん)

国内外でも名実共に屈指の暴力団――成和せいわ会。
 
さぞや頻繁に事件や問題を引き起こしては業界の社会面を賑わし、警察とゴッタゴタにモメテイルのかと思いきや、俺が想像していた暴力団とは少し違っていた。

いや、実際には揉めていても表沙汰にはならない様に賢く立ち回って、根回しや握り潰しをしているのかも知れない。
 
株式会社木村工業本社の所在地と本拠地を同じく分け合っている成和会は、木村工業の創業以来から性質を異にしているにも関わらず、発足した後に急速成長を遂げてナゼか木村工業と共存し、存続している暴力団……

俺達は成和会を一纏ひとまとめに『暴力団』と言っているが、世間一般では『総会屋』として認知されているらしい。
 
俺が知っているのはそれだけだ。
 
『総会屋』って悪いイメージが付いて廻るけど、逆に企業に味方する組織だってある。
 
タブン、成和会って『仲裁屋』とか『防衛屋』とかの部類なんだろうなと俺は見ていた。


 
「……どういう意味だよ?」
 
一瞬、刺すような水守みかみの強い視線を感じて、俺はそれ以上訊けなくなった。

「……ま、お前に話したって時間の無駄だな?」
 
水守は面倒臭そうにそう言うと、一呼吸於いて気の抜けるような大きなアクビをした。
 
まるで、『言うのじゃなかったな』と云わんばかりの態度だ。

「ちょ、チョット待って下さいよ。俺にワケを話してくれるんじゃなかったんスか?」
 
俺は気配のする方へと手を伸ばし、手探りで水守の背広のハシを掴もうとした。
 
俺の手は水守の腰辺りをまさぐって、ケツを撫でた状態になる。

「!」
 
驚いた水守の背中がビクンと反応した。
 
あ、いや俺はそんなシュミじゃねーって。
 
水守は腰を引いたが、俺はその背広を反射的にぱっと掴んだ。

「こっ……コラ、離せ」
 
ホンの少しだけ、水守の『動じない感情』が反応したように思えた。

それは俺の錯覚で、単に表面上動揺していただけなのかも知れないが……

「ヤダ。話してくれないと、離さない」
 
珍しく、俺は本気だ。
 
つか、あれだけ思わせ振りに言われれば、是が非でも知りたくなって来るじゃねーかよ?

「さっき恵理に連絡した。多分、一時間ほどで戻って来るぞ?」

「恵理のコトはイイですから」

「だから俺も帰る」

「だ〜ら、帰る前にチョットだけ教えてクダサイよっつ」
 
俺はコビを売ってみる。

「シツコイなぁ、お前……」
 
水守の呆れる声がした。
 
それって、ギブのサインかな? 

「教える気になりましたか?」
 
俺は口角をチョット上げて、ニッと笑う。

「……」
 
でっ☆
 
水守のゲンコツが俺のノーテンを直撃した。

「ってえええ〜っつ!!!」

俺は両手で頭を抱えてオオゲサにうずくまった。

「ヒドイや! まだ治ってねーのに……また見えなくなったらどーすんだよ? 今度こそマジで失明だよ?」
 
泣きを見せた俺の訴えも、水守の前では効果ナシだった。
 
水守の馬鹿にしたような冷ややかな視線が、俺に投掛けられた気がする。

「会社が巨大化すればするほど、外部・内部共に派閥や不穏要素、場合に因っては意図的な経営妨害も沸いて出て来るってモンだ」

「あづぅ〜〜〜。ンな事ぐらい、俺にだって判りますよ。俺が知りたいのは、木村工業とアンタ達成和会とのカンケイだ」
 
痛てーな。暴力反対だぁ! 
 
あ、コイツ暴力団だった……

「ゼッタイに口外しないと約束出来るか?」

「うん。出来る」

「……」
 
即答した俺を、水守はタチマチ警戒してしまった。
 
暫らく押し黙ってしまう。
 
ひょっとしたら、俺のカルさにドン退きしていたのかも知れねー。


「……お前にはムリだろ?」

「ああ〜〜〜? それって、外見だけでナンノ根拠もないまま俺を差別視してません?」

「……」

「俺、こう見えても案外口は堅いですよ?」

「案外……か。まあいいさ。口外すればどんな眼に遭うか、お前はもうトックに身を以って判っているものな?」
 
俺は水守の視線が気になった。
 
はいい? 『この身体が覚えています』ってか?

「ドンダケだよ?」
 
視線に堪えられなくなって、俺はカルク吹いた。
 
上っ面ではへらへらとヘツラッて、その場をごまかそうとした。

それでも水守は黙って俺を見ている気がする。


……居心地悪ィい。

 
水守は冗談でハグラカソウとしていた俺の『本性』を見抜こうとしているのか?

それとも、俺から発散されている『自分達と共通する本質的な何か』を導き出そうと推し量っているんだろうか?

 
……ナンか、息が詰まりそ……

 
俺は水守の視線にミョウな息苦しさを感じた。


コイツ……ゴマカシが効かねー。

 
水守のコト、今まで俺が見て来た奴等――力に任せてモノを言わせるチンピラよりはマシなヤツ……くらいには思っていたさ。
 
けど、俺がイメージしていた水守と、目の前に居る水守とではゼンゼン違っていた。

 
やっぱ、コイツは喰えねー。
 
掴みドコロのナイ……こんなヤツ、初めてだと思った。


つか、オトコに見詰められたってキモイだけで、嬉しかねーし。




「……俺の祖父の『姓』は……『木村』だ」
 
渋々打ち明けた水守の口調は、少し怒っているみたいだった。

……え?
 
一瞬……俺の呼吸が停まった。
 
『木村』……って? 

じゃ、じゃあ水守は木村の血筋を引いた一族?
 
『お坊ちゃま』? いや、ひょっとして『御曹司』? ……いいや、成和会の水守みかみはこのバアイ『次期組長』???
 
別の次元でドン退きしている俺をシカトして、水守はナオも続けた。

「会社設立当時からずっと……成和会は木村(工業)の闇をになって来た。『総ては会社の為』……それが成和会存続の理由だ。これからもずっと木村が木村として在り続ける限り……だから、時として意にそぐわない事にも対処せざるを得ない。喩えそれが結果として一個人……恵理を切捨てる事になったとしてもだ」

「……」

「一部の社員の犠牲で会社が救われるのなら、俺はソッチを選ぶ……そうすべきだとおしえられて来た。だから俺では恵理に就いては遣れない」

「今時訓えもナニもないだろ? 会社にもしもの事があれば、例え幼馴染……いや、身内の恵理であっても情けは掛けられないのか? そんなに会社がイチバンなのかよ……?」
 
言い現しようのナイ不快感に煽られた。

ナンだよ? その会社至上主義の理屈はぁ?

 
そして一時的に視力を奪われている俺は、同時に水守の感情的炎が――
 
ヤツの背後でメラメラと燃え上がったのを、垣間見たような気がした。
 
眼にするコトの出来ない、一切の熱を拒絶した冷たい……炎。
 
それが錯覚だというコトは、俺にだって判っていた。


「これ以上、俺を喋らせるな……」

 
――これ以上、俺を怒らせるな……

 
水守は苦々しく、吐き棄てるように言い放つと、俺の傍を離れた。

「って、アンタは社名存続の為だけに……?」

「そうだ」
 
抑揚のナイ、静かな口調だった。
 
総てを諦めてしまった様なソレが、俺には水守の悟りであるかのように聞こえた。

 
……ウソ吐け……本当の自分はそんなコト思ってなんかないクセに!

 
水守の建前的な回答コタエに、俺はイラッと来る。

「ザケンナッツ! あ、痛っつううう〜〜〜っつ」
 
大声で怒鳴った俺は、脳天を突く激しい頭痛に襲われ、頭を抱えてうずくまる。

術後の後遺症か、それともさっき水守に殴られたからなのか???

「いてて……し、社員在っての企業じゃないのか?」
 
俺の問い掛けに、水守はフンと鼻で笑った。

「長居し過ぎたな……」
 
カルク苦笑しているみたいだった。

その苦笑が、俺に向けてなのか、水守自身に向けてなのかを、読み取る事は出来なかった。

「違うのかよっつ?!」
 
まだ答えを貰ってナイぞ?


「……今日の事は忘れろ。木村工業の一社員として居たければ……以後、深入りするな」
 
俺の横を通り過ぎ、部屋から水守が出て行こうとする気配がした。
 
それって俺への脅迫かよ?

「待てよ!」
 
トッサに振り返った俺だったが……
 
――既に辺りには誰の気配もしなくなっていた。
 
……ナニカッコツケてんだよ?

 
独り部屋に残された俺は、水守のコトバを無性に腹立たしく思いながら、心身共に重い状態を引き摺って、ノロノロと立ち上がった。
 
有紀達を取り押えるために散らかされただろう、俺の部屋の片付けをするべく、俺は壁伝いに手探りで部屋を移動していた。


  *  *

 
それから一時間くらい経った頃、恵理が息を切らせながら戻って来た。

ナニ? この絶妙なタイミングは???

水守の予言が的中して、俺は軽く退いてしまった。

「司ッツ!」

「か、課長……あう?」
 
玄関先でパンプスを脱ぐのももどかしく、放り投げるようにして脱ぎ散らかした恵理が、出迎えた俺の胸にイキナリ顔を埋めて来た。

「無事だった???」
 
何だよ? その質問は?

水守みもりんからのメールに、司が襲われている姿が写ってて……ほら、コレ!」
 
バッグの中を掻き混ぜて携帯を取り出し、画像を俺に向けて見せようとしてくれた気配がする。

「……あ? ああ……」
 
俺、見えないんだけど?
 
恵理も、すぐそのコトに気が付き、『ごめん』と気まずそうに呟いた。

「そ、その……びっくりして……」
 
俺は、恵理から戸惑いと……それにいつもの恵理じゃないくらいの、不釣合いなホドの恥じらいを察した。

「〜〜〜??? ひょっとして、あの時の画像?」
 
俺は血の気が失せた。
 
多分、有紀にえっちされた時の画像だろう。
 
そう思うと、更に不安が強まった。

「まさかズームで撮ったりなんか、してナイでしょうね?」

「……」
 
恵理からの返事は無かった。
 
……ってコトは……オイッツ!!!

してやったり! ってぇニヤケタ水守アイツの顔が頭に浮かんだ。
 
『これを見れば、いくら仕事女の恵理でもすっ飛んで戻って来るだろう』って言う水守の下衆な配慮が窺えて、俺はまたしても不機嫌になる。
 
あンの野郎ぉおお〜〜〜!!!

コソクな真似しやがって……
※年齢制限作在り。作品閲覧はご自分の責任にてお願いします。
ブログ かずたかの独り言 ちょこっとな?
TOUCH−UP PAINT(補修剤)


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。