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第27話 刺客
挿絵(By みてみん)

トタンにオトコの指先からもの凄い力が消失する。
 
俺はくたっとひざまずき、左肩を床に着けてうずくまると、激しく咳き込んだ。

「ゴホ、ゴホ、ゴホッツ! おえっつ……」
 
俺は吐き気までモヨオして、包帯の下で涙眼になる。

「最期だし、一度だけいい思いをさせてあげるわ」
 
俺に近寄って、有紀は嬉しそうに俺の耳元で囁いた。
 
小刻みに首を振って拒否の意思表示をする俺。
 
『いや、いい思いは結構ですから、俺を解放してココから出て行ってくれっ!』
 
そう言いたかったが、俺の声はサルグツワで有紀には届かない。
 
再びオトコから両肩を掴まれた。

俺は無抵抗のまま乱暴に引き擦り起こされ、立たされる。

「ふふっ……」
 
有紀の含み笑いが、妙にイヤラシク聞えた。
 
細い指先がイキナリ俺の下半身に伸びて、パジャマ越しに俺のモノを確かめるように、ソフトタッチで撫で回してきた。

「んぐう?」
 
ビクッた俺は、慌てて腰を引こうとしたが、背後でオトコが俺の後退をガッチリと阻止している。
 
ああう、腰が退けね〜〜〜。

「ふへへ……にいちゃん、イイな? 羨ましいぜ?」
 
後ろで俺を押さえているオトコの熱い鼻息が、荒々しく俺の首筋に掛けられた。

「んん〜〜〜っつ!」
 
ぞわわ……
 
全身の毛が逆立った。
 
うわぁああ、キモイ!
 
俺、そんなシュミねーぞっつ?
 
俺は掛けられた鼻息の感触を打ち払うように、必死になって首を振る。

「どぉしたのぉ? いつもなら喜んでくれるのに……?」 
 
有紀のシナヤカな指遣いが、俺の下半身を撫で擦る。
 
ザンネンだが、俺の相棒は只今休眠中。
 
つか、無理矢理押え付けられて殺されそうになってるこの状況下で、どうすれば欲情出来ンだよっつ???
 
俺、ンなシュミねーって!!!

「緊張してるの? うふふっ……司ってば、カワイイ〜〜〜」
 
だっ、だっつ……ダレが『カワイイ』だッツ!!!
 
俺が怯えていると知って、有紀は遣り手のオネイサンみたいな口振りで、甘く俺を誘った。
 
ヤダ。誘いにはゼッタイに乗ってなんかヤンない。
 
俺は固く心に誓った……

 
……が、その誓いは有紀が俺のパジャマのパンツに手を掛けた時点で、敢え無くミジンに消し去られてしまった。

「ぐ……うう……」
 
有紀は俺のパンツを膝まで下ろすと、今度はボクサータイプの下着に手を掛けた。
 
ユックリと焦らすように俺の下着が降ろされる……
 
ああっつ、止めてっつ!!!
 
興奮してナイから、下着はナンの引っ掛りも無くストンと膝まで落される。

「ヘヘェ? にいちゃん、チイセーなぁ? オイ?」
 
オトコが俺のを見て馬鹿にしやがった。
 
ばッツ……バカヤロウ!!!
 
自分が殺されるかドウかって時に、コーフンしてどーすんだよっつ???

「あーら、宗孫しゅうそん、司を見縊みくびっちゃダメよぉ〜〜〜?」
 
有紀は嬉しそうにそう言って、ナマの俺の相棒に触れた。

「んっつ! んあっ……」
 
敏感な部分に触られる度に、俺の身体がビクッ、ビクッと大きく跳ね上がる。
 
恵理と違って遊び慣れしてる有紀は、俺がカンジルトコロを心得ているから、身体的に抗うコトが出来ない。
 
しなやかな指先のフェザータッチで煽られ、脊髄せきずいを伝った快感が俺の脳内中枢部をガンガン刺激して来る。
 
コレって一種のゴーモンだぞ?

「ううう―――っつ!!!」
 
うわぁああ―――っつ!!! 止めろぉおお!
 
必死になって呻り、首を横に振って有紀に止めるように頼んだツモリだったが、有紀は一向にオカマイナシだった。
 
気持ちで抵抗してみても、結局身体はずっと正直なんだよな?
 
言い訳にならねー。

「ほ〜らね?」
 
有紀がもの凄く嬉しそうにオトコに声を掛けた。

「ほおぉ〜〜〜」
 
俺を押さえているオトコが感心する。
 
だあああ〜〜〜、オッサン! タダ見してンじゃねぇよっつ!!!

「冥土の土産ってぇヤツですかぃ?」
 
俺を背後で押さえ付けながら、オトコはウヒヒと下衆に笑った。

「……そうね……」
 
有紀は俺の正面にひざまずき、微かな溜め息を漏らすと、俺のナマ腰を両腕で抱き締めた。
 
俺の相棒がチョウド有紀の左肩に当たり、有紀は首を傾げて俺の相棒を挟み込む。

「うぐッツ?」
 
ダイレクトな刺激に、俺の顎がびくんと反応する。
 
有紀は俺の反応を面白がっているのか、くすっと笑うと、ソソリ立った相棒に頬ズリして来た。

「うぐう〜〜〜」
 
あ〜んん〜〜〜ヤメロぉ〜!!!
 
俺は身をよじじらせてヨガッタ。
 
見ず知らずのヘンなオヤジに、元気になった俺の相棒を見られて、今まさに有紀から責められてる瞬間までも見られてるだなんて、情けねーよぉー!

「ん、んあ!」
 
俺は最期の力を振り絞って暴れた。

「きゃっつ?」
 
有紀の胸の辺りを膝でグッと押し倒す。

「コイツ! ジッとしてろィ!!!」

「うぐっつ!」
 
ウシロのオトコが、俺の拘束された両腕に、外側から自分の腕を深く絡め、俺の後頭部でその手をガッチリと組み合わせる。
 
自然、俺は上半身を折り曲げ、自分の顎を胸元にくっつけて項垂れた状態になる。
 
唯一、自由だった両足も、オトコのデカイクソ足に踏み付けられて身動き出来なくなった。

あねさん? 大丈夫ですかい?」
 
オトコが有紀を気遣った。

「だ……大丈夫。ちょっと驚いただけよ?」
 
有紀がそう言うなり……俺の左頬に破裂音とヒリツク痛みが奔った。
 
だけど、俺の口にはサルグツワがしてあるから、それが緩衝材の役割を果していた。

テニスと護身術で鍛え上げられた、怪力の恵理に殴られるよりはゼンゼンマシだ。

「司、往生際、悪過ぎよ?」

「う〜うう〜〜〜!!!」
 
悪くてイケナイかよ?
 
コッチは恐怖と羞恥心で気がヘンになりそーだっつーの!!!
 
俺は必死に訴えたが、喋れないからムダだ。

「もお、セッカク元気になってたのにィ」
 
俺の相棒を包み込むように、有紀は顔を埋めて来た。

「ふが〜〜〜っつ、ううう〜〜〜!!!」
 
よ、止せってば! ヤメロよぉ〜〜〜!!!
 
俺は荒く息を乱しながら、ナントカ抵抗しようと努力するが……有紀と何度もえっちしていて身体の方が覚えてしまってる。
 
ヤメロ〜〜〜
 
俺は快感に翻弄された。

体温が一気に上昇して汗が噴き出し、全身がビクビクと跳ねる。
 
んがあああ〜〜〜!!! 
 
殺されるってゆ〜、こんな状況なのにイッテしまう〜〜〜っつ!!!
 
必死に自分をセーブしようとする俺。

この後、ホントに天国行きなのか?

「そろそろイイですかい?」
 
俺をガッチリと拘束していたオトコが、痺れを切らしたように少々苛立って有紀に同意を求めた。

「ん〜〜〜あ? もおふこひ(もう少し)」
 
有紀の鼻息も荒くなる。
 
あ……けど……もっ、ダメかも……
 
俺の身体がブルッと身震いしてトリハダ立った。
 
ヤバイ。

そろそろ限界が……
 
有紀はナカナカ俺が反応しないと勘違いしていたのか、有紀は俺を含んだままで上半身を大きく振り動かす。

「ううう〜〜〜んん〜〜〜!!!」
 
うわあああ〜〜〜
 
瞬く間に催した噴火の兆候に抗えず、なす術ナシのお手上げ状態。

「ぐううう……」
 
……瞼の裏に閃光が奔った。

有紀の喉が音を立てる。
 
このアトのコトさえ無ければ、俺はもの凄くカンジて昇天出来たってーのに。
 
幾らセフレちゃんの有紀でも、こんなのアリかよ?
 
俺、今度こそ殺されるのか?
 
こんなの……ナンか『蛇の生殺し』みたいでイヤだ。

「ははっ、兄ちゃん、やぁ〜っとイッたか? ん、じゃあ今度こそ覚悟しろや」
 
にちゃっ……
 
オトコの舌舐め擦りする音が、鮮明に耳元で聞えた。
 
俺は無理矢理有紀にヌカレて脱力&放心状態。
 
そして再びオトコの節くれ立った太い五指が、俺の首に左右から掛けられた――

「……あばよ」
 
オトコが笑った。



ダンッツ!!!

 
玄関のゴツイ金属製のドアから突然大きな音がした。
 
ナンの音?
 
あまりの音に、俺を含めた三人がビクった。

声すら上げる余裕も無い。

「よお、取り込みのお楽しみ中ワルイんだが……」
 
上から威圧するような不快感を覚えるその声に、俺は聴き覚えがあった。
 
オトコのコトバは丁寧な言い回しだったが、その言い方は乱暴だった。

「そろそろ、お開きにしてくれないか? 待たされるのは嫌いでね」

この声! ……水守みかみ!?

 
俺を酷い眼に遭わせた、成和会の幹部。
 
つか、いつの間に……そこに居たんだ?
 
背後でオトコがナマツバをゴクリと飲み込む音が聞えた。
 
俺をイイようにもてあそんでくれた有紀達も、現れた人物が誰なのかをトックに知っているみたいだった。
 
慌ててパッと俺を放り出すと、急いで部屋の奥へと逃げ出した。
 
拘束されていた俺は支えを失くし、下半身を露出したままブザマに引っ繰り返る。

「待ちやがれぇ!」

「こンのヤロウ!」
 
逃げ出そうとした有紀達を追って、玄関からワラワラと数人のオトコ共が突入して来た。
 
ひょっとして、俺をボコってくれたK−1な奴等、居るのかな?

「おい、ココ土足厳禁だ」

「ああっつっ……とお?」

「はっ、ハイ!」
 
水守のフツーに喋った一言でヤロウ連中が素直に従い、急いで廻れ右をして玄関に引き返す。

そそくさと靴を脱いでいる気配がした。
 
そして奥の部屋でドタバタと……乱闘?

「いったあ〜〜〜い! 放せぇ〜〜〜!」
 
時折、有紀の甲高い悲鳴と、一緒に来たオトコが殴られて呻いている声が聞えた。
 
頼むから、部屋を散らかさないでくれよ?



「うっ……うう……」
 
有紀達二人が外へと連れ出されて行った後、俺は拘束されたままの手で下げられていたパジャマを下着ごと必死に引き上げようとしてモガイていた。
 
……?
 
傍に来た水守の気配を察知して、俺はコロンとうつ伏せに寝転がる。
 
俺の醜態をコイツにだけは見せたくないと思った。

ソレは多分、コイツ……水守が恵理と幼馴染で、しかもコイツは未だに恵理のコトが好きだってコトを俺が知っているから。
 
だから。
 
……今のトコロ、一方的な水守の片思いらしいけど。

「何とか無事だったみたいだな?」

「んぐうぅ? (はいぃ?)」
 
水守が俺よりも高い長身を折り曲げて、すぐ傍で片膝を着いた気配がする。

そして少々乱暴に俺からサルグツワをほどいてくれた。

「んっつ、ぷっはあぁ、助かったぁ〜〜〜来て居たンなら、どうしてもっと早く助けてくれなかったんスか?」
 
イキナリの憎まれ口……ソレが俺の開口一番のコトバだった。

「水守さんに向かって……テメェ、口の訊き方を教えたろかいっ!」
 
横柄な俺の言い様に、水守と一緒に残っていた男が凄んだ。

「まあ、待て」
 
水守はオトコを宥めながら、くっくと笑った。

……ったく、気に入らねーな。

笑い方までキザなヤローだぜ。

「愉しそうだったから、中断出来なかっただけだ」

「アレのドコが『愉しそう』なんスか?」
 
つか、やっぱし見てたんだ。

ずっと……?

「違うのか?」

「ったり前でしょ?」
 
白々しいな……
 
俺は反論しながら、未だに穿けていないパジャマにテコズッテいた。
 
うつ伏せの状態でモゾモゾとうごめいてる姿は、デカイ芋虫みたいだ。

つか、俺の半ケツを見られたっつ!!!

「そ、それよか、この手錠を外してくださいよ?」

俺は後ろ手で拘束されている手を、手錠ごと振る。

「あ? ああ、それか?」
 
水守はそう言ったアト、ムリだと冷たく言い放った。

「鍵はさっきの連中と一緒に……多分今頃は事務所に向かっている途中だ。鎖か、本体を壊すか……だな?」

「ええ〜〜〜???」


  *  *

 
俺は水守に細いピンか針金を捜して貰い、自力で手錠を外していた。

「器用なヤツだな?」
 
水守が俺のシゴトに感心する。

「コノくらい出来ないと、悪いコトも出来ませんよ?」
 
俺は腹黒く笑った。

「ふーん。俺のトコロに来ないか?」

「い〜え、お断りです。俺、『もうフツーの会社員』ですから」

「フン、意味ありな言い方をするな……ったく、喰えないヤツだ」
 
水守は俺のコトバを鼻で笑い、面白くなさそうにボヤイタ。

「それはお互い様じゃありませんか?」
 
ドッチが喰えないんだか……そっちこそよく言うよ?
 
惚けてはぐらかそうとした俺に、突然水守は俺の首へと乱暴に腕を廻して、ヘッドロックをカマシテ来た。

「なっつ? な、な、ナニすんだよ?」
 
視界が閉ざされたままの俺は抵抗さえ出来ず、水守の小脇に抱えられたまんまだ。

「お前って、ホント、カッワイクねーな?」

「誰が!」
 
一瞬、ヒヤリとする。
 
俺って水守の趣味……守備範疇だったのか?

……って思ったら……ものの見事に誤解だった。

=「よく聴けよ?」

「?」
 
フザケていた水守の声が、突然マジに切り替わって小声になった。

=「もう判っているだろうが……木村工業が狙われている」

=「どぉ言うコトです?」
 
ツラレテ俺も小声で訊き返した。

=「二日前に怪文書が送られて来た。『木村を潰す』……本社社長室PCに直接メールで送られて来た文面だ。この事は極僅かな上層幹部クラスにしか知らされていない」
 
俺は耳を疑った。
 
大企業の木村工業が狙われている?
 
ソレが証拠に、個人情報の漏洩で、恵理は会社へ……そして俺は、その件に関与していたと疑われている有紀達に、たった今命を狙われた。
 
冗談で片付けられそうだったコトが、事実へと変換されて行く。
 
それを逸早く水守が知っている? 

恐らくは他の社員よりも先に? 

……水守、アンタって一体……?
 

――何者なんだ???


俺が見た処じゃ、どんなに贔屓目ひいきめに見たって水守は世間一般から言われてる『ヤクザ』にしか見えねー。

つか、成和会だと本人が名乗っている以上、暴力団には間違い無いんだ。

それとも、暴力団に見せ掛けた警察関連の公安組織とか?
 
……ドラマじゃあるまいし……馬鹿馬鹿しい。

 
だけど、本当に俺は有紀達に命を狙われた……それは紛れも無い事実なんだ。

=「それって、ガセかも知れないでしょ?」
 
それでも俺は水守のセリフを一蹴しようとしていた。

=「残念だが嘘じゃない。半年前に札幌の拠点関連子会社が倒産を余儀無くされた。今回の怪文書と同じパターンだ。当時は悪質な悪戯だとして会社側は放置し、なんら対策を構じていなかった……知っていたか?」

=「いえ……半年前って、俺、まだ学生でしたから」
 
知らなかった……そんなコトがあっただなんて……

=「恵理によく似たさっきの女……知り合いか? お前を特定して狙って来たよな?」

「……」

=「ほぉー、助けて貰っておいて、ダンマリを決め込む心算つもりか? いい度胸だな?」

俺は黙秘を選ぼうとしたが、瞬時に水守に見抜かれてしまった。
 
水守を騙すコトは出来そうも無い。

=「し……社内重要情報を盗んだのを俺が見てしまったから……」

=「目撃者? お前が? ……それで口封じか?」
 
俺は黙ってうなずき、水守はフンと鼻で笑った。

=「怪文書って……それだけ?」

=「企業全体を狙ってなのか、それとも特定の上層部の人間を狙ってなのか、皆目検討が付かない……人物を狙うなら、恵理も当然含まれると見ていい……この意味、お前、判るよな?」
 
俺はコクコクと頷いた。

つか、ヘッドロックされているこの状態で、拒否なんか出来ねーだろ?

「……?」

水守からは何か言いたそうな気配がした。

一瞬、間があって、何かを躊躇っているような様子だった。



「恵理を……恵理を頼む」
 
そのコトバの端々に『貴様なんかには頼みたくナイ』って気持ちが見え隠れしていた。

「アンタなんかに言われなくっても……」

「判ってる……か?」
 
思わせ振りな言い草を俺は不愉快に感じて、水守の腕を振りほどいた。

「水守さん、アンタ一体ナニモノなんだよ? 平社員の俺でなくったって、アンタなら恵理を簡単に護るコトが出来るだろッツ?」

「……それが出来ればお前なんかに頼んだりしない」
 
俺のムカつくコトバにも、水守は穏やかに切り返して来た。

「どういうイミだよ?」

「お前、木村工業が業界のトップクラスに上り詰める事が出来た本当の理由を知っているのか?」

「え……?」
 
……本当……の……理由?
※ご訪問、ありがとうございます。 数少ないありがたいコメントから、作品で「っつ」の書き方に疑問やご不快を感じられていらっしゃる読者様の報告を頂いております。 小説作法を無視しているのかとお叱り、ご尤もでございます。 ですが、誠に以って申し訳ございません。 作者独自の強調方法としての「一種の仕様」 (=個性)だとご理解して頂き、お見捨て置きくださいますようお願い申し上げます。
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