自分とは違う人肌の温もりが傍に在る……
それだけで俺は、いつ忍び寄って来るかも判らない『影』の恐怖から解き放たれた気がしていた。
それは恵理とこうして一緒に居るからか?
コレは、俺の現実逃避ってコトなんだよな?
恵理を拒否していたのに、恵理の肌に触れた瞬間に安堵感みたいな……癒しみたいな気持ち良さを覚えたんだ。
……随分と勝手な都合だって思う。
俺は自分に呆れた。
だけど、こんな修羅場……殺されるかも知れない恐怖なんか、味わったコトねーんだよ。
怖くて、怖くて……仕方無いんだよ!
俺は恵理をずっと抱き締めていた。
「助かりましたよ」
お陰でコワイ雑念が払拭されたし。
俺はそう言って、恵理の
掌に頬ズリした。
う〜〜〜ん、香水の甘い匂いが、直に俺の鼻をクスグる。
徐々に俺の『スリスリ』が恵理の肩口にまで昇って行く……
「何の……こと? あ、や、やん……ちくちくするぅ〜」
猫みたいに頬をスリヨセてゴロゴロする俺を見て、恵理はくすくすと笑った。
伸びかけの髭が柔肌には痛いラシイ。
ああ、ホントだ。肌が赤くなってるよ。
「課長……温かい」
背中に両腕を廻して、恵理の胸の谷間に顔を埋めた。
恵理は、俺の頭を両腕でそっと抱え込む。
「あん、『暑い』……の間違いじゃなくて?」
「エアコン効いていますが?」
いや、そーゆー情緒のナイコトを言われても……
「ねえ、司……」
「はい?」
首筋にキスの雨を降らせていた俺へ、恵理は避けるように受け入れながらそっと耳元で囁いた。
「アタシに……何か隠してる?」
ぎく!!!
吐息のような優しい声で核心を衝かれ、恵理の背中に触れていた俺の手が一瞬止まった。
俺が恵理を抱き締めていたと思っていたのに、気が付けば、俺が恵理に抱かれていた。
普段以上に優しい眼で見下ろす恵理の視線に、俺は不思議な居心地の良さを覚えていた。
「……」
「様子、ヘンよ?」
……気付かれた?
いや、まだだ。
恵理はまだ俺が成和会に眼を付けられているってコトを知らないハズだ。
「へ、へン? ……ヘンなのは課長の方でしょう? ンなコト言ってると、こ、今度はホントーに泣かせちゃいますよ?」
俺は強がって見せた。
ハナシをハグラカスように、恵理の豊かな胸に、バスタオルごと上から強く咬み付く。
モチロン恵理に傷を付けない程度に加減して……だ。
顎を胸に付けて、そのまま恵理をベッドに押し倒す。
「あんっ!」
ギシッ!
ベッドのスプリングにワンテンポ遅れて、バスタオルからはみ出した、恵理の大きな胸のフクラミが
弾んだ。
バスタオルで寄せて上げられている恵理の胸は、柔らかくしたソフトボールみたいで俺はとってもソソラレル。
モロ出しの時よりも、見えそうで見えないチラリの方がイヤラシクて、俺はダンゼン燃え上がる。
俺は恵理の腰の辺りを
跨ぎ、軽く
圧し掛かった。
恵理が拒否して膝を立てれば、俺はモンゼツ……いや、瞬殺されてしまう体勢だ。
バスタオルからハミ出した、プックリとした旨そうなその胸に、唇と舌を這わせた。
片手を背中から放すと、その手で恵理の身体のラインをバスタオルの上から撫でるように
弄る。
とく、とく……
恵理の胸に顔を寄せている俺は、恵理の早い鼓動と浅くなった呼吸音を
聴いていた。
スイミングやテニス、その他モロモロの……俺は口に出して言いたくナイ護身術の
類の習い事で、恵理の身体は驚くホド引き締まっていて、ムダが無い。
難を言えば、筋肉質ってコト。
ポッチャリちゃんの、あのフワフワ感がゼンゼン無い。
「んっ……」
頬を赤く染めた恵理が、眼を閉じたまま顔を顰めた。
胸と同様、白い内モモにも俺はスリスリを繰り返して頬擦りする。
「あんっ、いっ……イヤだぁ……」
羞恥心から、頬を紅潮させている息遣いが一際荒くなり、恵理はふっくらとした唇を半開きにして身体全体で呼吸を整えようとする。
その仕草が俺をアオッた。
「あん! 痛いぃ〜」
皮膚の薄い内モモには俺の伸びカケのヒゲが痛いらしく、恵理は涙目になり、スコシ怒って上半身を起こした。
頬を膨らませて口を尖らせる。
俺はニヤリと笑うと、両手を突いて上体を上げ、その勢いで恵理の唇にソフトタッチのキスをした。
素早く胸元で留めてあったバスタオルを引く。
「あっ……」
恵理がイキを呑んだ。
恵理を包んでいたバスタオルがハラリと解けて拡がった。
キャシャな身体には不釣合いの、Dに近いCカップの恵理の胸が露わになる。
俺は膝で勢いよく立ち上がり、パジャマとボクサーパンツを押し下げて既にスタンバイOKの相棒を取り出すと、ソレを恵理の胸に押し付けた。
「や、ぁん……」
恵理の恥じらう声が、妙にウレシそうに聞えたのは気のせいか?
コレも二度目だから多少のメンエキが付いたのかな……?
「ふふっ……」
俺は荒い息を吐きながら、コドモっぽく笑った自分に内心驚いた。
ギシ、ギシッ……
俺の動きにベッドのスプリングがタワみ、恵理の細い身体が浮き沈みを繰り返す。
俺の相棒でカンジているのか、恵理は身体を揺らされながら、軽く顔を
顰めて眼を閉じた。
微かに開いた艶やかなピンクの唇が、俺の欲情を乱して掻き立てる。
……色っぽい
恵理の表情にミトレ、頭のシンが痺れた。
「あっつ! ヤバッツ!」
「きゃっ?」
俺は慌てて恵理を突き飛ばすように放したが……
時、スデに遅し……だった。
「ふぇ……な、ナニ???」
半べそをかいた恵理は、俺にバスタオルで顔を拭き取られながら、コタエを求めて見上げてくる。
拭き残していた一滴が、恵理の髪を伝って左肩口に流れ、肘の辺りにまで糸を引いた。
「もぉ〜、課長があンまり気持ちよさそうにするから……」
……ってぇのは、モチロンウソ。
俺が先にカンジちゃったからだ。
珍しく……ハヤカッタ……な。
俺は図々しく、こうなったのは恵理のせいだと自分のコトを転嫁した。
「う……」
驚いて放心状態の恵理は、ナニが起こったのか、それさえも判らないといった表情だ。
そして、腕に流れたソレを指先に採って、興味半分、キモイ半分といった目付きで観察してる。
そんなに眺めるなぁ〜〜〜恥ズイじゃねーかよ。
「……」
一瞬、二人の時間が凍った。
あっちゃあぁ……寸止め失敗。
……ヤッテしまった。
俺はヌケた分、冷静さを取り戻していた。
俺は『疲れた』様子でぐったり〜〜〜んと、恵理に圧し掛かる。
「あん、重い〜、司ぁ、シッカリしてよぉ〜」
にかっつ☆
恵理の胸元に顔を埋めた俺の口元がユルんだ。
「……課長?」
「え?」
「オヤスミぃ〜」
「ええ〜〜〜?」
俺のコトバに、恵理は不満そうだ。
まぁ、判るけど。
「もぉ〜〜〜」
「ソレって、牛のマネ?」
俺はクスクスと肩を揺らして笑い出す。
「馬鹿ッツ!」
これじゃあ、えっちドコロにはなんねーな。
はーっつ、コレで一安心……か?
俺はスッカリ油断していた。
恵理は俺の背中に廻した両手で、さっきの俺を真似て、サワサワと
撫でまわす。
ううっつ、クスグッタイ……
「司ぁ、続きはぁ?」
くすくす笑う俺に、恵理は甘えた声で囁いた。
「も、お終いです」
「ヤダぁ〜」
スネた恵理の声。
そう言うだろうと思ったよ。
まだ恵理は一度もイッテなかったし、俺だけお先に……って、やっぱズルイよな?
俺は今度こそ恵理をイカセてあげようと思い直して、身体を起こそうと、両腕を突っ撥ねた。
その時だ。
恵理の口から、俺は思わぬコトバを聞いてしまった。
「あの……もっとお金が必要なの?」
「……!」
たちまち俺の表情が強張る。
「……ナニ……言ってンの?」
恵理は、金さえ上積みすれば俺が言いなりに……つか、今までジャレてたのは、金を見せたからだと思ったのか?
そ、そりゃ少しは在ったけど……
「だ、だって、司が『安い』って……言ってたから……」
恵理は俺の剣幕に驚いたみたいだった。
「そんなの……ジョウダンに決まってるっしょ?」
俺は金どうこうの問題抜きで、こうして恵理と一緒に居たいんだ。
なのに、恵理は違うのか?
俺とのえっちは金ナシじゃ、成り立たねーとでも思っているのか?
「わ……判らないわ」
恵理は戸惑っているのか、視線を俺から逸らせて俯いた。
「俺が……金目当てで課長とジャレテいるとでも?」
そう思われていたのなら……俺、ショックだ。
「違うの?」
がん!
馬鹿でかいハンマーで殴られたような気がした。
こんな時に限って、恵理の業務モードが現われる。
余計なコトバは一切抜きで、重要点のみを押さえたキツイ言い方……
恵理は俺のコトをそんな風にしか見てなかったのか?
俺の中で……何かがキレた。
ああそうかい。
だったらコッチも恵理のオモワクを、キッチリと裏切ってやるよ。
俺はこみ上げて来る不快感を感じて、無性に堪らなくなった。
確かに俺は金に困っているさ……貧乏人のヒガミだと思われても仕方ナイほど。
だけど、俺にだってナケナシのプライドってぇモンがあるんだよ。
金目当てだなんて思われて、ホイホイ言う通りになんか……ダレがシテヤルもんか。
マジで……もっと恵理のコト……スキになれそうだったのに……
恵理はそうじゃなかったのか?
泣き出しそうになった恵理を、俺は黙って見下ろした。
……泣き出したいのは……コッチだよ。
恵理がそんなのだったら、俺だって……
「幾らなら払えます?」
俺は醒めた眼で恵理を見下ろしながら、意地悪そうに言った。
「……」
「それが俺を買う値段なら、逆に俺から見れば課長を売る値段でもあるんですよ?」
「だって……」
恵理は俯き、答えに困っているみたいだった。
俺はワザと不敵に笑ってやる。
「お生憎様」
「え?」
俺は顔を上げた恵理と、視線をシッカリ絡めながらこう言った。
「金は貰っても、俺、課長の『処女』は要りませんから」
「!」
恵理は驚いて瞳を大きく見開くと、きゅっと唇を硬く結んで俺を見上げた。