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我狐月組



狐月組。

早坂狐月の名前をつけた組織。

彼の作った組織だから狐月組。


「ネットの…サイト?で集まって組織になったもの、ですか」

「そう、なんだ。元は知り合いと作ったコミュニケーションサイトだったんだけど」


夜間の学校に行かず、狐月さんの家にお邪魔して狐月組について聞いた。

知り合いと作ったただのコミュニケーションサイト。

いつしか人数が膨大に増えて組織になってしまったそうだ。


「ああ、所謂カラーギャングですね?小説のあれ。ネット繋がりのカラーギャング」

「あ、知ってたんだ。まぁ、そんな感じになって、組織だから当然まとめる者が必要になって。僕と知り合いが仕切ってる」


カラーギャング。海外と違って犯罪をやらかすギャングではない。とある小説の影響でネットで集う集団だ。

殆どはチャットなどで対談する至って平和なギャング。聞いたことがあるし、自分もカラーギャングに登録している。ネット上で気軽に登録できるのだ。

しかしそれがなんだと言うのだろう。

ネット上で集う組織が、あたしの非日常と何の関係があるのか。あたしは素直に訊いた。


「僕は組織のボスだ」

「はい」

「他の全員は部下だ」

「はぁ…」

「組織のボスは組織を仕切る」

「はい……」

「つまり命令ができる」

「…はぁ」

「この組織の人間は大抵の命令は聞く」

「……?」

「僕がボスだから。十五万人(、、、、)の部下は大抵従う」


相槌を打ちながら聞いていたが狐月さんの言いたいことがわからず首を傾げる。危うく聞き流すところだった。危うく気付かないところだった。


「え?十五………()って言いました?」

「十五万人」


頷いて狐月さんはもう一度言う。

狐月組の人数、十五万人。

それはあまりにも、多すぎだ。

十五万人。一体どれだけの人数なのか想像できない。

多い。膨大過ぎる。

十五万人の集う組織。それを束ねるボスが狐月さん。


「いや、でも……だから、なんです?」


狐月さんがなんとなく凄いということはわかった。狐月組が十五万人という巨大な組織だってこともわかった。

だけどそれがなんだって言うのだ。

犯罪もしない。ネット登録しただけの組織が一体なんだ。


「十五万人、年齢層はバラバラ。当然職業も人格も。非日常を望むのならば非日常を起こせばいい。非日常を望むのならば非日常に関わる人間と関わればいい。僕はボスだから、命令を下せる。十五万人の人間を動かすのは───貴女にとって非日常?」


狐月さんは変わらぬ静かな口調で答え、そして問う。

ゾクリと身震いした。

そうゆうことか。

非日常にしたいなら非日常を起こせばいい。

非日常にしたいなら非日常の人間と関わればいい。

そして十五万の人間を動かすことも出来る。

狐月さんはその力を持っている。それをあたしに差し出すと言っているのだ。

興奮で鼓動が高鳴る。脳内にまで振動して響かせている。

でも、急にその興奮が治まって冷静になった。


「どうして、貴方がそこまでするんですか?どうして、貴方があたしにそこまでするのですか?」


あたしは純粋な質問をぶつける。

狐月さんは眼を丸めた。

そんな質問は予想外と言わんばかりに慌てふためく。

「それは」と口ごもり、俯き、目を逸らす。

あたしは黙って返答を待つ。


「貴女に幸せになってもらいたいからです」


数十秒後に返答は出た。

 不幸せになりましたか?

かっこよく登場して助けてくれた直後に狐月さんの言葉を思い出して、あたしはまた吹き出して笑ってしまう。


「不幸せ、幸せって…なんですか?そこまで負い目に思うことないですよ。狐月さんのおかげで誘拐されたのは結果的に幸せになりましたから」

「っ……」


非日常になればあたしが幸せになると考えたから、差し出してくれるのか。

そう理解してあたしは笑いながら言う。

完全にあたしは棚からぼた餅じゃないか。誘拐されただけでこのラッキーはなんだろう。

何故か狐月さんはあたしが表現できない表情で固まった。あたしを凝視して。


「あ。誘拐犯って、狐月組の敵の仕業ですか?」

「いや、違う。あれは僕に恨みがあった人間の仕業」


あれ、違うのか。

思い出して訊いたらハッとして狐月さんは答えた。

ん?狐月組の敵じゃなく、狐月さん個人に恨みがあってあたしを誘拐したと言うことか。

まだ誘拐の標的があたしだった理由がわからない。

狐月さんは見ず知らずの少女が人質になれば助けに現れるヒーロータイプなのだろうか。

んん?そう言えば、狐月さんはあたしの名前を知っていたような。




〔電車大量殺人事件の唯一の生存者である“山本椿”さん18歳が、〇〇病院に入院していましたが昨夜、犯人と思われる何者かによって連れ去られました。“山本”さんの護衛をした刑事が一人死亡しました〕


 朝につけたテレビの番組全てがそのニュースを報道していた。

あたしはポカーン、と口を開いたまま視る。

あたしが狐月組の説明を聞いていたのと同じ…否、この事件は深夜だったろう。

十五万人という膨大な組織のボス直々に招待メールを送ってもらっている時に、世間ではとんでもないことが起きていた。

何故この事件は、あたしの非日常を上回るものを同じ日に発生するんだろう。

一体犯人はどんな人物なのだろうか。

警察は犯人像を割り出せたのか。

山本椿さんは無事なのだろうか。


「…なんで拐ったんだ?」


ふと、疑問に思った。

殺人犯は刑事を殺しておいて山本椿さんを誘拐したのだ。何故だ?

犯人の目的は目撃者であろう山本椿さんを始末することだったはず。

何故その場で殺さなかったのか。

それには理由があるはずだ。

殺人鬼の心理を知っているわけではないが、ドラマやワイドショーでそんなのがあると聞いたことがある。殺人鬼の犯行は心理分析できる。奇行さえも理由や原因があると導き出せるのだ。

推測するに、犯人は電車内で殺すことに拘っている。きっと山本椿さんを電車内で殺す気なのだ。

となると山本椿さんは、死亡確定。

でも疑問は一つだけじゃない。


「殺し方も違う」


殺し方があまりにも違った。

電車での大量殺人の殺害方法は喉や心臓を切り裂き絶命させるだったが、今回の刑事は首がない。

殺された刑事の死因は非公開で山本椿さんのインタビューをとろうと病院に集まっていた報道陣の目撃証言。首のない死体が落下してきたそうだ。

殺し方に拘らない殺人鬼なのか、たまたま首を切り離してしまったのか。

その場で首を切るなんてどんな凶器を使ったのだろうか。

ニュースだけでは疑問ばかりが浮かぶ。

せめて明らかになっている事実がわかればいいのだが。そこまで報道されない。

…狐月さんに会いに行こう。

立ち上がって、テレビにまた目が奪われる。

唯一の生存者で誘拐された被害者。同い年の少女。山本椿さんの写真が出た。

友人との写真だろうか。

顔の横でピースをする黒髪の少女。

比較的可愛い分類に入る顔立ち。

目が大きく、くっきりした二重。すっぴんでも十分居れる羨ましい整った顔。

笑顔が性格の明るさを示す。明るくて大人しそう。喧嘩は好まない。穏やかを好み、友達と楽しくお喋りをしそうな普通な女の子。

そうゆう印象を抱く。

それから、そうだ。

自分に似ていると思った。

何が、どこが、そう問われたら答えられないが、似ていると思ったのだ。

写真一枚だけでは彼女がどんな人間なのかはわからない。

人は外見で判断してはならない。

まぁ、格好で内面を表すこともあるけど。

あたしは携帯電話の機能で、山本椿さんの写真を撮った。



「来ちゃった!」

「………」


彼女のノリで狐月さんの家に訪問。

ピンポンで呼び出した狐月さんは、気に入らなかったのか沈黙を返す。


「ごめんなさい、彼女みたいなノリの訪問、許してください、ごめんなさい、嫌いにならないで、ごめんなさい」

「いや、き、嫌いにならない、ならないです…ゴメンナサイ」


素直に謝罪をすれば狐月さんは動揺して少しアクセントが可笑しい口調で謝罪し返す。


「悪いのはあたしですよ、えっと…今まずいですか?彼女さんがいるならば出直します、何時くらいがいいですか?」

「え?僕に恋人なんかいないです。全然問題ない、どうぞ」


狐月さんの背後を視て中を覗いてみるが誰かがいるとは思えなかった。

慌てて狐月さんは首を横に振り、玄関に入るようスペースを開ける。


「フリー?じゃああたし候補していいですかぁ?なんちゃって」


冗談を言って笑わせようとしたら、狐月さんは違う反応をした。

顔をボンと爆発したかのように真っ赤になり硬直する。

今あたしは何をしたっけ?と二秒前のことを思い出す。

恋人候補に名乗り出た。冗談で。

……ウブなのかな。うわ、超可愛いんですけど。

あたしはのほほんと癒されてしまった。


「お邪魔しますねぇ」


あたしは笑って狐月さんの横を通り中に入る。


「僕は貴女の恋人になることを望まない!!」

「……………」


部屋に入っていくと背後から狐月さんの声を投げられた。我に返った狐月さんの心もない言葉に、あたしはショックを受ける。

冗談だったのに、フラれた。あたしは恋人候補にすらなれないのか。酷い。酷すぎる。


「そうですか……」


リュックを胸に抱えてとぼとぼ歩く。

狐月さんのアパートの部屋はマンションの一室のように綺麗な部屋。

銀色の机にパソコンが置かれて、黒革のソファに紅色のカーペットが敷かれたワンルーム。隣に寝室があるが閉め切られてあたしはまだ視てない。


「ゴメンナサイ」


変なアクセントの謝罪が一つ。

傷付けたことを謝ったのかと思ったが、違った。


「例の事件を越える非日常を与えれるよう力を尽くします」


一瞬なんのことかわからず首を傾げる。

例の事件───レッドトレインだ。

あたしが朝テレビをつけてニュースを見たように、狐月さんもニュースを見たようだ。

非日常を求めるあたしのために、非日常を与えようとする狐月さん。

あたしの求める非日常は、その事件に刺激されている。

それを知っている狐月さんが、またもや事件に上回る非日常を見せ付けられたことに謝罪した。


「いいですよ、もうレッドトレインに関われなかったことは気にしませんから。それより、そのレッドトレインの情報がほしいんです。十五万人いるならなんかしらの情報があるはずでしょ」

「それなら今話題で盛り上がっているところだから見れるはずだ」


レッドトレインの情報が欲しくて来た。十五万人の狐月組ならば情報がもらえるはずだ。

期待に応えて狐月さんは携帯電話を開いた。

あたしは彼に近付いて携帯電話の画面を覗く。必然的に狐月さんと顔が近くなるが、ケータイを覗くには仕方ない。

ビクリッ、と大きく震え上がって狐月さんは離れる。


「なんですか…?見せてくれないんですか?」


片方の眉毛を下げてあたしが訊けば、狐月さんはボタンをパコパコと素早く押してからケータイだけを差し出した。

ありがとうございます、とお礼を一言告げて受け取り画面を見る。

狐月組の情報交換専用の掲示板。

一つのスレッド内が表示されていた。

タイトルは“血塗れの電車/レッドトレイン”。

[電車内、五十六人が首を刃物で切られて惨殺]

[完全なる殺戮]

[運転手も殺害。電車内はまさに血の海]

[画像貼。窓が返り血に濡れてて中が全く見えない。超こえ]

[被害者の中には○○高校の野球部が二名]

[被害者の一人は友達の知り合い]

[中には心臓一突きにされた人もいるらしいよ。殆どは首がパックリ裂かれたそうだ]

血塗れの電車の情報或いは噂が書き込まれていた。かなりの数で見るのが少し大変だ。半分くらいは被害者の友達だの知り合いだの知り合いの知り合いなど、失礼な書き込みでは被害者の名前を書き込まれていた。

それは飛ばしてさらさら見ていく。

立つのもなんだからリュックを抱えたままソファに座って欲しい情報を探していく。

流石に事件に関わる人間ではなければ捜査している者でしかわからない情報はないようだ。

血塗れの電車だけではなく昨夜の誘拐事件の情報も書き込まれていた。

[唯一の生存者は○○病院に入院しているらしい]

[友人が入院してたので探してみました。黒髪の高校生ぐらいの女の子が首に包帯を巻いていたのでその子だと思います]

[報道陣が集まってて、警察が警戒してる]

これは誘拐事件が発生する六時間前の書き込み。山本椿さんと思われる少女が病院内を歩いていたそうだ。もう歩けるくらい回復していたらしい。

そして事件発生直後の書き込みが[生存者が犯人に誘拐された!!!]だった。

[護衛していた刑事が殺害されたそうです]

[五階から護衛の刑事が落ちてきたらしい]

[生存者が犯人に拉致されたそうです。パトカーが走り回って犯人を追ってます。サイレン鳴り止みません]

[病院関係者は皆眠らされていた。犯人どんだけだよ。超すげぇ]

[刑事の頭が不明。死体に首がない]

[俺は落ちるの目撃した。先に硝子と血液らしきものが落ちてきたあとに、首のない死体が降ってきた]

事件発覚の直後。報道陣と一緒に野次馬になっていたメンバーの目撃証言まであった。

病院関係者が眠らされていた?

おいおいまじかよ。

犯人どんだけだよ。

書き込み主と同じ感想を持った。

犯人は裏社会に属しているんじゃないのか?


「何かいい情報はありましたか?」

「病院関係者は眠らされていたそうですよ、映画みたいですね…犯人はどっかの殺し屋?」

「さぁ…」


画面から目を離さずに狐月さんと話す。

どんどんと見てみれば、病院関係者の情報がいくつかあった。

近くの病院から医者が派遣され、倒れていた病院関係者を診察したそうだ。睡眠薬で一同は眠らされていた。

犯人は堂々と警察が警備する病院に入り、病院関係者に睡眠薬を嗅がせたのだ。恐ろしい。

生唾を飲み込む。

五十六人の人間を殺戮しただけでも十分恐ろしいのだが、病院関係者も警察も潜り抜けて守られていた山本椿さんを拉致したのは凄すぎる。


「だから狐月さん、敬語はいりませんって」

「う、うん……」


またスレッド内を動き回り情報を探しながら狐月さんに言う。狐月さんは口こもり頷いた。

[被害者・山本椿は埼玉県の高校生]

[小学生と中学生の同級生!ビックリ!大人しい子だった!寧ろネクラな方!…無事かな]

山本椿さんを知るメンバーからの情報もいくつかあったが、彼女と親しい人間はいないようだ。

[近所のレンタルビデオ店によく来ていた。暗いイメージ。ホラー系の洋画をよく観ていた]

そんな個人情報までも記されていた。

ホラー系の洋画か。話が合うかもしれない。あたしもよく洋画を観るから。親近感が湧く。

彼女の情報はそれくらいだ。

大人しくネクラなイメージを周りに与えるような少女。人見知りをするのか、或いは知り合い以外の人間には素っ気ない人なのかもしれない。

同級生と言うメンバーから山本椿さんの情報はなかったから目立つことはしない子だったんだろう。

写真では笑顔で明るいように見えたので、冷めきった性格ではないはず。

いや、逆かな。

冷めきった性格で明るく振る舞っているだけかもしれない。

ちょっと自分に寄りの性格なのかもしれない。


「ん?」


新しい書き込みには興味深い情報があった。

[首なし刑事は首を切られたわけじゃない。頭を吹っ飛ばされた]

頭を吹っ飛ばされた?

バッドでアンパン頭を打って飛ばしたように、頭が吹き飛ばされたというのか。

[頭を粉砕されたらしい]

[死体の周りには頭蓋骨と脳ミソが散らかってた]

[実は頭粉砕された殺人事件が前々からある。犯人同じ可能性が]

頭蓋骨粉砕だと?

あたしは顔をしかめる。何の凶器を使って頭を粉砕させるんだ。

やっぱり可笑しい。


「どうかした…?」

「気になるんです…凄く気になるんですよ。殺し方が極端に違う」

「殺し方?」


顔を上げれば狐月さんは目の前にカーペットの上に座っていた。なにもせずあたしの情報収集が終わるのを待っていたらしい。


「レッドトレインは刃物で首を裂いたのに、刑事には頭粉砕されてるんです。しかも頭を粉砕された殺人事件があるようで、その犯人だという可能性があるようです」


興奮して言って自分の手の中にあるのは狐月さんの携帯電話だということに気付く。

慌ててお礼を言って返す。


「それ…で?」


携帯電話を受け取り、あたしの言いたいことがまだわからない狐月さんが問う。


「犯人は二人、いると思います」

「二人?どうしてそう思うの?」

「殺人方法です。二種類ある」

「それは犯人の気分とか拘りなんじゃないの…?理由があって違う殺害方法なのかもしれない」

「それもありますね。電車内での首切りにはメッセージがあるとか、普段は頭を粉砕させる殺人犯なのかもしれない。でもあたしは…」


あたしはあたしの考えを口にする。


「山本椿さんが電車内で五十六人を殺害した犯人だと思うんです」


真剣に真面目に、あたしに告げた。

狐月さんは表情を変えないまま、あたしに問い掛ける。


「根拠は?」

「ありません、直感です」


あたしは一度目を閉じた。

そして開いて正直に答える。


「たた、彼女はあたしに似ている。もしもあたしが彼女だったならば────殺人を犯しても可笑しくはない。そう思うんです」


もしかしたらあたしがレッドトレインを起こしていたと昨日あたしは言った。

薄く笑ってあたしは、狐月さんの反応を待つ。


「貴女がそう思うならば、そうだと僕も思う。被害者が犯人ならば、刑事を殺したもう一人の殺人鬼がいて、レッドトレインの犯人を連れ去ったということ?」

「あたしはそう思います」

「それは何故?」

「それはわかりません。…でもあくまで予測ですから…実際は一人かもしれません。うむぅ、知りたいです。せめて現場を見れたらなぁ」


狐月さんがお前頭おかしんじゃ?と言わなかったことに安堵するが直ぐに不安になって自分の推測を否定する。

せめて現場を見れたら、なんて可笑しいことを言っているそんなの不可能に決まっているのに。


「じゃあ見に行こう」

「え?」

「病院の方は無理だろうけど、電車の方ならなんとか」

「コネがあるんですか!?」

「いや……不法侵入」

「…………」


あっさりと狐月さんはあたしの呟いた願望を叶えるため立ち上がった。

不法侵入。

なんとも魅惑的な響きだ。

コネで殺人現場に行くよりスリリングで楽しそう。あたしはにんまりと笑って頷いた。


「その前に狐月さん。あたし朝食抜いちゃいましたので食べましょ」

「ハンバーガーが好きだよね」

「はぁい。………なんで知ってるんですか?」

「えっいや………」


リュックを肩にかけて狐月さんのあとを追う。まるで前から知っていたような口振りに首を傾げる。

狐月さんはカチンと固まった。


「あーのぉ……もしかしてあたしのことを、前から知ってました?フルネームで知ってましたよね」


訊いてなかった質問をここでぶつけてみる。


「うん。僕は前から貴女を知っていた。街で見掛けてて…知ってた」

「街で見掛けただけで、どうして名前を?」

「………………………」


立ち尽くして沈黙する狐月さん。

キョトンとあたしは見上げる。

頭一つ分身長の高い狐月さんは俯いて前髪を垂らすが、今回は目の前で見上げているため表情がよくわかった。

あの可愛い顔だ。おどおどと視線を泳がしている。

ぎゅるる、とあたしのお腹が鳴った。ご飯食べながら聞こう。あたしは狐月さんの背中を押して急かした。


 マックで狐月さんから狐月組の武勇伝を聞かされた。

初期の狐月組、ある一人のメンバーに助けを求められて助けた。そのメンバーは主婦で、幼い子供が行方不明になり、子供を探して欲しいとのことだ。

狐月さんが呼び掛け情報を集め、そして幹部と共に探して見つけ出した。

その話がメンバー全員に伝わり、彼ら彼女達がそれを広め、その話に惹かれた人間が仲間となったそうだ。

その時点でメンバーは二百名。


「ただ迷子の子供を探しだしただけなのに、四倍になった」


狐月さんにとったら些細な親切だと言うのに、大事になったと言わんばかりだった。

あたしにとったらネット繋がりの主婦のために行動した狐月さん達は凄いと思う。そんな武勇伝を聞いたならば信用して集まってくるに決まっている。

ポテトフライをちまちま食べながら続いての武勇伝を聴く。

 日に日に増えていくメンバーに幹部達が楽しげに騒いでいた最中に問題が発生した。

違う組織、カラーギャングのスパイである一人のメンバーが誘ったオフ会に参加したメンバー達がリンチされたという。

ネット上に集う組織の抗争が始まった。

先ずはリンチされたメンバーとリンチされた事実を確認した上で、犯人の外見を聞き出して仕返しに出る。

狐月さんはそれだけして終わりにしようとしたが、相手側が宣戦布告をして、本格的な抗争が始まった。

狐月組の部下達は勝手に独断で行動し、相手側の組織と衝突し派手な喧嘩を行ったそうだ。

ネットから飛び出し、リアルで喧嘩。というか抗争。

独断で喧嘩をして警察に捕まれば、関わっていないメンバーにまで迷惑をかける。

狐月さんは通告した。

勝手な行動をするならば切り捨てると。

そして、明確な指示を与えた。

メンバーにいたハッカーの手を借り、敵組織のメンバー全員の身元を手に入れ一人一人に警告のメールを送信。

[これ以上我々狐月組に危害を加えるならばただではおかない]

そんなシンプルなメール。

大半が[危害は加えません]と返信してきたが残りは無反応或いは挑発なメールを返してきた。

警告を聞かなかった人間の情報を部下に与えて危害を加えるよう命令を下したそうだ。

殺しをされては困るため、その方法も的確に指示した。

そして狐月さんと幹部達は、敵のボスと幹部達と正々堂々タイマンをはり、勝利をし相手を解散させたそうだ。

その組織は名前を変えただけでまだ存在するとの噂があるが、狐月組の警告メールのおかげでメンバーは激減し今では脅威に値しないらしい。


「またスパイが来ても面倒だからオフ会も僕か幹部の許可が必要で、新メンバーはリア友限定の招待制に変えた。それからメンバーの身元がわかるリストもある。これは僕しか見れない」

「まじですか?」


後者のはとってもビックリな情報だ。携帯電話をパコパコいじってから狐月さんは見せてくれた。

メンバーリスト。

ハッキングで不当に入手した情報ではなく、メンバー本人に入力させたものらしい。

予めスパイ防止の為であり個人情報は守ると告げてあるので了承は得ている。

そんな個人情報を、あたしに見せているんだけど。それは一先ず置いておこう。


「かなり大変ですね、リストは見易いですが……十五万人を管理するなんて凄いです。というかリーダーシップが凄いですね、カリスマ性があるんですかね?狐月さんには」

「よくわからないけど……昔からリーダーの立場にいつの間にか立ってた」


無自覚なカリスマ性のリーダー。

それに惹かれて集った十五万人。

狐月さんには何かある。


「喧嘩慣れをしてるみたいですね。格闘技か何かをやってるんですか?」

「いや、格闘技はやってない」


おや、可笑しいな。

あたしを助けた時に見せたアクション。それにタイマンをはり勝利をおさめた話に、喧嘩で的確な指示をした話を聞くと狐月さんは喧嘩強い、格闘技をやっている人なんだと思ったのだが。違うのか。


「ハッカーって実在するんですね」

「うん。たまたま狐月組に感心を持ってて一応メンバーに入っているハッカーだけど、彼の情報はない」


格闘技をやらずただ喧嘩をして強くなっただけと理解して、好奇心で浮かんだ質問をする。

狐月さんがあるリストの一人の個人情報をあたしに見せた。

ハンドルネームはI・CHIP。

それしか表示されていない。

個人情報が、ない。


「彼はネット上の有名人。いや、詳しく言えばハッカーの中で神と謳われる存在なんだ」

「ああ、神ですか。ハッカーの神。スペシャリストですね?」

「そうゆうこと。彼を怒らせればきっと、このサイトは消えるだろうし僕が管理している個人情報も流失される」


凄腕のハッカーなのか。

個人情報を入力せず入っているのは彼だと言う。要注意人物なわけだ。


「でも、男だってことは知ってるんですね」

「ああ、彼は少女趣味だから」

「………俗に言うロリコン?」

「そう」


またパコパコいじって見せられた画面には、雑談スレで少女の魅力について熱く語るI・CHIPの書き込みがあった。

遠い眼差しになってしまうマニアックな話が永遠と書かれてある。荒らしではないかと疑いたくなるほぼ独り言のスレッド内だった。


「たまにしか顔を出さないけど、メールをすればすぐ協力してくれるはずだ。ネット上で困ったことが起きたら彼に頼んでみるといい」

「はぁ……わかりました」


とっても絡むのが怖いけど。


「ん?ネット上で困ったらって………狐月さんは助けてくれないんですか?」

「え?当然、助ける。ただI・CHIPなら力になるって…情報…」

「あ、そうですか。よかった、情報だけくれたら狐月さんは無関係になるじゃないかと思っちゃいました」

「そんな……ことは…」


ネット上で生きる知恵を与えてあとは放置、ということをされるんじゃないかと心配したがホッとしたのも束の間。狐月さんはちゃんと否定してくれなかった。


「え?違うんですか…?あたしの味方であたしの望みを叶えてくれるんじゃないんですか?」

「っ!僕は貴女の味方だ!僕は貴女の望みを叶える!」


店内にも関わらず、狐月さんは声を上げてはっきり告げた。店内にいた客が好奇の目を向ける。あたしはそれをチラリと視てから、狐月さんに向き直り吹き出して笑い出す。


「あははは、あたし狐月さんのそうゆうところ好きですよ。はっきり言うとこ」


はっきり言ってくれるところが好きだ。

そう言えば笑いだしたあたしから目を逸らしてポテトフライを口にした狐月さんは「ブフっ!」と吹いて噎せて耳まで真っ赤になった。

そのウブな反応も大好き。


「えーと?抗争直後にまた増えて五百人になったんですよね?」


噎せる狐月さんの背中を擦りながら話題を戻す。狐月さんは噎せりつつ頷いた。リア友で招待制になっても五百人になったのは凄い。尚且つ五百人から十五万人になったのだ。その経緯を是非とも知りたい。

 オパチョップというハンドルネームの主が主催する北海道のオフ会で事件発生。

酒の飲み過ぎで酔っぱらったメンバーの一人が事故に遭い、意識不明の重体で入院。

そこで起こした行動はメンバーに募金の呼び掛け。

入院費も治療費も狐月組が出した。五百人だ。少ない値段を出すだけでも集まった。

それは病院関係者と入院患者の耳に入り、そこからメディアに伝わり、雑誌に取り上げられ、また知名度を上げて人数が増えたそうだ。

オフ会でこれ以上問題が起こるならばオフ会を禁止する、と忠告を入れた。

それでも定期的にオフ会はあちらこちらで開かれているそうだ。

そして掲示板には救済募金の呼び掛けが存在しているらしい。

事故を起こしたオフ会の主催するオパチョップは、実は幹部の一人。つまりは狐月さんの顔見知り。

彼はとってもお喋りでお調子者。

彼の開くオフ会は別名“狐月組を語る会”で、主にオパチョップが熱く語るらしい。

もうかなりうざいほどに熱く、狐月組というより狐月さんの武勇伝を語るため、そのオフ会は超人気。

度々盛って話すがオパチョップの話し方が上手いため、オフ会は盛り上がりその盛り上がりに引き寄せられた他の客さえも巻き込んで盛り上がりその客がまたメンバーに入るそうだ。定期的にメンバーが増える原因はオパチョップだった。

オフ会が開催された埼玉、東京、千葉に狐月組のメンバーが増え続けた。サラリーマンから学生、そして店の定員まで。

会ったばかりの人間をメンバーに入れるため、狐月さんはオパチョップこと直水爽助(なおみずそうすけ)に厳重注意をした。

会ったばかりの人間をメンバーにしないよう心掛けて“狐月組を語る会”は今も定期的に開催されているそうだ。

最もその会に参加しているオパチョップ以外のメンバー全員は、狐月さんの本名さえも知らないらしい。

ボスは不明がいいんだよ!という幹部達の希望でオパチョップも狐月さんの武勇伝は語るも名前は話さないそうだ。

狐月さんの性格からしてオフ会には参加してないんだろう、一度も。

なんやかんやでオパチョップのオフ会騒動で、狐月組メンバーは千人。

驚くことに狐月組創立三ヶ月後の時点らしい。

 続いて出てきたハンドルネームは、パプキンジャックジャックリッパーという長ったらしい名前。

動物虐待が趣味な男の依頼で、賞金のかかった殺人犯を捕まえた。

結構有名な事件。レッドトレインには及ばないが、幼女を殺害した犯人であと二日で危うく時効を迎えるところだったそうだ。

その話はネットで話題になり、また人々を引き寄せた。

 依頼は様々。依頼専用の掲示板があり、そこで誰かが依頼して誰かが受ける。子守りに忘れ物の届けから、犯罪者確保やヤクザの抗争まで。

ヤクザの抗争。メンバー内にはヤクザまでいる。

メンバーに迷惑をかけなければいいため、そんな人間の入会も許しているそうだ。

しかし、ヤクザの抗争は些かまずかった。

依頼却下をしたら逆上して敵に回り、ヤクザとの抗争に発展。

致し方なく力に自信がある人間をかき集めて、抗争を行いヤクザ一組をぶっ潰した。

 その噂を聞き、同盟になりたがる他の組織が数多くいた。カラーギャングというより、ネットギャング。ネット上でチャットをして楽しむだけの無害なチームと三つの同盟を結んだ。

しかしその一つのチームのボスが不運の事故で亡くなってしまった。そのボスとは顔見知りでもあったのでそのチームの希望により、狐月組に吸収。百名追加。

同盟メンバーは掛け持ちで狐月組に入ってしまい、同盟メンバーが更に追加。

メンバーが人を呼び、着々と組織の人間は増えていった。ウィルス感染のように広がる。

依頼掲示板では度々、勇者が誕生した。

交友的な人間が毎日のように掲示板で雑談し、盛り上げた。

若者の間で都市伝説のように話題に出る。友達が友達を誘う。

小学生も中学生も高校生も大学生も会社員も主婦も老人も、日本中で感染するようにメンバーが集まる。

そして一年経った今、人数は約十五万人。


「ほう……なるほど」

「十人十色というし、十五万人いると色んな人間がいる。関わってみれば面白いはずだよ」

「そうですね。十五万人なら…」


呆けた声を洩らしてストローからコーラを飲む。

今聞いたメンバーには変わった人間しかいなかったが。


「十五万人という数が何より武器。貴女の味方になる。さっきのように情報収集も武器だ」

「情報は武器ですもんね…」


うんうん、頷く。

人数が武器。その人数が出す情報も凄い。

しかし狐月組の人数が魅力ではない。

狐月組の魅力は狐月組をまとめる狐月さんにあるだろう。

狐月組の行動力に団結力。力がある。

狐月さんあっての狐月組だ。

狐月さんが率いるからこそ魅力がある。


「狐月さんは非日常の人間と関わればいいって言いましたが……あたしは狐月さんだけで十分ですよ。貴方に会えて良かった」


狐月組に入れたより、狐月さんに出会ったことが一番の幸福だろう。

狐月組に入ったのと、狐月さんと知り合うのじゃあ利益は明らかに違うはずだ。

言うなれば彼は主人公。

主人公は人を惹き付ける魅力がある。そしてとんでもない活躍をするのが主人公。

そう言えば前に「主人公みたいな人と友達になろう」と考えたな、と思い出して笑う。

それが叶って楽しいことになっている。

今あたしの人生は最絶頂なのかもしれない。


「さぁ、現場に行きましょう!」

「う、うんっ」

「あれ、狐月さん、噎せた時の涙がまだ目にたまってますよ?」

「う、うん……」


燃えてきてあたしは席を立つ。

さっさと食べたものを片付ければ、狐月さんの目尻に涙が溜まっていた。言ってみれば、狐月さんは気のせいか泣きそうな顔で目を擦る。

 本来の目的である殺人現場に観覧に向かうため、駅に向かう。

一先ず例の電車が保存されている駅にいく。侵入は着いてから狐月さんが考えるそうだ。


「超ワクワクします」


あたしは興奮を隠さずに跳ねながら狐月さんの隣を歩く。

目的地までの電車代は狐月さん持ち。感謝しておく。

 ドンッ。

人気のない駅なのに人とぶつかった。

肩と肩がぶつかる。相手は同じ身長。

サイズの合わない大きなパーカーとズボンを着ていた。肩より長い髪と深々に被られた帽子が顔を隠す。


「ごめんなさい」


落ち着いた声が凛と鳴るように謝る。帽子を深々被っていたためあたしが見えなかったのだろう。帽子だけじゃない。あたしを避けたその人の前を歩いていた白い男の人の後ろを歩いていたせいでもある。

自分が悪かったと彼女はわかって素直に謝った。

彼女。

長い髪と輪郭とその声でわかった。女の子だ。

同じ身長のため僅かな隙まで彼女と目が合う。

くっきりとついた二重の長い睫毛の下には、大きな暗いブラウン色の瞳。

その瞳が強くあたしの脳裏に刻み込まれる。

そのまま彼女は目を逸らして白い男の後を追うように歩き出した。

その際に首に白い物が巻かれているのが見える。白い包帯。それから鉄が錆びたような匂いが香る。

あたしは振り返ってその二人を見た。

彼女は振り返ることはなかったが、視線に気付いて白い男の人が振り向く。

白い髪に白いYシャツの華奢な身体の男の人。

冷めた眼であたしを視た男の人はあたしより上の方に目を向けた。

あたしの後ろにいる狐月さんを視たようだ。

またあたしに目を向けて、にっこりと笑った。チェシャ猫のような笑顔。つまりは冷たい笑み。吊り上げた笑みにゾッとして顔を逸らす。

ただの笑みにこんな恐怖を感じたのは、生まれて初めてだ。

思わず狐月さんの腕にしがみつく。

狐月さんが震え上がったのと同時。


「…っぅあ…ああぁ、っあああああああああっ!!!あああっ!!!!」


男の醜い悲鳴が駅に響き渡った。

駅の中だ。あたしと狐月さんは顔を合わせる。

非日常を報せる警告音。

狐月さんがあたしの腕を掴み、駆け出す。さっとあたしの腰に腕を持ち上げ、改札を一緒に飛び越える。着地をして悲鳴のしたホームの階段に向かった。

悲鳴の主の男は階段の中間辺りに腰を抜かして震えている。

彼が目にしたものを、あたしも視た。

 死体。死体だ。男達の死体。

階段下のホームに複数の死体が視えた。

血塗れだ。血溜まりだ。

一つの死体に首から上が無かった。頭蓋骨と脳味噌の残骸がそこにある。歯や目玉らしきものもあった。まるで沸騰して爆発したような感じだ。

もう二つ。一つは心臓を刺されたようだ。もう一つは首をパックリと引き裂かれていた。

血溜まりが広がる。

死体。死体だ。血塗れだ。おぞましい死体。どうやってやった。どんな大きな刃物で喉を裂いた。どうゆう凶器で頭を吹き飛ばした。死体。死体だ。血塗れだ。おぞましい。

あたしは狐月さんの腕を握り締めた。

それだけでどうゆう意味かわかった狐月さんがあたしを抱き締めてその光景から逸らせる。

狐月さんの腕の中。目を見開く。

何も聴こえない。真っ暗な視界。

ふと。

巻き戻したかのように。

その映像が流れた。


「ごめんなさい」


凛と鳴るように落ち着いた声。

帽子の下の暗いブラウンの瞳。

黒髪の間から見えた首の包帯。

あの丸い大きな瞳。

突然思い出す。

今朝みた。山本椿さん。レッドトレインの唯一の生存者であり誘拐された被害者。自分に似た少女。

彼女だ。

あの瞳が、重なる。

山本椿。彼女だ。

あたしは狐月さんの腕から抜け出し、改札を飛び越えてさっきの二人組を探す。

階段を駆け降りて探した。

あの帽子の被ったパーカーの少女と白い髪の青年を探す。

でも。見付からない。

見付からない。どこにもいない。いない。いないっ!いないいないいないっ!いな──。


「舞中よぞらさん、どうしたの?」


肩を叩かれ、あたしは震え上がる。

振り返れば、狐月さん。


「えっ…と」


ドクドクドクドクドクドク。

興奮している。心臓が速いリズムを刻んでいる。

あのおぞましい死体。レッドトレイン関連の死に方。山本椿と白い男。白い男が武器を隠し持っているようには見えなかったが少女なら隠し持っていても可笑しくはない。

口を押さえて俯く。


「舞中よぞらさん?」


狐月さんが心配して顔を覗く。

誘拐されたはずの山本椿が男といた。そして先程までいたホームにレッドトレイン関連と同じ殺害方法の死体。首を切られた死体と心臓を刺された死体と頭を吹き飛ばされた死体。自ら男についていった山本椿。

レッドトレインの唯一の生存者である山本椿が多量殺戮した犯人。頭を吹き飛ばす殺人事件の犯人が恐らくあの白い青年。二人は仲間。

二人の正体は連続殺人犯。


「──────────あはっ」


頬が緩み、笑みが溢れ落ちる。


「あははははっ!」


人が集まり騒ぎになる駅であたしは笑い出す。


「狐月さんっ」


あたしは抑えきれない興奮を喜び味わいながら笑う。


「あたしの直感は当たってました」


笑みを隠しもせず狐月さんに囁く。


「彼女が犯人です。山本椿さんが犯人なんです」




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