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アイコン三国志 作者:小金沢

第十章 秋風五丈原

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〇九六   出師の表

~~~蜀 成都 諸葛亮邸~~~


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「余、曰く」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「臣亮もうす」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「劉備の馬鹿が死んだせいで余にばかり面倒を押し付けられている。
そもそも劉備の馬鹿が興した蜀の力などたかが知れている。
魏に勝とうなどと考えるほうが愚かだ」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「先帝創業未だ半分ばならずして、中道に崩殂せり。
今、天下三分し益州は疲弊す。
此れ誠に危急存亡の秋なり」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「だが全知全能なる余に不可能はない。余が指揮をとれば話は別だ。
北へ遠征し魏を片付けてやるからその間、
貴様ら無能どもは余計なことをせずにおとなしくしていろ」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「然れども待衛の臣、内に懈らず、忠志の士、身を外に忘るるは、
蓋し先帝の殊遇を追い、これを陛下に報いんと欲すればなり。
誠に宜しく聖聴を開張し、以て先帝の遺徳を光かし、志士の気を恢弘すべし。
宜しく妄りに自ら菲薄し、喩えを引き義を失い、もって忠諌の路を塞ぐべからず。
宮中府中、倶に一体と為り、臧否を陟罰するに、宜しく異同あるべからず。
若し姦を作し科を犯し、及び忠善を為す者有らば、宜しく有司に付して、
其の刑賞を論じ、以て陛下平明の治を昭らかにすべし。
宜しく偏私して、内外をして法を異にせしむべからず」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「成都に残してやる連中のなかで郭攸之かくゆうし董允とういん
堅物で口うるさい馬鹿どもだから、
劉禅の馬鹿の周りに配置してやればさぞ困るだろう。
費褘ひいという変人も要職に据えればきっと何かしでかすに違いないから、
抜擢しておいてやろう。喜べ」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「侍中・侍郎郭攸之・費褘・董允等は、此れ皆良実にして志慮忠純なり。
是を以て、先帝簡抜して以て陛下に遺せり。
愚以為えらく宮中の事は、事大小と無く、悉く以てこれに諮り、
自然る後に施行せば、必ずや能く闕漏を裨補し、広益する所有らんと」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「そうそう、余の留守中に危急の事態が起こったら向寵しょうちょうを使え。
なんの使い道もない男だが、余がこのような時に備え後事を託した者だと聞けば、
魏や呉の愚か者は恐れおののき、たやすく兵を退くことだろう。
クックックッ……まったく余の威光は偉大であるな」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「将軍向寵は、性行淑均、軍事に曉暢す。
昔日に試用せられ、先帝これを称して能と曰えり。
是れを以て衆議寵を挙げて督と為す。
愚以為えらく営中の事は、事大小と無く、悉く以てこれに諮らば、
必ずや能く行陣をして和穆し、優劣をして所を得しめんと」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「まあおとなしくしていろと言ったが、
余の留守中はせいぜい羽根を伸ばすがいい。鬼のいぬ間になんとやらだ。
どうせ貴様らのような小人がなにを企もうと馬鹿の考え休むに似たりだ。
なにをしようと余には一切影響を及ばさぬ。好きにしろ」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「賢臣に親しみ、小人を遠ざくる、此れ先漢の興隆せし所以なり。
小人に親しみ、賢人を遠ざくる、これ後漢の傾頽せし所以なり。
先帝在しし時、毎に臣と此の事を論じ、
未だ嘗て桓・霊に嘆息痛恨せずんばあらざりしなり。
侍中・尚書、長史・参軍は、此れ悉く貞亮死節の臣なり。
願わくは陛下これに親しみこれを信ぜよば、
則ち漢室の隆んなること、日を計りて待つ可きなり」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「ああ、それにしても面倒だ。
余の比類なき頭脳をかような些末事にわずらわせることが、
人類全体にとってどれだけの損失かわかっているのか?
軍中のことに思いをめぐらすよりも、
草廬にこもって書の一つでも眺めている方が百倍は有意義だ。
劉備の馬鹿めが三度も汚い面を寄越したせいで、
断るのも面倒と血迷って軍師を引き受けてしまったが、
あれは余の一世一代の過ちであった。
偉大なる余は自身の過ちを認めるにやぶさかではない」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「臣は本布衣、南陽に躬耕す。
苟しくも性命を乱世に全うせんとし、聞達を諸侯に求めず。
先帝、臣の卑鄙なるを以てせず、猥りに自ら枉屈し、
臣を草盧の中に三顧し、臣に諮うに当世の事を以てせり。
是に由りて感激し、遂に先帝に許すに駆馳を以てす。
後、傾覆に値い、任を敗軍の際に受け、命を危難の間に奉ず。
爾来二十有一年なり。
先帝、臣が謹慎を知る。故に崩ずるに臨んで臣に寄するに大事を以てせしなり。
命を受けて以来、夙夜憂歎し、付託の効あらずして、
以て先帝の明を傷わんことを恐る。
故に五月瀘を渡り、深く不毛に入れり」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「とにかく南蛮の猿どもは蹴散らしてくれた。次は魏の狗どもだ。
蜀の脆弱な兵力でそれができるのは天下に余、一人きりだ。
貴様ら凡俗どもはせいぜい、
日に夜に余への感謝を忘れることないようにするのだな。
それが貴様らにできる唯一の事だ。
余という存在を崇め奉れることを喜び、むせび泣くがいい」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「今、南方已に定まり、兵甲已に足る。
当に三軍を奨率し、北のかた中原を定むべし。
庶わくは駑鈍を竭し、姦凶を攘除し、漢室を興復し、旧都に還さん。
此れ臣の先帝に報いて、陛下に忠なる所以の職分なり。
損益を斟酌し、進んで忠言を尽くすに至りては、則ち攸之・費褘・允の任なり。
願わくは陛下臣に託するに賊を討ち興復するの効を以てせよ。
効あらずんば則ち臣の罪を治め、以て先帝の霊に告げよ。
若し徳を興すの言無くんば、則ち攸之・費褘・允の咎を責め、以て其の慢を彰せ。
陛下も亦宜しく自ら謀り、以て善道を諮諏し、
雅言を察納し、深く先帝の遺詔を追うべし。
臣、恩を受けて感激に勝えず。
今、遠く離るるに当り、表に臨んで涕泣し、云う所を知らず」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「――清書できたか」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「はいです。さすが御主人様です。千年先まで残る名文です。
これを読んで泣かない奴は人じゃないです」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「当然だ。劉禅の馬鹿息子に届けてやれ」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「はいです。馬謖の馬鹿に持って行かせるです」


~~~蜀 成都 宮廷~~~


挿絵(By みてみん) 劉禅りゅうぜん
「…………うん、ぜんぜん意味がわかんないや。
スイシノヒョウ(出師の表)だっけこれ?
難しいし、達筆すぎるし、漢字ばっかりだし」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「漢字しかねーよです」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「文句は清書をした黄月英に言え。
まあ気に病むことはない。余の高尚な金言が貴様ごときに通じるはずもない」


挿絵(By みてみん) 郭攸之かくゆうし
「し、し、諸葛亮丞相! わ、わしは感動しましたぞ!」


挿絵(By みてみん) 董允とういん
「あ、あなたの傲岸不遜な振る舞いにばかり目が行っていましたが、
劉禅陛下を、この国を、そして我々をこんなにまで想っていてくれたとは!」


挿絵(By みてみん) 向寵しょうちょう
「--・-- --・ ・-・・ ・・ ・・-・・ ・・-(アリガトウ)」


挿絵(By みてみん) 劉禅りゅうぜん
「…………通じてるヤツもいるみたいだな」


挿絵(By みてみん) 馬謖ばしょく
「うん? そういえば丞相が留守を任せた連中のうち、費褘ひいがいないな。
北伐の見送りもせずに何をしてるんだ」


挿絵(By みてみん) 劉禅りゅうぜん
「さあ? あいつのことだから昼寝でもしてるんじゃない?」


挿絵(By みてみん) 蔣琬しょうえん
「どうも~アンジェリーナ・ジョリーです! あっはっはっ違うか」


挿絵(By みてみん) 劉禅りゅうぜん
「うわっびっくりした!」


挿絵(By みてみん) 尹黙いんもく
「し、蔣琬殿! ぎ、玉座の後ろから現れるとはなんと無礼な!」


挿絵(By みてみん) 蔣琬しょうえん
「陛下を驚かそうと思って昨日の晩から隠れてました。
ドキがムネムネしたでしょ? あ、逆か!
――それはそうと酷いですよ丞相。出師の表でおじさんには言及してないなんて」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「ほう。貴様に留守居役が務まるとでも?」


挿絵(By みてみん) 蔣琬しょうえん
「こう見えてもおじさん、宝石の鑑定士だったんですよ。関係ないけど。
丞相が無視するから昨日ショック死して、
いま生き返ったところです。あっはっはっ」


挿絵(By みてみん) 馬謖ばしょく
「あ、あいかわらずテキトーな男だ……」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「なるほど。貴様に任せればもっと劉禅を困らせられたな。
いいだろう。長史補佐にしてやる」


挿絵(By みてみん) 尹黙いんもく
「し、蔣琬を長史(事務次官)補佐などと大役に……」


挿絵(By みてみん) 劉禅りゅうぜん
「留守番が決まったから、次は北伐(北方遠征)メンバーの発表だな。
軍議場でやるんだろ? 長い遠征になりそうだけど気をつけてな。
お前に何かあったら蜀は滅亡するから」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「フン。貴様に言われるまでもない。
無能は無能らしく何もせずに呆けているがいい」


~~~蜀 成都 軍議場~~~


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「北伐メンバーを発表するからお前ら名前を呼ばれたら返事しろです」


挿絵(By みてみん) 馬謖ばしょく
「まず前軍都督にギエン、張翼、王平」


挿絵(By みてみん) 楊儀ようぎ
「我が頭脳によりすでにギヱンは兀突骨を超えた。それを見せてやろう」


挿絵(By みてみん) 張翼ちょうよく
「大役を仰せつかり光栄です!」


挿絵(By みてみん) 王平おうへい
「がってんだちきしょうめ!」


挿絵(By みてみん) 馬謖ばしょく
「続いて後軍に李恢、呂義。左軍に馬岱、廖化」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「はッ!」


挿絵(By みてみん) 呂義りょぎ
「はい」


挿絵(By みてみん) 馬岱ばたい
「はいな」


挿絵(By みてみん) 廖化りょうか
「久々の戦だ! 任せていただこう!」


挿絵(By みてみん) 馬謖ばしょく
「右軍に馬忠、張嶷。
中軍は鄧芝、高翔、呉班、そして私、馬謖。
……誰か忘れているような。ああ、呉懿だ」


挿絵(By みてみん) 馬忠ばちゅう
「燃えるように熱い戦いを見せよう!」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「承知」


挿絵(By みてみん) 鄧芝とうし
「わ、わ、私は、その、なんと言いますか、ええと、あの」


挿絵(By みてみん) 高翔こうしょう
「了解した」


挿絵(By みてみん) 呉班ごはん
「へい」


挿絵(By みてみん) 呉懿ごい
「はいはい、いいですよ」


挿絵(By みてみん) 馬謖ばしょく
「遊撃隊に張苞、関興、星彩。兵站は李厳だ」


挿絵(By みてみん) 張苞ちょうほう
「腕が鳴るぜ!」


挿絵(By みてみん) 関興かんこう
「…………」


挿絵(By みてみん) 星彩せいさい
「張苞には負けてらんないって関興もあたいも気張ってるよ!」


挿絵(By みてみん) 李厳りげん
「李平だ」


挿絵(By みてみん) 馬謖ばしょく
「は?」


挿絵(By みてみん) 李平りへい
「李平に改名したんだよ。
飲み屋の姉ちゃんが『厳』なんていかつくてしょうがねえって言うからよ」


挿絵(By みてみん) 馬謖ばしょく
(そんな話は今はどうでもいいだろ……)


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「…………あれ?」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「ちょっと待つッスよ。
自分と雲緑が呼ばれてない気がするんスが、聞き漏らしたッスか?」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「喜べ。老い先短い老人と小娘には北の寒風はこたえると思ってな。
遠征から外してやった」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「……それは聞き捨てならへんな。
星彩や月英はんもおるのに、ウチがおらんのはおかしいやろ。
それにウチの亭主はそんじょそこらの老人とはわけが違うで!」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「ウス! この趙雲子龍、齢97の老骨とはいえ
まだまだ誰にも引けは取らないッス!」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「老人なことは否定しないです」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「ならばお達者倶楽部には先鋒を命じてやる。
老骨に鞭打って可能な限りの敵を引きつけろ」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「任せるッスよ!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「だが御老体の寿命が凍土で尽きても面倒だな。鄧芝を副将につけてやろう。
老いぼれ同士で積もる話もあるだろうからな」


挿絵(By みてみん) 鄧芝とうし
「わ、私は丞相よりは年上ですが、でもまだ気だけは若いと申しますか、
も、もちろん将軍趙雲には及びませんが。
ああっ。将軍趙雲なんて言葉が謎の逆転を――」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「黙れ。さっさと行け。老骨どもに露払いさせ、余はその後を悠々とついていく。
せいぜい道を掃き清めておくがいい」


~~~魏 洛陽の都~~~


挿絵(By みてみん) 曹叡そうえい
「知っての通り僕は、父の曹丕に冷遇されていた。
死ぬ直前まで後継者には指名されなかったし、
帝王学はもちろんのこと、父から何かを教わった記憶もない」


挿絵(By みてみん) 曹真そうしん
「…………………」


挿絵(By みてみん) 曹叡そうえい
「だから君たちが頼りだ。魏の未来は君たちにかかっている。
無力な僕に代わり、この国と民を守ってくれたまえ」


挿絵(By みてみん) 曹真そうしん
「ああ、俺たちを頼ってくれ陛下!
俺は関中に駐屯し、諸葛亮を丸呑みしてやる!」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「ノープロブレムですよ陛下。
孫権への備えはミーにお任せください。エレガントな勝利を約束しましょう」


挿絵(By みてみん) 陳羣ちんぐん
「政治のことは全て私にお聞きください」


挿絵(By みてみん) 鍾繇しょうよう
「陳羣だけではないぞ。曹丕陛下のもとでワシら軍師は冷遇されとったからな。
慣れない政務に駆り出されたおかげで、政治も軍事もお手の物だ。なあ、王朗!」


挿絵(By みてみん) 王朗おうろう
「わ、私は決して冷遇されたなどとは露ほども思っていませんが……。
と、とにかく私になんなりとお命じください!」


挿絵(By みてみん) 劉曄りゅうよう
「軍師だろうと文官だろうと与えられた職務は遂行するだけだ。
それができない者は二流だよ」


挿絵(By みてみん) 華歆かきん
「…………と、とにかく我々は陛下のため、国のため全力を尽くす所存です」


挿絵(By みてみん) 蒋済しょうせい
「賈詡さんも程昱さんも亡くなったが、新しい人材も次々と出てきています。
それに国を支えるのはここにいる者だけではありません。
荊州には亡くなられた曹仁将軍に代わり曹洪様と徐晃将軍が入り、
呉と蜀の双方ににらみを利かせています」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
「……………………」


挿絵(By みてみん) 蒋済しょうせい
(おい司馬懿、お前も何か言わないか)


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
「え? ええと、わ、わ、私にできることはただ一つ、
陛下が死ねと命じられたら即座に死ぬことだけです!」


挿絵(By みてみん) 曹叡そうえい
「――無学な僕だが、諸君の忠誠心はよくわかっているつもりだよ。
期待させてもらう」


挿絵(By みてみん) 陳矯ちんきょう
「へ、陛下! 急報が入りました!
諸葛亮が大軍を催し、漢中を出発したとのこと!
長安を目指していると思われます!」


挿絵(By みてみん) 曹真そうしん
「早速来やがったか!
南中をたらふく平らげた奴らは、必ず北へ遠征を企てていると思っていたぞ。
俺が国境線を一歩たりとも越えさせはしない! すぐに関中へ戻ろう!」


挿絵(By みてみん) 劉曄りゅうよう
「待て。蜀軍は呉と同盟し南中を平定したいま、
兵力の大半を北へ振り分けられる。
曹真の兵だけでは心もとないし、今から戻ったのでは間に合うまい」


挿絵(By みてみん) 王朗おうろう
「わっはっはっ! 心配めさるな!
長安には夏侯楙かこうぼう様が駐屯されているし、西涼太守の韓徳かんとくもいる。
彼らに任せておけば、曹真殿が到着する前に蜀軍など片付けてくれるだろう!」


挿絵(By みてみん) 鍾繇しょうよう
「…………夏侯楙様に韓徳か」


挿絵(By みてみん) 蒋済しょうせい
「ああ、不安ですね。荊州からも軽騎兵を差し向けましょう。
張郃殿あたりが適任かと」


挿絵(By みてみん) 劉曄りゅうよう
「それにもう一つ不安がある。――司馬懿」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
「ふえっ!? わ、私をお呼びですか!?
わ、わかりました! 見事に自刃してみせます!」


挿絵(By みてみん) 劉曄りゅうよう
「落ち着け。お前に自刃を命じるのは私ではなく陛下だ。
それに自刃するのは、この作戦に失敗してからにしてもらおう」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
「は、はあ……。
私めのような人間のクズに命じられる作戦とはなんでございましょうか」


挿絵(By みてみん) 劉曄りゅうよう
「念のため、お前には上庸じょうように向かってもらう」


挿絵(By みてみん) 華歆かきん
「上庸? するともしや劉曄殿は……」


挿絵(By みてみん) 劉曄りゅうよう
「ああ。諸葛亮のことだ。これがただの北方遠征とは思えん。
二段構えの策を練っているに違いない。
上庸を動かす一手を、打ってこないとは言い切れないだろう……」


~~~~~~~~~


かくして諸葛亮は出師の表を発し、北伐の兵を挙げた。
先手を取った蜀軍は長安を目指す一方で、ある奇策を打っていた。
劉曄の目はそれを看破したのか、それとも……?

次回 〇九七   孟達奇談
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