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アイコン三国志 作者:小金沢

第九章 南中の戦い

94/125

〇九三   女王と獣王

~~~銀坑洞~~~


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「悪人面にはああ言ったけどよ。だはははは!
頼りになりそうな部族なんて他にいたっけか?」


挿絵(By みてみん) 孟優もうゆう
「兄ちゃん……心当たりが無いのにあんな大口叩かないでよぉぉ」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「ぶあっははは! だってああでも言わないとあの場で殺されてたぜ!
なあ朶思王よ、なんか強い部族に心当たりはねえか?」


挿絵(By みてみん) 朶思王だしおう
「む、むう……。ちょっと今は思い当たらんが……」


挿絵(By みてみん) 孟優もうゆう
「こいつ本当に使えないよぉぉ。やっぱり殺しちゃおうよ兄ちゃん」


挿絵(By みてみん) 朶思王だしおう
「ま、待て! もう少しで思い出す!
もう少しで思い出すから刃物をしまって――」


挿絵(By みてみん) 帯来たいらい
「お困りのようだな、大王」


挿絵(By みてみん) 南蛮の交渉人・帯来洞主


挿絵(By みてみん) 孟優もうゆう
「ああ、帯来義兄ちゃん。援軍に来てくれたんだね!」


挿絵(By みてみん) 帯来たいらい
「兵も連れてきたが、それよりも俺に名案があるぜ。
木鹿ぼくろく大王を頼ったらどうだ?」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「おお木鹿か! がはははは! そいつはいい! あの野郎を忘れてたぜ!
あいつが力を貸してくれたら蜀軍なんざ恐るるに足りねえぞ!」


挿絵(By みてみん) 帯来たいらい
「それでは、俺が木鹿大王を説き伏せてこよう。
なに、我々が敗れれば次は自分たちも危ないとわかっているだろう。
利害は一致する。必ずや協力を得られるはずだ……」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「ぐふふふふ……。これで勝ったな!
悪人面や蜀軍どもの驚く顔を見るのが待ち遠しいぜ!
よし、酒盛りしながら帯来の帰りを待とうぜ!」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「おやおや、わらわの弟の帯来や木鹿大王に仕事を任せて、
自分たちはのん気に酒盛りかい?
まったく呆れたもんだねえ! 一度や二度負けたくらいで蜀軍が怖いのかい?
自分たちだけで蜀軍を蹴散らしてやろうっていう気概のある男はいないのかねえ」


挿絵(By みてみん) 猛る南蛮王の妻・祝融夫人


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「か、母ちゃん!」


挿絵(By みてみん) 孟優もうゆう
「ね、義姉ちゃん……。
で、でも一度や二度じゃなくてぼくらはもう五度も負けてるんだよぉぉ」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「妾はまだ一度も負けちゃいないよ!
だらしのない連中ばかりだね。だったら妾が手本を見せてやるさね!」


挿絵(By みてみん) 孟優もうゆう
「ああ……義姉ちゃんが出撃しちゃったよぉぉ」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「ぶはははは! あいかわらず母ちゃんはかっこいいなあ!
なあに、母ちゃんの腕なら心配いらねえよ。
さあ、母ちゃんが敵将の首を挙げてくるのを、酒でも飲みながら楽しみに待とうぜ!」


~~~蜀 馬忠・張嶷軍~~~


挿絵(By みてみん) 馬忠ばちゅう
「張嶷殿、孟獲軍が珍しく攻撃を仕掛けてきたぞ。
連敗してからそうそう動かなくなったんだが……何か策でもあるのかな?」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「笑止」


挿絵(By みてみん) 馬忠ばちゅう
「おおっ。さすが張嶷殿だ! 敵の思惑など全く意に介さずに出陣したぞ。
勝負を挑まれたら応じるだけってわけだな!」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「…………!!」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「のこのこ出てきやがったね!
さあ、南中王の妻・祝融が相手になってやるよ!」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「…………御免」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「なんだい? 戦わずに逃げ出すなんてだらしのない奴だねえ!
逃がしゃしないよ! このブーメランを喰らいなッ!!」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「!?
…………不覚」


挿絵(By みてみん) 馬忠ばちゅう
「くっ! 張嶷殿が捕らわれてしまった……」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「あっははは! 蜀軍の男なんてこんなものかい。
アンタは逃げずに向かってくるんだろうねえ?」


挿絵(By みてみん) 馬忠ばちゅう
「誤解するな。張嶷殿は御婦人に向ける刃は無いと、戦いを避けただけだ。
だが私は捕らわれの張嶷殿を見殺しにはできぬ。受けて立とう!」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「フン! 戦場で男も女も関係ないさね。
アンタらの軍にも女戦士はたくさんいるだろうが」


挿絵(By みてみん) 馬忠ばちゅう
「張嶷殿は己の信条に従ったまでのことだ。
さあ、そんなことよりも行くぞ! 西の果て! シルクロードの果ての果て!
土耳古が奥義、油相撲の真髄をとくと味わうがいい!」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「む!? 奴の体から滝のように汗が吹き出している……。
そ、それで何をするつもりだ! な、なんと不潔な! 近寄るなあッ!!」


挿絵(By みてみん) 馬忠ばちゅう
「甘い! 張嶷殿を襲った時に軌道は見極めた!
そんな攻撃は私には――ん? こ、これは……」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「おやおや、ギリギリで避けられたようだが、摩擦で火がついたようだねえ」


挿絵(By みてみん) 馬忠ばちゅう
「わ、私としたことが! うわああああああっ!!」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「あっはははは! ざまあないったらありゃしないよ!
ほらほら、火は消してやるからおとなしくおし!」


~~~蜀軍 本陣~~~


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「ち、張嶷と馬忠が孟獲の妻に捕らわれただと!?」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「そうか。蛮族は女も野蛮なのだな。
それで兵糧の手配はどうなって――」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「じ、丞相! そんなことよりも
早く孟獲と交渉をしなければ張嶷らが殺されてしまいますぞ!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「知ったことか。
女子供に負けるような弱将を処刑してくれるなら手間が省けるではないか」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「んぐっ…………」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「張嶷先輩たちは優しいから、女性相手に遠慮があったんじゃないスか。
でも放ってはおけないッス。自分が行って取り返してくるッスよ!」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「待ちやアンタ。目には目を、女には女や。
祝融はんとやらはウチが射倒してやるっす!」


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
「ちょっと待ったコーーール! 面白そうだからアタシがやるっキャ!」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「脇役は引っ込んでろです。私が殺ってやるです」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「横から出てきてずるいっすよ! だったらジャンケンで決めようや」


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
「よーし、恨みっこなしだにゃ。ジャーンケーーン!!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「ああ、姦しい。誰でもいいから外でやれ」


~~~蜀 馬雲緑軍~~~


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「――ってことでジャンケンに勝ったウチが戦うっすから、
アンタらは手ぇ出さんといてや」


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
「わかってるっキャ」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「死んだら次は私が戦うです。安心して殺されて来るです」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「ウス。飛び道具に気をつけるッスよ」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「……で、女の戦いになんでアンタがついてきてるんや?」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「妻の戦いは夫の戦いッスよ。自分が見てるから安心して戦うッス!」


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
「ヒューヒュー!」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「ただでさえ暑いのに熱くて死にそうです」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「やかましわ!」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「さっきから小娘どもがうるさいねえ。
捕虜を取り返しに来たのかい? だったら安心おし。
亭主を5回も解放してくれた礼に、生かしておいてやってるよ」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「そりゃおおきに。でも勝負となれば話は別っすよ!
ウチは趙雲が妻、馬雲緑や! この矢の照準からは逃がさへんで!」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「フン! 距離をとれば妾と互角に戦えるとでも思ったのかい?
その浅はかな考えを南中王が妻、祝融が粉々に砕いてやるさね!」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「!? チッ……。ブーメランの回転が強すぎて矢が弾かれとるわ……」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「どうしたんだい? 威勢が良かったのは最初だけかいッ!?」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「雲緑! 一矢では足りなくても、二の矢、三の矢と継げば話は変わるッスよ!」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「言われんでもわかっとるわ! ちっとは自分の妻を信用せんかいッ!」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「む……。こ、これは立て続けに同じ場所を狙い撃つことで、
威力を倍増させてるのかい……ッ!?」


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
「高速回転するブーメランの同じ場所を狙い撃つなんてさすが雲緑っキャ!」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「妾のブーメランの軌道を変えられただと!? な――――ッ!?」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「――勝負あり、やな」


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
「すごい! ブーメランに意識を向かせて、
その隙に間合いを詰めて剣を喉元に突きつけたにゃ!」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「それにしても鮑三娘は解説キャラがお似合いです」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「な――なぜ殺さない!? 情けを掛けたつもりかい!?」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「アンタが死んだら、亭主が泣くやろ」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「ぐっ…………。張嶷とやらといい、蜀の連中は甘ちゃんばかりだね!
貸しは作らないよ! 捕虜は返してやるからさっさと消えな!」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「うす。おおきに」


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
「雲緑にゃんかっこいいっキャ! 姐さんと呼ばせてもらうにゃ!」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「雲緑! 鮮やかな勝利ッスよ! 惚れ直したッス!」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「やめや。ひとが見とるわ」


挿絵(By みてみん) ??
「ママ! 大丈夫?」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「花鬘! ここは危険だよ! 妾は平気だから近寄るんじゃないよ!」


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
「へ? あの子…………」


挿絵(By みてみん) 花鬘かまん
「………………」


挿絵(By みてみん) 南蛮王の娘・花鬘


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「なんや、娘もおったんか。なおさら殺さへんで良かったわ」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「馬雲緑と言ったね。次に戦場で会った時は、手心を加えるんじゃないよ!」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「うす。捕虜も返してもろたし、貸し借り無しや」


挿絵(By みてみん) 馬忠ばちゅう
「面目ない。助かりましたぞ馬雲緑殿」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「感謝」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「さあ、帰るよ花鬘! 出直しだ!」


挿絵(By みてみん) 花鬘かまん
「うん」


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
(あの子、孟獲の娘なのに索にゃんを助けてたっキャ?
どういうことだにゃ……?)


~~~孟獲軍 本陣~~~


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「……蜀軍は強い。いまいましいけどそれは認めるしかないさね。
女が強い国ってのは本当に強い国だ。
あれだけ強い女が揃ってる国はそうはないだろうよ」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「がははははは! 蜀軍が強ええなんて、
そんなことは母ちゃんに言われなくてもわかってんよ!
俺はもう奴らに5回もとっ捕まってんだぜ!」


挿絵(By みてみん) 孟優もうゆう
「自慢することじゃないよ兄ちゃん……」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「で、どうすんのさアンタ。強い蜀軍をどうやって倒すつもりさね」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「ぶほっ! おいおい、もう忘れちまったのか?
母ちゃんの弟の帯来が、そろそろ援軍を連れて戻ってくるところじゃねえか」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「そんなことは承知だよ!
妾が言いたいのは、南中王・孟獲ともあろうものがね、
他人任せにするだけじゃなくて、
自分でやってやろうって気にならないのかいってことさね!」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「わっはっはっはっはっ!
…………そう言ったってよ、母ちゃん。だってもう5回も負けてんだぜ、俺ら」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「かーーーっ! なんて情けないツラしてんだい!
もうアンタには愛想が尽きたよ。花鬘! 実家に帰るよ!」


挿絵(By みてみん) 花鬘かまん
「え。で、でも……」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「お、おいおい。待てよ母ちゃん!
やぶから棒に別れるなんてそりゃあねえだろうよ!
もうすぐ木鹿大王のヤツだって援軍に来てくれるし――」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「だからそういう他人任せなところを改めろって妾は言ってんのさ!
まったくアンタは昔っから――」


挿絵(By みてみん) 帯来たいらい
「………………」


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「おやあ、これは間の悪い所に来ちゃいましたかねえ。
いったん出直した方がいいでしょうかな?」


挿絵(By みてみん) 猛獣国の長・木鹿大王


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「ぼ、木鹿大王!!
ひゃっひゃっひゃっ! これはみっともないところを見せちまったな!
なあに、母ちゃんと俺の間じゃよくあることだよ。まあまあ、そこに座ってくれよ。
ほらほら、母ちゃんも遠路はるばる来てくれた木鹿に挨拶しろや」


挿絵(By みてみん) 祝融しゅくゆう
「フン! 調子のいい男だよ本当に!」


挿絵(By みてみん) 花鬘かまん
「……お茶、いれてくるね」


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「いやいやお構いなく。しばらく見ない間に花鬘ちゃんも綺麗になったねえ。
俺が来たからにはもう大丈夫だよ。いや、本当にお茶は結構だ。
連れてきた子供たちがお腹を空かせてるからね。
すぐに餌をやらないといけないんだよ」


挿絵(By みてみん) 孟優もうゆう
「え、餌っていうのはもしかして…………」


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「ああ、今すぐ蜀軍の兵どもを、かわいい子供たちの餌に変えてやるよ!」


~~~蜀 趙雲軍~~~


挿絵(By みてみん) 張翼ちょうよく
「ち、趙雲将軍! け、獣です! 猛獣の群れがこちらに向かってきます!」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「ウス。見ればわかるッスよ」


挿絵(By みてみん) 馬鈞ばきん
「聞いてもわかるヨ。吠え声、鳴き声、叫び声。
こうもうるさくっちゃ読書もできやしないネ」


挿絵(By みてみん) 楊儀ようぎ
「は、博士も将軍も何を悠長に……。
す、すぐにギヱンを起動させましょう!」


挿絵(By みてみん) 馬鈞ばきん
「ああ。目には目を、獣には獣だヨ」


挿絵(By みてみん) 魏延ぎゑん
「オオオォォォォォンンン!!」


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「おや? 妙なものがこっちに向かってくるね」


挿絵(By みてみん) 孟優もうゆう
「あ、あれは敵の将軍だよ! 四つ足で疾走し爪と牙で切り裂く魔獣なんだ!!」


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「ほほう。獣と人の合いの子、獣人といったところかな。
――半分でも獣なら問題ない」


挿絵(By みてみん) 魏延ぎゑん
「ウアァァァァァァァァア!!」


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「おすわり」


挿絵(By みてみん) 魏延ぎゑん
「ウオン!?」


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「よーしよしよしよし。いい子だいい子だ。
お前のことはチャトランと名付けようね。よしよしチャトラン」


挿絵(By みてみん) チャトラン
「ゴロゴロゴロゴロ……」


挿絵(By みてみん) 楊儀ようぎ
「ギ、ギ、ギ、ギ、ギ、ギヱンが…………。
わ、私や博士、諸葛亮丞相にしか従わないはずなのに……」


挿絵(By みてみん) 馬忠ばちゅう
「そういえば聞いたことがある。
南中には猛獣を意のままに操る、獣王と呼ばれる男がいると。
まさか魏延殿をも手なずけられるとはな」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「猛獣使いっすか。そらすごいわ!」


挿絵(By みてみん) 張翼ちょうよく
「か、感心している場合ではありませんぞ!
あれでは魏延将軍を人質に取られたも同然です!」


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「よーしよしよしよし。チャトラン、今度は俺のために働いてくれるかい?
さあ、あっちの緑色の連中は敵だよ。一人残らず蹴散らしてくるんだ」


挿絵(By みてみん) チャトラン
「ガアァァァァァァァァオ!!」


挿絵(By みてみん) 馬岱ばたい
「人質どころか魏延はん、わてらに襲いかかってきとるで。
えらいアグレッシブな人質やな」


挿絵(By みてみん) 楊儀ようぎ
「は、は、博士! い、いったいどうすれば!?」


挿絵(By みてみん) 馬鈞ばきん
「ふむ……。ワタシはちょっと急用ができた。
ここは楊儀クンたちに任せるヨ。それじゃあ」


挿絵(By みてみん) 楊儀ようぎ
「は、は、は、は、は、博士!? こ、こんな時にいったいどこへ――」


挿絵(By みてみん) 馬忠ばちゅう
「兵たちは猛獣と魏延殿におびえて逃げ惑っている。
これでは勝負にならんぞ!」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「魏延先輩をバッサリ行っちゃうのも気が引けるッスからね。
ここはいったん退却するッスよ!」


~~~蜀軍 本陣~~~


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「いやあ、93年も生きてきてあんな敵は初めてッスよ。
兵たちも混乱して戦うどころじゃなかったッス」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「し、しかも魏延が敵に手なずけられたそうだな。
丞相! このような相手とどう戦うおつもりですか!?」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「黙れ。余がこの程度の事態を想定していないとでも思ったか?
馬鈞、貴様の出番だ」


挿絵(By みてみん) 馬鈞ばきん
「はいはい。こんなこともあろうかと用意しておいたヨ。
虎戦車のお披露目だヨ!」


挿絵(By みてみん) 虎戦車とらせんしゃ


挿絵(By みてみん) 馬謖ばしょく
「こ、これは……戦車、ですか? し、しかし虎の形をした戦車とは……」


挿絵(By みてみん) 馬鈞ばきん
「もともとはギヱンの脚部パーツとして開発していたものだが、
中に人が入って操縦できるように改修したのサ。
でも虎戦車の一番のウリはそんなことじゃないヨ。ほおら、この通り!」


挿絵(By みてみん) 呂凱りょがい
「うおおおっ!? こいつはすげえ! 車が火を噴いたぜ!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「獣は何よりも火を恐れる。そら、何をぐずぐずしている。
さっさと野蛮人どもに文明の叡智をとくと味わわせてやるのだ」


~~~木鹿大王軍~~~


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「い、いったいなんなのだあれは!?
く、車が火を噴いているぞ!?」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「だーはっはっはっ! さすが諸葛亮サンだぜ!
俺らの思いもよらないとんでもねえ代物を隠してやがった!」


挿絵(By みてみん) 孟優もうゆう
「か、感心している場合じゃないよ!
火にまかれて獣たちがみんな逃げちゃったよぉぉ!」


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「ま、まだ俺たちにも切り札はある!
行け! チャトラン!」


挿絵(By みてみん) チャトラン
「グオォォォォォォォォン!!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「伏せ」


挿絵(By みてみん) チャトラン
「!?
…………クゥゥゥゥゥゥン」


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「な、なに!? チ、チャトランがあっさり寝返った、だと……!?
お、俺にいったんなついた獣が、別人になつくなんてありえねえ!!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「フン。余の手をわずらわせおって。
くだらぬサーカスはここまでだ。道化どもを殲滅しろ」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「ウス! 覚悟するッスよ!」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「突撃」


挿絵(By みてみん) 馬忠ばちゅう
「虎戦車が巻き起こしたこの業火……。
いい! 実にいい汗がかけるぞ!」


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「ぬぬぬぬぬ……。
こうなったら俺が自ら蜀軍を蹴散らしてやる!
プースケを出せ!!」


挿絵(By みてみん) 張翼ちょうよく
「な、なんだあれは!? 灰色の化け物が現れたぞ!!」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「あ、あれは……木鹿大王が乗っているのは噂に聞く象というものか!?」


挿絵(By みてみん) 王平おうへい
「なんてえ野郎だ!
火も矢もものともせずに虎戦車を次々と踏み潰してやがるぜ!」


挿絵(By みてみん) 関索かんさく
「行くぜ鮑三娘! あれこそ俺たちが戦うべき強敵だ!」


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
「さっすが索にゃん! あいつを倒すっキャ!」


挿絵(By みてみん) 馬岱ばたい
「象は関索はんが仕留めてくれる! 関索はんに敵兵を近づけるな!」


挿絵(By みてみん) 関索かんさく
「バァァァァルカン!!」


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「はっはっはっ! 指弾ごときでプースケの分厚い皮膚を貫けるものか!」


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
「必殺必中! 円月りぃぃぃぃん!!」


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「無駄だ無駄だ! プースケを倒せる武器などあるものか!」


挿絵(By みてみん) 関索かんさく
「くっ……。どうすればあの装甲を破れるんだ……?」


挿絵(By みてみん) ??
(人よ………………)


挿絵(By みてみん) 関索かんさく
「!?」


挿絵(By みてみん) ??
(人を狙うのよ、関索…………)


挿絵(By みてみん) 関索かんさく
「この声は…………!? よし、もらったああああ!!
俺のこの掌が光って叫ぶ! お前を倒せときらめき唸る!」


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「な、なに!? プ、プースケの身体を駆け上がって俺のところまで――」


挿絵(By みてみん) 関索かんさく
「ラァァイトニング!! フィンガァァァァァァアア!!」


挿絵(By みてみん) 木鹿大王ぼくろく
「ぎゃああああああああああああ!!!」


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
「やったっキャ!!」


挿絵(By みてみん) 関索かんさく
「エェェェェェンド! ヒット!!」


挿絵(By みてみん) 孟優もうゆう
「うわぁぁぁぁ!! ぼ、木鹿大王までやられちゃったよぉぉ!!」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「ぶわっはっはっはっはっ!
こうなったら弟よ、やることは一つだな!」


挿絵(By みてみん) 孟優もうゆう
「え? 一つって?」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「おとなしく降伏するに決まってんだろ!
いやあ、参った参った。ひゃっひゃっひゃっひゃっ…………」


挿絵(By みてみん) 王平おうへい
「おい見ろ! 孟獲のヤローが白旗上げてやがんぜ」


挿絵(By みてみん) 馬岱ばたい
「やったで関索はん! あんさんが木鹿大王を倒してくれたおかげや!」


挿絵(By みてみん) 関索かんさく
(それにしても……。
あの子の声が聞こえたのは、気のせいだったのか……?)


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
「索にゃん……? 他の女のことを考えてるのは気のせいかにゃ……?」


~~~~~~~~~


かくして木鹿大王の猛獣軍団を破り、蜀軍は六度目の孟獲捕縛に成功した。
だが追い詰められた孟獲と南中軍にはまだ最後の切り札が残されていた。
切り札の名は藤甲軍。いよいよ最後の決戦の幕が切って落とされようとしていた。

次回 〇九四   不死身の兀突骨
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