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アイコン三国志 作者:小金沢

第九章 南中の戦い

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〇九〇   南蛮王・孟獲

~~~蜀 永昌えいしょう~~~


挿絵(By みてみん) 呂凱りょがい
「よく来たな丞相! むさ苦しいところだが、まあ上がってくれや!
茶の一杯くらいおごってやるぜ!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「ここで結構だ。それよりもその臭い口を閉じろ」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「じ、丞相……。呂凱は雍闓らの反乱に同調せず、
孤立しながらも永昌郡を守り切ったのです。
す、少しはねぎらいの言葉をお掛けください」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「ねぎらう? 余が? なにゆえに?」


挿絵(By みてみん) 呂凱りょがい
「ぶはははは! 城を包囲されて攻撃されっぱなしでよ!
ひとっ風呂浴びる暇もなかったんだ!
身体も鎧も汗臭いのは勘弁してくれや!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「汗臭いのではない。口が臭いのだと言っている」


挿絵(By みてみん) 呂凱りょがい
「こりゃすまねえ! でも口は縫い閉じるわけにもいかねえからよ!
それより、この後は南中の奥地へと攻め込むんだろ?
だったら良い物があるぜ。南中のありとあらゆる地理を記した地図だ!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「そうか。ならばそれをさっさと寄越せ。さすれば貴様に用は無くなる。
懸念無くその口を縫い閉じるがいい」


挿絵(By みてみん) 呂凱りょがい
「ぶわっはっはっはっ! 丞相ってのは面白い人だな!
でもすまねえが、その地図ならもうアンタの目の前にあるぜ。
そうさ、地図は俺の頭ん中にあるんだよ!
今後は俺が道案内を務めるからよろしく頼むぜ!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「李恢。至急、馬鈞を呼んで呂凱の口臭対策の発明をさせろ」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「は、はあ……」


挿絵(By みてみん) 王伉おうこう
「呂凱殿! 急報が入ったぜ!」


挿絵(By みてみん) 呂凱りょがい
「なんだ? ――ああ、丞相。こいつは王伉と言って、俺の副官をやってる男だ。
こいつのおかげで俺たちは永昌を守り切れたと言っても過言じゃないぜ!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「李恢。この者の体臭対策も急務だ」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「………………」


挿絵(By みてみん) 王伉おうこう
「はっはっはっ! この程度の臭いに参ってたら南中になんか攻め込めないぜ!
なんせあそこには毒ガスから毒泉まで――おっと、話が脱線しちまった。
そうそう、急報なんだけどよ。
南蛮王の孟獲が、十万の兵を引き連れて出撃したそうだぜ!」


~~~五渓峰ごけいほう~~~


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「蜀の遠征軍が高定らを蹴散らして、さらに南進しているそうだ。
うぷ。うぷぷぷぷぷ。こ、高定のヤツは、降伏してすぐに、ぷぷぷ。
じ、事故死したそうだぜ。あ、あいつ。
事故死とか……。わっはっはっはっはっ!!」


挿絵(By みてみん) 嗤う南蛮王・孟獲


挿絵(By みてみん) 金環三結きんかんさんけつ
「孟獲大王を裏切って蜀軍なぞに屈するから天罰が下ったのだろう!」


挿絵(By みてみん) 第一洞の富豪王・金環三結


挿絵(By みてみん) 董荼那とうとな
「ゲハハハハ! しょせん奴らは我々の前座に過ぎぬ。
蜀の遠征軍どもには南中の本当の恐ろしさを教えてやろう!」


挿絵(By みてみん) 第二洞の魔王・董荼那


挿絵(By みてみん) 阿会喃あかいなん
「ワタシたちが行く前に、
ジャングルのコブラやタイガーの餌食にならなければイイデスネー!」


挿絵(By みてみん) 第三洞の異国王・阿会喃 


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「お、お前ら……ぷぷっ。ま、まるで噛ませ犬みたいなセリフだぞそれ。
ぶはははは! か、返り討ちになったらお、俺笑っちまうぞぶはははは!」


挿絵(By みてみん) 董荼那とうとな
「もう笑っているではないか大王!」


挿絵(By みてみん) 金環三結きんかんさんけつ
「大王のやることはただ一つ、
我々が蜀軍を蹴散らした後の褒美を用意することだけだ!」


挿絵(By みてみん) 阿会喃あかいなん
「ヒュー! キンカンサンケツはただでさえリッチなのに、
もっとリッチになろうとしてマスヨー!」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「ぎゃはははは! わ、わかってんよ。ほ、褒美ならいくらでも……ひいひい。
用意しとくからぶはははは!
さっさと行って来いお前ら! あっはっはっはっはっ!!」


挿絵(By みてみん) 董荼那とうとな
(……それにしてもいつも何がそんなにおかしいんだ大王は)


挿絵(By みてみん) 金環三結きんかんさんけつ
「さあ、稼ぎに行くぞ野郎ども!」


挿絵(By みてみん) 阿会喃あかいなん
「ワタシたちが一番乗りデスヨー!」


~~~蜀 趙雲軍~~~


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「おっ。敵軍の姿が見えてきたッスよ。
大将が三人いるらしいッスが、その誰ッスかね」


挿絵(By みてみん) 楊儀ようぎ
「それにしても趙雲将軍が抜け駆けに賛成するとは思わなかったぞ」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「自分もたまには抜け駆けでもして強引に手柄を立てて、
若いところを見せないと、後輩に追い越されてしまうッスからね!」


挿絵(By みてみん) 馬鈞ばきん
「趙雲はそう見えて92歳だそうだネ。
今度ちょっとでいいから細胞のサンプルを提供してくれないかネ?
不老不死の研究に使えそうだヨ」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「別にいいッスけど、自分の場合は
あんまり参考にならないと思うッスよ。だって――」


挿絵(By みてみん) 楊儀ようぎ
「は、博士! 敵軍が先に仕掛けてきました!
早く後方にお下がりください!」


挿絵(By みてみん) 金環三結きんかんさんけつ
「この金環三結様の不意をつけると思うなよ!
敵将はどこだ。かかってくるがいい!」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「望むところッスよ!」


挿絵(By みてみん) 金環三結きんかんさんけつ
「正面から向かってくるとは愚かな!
さあ、この俺様の全身を飾る宝石の輝きを浴びるがいい!」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「うっ!? ほ、宝石がむちゃくちゃ光り輝いてるッスよ!
な、なんにも見えないッス!!」


挿絵(By みてみん) 金環三結きんかんさんけつ
「ぎゃあああああああ!!!」


挿絵(By みてみん) 楊儀ようぎ
「……見えていないのに的確に喉元を貫いている。
目くらまししただけでは将軍にはなんのハンデにもならないのだな」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「いやあ、やみくもに突いたらたまたま当たっただけッスよ」


挿絵(By みてみん) 楊儀ようぎ
「とにかくこれで手柄は十分だな。我々の一番手柄は疑いない。
フッフッフッ。帰って丞相に研究費の上積みを申請するぞ!」


~~~蜀 遠征軍本陣~~~


挿絵(By みてみん) 張翼ちょうよく
「丞相が指定した地点で待ち伏せしていたところ、
阿会喃が通りがかったため、不意をついてたやすく捕らえることができました!」


挿絵(By みてみん) 阿会喃あかいなん
「面目ないデース……」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「捕縛」


挿絵(By みてみん) 董荼那とうとな
「く、くそ。俺様としたことがこんな奴らに捕らえられるとは……」


挿絵(By みてみん) 馬謖ばしょく
「これで三洞の王を全て片付けられたな。趙雲、張翼、張嶷はご苦労だった。
三人には平等に恩賞を与えよう」


挿絵(By みてみん) 楊儀ようぎ
「な……んだと?
ま、待て。張翼と張嶷は丞相の命令を受けて、敵将を捕らえたのだろう?
我々は独自の判断で動き、金環三結を討ち取ったのだ!
我々のほうが、その、すごいんだぞ!」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「……だが貴殿らは軍令違反の抜け駆けをしたではないか。
ならば罪と功でちょうど相殺だろう」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「ははは。こいつは一本取られちゃいましたね楊儀先輩!」


挿絵(By みてみん) 楊儀ようぎ
「ぐぬぬ……」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「雑魚は一掃した。次は親玉だ。
こ奴らと孟獲の首を並べて斬るのも一興だろう。
行け。さっさと孟獲を引っ捕らえてこい」


挿絵(By みてみん) 王平おうへい
「がってんだ!」


挿絵(By みてみん) 呂凱りょがい
「孟獲の本陣を裏から奇襲できる間道を知ってるぜ。王伉、案内してやんな!」


挿絵(By みてみん) 王伉おうこう
「おうよ!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「ああ、臭くてたまらぬ。
馬鈞、ほっつき歩いている暇があったら早く防臭対策を進めろ」


挿絵(By みてみん) 馬鈞ばきん
「これはすまないネ。珍しい動植物ばかりでなかなか腰が落ち着かないんだ」


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
「キキッ。なんだかみんな、のん気でにぎやかだにゃ。
遠征軍っていつもこんな感じなのキャ?」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
「さあ。ウチも遠征軍に加わるのはこれが初めてやから。
どうなん? 月英はん」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「…………知らないです。私は忙しいです」


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
「忙しいって突っ立ってるだけじゃないキ?」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「忙しいです」


挿絵(By みてみん) 馬雲緑ばうんりょく
(月英はんの鮑三娘はんへのつっけんどんな態度……。
単なるヒロイン争いだけやないのか?)


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「何を油を売っている非実在女ども。貴様らもさっさと行け」


挿絵(By みてみん) 黄月英こうげつえい
「そうです。演義にも登場しない想像上の連中は働くです」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「黄月英。貴様も登場せぬ」


挿絵(By みてみん) 鮑三娘ほうさんじょう
「はいはい。南蛮編は自由だにゃあ」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「……………………」


~~~五渓峰~~~


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「ぶはっ。ぶはははは!
あ、あいつらマジで全員捕まったのかよ! ぶはははははは!!
律儀な伏線回収だなおい!!」


挿絵(By みてみん) 忙牙長ぼうがちょう
「だ、大王様! 笑っている場合ではない!
敵軍はもう目の前まで迫っているぞ!」


挿絵(By みてみん) 水牛斧騎士 忙牙長



挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「あっはっはっ! 俺様の身も危ねえってか?
ぶふぉっ! 俺様はあいつらみたく簡単にやられやしねえよ!
どれ、ちょっくら出迎えてやるか!」


挿絵(By みてみん) 王平おうへい
「おっと、わざわざ出向いてもらう必要しつようはねえぜ。
神妙にお縄をちょうだいしな、孟獲!」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「こ、こいつらもう来てやがるぜ! ひゃっひゃっひゃっ!
番兵は何やってんだよ! わっはっはっ!」


挿絵(By みてみん) 忙牙長ぼうがちょう
「く、くそ! 大王には指一本ふれさせんぞ!
この忙牙長の大斧を喰らうがいい!」


挿絵(By みてみん) 王平おうへい
「おっ。この野郎、馬じゃなくて水牛になんか乗ってやがる!
ちょうどいい、とっ捕まえて焼き肉にしてやらあ!」


挿絵(By みてみん) 忙牙長ぼうがちょう
「この忙牙長と水牛のコンビネーションを甘く見るなよ!」


挿絵(By みてみん) 王平おうへい
「ちきしょうめ! 見た目と逆に小回りの利く野郎だ!」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「ぼ、忙牙長! ぶはは! 俺様も混ぜろよおい!」


挿絵(By みてみん) 王平おうへい
「孟獲まで加勢したらさすがに分が悪いや。ここはき上げるぜ!」


挿絵(By みてみん) 忙牙長ぼうがちょう
「おのれ逃げるか! 待てえええっ!!」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「おいおい忙牙長!
大王には指一本ふれさせねえって言っといてお前、ぶはははは!
大王が置き去りだぞ! あっはっはっはっはっ!!」


挿絵(By みてみん) 張翼ちょうよく
「その通り。よく状況がわかっているようだな」


挿絵(By みてみん) 馬忠ばちゅう
「間道を伝って裏から現れた王平殿はおとりだ!」


挿絵(By みてみん) 馬岱ばたい
「孟獲はん、アンタ一人になってもうたな」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「孤立」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「おいおい、俺様一人にいったい何人がかりだよ。はーはっはっ!
そんなに俺様が怖いかよおい!」


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「これだけいて怖いわけないッスよ!
それ、みんなで孟獲を捕らえるッス!!」


挿絵(By みてみん) 魏延ぎゑん
「オォォォォォォォォォォン!!」


~~~蜀 遠征軍本陣~~~


挿絵(By みてみん) 趙雲ちょううん
「――で、首尾よく孟獲大王を捕らえてやったッス!!」


挿絵(By みてみん) 王平おうへい
「あたぼうよ! 俺がわざわざみっともなく逃げた甲斐があったってもんだ!」


挿絵(By みてみん) 馬忠ばちゅう
「忙牙長は逃がしたが、奴一人では何もできないだろう」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「フン。これが蛮族の王の面か。想像以上に醜悪だな」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「ぶははははは! こ、こいつが蜀軍の総大将なのか?
お、俺様より悪人顔じゃねえか、おい! がっはっはっはっはっ!!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「ほう。まだ憎まれ口を叩く余裕があるのか」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「当たり前だ! 俺様が斬られたところで、南中の民は痛くもかゆくもない。
俺様の代わりに新たな大王が立ち上がり、お前らを滅ぼすだろう。
だーはっはっはっ! その時のことを考えると笑いが止まらないぜ!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「これは面白い。貴様ごときが余に勝てると言うのか」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「南中にはお前らの想像を絶する驚異の部族が星の数ほど控えてるぜ!
あんなのやこんなのが……ぶふぉふぉっ! 思い出しても笑えてくるぞ!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「ならば帰してやるから、その驚異の部族とやらを残らず連れて来い。
余が根絶やしにしてやる」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「じ、丞相いけません! 南中における孟獲の影響力は絶大です!
彼をこのまま捕らえておけば、他の部族など恐れるに足りません!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「恐れている? 余が? これを?
馬鹿な。南蛮の野人など十億人集まっても恐れるに足りぬ。
孟獲、そのことを余は証明してやる。
さっさと帰って蛮族どもを糾合してくるがいい」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「…………本当に解放してくれんのか?」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「先に捕らえた阿会喃と董荼那とやらもおまけに付けてやろう。
どうした? 余の偉容を間近にして笑いが止まったのか」


挿絵(By みてみん) 孟獲もうかく
「あっはっはっはっはっ!! 面白い野郎だ!!
おい悪人面! お望み通りに南中の恐ろしさを骨の髄まで叩き込んでやる!
首を洗って待っていやがれ!! ぶわっはっはっはっはっ…………」


挿絵(By みてみん) 馬謖ばしょく
「ほ、本当に逃がしてしまった……」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「まったく獣臭くてたまらぬ。馬鈞、発明はまだか」


挿絵(By みてみん) 馬鈞ばきん
「はいはい。お待ちかねの品だヨ。
南中の熱帯にだけ咲く蓮華の花から抽出した
この液体をまけば、どんな悪臭もたちどころに――」


~~~~~~~~~


かくして諸葛亮は捕らえた孟獲を解放した。
孟獲は南中の総力を結集し再起の戦に臨む。
遠征軍の戦いはまだ始まったばかりであった。

次回 〇九一   二縦二擒と三縦三擒
+注意+
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