挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
アイコン三国志 作者:小金沢

第八章 夷陵の戦い

83/125

〇八二   蜀の明暗

~~~武陵ぶりょう~~~


挿絵(By みてみん)
馬良ばりょう
「……………………」


挿絵(By みてみん)
劉寧りゅうねい
「あぁん? 何者だてめえ」


挿絵(By みてみん)
杜路とろ
「見たところ劉備んとこの部下らしいな?
なんの用だ。孫権のように俺たちの協力が欲しいのか?」


挿絵(By みてみん)
劉寧りゅうねい
「だがあいにくだったな。
うちの族長は大陸一の面倒くさがりなんだよ!
お前らに協力するくらいなら、いやそれどころか寝てばかりで、
立ち上がるくらいなら死を選ぶほどのレベルのな!」


挿絵(By みてみん)
杜路とろ
「族長は寝ながら飯を食うしクソも垂れるんだぜ!
それですら一週間に一度やればいいほうだ!
わかったらさっさと帰りな!」


挿絵(By みてみん)
馬良ばりょう
「……………………」


挿絵(By みてみん)
杜路とろ
「…………なんとか言ったらどうだてめえ!?
さては俺たちをなめてんな!」


挿絵(By みてみん)
劉寧りゅうねい
「……いや、待て杜路。こいつのこの目……。
ぞ、族長に似ていると思わねえか?
起きてるのか寝てるのかもわからねえ虚ろな光。
何もかもがどうでもいいと言いたげな目つき……」


挿絵(By みてみん)
杜路とろ
「なんだと? ま、まさか、こいつも真性の面倒くさが――」


挿絵(By みてみん)
沙摩柯しゃまか
「……………………」


挿絵(By みてみん)
劉寧りゅうねい
「ぞ、族長!?」


挿絵(By みてみん)
杜路とろ
「あ、ありえねえ……。族長が立って、し、しかも歩いてる……」


挿絵(By みてみん)
馬良ばりょう
「……………………」


挿絵(By みてみん)
沙摩柯しゃまか
「……………………」


挿絵(By みてみん)
劉寧りゅうねい
「あ、握手を交わしてハグまでしだしたぞーーーッ!?」


挿絵(By みてみん)
杜路とろ
「き、共感しているんだ!
こ、こいつと自分は同じだと、あの族長が……。
あ、ありえねえ。ありえね……ありありありありありありあり」


挿絵(By みてみん)
劉寧りゅうねい
「と、杜路! 気をしっかり持て! 杜路ーーーッ!!」


挿絵(By みてみん)
馬良ばりょう
「………………」


挿絵(By みてみん)
沙摩柯しゃまか
「……………………」


~~~夷陵 劉備軍~~~


挿絵(By みてみん)
李意其りいき
「……………………」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ほうほう、これは馬の絵かのう。
ほんでこっちは棒……いや槍か? それに剣かな。
わかったぞ、武器を描いとるんじゃな」


挿絵(By みてみん)
李意其りいき
「……………………」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「これは人か? ずいぶん大きく描くんじゃのう。
はは~ん。さては偉い人とかを表しとるんかな?」


挿絵(By みてみん)
李意其りいき
「……………………」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「へ? ほんでせっかく描いたものをみんな地面に埋めちまうのか?
さっぱり意味がわからんのう……」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「…………何してんのよ? 誰その汚いジジイは?」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「おお張さん。こちらは仙人の李意其さんじゃ。
予言が得意じゃと聞いて、わざわざ来てもらったんじゃよ」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「あっそ。ご苦労さん。
銅貨をあげるから帰っていいわよ。しっしっ」


挿絵(By みてみん)
李意其りいき
「……………………」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「おいおい張さん、仙人にそんな邪険な……。
すまんかったのう李意其さん。
張さんはご機嫌ななめのようじゃ」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「そりゃご機嫌もななめになるわよ。
得体の知れないジジイがいるわ、
前回から無口キャラが連発で何人も登場してるわで」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「おっ、張さんが久々にメタ発言じゃ。
――そんなことより李意其さんの予言をどう思うかのう?
戦の吉凶を占ってもらったんじゃが……」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「そんなことはどうでもいいわよ!
孫権の援軍がこっちに向かってるわ。
しかも率いてるのはあの陸遜よ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「りく……そん?」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「呂蒙と一緒に関羽を殺したヤツよ!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「おうおう、あの陸遜か! それはいよいよじゃな」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「いよいよよ。陸遜の首を挙げるのが
今回の遠征の目的と言ってもいいからね。
――そこで提案よ。軍を4つに分けましょ。
右軍の程畿らに夷陵いりょうの孫桓を包囲させて、
他の隊は先に進み陸遜を叩くの」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ほうほう」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「そんで左軍の黄権は長江の北岸に渡らせ、
陸遜を挟撃するように見せかけるわ。
さらに呉班、陳式の水軍を先行させ、敵の目を引きつける。
三方から兵を進められて、混乱した陸遜を一気に討ち取るわよ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「なるほどのう。ま、この戦の軍師は張さんじゃ。
好きにやっとくれて構わんぞ」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「ええ、もちろんそのつもりよ。
――伊籍、左右の両軍にこの指示を伝えて」


挿絵(By みてみん)
伊籍いせき
「はい!」


~~~夷陵 陸遜軍~~~


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「ふ~ん。劉備さんは兵を2つに分けたのかあ」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「2つではない。4つだ」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「ううん。2つだよ。
孫桓さんへの備えと、ボクらを叩くための本隊。
あとの2つはただの目くらまし。相手にしなくていいと思うよ」


挿絵(By みてみん)
徐盛じょせい
「左右に展開した黄権軍と水軍は無視すると言うのか?
万が一のことがあったらなんとする?
あいわかった、黄権軍はワシの手勢で食い止めよう!」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「……ならオレは水軍の相手してきてやんよ。
ここにいるより楽しそうだし。じゃ、つーことで」


挿絵(By みてみん)
鮮于丹せんうたん
「じ、徐盛将軍と甘寧将軍が行ってしまいましたぞ。
将軍らの500程度の手勢では危険なのでは?」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「だから黄権も水軍も見せかけだってば。
500もいれば十分だよ。
まあ、お二人はボクの言うこと聞いてくれそうもないし、
ちょうどよかったかな?
それよりボクが気になるのは武陵のほうなんだよね~」


挿絵(By みてみん)
駱統らくとう
「武陵と言われますと……武陵蛮ですか?
しかし彼らが劉備軍に協力するとは思えませんが……」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「でもほら、劉備さんって扇動が得意じゃん?
荊州は長いこと劉備さんが治めてたから、民も懐いてるしさ。
だから武陵にも手を打っとこうと思うんだ。
歩隲さん行ってくれる?」


挿絵(By みてみん)
歩隲ほしつ
「わかった。行ってくる」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「待って待って! そっちは歩隲さんの手勢だけじゃ危険だよ。
うーん、そうだなあ。兵は1万くらい連れてって」


挿絵(By みてみん)
吾粲ごさん
「い、1万ですと!?」


挿絵(By みてみん)
歩隲ほしつ
「私は先に向かう。後から兵を送ってくれ」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「歩隲さんはあいかわらずせっかちだなあ……」


挿絵(By みてみん)
吾粲ごさん
「……陸遜殿。たしかに武陵蛮が劉備に味方すれば
我々にとって脅威となりますが、
敵に回るかどうかもわからない相手に、
1万もの兵力を割くのは得策とは思えませんが?」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「でももし敵に回ったら脅威なんでしょ?
だったら手を打っておかないとね。
備えあればうれしいって言うじゃん」


挿絵(By みてみん)
丁奉ていほう
「……ならば陸遜将軍。
夷陵に籠城している孫桓殿の救援はいかがいたそう。
俺がひとっ走り行って参ろうか」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「孫桓さんなら大丈夫でしょ。
ボクと仲良しだけど若いのにしっかりした人だし、
劉備さんも本気で夷陵を攻め落とそうなんて
思ってないから、ほっとけばいいよ」


挿絵(By みてみん)
丁奉ていほう
(孫桓に援軍を送らず、
敵に回るかどうかもわからぬ武陵に大軍を送るだと?
それに小勢の徐盛将軍や甘寧将軍に何かあったらどうするのだ。
この男、やはり戦はズブの素人ではないか!)


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「なあ、陸遜サンよ。俺に面白い考えがあるんだがな」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「なになに? 教えて教えて」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「劉備の野郎は関羽の仇討ちに来てやがんだろ?
だったら仇の俺や馬忠が囮になって、
劉備らをおびき寄せたら面白くねえか」


挿絵(By みてみん)
馬忠ばちゅう
「え!?」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「それは面白いなあ~!
……でも危険だよ。それでもやってくれるの?」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「おう。うまいこと劉備や張飛をおびき寄せたら、
大手柄を挙げられるぜ。やってやんよ」


挿絵(By みてみん)
馬忠ばちゅう
「し、正気ですか潘璋将軍……」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「何をびびってやがんだよ!
ペーペーだったお前がこうして
軍議の場に顔を出せるようになったのも、
関羽殺しに貢献したからだろうが。
もっと手柄を立ててもっと出世したいと思わねえのかよ」


挿絵(By みてみん)
馬忠ばちゅう
(こんなことになるなら貢献しなけりゃよかった……。
っていうか俺は別に何も貢献してないのに……)


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「そういうわけで俺たちは前線に出て劉備らを挑発してくるぜ。
おっと、その前に他の部隊に売り払っちまった
装備を買い戻さねえとな」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「じゃあお願いするね。
潘璋さんがおびき寄せた敵を叩く伏兵は用意しとくから。
気を付けていってらっしゃーい」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
(不可解な用兵をしておいて、
潘璋の乱暴な策には一も二もなく同意とは……。
呉は陸遜の手により初陣で滅亡の危機を迎えるのか……)


~~~夷陵城~~~


挿絵(By みてみん)
朱然しゅぜん
「俺たちに援軍は来ないだと?」


挿絵(By みてみん)
謝旌しゃせい
「陸遜め……ワタシたちを見捨てるつもりアルか!?」


挿絵(By みてみん)
李異りい
「譚雄は討たれ、崔禹も捕らえられちまった。
今の戦力で包囲を破るのは不可能に近いぜ」


挿絵(By みてみん)
孫桓そんかん
「……なら破らなければいいだろうよ」


挿絵(By みてみん)
李異りい
「なんだと?」


挿絵(By みてみん)
孫桓そんかん
「幸い夷陵には数年の籠城に耐えられる兵糧の備蓄がある。
包囲は破れなくても、落城はさせないだけの戦力も残ってる。
なら、おとなしく守ってりゃいいじゃねェか」


挿絵(By みてみん)
朱然しゅぜん
「火火ッ。ずいぶんと弱気なことだな。
いいのか? 火計を使えば十分に勝機はあるぞ?」


挿絵(By みてみん)
孫桓そんかん
「失敗して城が延焼でもしたら、籠城もできなくなる。
陸遜の奴は、オレらなら夷陵を守りきれる、
劉備軍の一部をここに引き付けとけば十分だって考えてんだ。
余計なことはせず、籠城に専念しようぜ。
下手にオレらが負けたりしたら陸遜も困るだろ」


挿絵(By みてみん)
李異りい
「……陸遜と幼なじみだそうだが、
ずいぶんとあいつのことを買ってるんだな」


挿絵(By みてみん)
孫桓そんかん
「あいつは天才だよ。だからあいつに任しとけばいい」


挿絵(By みてみん)
謝旌しゃせい
「天才アルか。ワタシもそうであることを祈るアルヨ!
暇だから陳武流奥義の修行でもしてくるアル!」


~~~夷陵 劉備軍~~~


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「劉備! 潘璋よ! 潘璋と馬忠が最前線に出てきたわ!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「はんしょ……ああ、関さんを殺したあいつらか!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「のこのこ顔を出してきて、アタイらを挑発してるわ。
アイツらの首を挙げる絶好の機会よ!」


挿絵(By みてみん)
傅彤ふとう
「待たれよ。潘璋らの行動はあまりにもあからさま過ぎる。
これは罠ではないか」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「ええ、罠よ。そんなことは百も承知よ。
でも潘璋と馬忠が目の前にいるのは事実。
だったら罠だろうとなんだろうと喜んで掛かってやるわよ!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「張さん……」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「悪いけどアタイが軍師をやるのはここまでよ。
アタイは潘璋と馬忠を付け狙ってやるわ」


挿絵(By みてみん)
傅彤ふとう
「あいわかった。私とて張飛殿たちの桃園の誓いは知っている。
後のことは我々に任せ、存分に戦われよ」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「ありがと……。
王甫や張苞、星彩は置いてくから、こき使ってやって。
アタイは手勢だけで戦うわ。
大丈夫よ。アタイの強さは知ってるでしょ?」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「張さんのことじゃからなーんも心配しとらん。
わしの代わりに関さんの仇討ち、頼んだぞ。
……でも、無理はしたらいかんからな」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「わかってるわ。アンタはアンタでがんばって陸遜を倒すのよ。
余計なことはしないで、傅彤や王甫の言うことをよく聞きなさい。
いいわね」


~~~夷陵 張飛軍~~~


挿絵(By みてみん)
馬忠ばちゅう
「ち、張飛です! 張飛が一直線に向かってきます!」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「距離をとって矢を射かけろ! 近づくんじゃねえぞ!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「そんなヒョロヒョロ矢なんて当たらないわよ!」


挿絵(By みてみん)
馬忠ばちゅう
「効きません! 矢はまったく効きません!」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「効かねえことはわかってんだよ! ただの時間稼ぎだ!
そろそろだと思うが……」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「掛かったな張飛! 野郎ども張飛の背後を襲え!」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「張飛ママ! 後方から敵が現れたわ! ママのお尻が危ない!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「うしろは無視して突撃しなさい!
アタイのオカマ掘ろうなんて百年早いのよ!」


挿絵(By みてみん)
周平しゅうへい
「し、周泰の弟・周平ここにあり!
亡き兄に代わり張飛を止めてやるぞ!
ディーフェンス! ディーフェンス!」


挿絵(By みてみん)
張達ちょうたつ
「ママ! 左からも伏兵よ!
このままじゃ囲まれて逝っちゃうわ!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「次から次へと……とりあえず左だけ片付けてやる!」


挿絵(By みてみん)
周平しゅうへい
「ああっ! 張飛が本当に来た!!
ディーフェンス! ディーフェ……うぎゃああああああ!!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「またモブキャラを殺しちゃったわ……。
どうしてアタイが討ち取るのはこんなのばっかりなのよ!」


挿絵(By みてみん)
鮮于丹せんうたん
「周平がやられたか。周泰の弟だからと期待しすぎたようだな……。
そ、それより周平の左軍がいなくなったが
このまま我々の右軍も突っ込んでいいものか……」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「ママ! 右からも伏兵よ!
いやああ! 右から後ろからなんてダメええ!!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「……なんか右の伏兵はどうしようか迷ってるみたいね。
潘璋を討とうにもこのままじゃ囲まれちゃうわ。
右の伏兵を蹴散らして包囲を突破するわよ!」


挿絵(By みてみん)
鮮于丹せんうたん
「な、何ィ!? ち、張飛がこっちに来た!
こんな展開は聞いてないぞ! ひ、退け! 退けーーーい!!」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「チッ! 鮮于丹もあっさり敗走しやがった。
陸遜の用意した伏兵はまるで役立たないじゃねえか!」


挿絵(By みてみん)
馬忠ばちゅう
「わ、我々も逃げましょう!
これでは包囲どころではありません!」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「そうするっきゃねえか……」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「包囲を突破していったん逃げようと思ってたけど……
どうやら相手のほうが浮き足立ってるみたいね。
潘璋の首を挙げる好機よ! 追いなさい!」


挿絵(By みてみん)
馬忠ばちゅう
「あわわ! 張飛が追ってきます!!」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「見りゃあわかる! 退け! 退きやがれ!」


~~~夷陵 張飛軍~~~


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「……潘璋を追ってずいぶんと深入りしちゃったわね。
でも河を背にした丘に陣取れたから、敵も警戒して攻めてこないわ。
今夜はここで一泊して、翌朝早くに包囲を抜け出しましょ。
今日はご苦労様。明日に備えてよく休んでね」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「ええ、おやすみママ」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「おやすみ」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「………………ねえ、張達。アンタはどう思う?」


挿絵(By みてみん)
張達ちょうたつ
「どう思うってなんの話よ?」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「アタイたちの置かれた状況よ。
これ、相当マズいわよ。河を背にして丘に陣取ったって、
背後を気にせず見晴らしが利くって言えば聞こえがいいけどさ、
逆に言えば逃げ場がないし、
相手からアタイたちの動きが把握しやすいってことじゃない」


挿絵(By みてみん)
張達ちょうたつ
「だ、だからなんなのよ。何が言いたいのよ」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「アタイたち死ぬわよ」


挿絵(By みてみん)
張達ちょうたつ
「……そ、それなら何をどうしようってのよ!?」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「決まってるでしょ。呉に降伏すんのよ。
……張飛ママの首を手土産にね」


挿絵(By みてみん)
張達ちょうたつ
「あ、アンタいったい何を言って――」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「シッ! 声が大きいわ。……いいこと、張達。
追い詰められたアタイたちがただ降伏しても、
受け入れられるわけがないわ。でもママの首を持参すれば話は別よ。
喜んでアタイたちを迎え入れてくれるはず」


挿絵(By みてみん)
張達ちょうたつ
「だ、だからってなんてことを考えるの……?
アタイたちはぐれ者が、
ママにどれだけお世話になったと思ってるのよ!」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「たしかに世話になったわ。
ママにはいくら感謝してもし足りないくらい。
……でも、それはアタイたちの命を差し出すほどかしら?」


挿絵(By みてみん)
張達ちょうたつ
「………………」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「なにもアタイたち二人だけが降伏しようなんて考えてないわ。
張飛ママがいなくなれば、兵たちも降伏するしかないんだから。
これはみんなを助けるために必要なことなのよ」


挿絵(By みてみん)
張達ちょうたつ
「…………そもそもこの戦って、関羽ちゃんの仇討ちよね。
アタイたち、ママには恩があるけど
関羽ちゃんにはなんの恩もないわ。
それなのに仇討ちのために命を賭けるのって、
あんまり納得いってなかった」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「ほら見なさい! だいたいママはいつも――」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「コラコラ。
アタイの悪口言ってる暇があったらさっさと寝なさいな」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「!? ま、ママ……。い、いつからそこに……?」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「関羽がどうのってあたりよ。……別に気にしちゃいないわよ。
アンタらにとっては仇討ち合戦なんていい迷惑でしょうからね。
危険な目に遭わせてゴメンね。
でもまずは、包囲を無事に突破することを考えましょ」


挿絵(By みてみん)
張達ちょうたつ
「ま、ママ…………」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「………………」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「だから夜更かししないで早いとこ寝なさいな。
明日に疲れを残さないようにね。
さっきの話は聞かなかったことにしてあげるから――」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「ママ、ゴメン!!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「うぐっ!?」


挿絵(By みてみん)
張達ちょうたつ
「は、范彊! あ、アンタ何を――」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「ママは全部聞いてたのよ! もう言い逃れはできないわ!
アンタも刺すのよ張達! 覚悟を決めなさい!!」


挿絵(By みてみん)
張達ちょうたつ
「マ、ママ……こうするしかないの! ゴメン!!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「ぐうっ!! あ、アンタたち……。そ、そう……。
そこまで思いつめてるなんて、思わなかった、わ……。
フフ……アンタたちの気持ちも知らないで……
アタイがバカ、だったのね……」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「ママがいけないのよ! ママが、だってママが……!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「いいのよ。もういいの……。
でもダメ。もっと深く刺さないとアタイは殺せないわ……。
ほら、こうやって……」


挿絵(By みてみん)
張達ちょうたつ
「ママぁぁ……」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「あらあら、刺したほうが泣いてるなんておかしいじゃないのさ……。
アンタたち……二人だけで降伏するなんてズルいことしちゃダメよ。
ちゃんと……兵たちも……連れて……くのよ……」


挿絵(By みてみん)
范彊はんきょう
「ママーーーッッ!!」


~~~夷陵 劉備軍~~~


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「張さんが……死ん、だ……?」


挿絵(By みてみん)
伊籍いせき
「敗走する潘璋を追った張飛将軍は、敵陣深くに孤立しました。
全滅を危ぶんだ腹心が反乱を起こし、
将軍を、こ、殺したそうです……」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「張さん……いったい何をやっとるんじゃ……。
関さんの仇討ちをしに来たのに、
張さんの仇まで取らにゃいかんなんて、冗談にもなりゃせんぞ……」


挿絵(By みてみん)
傅彤ふとう
「……陛下、率直に申し上げます。
敵陣深くまで攻め入っているのは我々も同じことです。
張飛将軍のような災禍が起こるとは申しませんが、
戦線は伸びきっており奇襲を受ければひとたまりもありません」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「……じゃからと言って、わしに手ぶらで帰れと言うんか?」


挿絵(By みてみん)
傅彤ふとう
「そ、それは……」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「関さんの仇も取れず、張さんまで失って、
なんにも得られずに帰れと言うのか?
わしは認めんぞ! 戦の指揮はわしが、いや朕が執る!
荊州を完全に奪還し、関さんと張さんの仇を取るまで帰らんぞ!!」


~~~~~~~~~


かくして張飛は暗殺され、劉備は悲嘆に暮れた。
だが劉備は戦いの継続を決め、戦火はさらに東へと拡大する。
一方、迎え撃つ陸遜はその実力を周囲の者に疑われ、呉軍も一枚岩とは行かなかった。

次回 〇八三   夢の終わり
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ