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アイコン三国志 作者:小金沢

第七章 軍神・関羽

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〇七八   軍神・関羽

~~~襄陽じょうよう~~~


挿絵(By みてみん)
関興かんこう
「くそおっ! 潘濬ーーッ!!」


挿絵(By みてみん)
潘濬はんしゅん
「俺のことはいいから逃げろ!
俺はともかくアンタは捕まったら殺されるんだ!」


挿絵(By みてみん)
関興かんこう
「すまぬ……。退却だ!!」


挿絵(By みてみん)
孫皎そんこう
「身をていして主の子息を守ったか。見事な覚悟だ。
悪いようにはしない。我々に降られよ」


挿絵(By みてみん)
潘濬はんしゅん
「…………クソが」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「なんだと?」


挿絵(By みてみん)
潘濬はんしゅん
「クソが!!
横からしゃしゃり出てきて俺と関羽のゲームを邪魔しやがって!
関羽に呼応して中原に沸き起こった反乱の渦が見えないのか?
アンタらもそれに続けて魏を攻めたら、
あの曹操を倒すこともできたんだ!!」


挿絵(By みてみん)
孫皎そんこう
「お前の思惑など知らぬ。我々は孫権艦長の意志に従うだけだ」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「で、てめえはどうしたいんだ? 戦うのか? 降るのか?」


挿絵(By みてみん)
潘濬はんしゅん
「……もうどうでもよくなった。
横からひっくり返された盤面になんて興味ないよ。
殺すなり捕らえるなり好きにしろ」


挿絵(By みてみん)
孫皎そんこう
「それなら一度、孫権艦長に会ってみないか。
あたら若い命を散らすこともあるまい」


挿絵(By みてみん)
潘濬はんしゅん
「…………好きにしろよ」


挿絵(By みてみん)
胡脩こしゅう
「あ、あのー」


挿絵(By みてみん)
傅方ふほう
「お、お取り込み中ちょっといいですか?」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「ん? なんだてめえらは」


挿絵(By みてみん)
潘濬はんしゅん
「襄陽を守っていた魏の荊州刺史と将だよ。
俺たちに降ってすぐ、孫権軍に俺たちがやられちゃったから、
自分たちの処遇がどうなるのか気にしてんじゃないの?」


挿絵(By みてみん)
胡脩こしゅう
「そ、そうなんですよ! いやあ話が早くて助かるなあ!」


挿絵(By みてみん)
傅方ふほう
「そ、それで……あの、俺たちはどうなる、んでしようか……?」


挿絵(By みてみん)
孫皎そんこう
「……それでは劉備軍の捕虜になっていた
魏の兵でも率いてもらおうか。関羽を追撃するのを手伝ってくれ」


挿絵(By みてみん)
胡脩こしゅう
「かしこまった!!」


挿絵(By みてみん)
傅方ふほう
「そういうことなら俺たちにお任せください!!」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「……こいつらは殺しちまえばよかったんじゃねえか?」


~~~零陵れいりょう~~~


挿絵(By みてみん)
劉璋りゅうしょう
「孫権ちゃんが遊びに来たの? わーい! いらっしゃーい!」


挿絵(By みてみん)
劉度りゅうど
「違う! 孫権軍が裏切ってこの零陵に攻め込んできたんだ!
私が治めていた武陵ぶりょうもすでに落とされた。
えらいことになってしまった……。
いったい関羽は何をしているんだ!」


挿絵(By みてみん)
呂範りょはん
「関羽の本隊は撃破された。じきに首を取られるだろう。
お前らも観念して降伏しろ」


挿絵(By みてみん)
呂岱りょたい
「降れ」


挿絵(By みてみん)
劉璋りゅうしょう
「ええー。ぼくは劉備ちゃんにこの零陵を任されたんだよ。
そう簡単に降伏なんてできないよ」


挿絵(By みてみん)
呂範りょはん
「……お前は益州刺史から零陵太守に左遷されただけだろ。
刺史だったお前が都に残っていたら
あとあと面倒だから、外地に出されたんだ。
なぜ劉備に義理立てする必要がある?」


挿絵(By みてみん)
劉璋りゅうしょう
「劉備ちゃんはそんな人じゃないやい!
それに僕に零陵に行けって言ったのは
劉備ちゃんじゃなくて諸葛亮ちゃんだもん!」


挿絵(By みてみん)
呂範りょはん
「だったら諸葛亮に左遷されたんだ」


挿絵(By みてみん)
呂岱りょたい
「左遷だ」


挿絵(By みてみん)
劉璋りゅうしょう
「…………本当に?」


挿絵(By みてみん)
呂範りょはん
「本当だ」


挿絵(By みてみん)
呂岱りょたい
「本当だ」


挿絵(By みてみん)
劉度りゅうど
「本当だ」


挿絵(By みてみん)
劉璋りゅうしょう
「本当の本当に?」


挿絵(By みてみん)
呂範りょはん
「本当の本当にだ。わかったら降伏しろ。悪いようにはせん」


挿絵(By みてみん)
劉璋りゅうしょう
「…………劉備ちゃん」


~~~樊城はんじょう~~~


挿絵(By みてみん)
殷署いんしょ
「曹仁将軍! 助けに参ったぞ!」


挿絵(By みてみん)
朱蓋しゅがい
「関羽の本隊は孫権軍に撃破された! 俺たちの勝利だ!」


挿絵(By みてみん)
曹仁そうじん
「待ってました! 城門を開け!
俺たちも突撃するぞ! うおおおおおお!!」


挿絵(By みてみん)
全琮ぜんそう
「樊城の部隊も出撃したか。
ならば我々が無理をすることもあるまい。
抵抗する相手は魏軍に任せ、逃げようとする敵だけを追え!」


挿絵(By みてみん)
廖化りょうか
「おのれ孫権! 不意打ちとはなんと卑怯な!
もはや関羽将軍の生死もわからん。かくなる上は――」


挿絵(By みてみん)
呂常りょじょう
「だからお前は阿呆なのだああああっ!!」


挿絵(By みてみん)
廖化りょうか
「し、師匠!? い、いや呂常!!」


挿絵(By みてみん)
呂常りょじょう
「筋肉は多少ついたようだが、
オツムの方はまるっきり成長していないようだな。
廖化よ、そんな傷だらけの身体でどこへ行くつもりだ?」


挿絵(By みてみん)
廖化りょうか
「知れたことを。
誇り高き関羽将軍の配下として華々しく討ち死にするまでだ!」


挿絵(By みてみん)
呂常りょじょう
「この馬鹿弟子がああああっ!!」


挿絵(By みてみん)
廖化りょうか
「うあああああっ!!」


挿絵(By みてみん)
呂常りょじょう
「阿呆め! お前が討ち死にしたとて誰が喜ぶ?
一時の屈辱にだけ囚われ、
たった一つの命を投げ出すなど言語道断!
そんなにも関羽を慕うならば、関羽のためにも――――んん?」


挿絵(By みてみん)
廖化りょうか
「………………」


挿絵(By みてみん)
呂常りょじょう
「しまった。やりすぎたか。
気絶してワシの説教を聞いておらんではないか」


挿絵(By みてみん)
廖化りょうか
「………………」


挿絵(By みてみん)
呂常りょじょう
「まあちょうどいい。このまま孫権軍に突き出してくれる。
お前のその目で! 耳で! 皮膚で! 心で!
孫権軍を内から覗き見聞を広めるのだ。
世界は広い! 命を捨てるには早すぎるぞ廖化よ……」


~~~麦城ばくじょう~~~


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「別働隊を率いていたお前が来てくれなければ危ういところだった。
父も感謝しているぞ、蘇飛よ」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「いや、急でこんな古城しか確保できなかった。
兵糧も武器も足りない。長居はできないぜ」


挿絵(By みてみん)
趙累ちょうるい
「襄陽や樊城を包囲していた関興殿、廖化も撃破されたそうだ。
我々は四方を敵に囲まれている。
じきにこの麦城にも魏・孫権の連合軍が迫ってくるだろう」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「その前にどこかへ逃げ出さなければ……。
末弟の関索かんさくはこんな時にどこをほっつき歩いてるのだ!」


挿絵(By みてみん)
趙累ちょうるい
「関索殿はずっと前から旅に出ていた。
それに関索殿一人がいても状況は変わるまい。
落ち着くんだ若将軍。関羽将軍を見られよ」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「おお……。父上はいつもと全く変わらぬ平常心を保っておられる。
父上! その不動心を学ばせて頂きます!」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「……荊州に展開していた部隊は残らず撃破されただろう。
俺の手勢はまだ余力がある。
上庸じょうようの劉封・孟達に援軍を求めてこよう」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「劉封らにはすでに一度断られている! 奴らを頼る必要などない!
関羽は独力でこの窮地を覆せる!」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「じゃあ何もせず坐したまま死を待てってのか? 俺はごめんだね。
やるだけのことはやってみる。期待せず待ってな」


挿絵(By みてみん)
趙累ちょうるい
「蘇飛殿の言うとおりだ。
脱出の機をうかがいつつ劉封殿らの援軍を待とう」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「くっ…………」


~~~上庸じょうよう~~~


挿絵(By みてみん)
劉封りゅうほう
「関羽将軍の救援に行くなだと?」


挿絵(By みてみん)
孟達もうたつ
「ええ。ここ上庸の周りには不穏な空気が漂ってるんだ。
なんせずっと魏の領域だったところだからね。
劉備軍なんかには従わないぞ。ここは曹操の土地だぞって。
そう思ってる輩がたくさんいる。た~くさんいるんだ。
だからここを離れたら危ない。
もし兵を減らしたりなんかしたら――わっ!
と残党が蜂起してしまう。そういうお話です……」


挿絵(By みてみん)
劉封りゅうほう
「たしかにそう言って一度は援軍を断った。だが前とは状況が違う。
孫権軍が裏切り、荊州は陥落した。
このまま放っておけば関羽将軍は殺されてしまう!」


挿絵(By みてみん)
鄧賢とうけん
「……でもあちしたちが行ったからってどうにかなるのかしら?
魏軍も孫権軍もいっぱいいるのよ。
それに孟達が言った通り、あちしらが上庸の守備を手薄にしたら、
そこにいる申耽とかが反乱するわよ」


挿絵(By みてみん)
申耽しんたん
「い、いや。そんなつもりはない」


挿絵(By みてみん)
鄧賢とうけん
「申耽は反乱しなくても、
上庸から逃げてった敵兵はまだ近くに残ってるのよ。
そいつらが攻撃してきたらどうすんのよ?」


挿絵(By みてみん)
孟達もうたつ
「あたしの古い友達の霍峻かくしゅんが一月前から寝込んでましてね。
これまで風邪一つ引いたことのない男なのに、
この上庸に越してきてから急に倒れたんだ。
それで見舞いに行ったら彼が
「孟ちゃん俺はもう駄目だ」なんて言うんだ。
よせや~い何を弱気になってんだよって。
風邪も引いたことない男だから、変に弱気になってんだよと。
あたしはそう言ったんですけどね。
彼は真剣な顔で「だってさあ。影が見えるんだよ」なんてことを言う。
影? 影ってなんのことだいって聞いたら――」


挿絵(By みてみん)
劉封りゅうほう
「長い長い長い!
要するに霍峻が心配だ、
霍峻が戦えないのに城を空けられるかと言いたいのか?
だったら俺が一人で援軍に行く! お前らには頼らん!!」


挿絵(By みてみん)
申耽しんたん
「り、劉封殿は行ってしまいましたぞ。
止められなくてよいのですか?」


挿絵(By みてみん)
鄧賢とうけん
「劉封の手勢だけじゃ、どうせすぐ撃退されて戻ってくるわよ」


挿絵(By みてみん)
申耽しんたん
「さ、さようですか……」


~~~麦城 南 孫権・魏連合軍~~~


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「麦城に関羽を追い詰めました。ここで関羽の首を獲ります」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「包囲の輪は何重にも築いたんで、
いくら関羽でも逃げられないよね」


挿絵(By みてみん)
曹仁そうじん
「関羽にはさんざっぱら煮え湯を飲まされた!
俺たちもお返しさせてもらうぜ!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「そいつは頼もしい申し出ですが……
しかし今回は我々に任せていただけませんかね」


挿絵(By みてみん)
満寵まんちょう
「なんだと? 我ら魏軍の力はいらぬと申されるのか?」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「ぶっちゃけると戦後の領土問題とか
ややこしくなっちゃいますんで。
ほら、麦城って魏と孫家の国境のちょうど境目あたりにありますし。
ま、今回は我々だけで関羽を討ち取りますよ」


挿絵(By みてみん)
曹仁そうじん
「それでは気が済まん! 荊州方面の全権は俺に任されている!
麦城はくれてやるから兵は出させろ! 関羽は魏の手で打つ!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「ですが――――」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「ここまで言ってくれてるのに断っちゃ悪いですよ。
せっかくだから手伝ってもらいましょうよ」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「……この戦の指揮官は陸遜だ。思うように任せますよ」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「それじゃあ万が一のことがあったらまずいんで、
曹仁さんは後方に控えててもらいます?
何部隊か出してもらえればいいんで。
あ、だからって最前線でこき使ったりはしませんよ」


挿絵(By みてみん)
満寵まんちょう
「曹仁将軍、ここはこらえられよ。
我々も長い籠城戦で消耗しています。
援軍に来た殷署、朱蓋の部隊に任せましょう」


挿絵(By みてみん)
曹仁そうじん
「フン! 勝手にしろ!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「……どうにか妥協してくれましたね」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「でもあんなに頑なに断らなくてもよかったんじゃないですか?
兵なんていくらあっても困らないでしょ」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「陸遜には悪いですが、これはあっしのわがままですよ。
関羽を討ち、荊州を奪取するのはあっしの悲願でした。
関羽はあっしらの手で討つ。魏の助けはいりません」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「ボクが指揮官だって持ち上げときながら、
ちゃっかりしてるんだから……」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「あっはは。すいませんね。
何年経ってもあっしは、若い頃の無鉄砲な阿蒙のままなんだ。
人生最期の戦いくらい、思うようにやらせてくださいよ」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「………………呂蒙さん」


~~~麦城 西~~~


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「…………どけよ。アンタとは戦いたくねえし」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「敵を見逃すと言うのか? 甘くなったな甘寧」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「昔、オレは命がけでアンタの命を救ったんだぜ?
なのになんでアンタの首をオレが獲らなきゃいけねえんだよ!
チキショー……。体調が悪いからって麦城の攻撃を外れて、
周辺警戒になんて回らなきゃ良かったぜ」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「これも天命だ。来い、甘寧。来なければ俺がお前を殺す」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「そんなボロボロの身体でどうやってオレを殺すってんデスカ?
麦城から援軍を求めて抜け出したんだろ?
でも包囲を突破できなくてボロボロにされたんだろ?」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「無駄口叩いてる暇があったら来いよ。
鈴の甘寧も落ちたものだな!」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「クソがああああああっ!!」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「…………そうだ。それで、いい…………」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「クソ野郎が……。黄祖も、アンタも……。チキショー……」


~~~麦城~~~


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「蘇飛も戻らなかった。
おおかた包囲を突破できずに討たれたのだろう。
このまま籠城していても飢え死にするだけだ。
かくなる上は華々しく打って出るまで!
関羽の最期の戦を見せてやろうぞ!」


挿絵(By みてみん)
趙累ちょうるい
「……関羽将軍、よろしいのですか?」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「この関羽が心も関平と同じ。
いざ出陣だ! と父の心は震えている!」


挿絵(By みてみん)
趙累ちょうるい
「……関羽将軍の武勇ならば、
単騎であれば千に一つは包囲も突破できるであろう。
若将軍、我々は――」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「黙れ黙れ! 関羽は将兵を犠牲にして逃げたりなどしない!
そんな生き恥をさらすくらいならば死を選ぶ! 行くぞ!!」


挿絵(By みてみん)
趙累ちょうるい
「………………」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


~~~麦城 南~~~


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「関羽にはうかつに近づくな!
遠巻きにして矢を射かけるんだ!」


挿絵(By みてみん)
駱統らくとう
「関羽がいくら勇猛だろうが矢の雨には勝てぬ!
撃って撃って撃ちまくれ!!」


挿絵(By みてみん)
趙累ちょうるい
「ぐわああっ!!
か、関羽将軍……。お先に、失礼いたす……。ぐぶっ」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「関羽にはぜんぜん矢が当たってないよ。
青龍偃月刀でぜ~んぶ弾いちゃってます」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「これじゃらちが明かねえ! 俺が直接ぶった斬ってやる!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「やめろ潘璋さん!
関羽は個々の武勇でどうにかなる相手ではありません」


挿絵(By みてみん)
蒋欽しょうきん
「ならば……そっちの息子から血祭りに上げるでごわす!」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「この関平が父に遅れを取ると思うてか!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「ち、父上! いけません!
この程度の相手、関羽の手をわずらわせることはない!」


挿絵(By みてみん)
孫皎そんこう
「関羽の弱点は息子だ! 息子を狙えば隙ができるぞ!」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「くっ!! お、俺が父上の足手まといになるわけには――」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「息子さんに矢を集中させちゃいましょう!
みなさーん。関羽の息子が的ですよ!」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「来るなら来い!! もっと撃ってこいよ!!」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「チッ! 息子のほうも意外とやるぜ! 矢が効かねえ!」


挿絵(By みてみん)
丁奉ていほう
「どけ。矢が駄目なら石だ。むううううううううん!!」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「なっ!? 鉄槌で岩を砕き破片を飛ばしてくるだと!?」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「駄目だ父上! 石を弾いたら青龍偃月刀が――」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「!?」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「関羽の得物が折れたぞ! 矢を放て!!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………ッ!!」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「父上ーーーーーーッッ!!!」


挿絵(By みてみん)
蒋欽しょうきん
「関羽はハリネズミでごわす!
お前もすぐに後を追わせてやるでごわす! どすこいっ!!」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「ぐわあっ!! ふ、不覚…………。
も、申し訳ありません……。
俺は、父上の……関羽の足手まといにしか、ならなかった……」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
(………………関平)


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「!?」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
(胸を張れ。お前は吾の誇りだ)


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「ち、父上……? 父上の心が……伝わってくる……」


挿絵(By みてみん)
蒋欽しょうきん
「な!? こ、これだけ矢が刺さってるのに
関羽はまだ動けるでごわすか!?」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
(お前には父親らしいことを何もしてやれなかった。
ならば最期に、関羽らしいところを、
お前が誇りに思ってくれる関羽の力を見せてやろう)


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「ち、父上…………?」


挿絵(By みてみん)
蒋欽しょうきん
「へ? あ、あれ……。なんか体がおかしい……で、ごわ……す?」


挿絵(By みてみん)
駱統らくとう
「し、し、蒋欽が真っ二つに……!?
なんだ! いったい何が起こった!?」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
(行くぞ。これが関羽の最期の力だ)


挿絵(By みてみん)
胡脩こしゅう
「な、なんだってんだよ。
死にかけの関羽なんか怖くねえだろ!
俺が首をとってやらあ!!」


挿絵(By みてみん)
傅方ふほう
「ああ! 俺たちの手柄だあああっ!!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
(退け)


挿絵(By みてみん)
胡脩こしゅう
「あ、あ、あべし!!」


挿絵(By みてみん)
傅方ふほう
「ひ、ひ、ひでぶ!!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「なにィ!?」


挿絵(By みてみん)
孫皎そんこう
「ど、どうなっている!? 関羽は一歩も動いていないぞ!
何かがおかしい! 関羽に近づくな!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
(ならば吾の方から行って進ぜよう)


挿絵(By みてみん)
孫皎そんこう
「な――――!?」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「か、関羽が一瞬で背後に回った!? 孫皎がやられたぞ!」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「ああ……父上……。これが関羽の……本当の力……」


挿絵(By みてみん)
殷署いんしょ
「相手がなんであろうと退くわけにはいかぬ!」


挿絵(By みてみん)
朱蓋しゅがい
「我々を送り出してくれた北の人々のためにも!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「よせ!! 今の関羽に近づくな!!」


挿絵(By みてみん)
殷署いんしょ
「ぎゃあああああああ!!」


挿絵(By みてみん)
朱蓋しゅがい
「あがああああああ!!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
(恐れよ。これが関羽だ)


挿絵(By みてみん)
駱統らくとう
「や、矢だ! 矢で動きを止めろ!!」


挿絵(By みてみん)
丁奉ていほう
「石もくれてやる。そらあああああああっ!!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
(無駄だ)


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「わあ……。矢も石も近づくそばから粉々に吹っ飛んでるよ。
どうやってんだろあれ」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「………………」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「り、呂蒙さん?
な、なんか変なこと考えてない? やめときなって。
いくら呂蒙さんでもあんなバケモノに敵うわけないよ!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「いや。関羽も人間だ。殺せないわけがない。
――関羽!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「一騎打ちだ。俺が相手してやる」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「死ぬ気か呂蒙!?」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「放っといても1年もたない命だ。好きに使わせてください」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
(参る)


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「見える!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「見える。見えるぜ関羽! あんたは生と死の境を越えた!
命を捨て、ただ関羽であろうとだけしている。だから強い。
今のアンタは現し世にいながらにして神にも等しい!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「しかしあっしも命はとうに捨てた! ならば条件は対等だ!!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
(否)


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「ぐああっ!!」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「呂蒙さん!!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
(吾は関羽。吾には誰も並び立てぬ)


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「へっ……。こいつが関羽と、呂蒙の差か……」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「や、やべえ! 関羽がこっちに来るぞ!」


挿絵(By みてみん)
馬忠ばちゅう
「ひいいいいいいいっ!! ま、待て関羽! は、話せばわかる!
お、お前の息子ももう死んだんだぞ!
それでも誰のために戦うんだ!?」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「!」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「……………」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
(そうか…………。逝ったか関平…………)


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「……………」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
(ならば関羽も、ここまでだ……)


挿絵(By みてみん)
馬忠ばちゅう
「や、やめてくれ!! 殺さないでくれ!!
ひいいいいいいいい!!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「……………………」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「な、なんだか様子が変じゃねえか? 関羽が動かねえぞ……」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「ぐっ……。どけ。どいてくれ。関羽……」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「……………………」


挿絵(By みてみん)
陸遜りくそん
「これって……。立ったまま……」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「これが…………関羽、か」


~~~~~~~~~


かくして軍神は最期の戦いを終えた。
一方その頃、もう一人の巨星も長い戦いの人生を終えようとしていた。
その名は曹操。乱世の奸雄と呼ばれた男であった。

〇七九   奸雄の死へ
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