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アイコン三国志 作者:小金沢

第七章 軍神・関羽

77/125

〇七六   樊城の戦い

~~~樊城はんじょう 北 于禁軍~~~


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「曹仁のダンナがしくじったか……」


挿絵(By みてみん)
成何せいか
「というよりも、やはり関羽は強いと言うべきですな」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「関羽はすでに我らの到来を察知し、
樊城はんじょう襄陽じょうようは遠巻きに包囲するに留め、
我らを迎え撃つ構えを見せている」


挿絵(By みてみん)
董衡とうこう
「曹仁のような単細胞と、
我々エリート部隊である七軍の違いを関羽には教えてやろう」


挿絵(By みてみん)
董超とうちょう
「噂の関羽が俺たちと少しは戦えるかどうか楽しみだな!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「……劉備軍は先に五虎大将という官職を定めた。
我はそのうちの二人、馬超・趙雲と刃を交え、
その強さを身をもって心得ている。
関羽はその五虎大将の筆頭だ。ゆめゆめ油断めさるな」


挿絵(By みてみん)
浩周こうしゅう
「ふむ。馬超か。
そういえば貴殿はその昔、馬超に仕えていたそうだな。
今でも昔の主君は恋しいのか?」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「どういう意味だ」


挿絵(By みてみん)
浩周こうしゅう
「そのうえ貴殿の従兄も劉備に仕えていると聞く。
たしかに、ゆめゆめ油断しないよう心せねばと思ってな」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「我が劉備軍に寝返るとでも言いたいのか!?」


挿絵(By みてみん)
董衡とうこう
「言われてみれば龐徳殿は、
主君を二度も変えた稀有な御仁だったな!」


挿絵(By みてみん)
董超とうちょう
「二度も三度も同じだと思われたら怖い怖い。
龐徳殿には背中を見せないようにせんとな!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「………………」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「そのくらいにしときな。
戦う前から仲間割れしてたんじゃ世話ねえぜ。
おれっちは龐徳のダンナを信用してる。
んで、おれっちはこの軍の隊長だ。
アンタらにはおれっちと同じようにダンナを信用してもらうぜ」


挿絵(By みてみん)
成何せいか
「これからあの関羽と戦うというのに、お主らには緊張感が足りん。
しかと于禁将軍の言葉を噛みしめよ!」


挿絵(By みてみん)
浩周こうしゅう
「はいはい」


挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)

『反省してまーす(チッうるせーな)』


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「………………」


挿絵(By みてみん)
東里袞とうりこん
「于禁将軍! 前方を偵察してきたが関羽軍に動きがあったぜ」


挿絵(By みてみん)
朱霊しゅれい
「どうやら樊城の包囲は一部隊に任せ、
主力は我らのほうに向かってくるようだ。
どうする于禁?」


挿絵(By みてみん)
董衡とうこう
「あん? なにうちの大将を呼び捨てにしてんだよ朱霊」


挿絵(By みてみん)
浩周こうしゅう
「お前は于禁将軍の配下に降格させられた身だろう?」


挿絵(By みてみん)
董衡とうこう
「身の程と言うものをわきまえて欲しいものだな!」


挿絵(By みてみん)
朱霊しゅれい
「ぐぬぬ…………」


挿絵(By みてみん)
成何せいか
(龐徳殿に噛みついたと思えば次は朱霊殿に……。
七軍だかなんだか知らんが、
権威を鼻にかけなんと横暴な奴らだ!
このような連中とともに関羽と戦わねばならんとは、
先が思いやられる……)


~~~樊城 南 関羽軍~~~


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「援軍に現れた于禁のほうから先に仕掛けてきただと?」


挿絵(By みてみん)
周倉しゅうそう
「到着するなり先制攻撃してくるとは、
ずいぶんせっかちなお人でやすね」


挿絵(By みてみん)
趙累ちょうるい
「たしかに于禁の軍は4万と多く、我々に匹敵している。
だが陣を敷くのもそこそこに仕掛けてくるとは思わなかった」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「いかがいたしましょう父上?」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「さすがは父上! 向かってくるならば
有無を言わさず迎え撃つまで、というわけですね!」


挿絵(By みてみん)
趙累ちょうるい
「待った若将軍。
先の戦で廖化が負傷し、また後方からの補給も長雨で滞っている。
敵の動きにつられ、いたずらに戦いを急ぐべきではない」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「補給が滞っているだって?
さてはまた糜芳びほうがちんたらしているのだな!
魏軍を片付けたら次はお前の番だと伝えてやれ!」


挿絵(By みてみん)
周倉しゅうそう
「落ち着きなせえ若将軍。
聞けば于禁軍は内部で不協和音を起こしてるそうだ。
我々もそれに付き合ってやる必要はありやせんよ」


挿絵(By みてみん)
趙累ちょうるい
「そうだ。敵は内部分裂を起こす前に
自軍を取りまとめようと、戦いを急いでいるのだ。
我々はそれを逆手に取るとしよう」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「趙累には何か策があるようだな。言ってみろ」


挿絵(By みてみん)
趙累ちょうるい
「下手に正面からぶつかれば、我々もただでは済まないし、
せっかく乱れている敵の結束を固めてしまうことになる。
ここは撤退すべきだ」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「撤退だと! 関羽は敵に背中を見せぬ!」


挿絵(By みてみん)
趙累ちょうるい
「尻尾を巻いて逃げるわけではない。戦略的撤退というものだ。
この戦で関羽将軍は、戦わずして勝つのだよ……」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


~~~樊城 北 于禁軍~~~


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「罠……だったってことか」


挿絵(By みてみん)
成何せいか
「あの関羽がただ逃げているわけがないとわかっていた!
だが我々は追うしかなかった。
主力を担う董衡ら七軍は、調子に乗って追撃を選択したのだからな」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「そうして気づけば低地におびき寄せられていた。
まさか関羽は折からの長雨を利用し、水計を狙っていたとはな」


挿絵(By みてみん)
東里袞とうりこん
「ただ強いだけじゃねえ。頭も切れやがる。これが関羽か……」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「朱霊のダンナは水に囲まれる前に逃げ出したようだな。
さすがダンナは目端がきくわ」


挿絵(By みてみん)
成何せいか
「朱霊は一兵卒にも等しい扱いを受けていたから
簡単に持ち場を離れられただけだ。
責任ある立場の于禁将軍や我々が孤立したのはやむをえない」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「ま、なんにしろおれっちの監督不足だ。
七軍の暴走を止められればよかったんだが――」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「魏軍に告ぐ!
おとなしく降伏すれば我が軍の船で救助してやろう。
だが抵抗するならばそのまま溺れ死ぬがいい!」


挿絵(By みてみん)
浩周こうしゅう
「降伏……ぶはっ。するぞ。降伏する! あっぷあっぷ。
俺は魏軍をやめるぞ関平ーーっ!!」


挿絵(By みてみん)
董衡とうこう
「う、于禁将軍! 我々も降伏しましょう!」


挿絵(By みてみん)
董超とうちょう
「そ、そうです! 中洲に取り残された我々はもう戦えません!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「……わざと退却する関羽軍をかさにかかって追撃し、
おめおめと罠にはまった貴君らに
意見を述べる筋合いがあると思ったか」


挿絵(By みてみん)
董衡とうこう
「ぐぬう…………」


挿絵(By みてみん)
董超とうちょう
「か、かくなる上は……。
隙あり龐徳うう!! 龐徳は捕らえたぞ!!」


挿絵(By みてみん)
董衡とうこう
「でかした董超! やいやい于禁ども! 手出しするなよ!
龐徳を手土産に俺たちは関羽に降るんだ!」


挿絵(By みてみん)
董超とうちょう
「一歩でも動いたらブスリと行くからなあ!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「愚かな……。裏切り者に捕らえられるような我と思うてか!!」


挿絵(By みてみん)
董超とうちょう
「うわっ!?
ち、力ずくで腕をほどいて――ぎゃああああっ!!」


挿絵(By みてみん)
董衡とうこう
「ま、待った! じ、冗談ですよ?
やだなあ。ほんの軽い冗談に決まって――うげええええっ!!」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「……うだうだしてたら、またこういう馬鹿が出てくるだろう。
龐徳、成何、東里袞。最後の戦いとしゃれこもうぜ」


挿絵(By みてみん)
成何せいか
「お供いたそう!」


挿絵(By みてみん)
東里袞とうりこん
「へへっ。天下に名高き于禁、龐徳と死ねるなら本望だ!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「待たれよ!!
……死ぬのは我だけでいい」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「なんだと? おいダンナ。
そいつはいくらダンナの言葉でも聞けねえぜ。おれっちは――」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「兵のことを考えられよ!」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「御覧じろ。水に落ちた兵たちは次々と関羽に降っている。
だが辛うじて陸地に取り付いた者どもは、
まだ我々の様子を見て抗戦を続けようとしている。
ここで我々が死に臨んだら、彼らもまた全滅の憂き目にあうだろう」


挿絵(By みてみん)
成何せいか
「むう…………」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「敗れたのは我らの失策だ。兵に罪はない。
忠節の士をあたら道連れにすることはあるまい」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「だ、だからってダンナが一人で死ぬことはねえだろ!
おれっちだって――」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「我は馬超、張魯とすでに二度主を変えた。
三度も変える不忠の者にさせないでくれ」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「それを言ったら、おれっちだって昔は
鮑信ほうしんのダンナに仕えてたんだぜ」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「魏王の盟友だった方だそうだな。
主君を失い盟友に仕えるならば不忠ではあるまい。
それに、聞けば鮑信殿に託されたことがあるのではないか?」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「……鮑信のダンナはおれっちに、
代わりに曹操のダンナの行く末を見届けろ、と言った」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「その願いはまだ達せられてはいまい。
于禁殿、総大将である貴殿には兵を助ける義務もある。
お主らは生きられよ」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「………………」


挿絵(By みてみん)
成何せいか
「わかった。私は龐徳殿に加勢しよう。
于禁将軍と東里袞は敗残兵をまとめて降伏してくれ」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「なんと!?」


挿絵(By みてみん)
成何せいか
「いや、私が貴殿に加勢するのはただの確率の問題だ。
一人では関羽に勝てないが、二人なら勝算もあるだろう?」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「………………」


挿絵(By みてみん)
成何せいか
「東里袞、お前はまだ若い。于禁将軍を助けてやってくれ」


挿絵(By みてみん)
東里袞とうりこん
「成何殿…………」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「もはや何も言うまい。
行くぞ成何殿! 今日が我らの死ぬ日だ!」


挿絵(By みてみん)
成何せいか
「おう!!」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「関羽に逆らうとは愚かな! 目にもの見せてくれよう!!」


挿絵(By みてみん)
趙累ちょうるい
「気をつけられよ若将軍! 龐徳は弓の名手だ!」


挿絵(By みてみん)
周倉しゅうそう
「あっしが水中から敵の小舟を狙いやす」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………ッ!」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
(鮑信……。龐徳……。成何……。おれっちは……。
曹操のダンナ…………)


~~~許昌きょしょうの都~~~


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「于禁君が降伏。龐徳君が戦死したか……」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「于禁の奴め!
30年魏王に仕えたお前が、急に臨んで3年も仕えていない
龐徳に劣るとは思いもしなかったぞ!」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「やめたまえ王朗君。ここは戦場ではないよ。
于禁君がいかに降り、龐徳君がいかに死んだか
僕らにはわからないんだ」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「は、ははあ! さ、差し出がましいことを申しました。
そ、それなら敵前逃亡した朱霊は文句なしにけしからんですな!
……ですな?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「朱霊君は于禁君のもとで一兵卒のような扱いだった。
彼がどう動こうと戦況は変わらなかったろう。
それに彼も水を避けて多くの敗残兵を助けたそうだよ。
そう責めないであげたまえ」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「そ、そうでありますか……」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「まあ、王朗君のそういった潔癖さは
大きな美徳だから大切にしたまえ」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「あ、ありがたき幸せ!!」


挿絵(By みてみん)
華歆かきん
(王朗は潔癖ではなく、他人の落ち度を探し、
あわよくば蹴落としたがってるだけだがな……)


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「華歆君。なにを他人事のような顔をしてるんだい。
潔癖ぶりなら君も王朗君といい勝負じゃないか。
僕から見れば君たちは似たもの同士だよ」


挿絵(By みてみん)
華歆かきん
「わ、私がですか!? そ、そんな……」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「なにを不服そうにしているのだ華歆よ! 私の方こそ心外だ!
……あ、い、いや。
こ、これは決して魏王の言葉が不服とか、
信じられないとか、そういうことでは――」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「そんなことより関羽に対する方策を考えなければならん。
樊城、襄陽は水と兵で包囲するに留め、
関羽の本隊は宛城えんじょうへと向かっているぞ」


挿絵(By みてみん)
蒋済しょうせい
「本当に宛城を攻める気はないでしょう。
上庸じょうようを攻める孟達もうたつや、
長安ちょうあんを目指す劉備と足並をそろえてくるはずです。
関羽の狙いはあくまでも――」


挿絵(By みてみん)
賈詡かく
「樊城・襄陽を餌に多くの援軍をつりだし、
上庸や長安方面の守備を緩めるのが狙いであろうな」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「だからと言って手をこまぬいていれば、
一転して瞬く間に宛城も包囲されるだろう。
すでに上庸も落城寸前という情報を受けている。
怖いね。あの関羽君が近くまで来ているなんて恐ろしいよ」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「ぎ、魏王ともあろう御方がそんな弱気なことを……」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「彼は一時期、僕の配下になっていてくれたから、
その鬼神のような強さを目の当たりにしているんだ。
できることなら許都を離れて、もっと北へ遷都したいくらいだよ」


挿絵(By みてみん)
華歆かきん
「我らは関羽を直接は知りませぬが、
魏王にそこまで言わせるとは……」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「現にいまも曹仁君、于禁君をたやすく破って駒を進めている。
関羽君を相手にしたら僕でも及び腰になるさ。
……だが手を打たなければ、もっと彼の脅威は広がってしまう。
とりあえずは宛城を守る徐晃君に出撃を命じよう」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「曹仁、于禁が敵わぬ関羽に徐晃で歯が立つとでも?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「関中からも援軍を回すよ。関羽君に勝つ必要はないんだ。
もとより正面切って関羽君と戦い、
勝てる将なんてこの中華にはいないよ」


挿絵(By みてみん)
華歆かきん
「な、ならばいかにして関羽を止めるのですか」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「正面切って戦わなければいいんだよ。
間もなく、彼らが動くはずだ。
彼らならば、あるいは関羽君を破れるだろう。
僕らはそれまでに、関羽君の足止めをしていればいいのさ……」


~~~合肥がっぴ~~~


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「けっ。まったくいけすかねー連中だぜ。
孫権のヤローどもはオレらに降伏したんじゃなかったのかよ!」


挿絵(By みてみん)
夏侯惇かこうとん
「表面上はただ国境近くで軍の演習をしているだけだ。
責めることはできまい。
……まさかやられる前にやっちまえとか考えてないだろうな。
早まった真似はするなよ、張遼」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「わーってんよ。
孫権どもはオレらと同じ魏王の臣下だってんだろ?
オレらの方から先制攻撃したら、
仲間割れで処罰されんのはこっちだぜ」


挿絵(By みてみん)
夏侯惇かこうとん
「わかっているならいい。
……俺だって孫家の小僧の面従腹背には、
はらわたが煮えくり返ってるんだ。
その俺が我慢してるんだからお前も我慢しろ」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「へいへい。
李典や楽進がおっ死んじまって、
代わりに夏侯惇の旦那が来ると聞いた時にゃ、
もっと自由にやれんじゃねーかって思ったけどよ」


挿絵(By みてみん)
夏侯惇かこうとん
「あいにくだったな。
俺は20万の相手に800で正面攻撃を仕掛ける誰かと違って慎重なんだ」


挿絵(By みてみん)
温恢おんかい
「夏侯惇将軍! すぐに来てください」


挿絵(By みてみん)
夏侯惇かこうとん
「どうした?」


挿絵(By みてみん)
温恢おんかい
「孫権の使者が面会を求めています」


~~~建業けんぎょう~~~


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「決まりだ。オレらは関羽を討つ」


挿絵(By みてみん)
呂範りょはん
「そして念願の荊州奪取を果たす。うむ、よくぞ決断した!」


挿絵(By みてみん)
全琮ぜんそう
「しかし同盟を破棄して奇襲を仕掛ければ、
劉備は激怒するでしょうな」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「案ずることはありませんよ。今のあっしらは曹操の臣下なんです。
あくまでも曹操の密命を受けて動くだけです」


挿絵(By みてみん)
呂範りょはん
「だがそれで劉備はまだしも関羽は納得するか?」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「奇襲されて納得する御仁なんてこの世のどこにもいませんよ。
要は有無を言わさず関羽をしとめればいいんです」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「…………呂蒙、おめェ焦ってんな?」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「いいえ」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「いんや。そのツラ見てこいよ。
孫策の兄貴や周喩が死ぬ前と同じ顔色しやがって。
おめェ、隠してやがるけどあと一年ももたねェんだろ」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「あっはは。艦長は何か勘違いされてるようだ。
あっしはいたって元気ですよ。
関羽を討つための謀議を重ねて、ちいとばかし疲れてますがね」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「……まあ、そういうことにしといてやるよ。
だが、今回の戦でお前に指揮を任せることはできねェ」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「!? 艦長、それは――」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「最後まで聞け。
おめェが作戦半ばでくたばっちまうとは思ってねェよ。
お前は与えられた任務は必ずやり遂げる男だからな。
だから、それを逆手に取ってやろうってんだ」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「……関羽を油断させるため、ですか」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「そうだ。おめェが病気で職を辞したと聞きゃあ、
関羽はオレらへの警戒を緩めんだろ。
その隙を、オレらが突くんだ」


挿絵(By みてみん)
全琮ぜんそう
「しかし、呂蒙殿の代わりになれる者がおりますかな?」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「オレは知らねェよ。それは呂蒙が決めるこったろ。
てめェの代役はてめェが選びやがれ。オレにケツ拭かせんな」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「…………では、陸遜をお使いください」


挿絵(By みてみん)
呂範りょはん
「陸遜? あのような若輩者に任せるというのか?」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「陸遜に足りないものはありませんよ。
あえて言うなら年齢でしょうか。
もっとも、若いことを劣っていると言い換えるなら、の話ですが」


挿絵(By みてみん)
呂範りょはん
「……言うではないか。面白い。
呂蒙が推薦するならば私に異存はないぞ」


挿絵(By みてみん)
全琮ぜんそう
「私にもありません」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「なら決まりだ。呂蒙は引っ込む。陸遜が出る。関羽を殺す。
一連の動きに時間はかけられねェ。一気に勝負を着けるぜ」


~~~~~~~~~


かくして関羽は于禁の援軍をも打ち破った。
しかしその背後に刺客の影が迫る。
呂蒙、陸遜、そして孫権。彼らの刃は関羽の肺腑に届くのか?

次回 〇七七   関羽の不覚へ
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