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アイコン三国志 作者:小金沢

第七章 軍神・関羽

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〇七二   定軍山の戦い

~~~漢中かんちゅう 定軍山ていぐんざん~~~


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「黄忠が兵を二手に分けただと?」


挿絵(By みてみん)
杜襲としゅう
「はい。一隊は黄忠が自ら率い、張郃と戦う張飛軍の後詰めへ。
もう一隊は天蕩山てんとうざんへ向かっています」


挿絵(By みてみん)
郭淮かくわい
「天蕩山? まずいであります!
あそこには定軍山の兵糧や軍需物資を貯蔵してあるのです!」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「天蕩山は従弟の夏侯徳かこうとくが大軍で守ってるから、
ちょっとやそっとじゃ落ちないが……。
よし、ならば俺が救援に行こう」


挿絵(By みてみん)
杜襲としゅう
「いけません。これも黄忠の罠です。
この定軍山を攻めあぐねているから、
我々を定軍山から前線に引きずり出そうとしているのでしょう」


挿絵(By みてみん)
郭淮かくわい
「しかし黄忠軍を放っておいては、
天蕩山はともかく、張郃殿は危険であります!」


挿絵(By みてみん)
杜襲としゅう
「……張郃の救援には私と夏侯尚が向かおう。
夏侯淵将軍と郭淮は、引き続き定軍山の守りを固めてくれ。
それと、南鄭なんていの朱霊に増援を要請しよう。
間もなく魏王(曹操)の遠征軍が到着するから、
南鄭の守りはある程度は薄くできるからな」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「フン。また留守番か。
まあいい、殿が到着したら、先鋒として存分に暴れさせてもらおう」


挿絵(By みてみん)
夏侯尚かこうしょう
「…………妻よ。お出かけするよ。
いっぱいおめかししていこうね…………。

まあ、楽しみ!(夏侯尚裏声)」


~~~定軍山 北部~~~


挿絵(By みてみん)
趙昂ちょうこう
「せっかくまた馬超と戦えると楽しみにしとったのに、
相手が黄忠とは期待はずれじゃな。
しかも定軍山の留守番を手伝わされるんじゃろ? 退屈な任務じゃ」


挿絵(By みてみん)
王異おうい
「なあに、馬超も目と鼻の先にいるんじゃ。
いずれ戦う機会はあるじゃろう」


挿絵(By みてみん)
姜叙きょうじょ
「こ、黄忠もおじいさんなのにとっても強いと聞いています……。
どんなおじいさんなんだろ。鬼婆みたいなのかなあ……」


挿絵(By みてみん)
趙昂ちょうこう
「馬超との戦いが終わったら、
すっかり姜叙も元通りになってもうたな。
心配するな。わしらが守ってやるけんのう」


挿絵(By みてみん)
王異おうい
「こう見えて姜叙もやる時はやる男じゃけん。心配いらん」


挿絵(By みてみん)
姜叙きょうじょ
「……あ、あれ? あれはなんでしょうか。
も、もしかして敵軍なんじゃあ……」


挿絵(By みてみん)
陳式ちんしき
「…………ああっ。ほ、本当にやってきた。
な、南鄭からの援軍だ!!」


挿絵(By みてみん)
趙昂ちょうこう
「たしかに敵兵のようじゃが……なんか逃げ腰じゃな。
どうする? 行き掛けの駄賃がわりにぶっ叩くか」


挿絵(By みてみん)
王異おうい
「結構、数は多いようじゃがあの様子なら大したことないじゃろ。
しかも旗を見てみい。黄忠の本隊じゃ!
やったろうやないか、あんた!」


挿絵(By みてみん)
趙昂ちょうこう
「よし、野郎ども突撃じゃ!!」


挿絵(By みてみん)
陳式ちんしき
「うわああっ!? む、向かってくる……。
に、逃げたい。でも命令だから逃げられない……。
や、やるしかないんだ。い、行くぞおおっ!」


挿絵(By みてみん)
郭淮かくわい
「将軍! 南鄭から向かってきた趙昂殿らの援軍が
黄忠軍に襲われてるであります!」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「なんだと。
…………かなり数が多いな。黄忠の野郎、
まずは援軍を叩いて俺たちを孤立させる魂胆か」


挿絵(By みてみん)
郭淮かくわい
「どういたしますか将軍」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「趙昂を見殺しにはできない。俺が出よう。後は任せたぞ」


挿絵(By みてみん)
郭淮かくわい
「わかりました。定軍山は本官が守ります!」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「まずは軽騎兵で趙昂のもとに駆けつける。
歩兵は後からついてこい!」


~~~定軍山~~~


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「黄忠のクソジジイめ……。
殿から預かった漢中を我が物顔で歩き回りやがってよ!」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
(来たぜよ!)


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「もらったあああ!!」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「ぐわああっ!?」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「むう、首は外したか」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「てめえ……黄忠!! げふっ!
ひ、卑怯者め! 俺を不意打ちしやがったな!」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「戦に卑怯も糞もないぞ青二才よ。
不意を打てるならば不意を打つのは当然だ。
悔しければお前も儂の不意を打てば良いだけなんだからな!」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「ちっきしょう……。この俺としたことが、なんてザマだ……」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「無理はするな。急所は外したが致命傷にはなる。
即死させてやれなくてすまなかったな」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「俺が……この夏侯淵が老いぼれに情けを掛けられるものか……。
来いよ黄忠……。俺と一騎打ちしろ……」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「良かろう。弓でやるか? それとも剣か?」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「弓だ。この傷じゃあ格闘戦はできっこない……」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「いいだろう。その闘志に免じて先に撃たせてやる。来るがいい!」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「けっ。不意打ちしときながら、偉そうに……。
おい黄忠。黙るな。
お前がどこにいるのか、もう暗くて見えねえんだからよ……」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「こっちだこっち。しっかり狙えよ。
…………惜しかったな。さらばだ、夏侯淵」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「…………ぐふっ」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「……………………」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「……嫌な役回りをさせてすまんな、黄忠殿」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「フン。老い先短い儂が、
殿のお役に立つためならなんでもやってやるわ。
この前、夏侯淵とやり合って、
正面から戦ったのでは勝ち目がないとわかった。
だが定軍山を落とすためには夏侯淵は討たねばならん。
汚い不意打ちをしてでもな」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「感謝するき」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「そんなことより夏侯淵の残兵は定軍山に逃げ込んでおる。
奴らを追って儂らも攻め込むぞ!」


~~~天蕩山~~~


挿絵(By みてみん)
夏侯徳かこうとく
「か、夏侯淵の兄ィが討たれただと?
そ、そんな馬鹿な!?」


挿絵(By みてみん)
厳顔げんがん
「疑うならば定軍山をよおく見てみろ。
儂ら劉備軍の旗が翻っておるぞ!
お前らも観念して降伏するがいい!」


挿絵(By みてみん)
夏侯徳かこうとく
「言わせておけば……。
い、いや。ここは冷静にならねばいかん。
夏侯淵の兄ィがそう簡単に討たれるものか。
敵は俺を天蕩山から誘い出そうと虚言を弄しているだけだ!」


挿絵(By みてみん)
厳顔げんがん
「疑り深い奴だな。ほれ、周りを見てみよ。
お前らはすっかり包囲されておるぞ」


挿絵(By みてみん)
夏侯徳かこうとく
「なっ!? し、四方に劉備軍の旗が掲げられている……。
ぬうう。かくなる上は包囲網を突破し、定軍山も奪回してやる!」


挿絵(By みてみん)
厳顔げんがん
「よかろう、逃げたければこの厳顔の首を獲ってみよ!」


挿絵(By みてみん)
夏侯徳かこうとく
「どけクソジジイ!!」


挿絵(By みてみん)
厳顔げんがん
「十年早いわこわっぱが!!」


挿絵(By みてみん)
夏侯徳かこうとく
「ぐわあああああっ!!!」


挿絵(By みてみん)
厳顔げんがん
「夏侯徳は討ち取った!
抵抗する者は容赦せんぞ! おとなしく降伏しろ!」


挿絵(By みてみん)
陳式ちんしき
「おお…………。お見事です厳顔様…………」


挿絵(By みてみん)
厳顔げんがん
「陳式もご苦労であったな」


挿絵(By みてみん)
陳式ちんしき
「いえ…………。
趙昂に敗れて無様な姿をさらしてしまいました…………」


挿絵(By みてみん)
厳顔げんがん
「なんの、お主が黄忠殿に偽装して趙昂と戦ったから、
騙された夏侯淵をおびき出すことができたのだ。
それにしても法正の策は大当たりじゃ。
夏侯徳もわずかな兵に囲まれていたことに気づかず、
自ら飛び出してきおったぞ!」


挿絵(By みてみん)
陳式ちんしき
「黄忠様も定軍山を占拠し、残っていた郭淮は
趙昂と合流して南鄭城に撤退したようです…………」


挿絵(By みてみん)
厳顔げんがん
「これで漢中制圧に大きく近づいたな。
劉備様もさぞかし喜ばれよう!」


~~~漢中 魏軍~~~


挿絵(By みてみん)
郭淮かくわい
「本官がついていながら夏侯淵将軍を止められませんでした……。
弁解のしようもない!!」


挿絵(By みてみん)
杜襲としゅう
「お前の責任ではない。
参謀を務めていた私が責任を問われるべきだ」


挿絵(By みてみん)
趙昂ちょうこう
「定軍山、天蕩山がこうもたやすく落とされるとはな……」


挿絵(By みてみん)
杜襲としゅう
「いや、それは結果にすぎない。
敵ははじめから、夏侯淵将軍と
夏侯徳の首だけを狙って策を仕掛けたのだ。
私はそれを読めなかった……」


挿絵(By みてみん)
王異おうい
「ところで夏侯淵将軍が討たれたいま、
ウチらは誰を総大将に据えるんじゃ?
曹洪将軍は馬超と対峙していて動けんぞ」


挿絵(By みてみん)
杜襲としゅう
「……張郃、お前に任せよう」


挿絵(By みてみん)
張郃ちょうこう
「俺に? だが俺は自分の身勝手な考えで張飛に敗れた。
位も低いし、杜襲殿や趙昂殿がふさわしいのではないか」


挿絵(By みてみん)
杜襲としゅう
「いや、この非常時には歴戦の勇士であるお前がふさわしい。
お前が後任となれば兵の動揺も収まるだろう」


挿絵(By みてみん)
郭淮かくわい
「張郃殿ならば夏侯淵将軍の代役も務まるでありましょう!」


挿絵(By みてみん)
趙昂ちょうこう
「わしも異存は無いけんのう」


挿絵(By みてみん)
楊阜ようふ
「だが今後は独断を控え、私たちの指示を聞いてもらうぞ」


挿絵(By みてみん)
張郃ちょうこう
「……わかった。務めさせていただこう」


挿絵(By みてみん)
杜襲としゅう
「魏王の援軍も近くに迫っている。いましばらくの辛抱だ。
この漢中を劉備の手に渡すわけにはいかん!」


~~~~~~~~~


かくして魏の重鎮・夏侯淵は討たれた。
優勢に事を進める劉備軍だが、行く手には覇王・曹操が立ちはだかる。
ついに劉備と曹操、宿命の好敵手同士による総力戦の幕が開こうとしていた。

次回 〇七三   法正の戦略
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