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アイコン三国志 作者:小金沢

第七章 軍神・関羽

71/125

〇七〇   合肥の戦い

~~~揚州ようしゅう皖城かんじょう~~~


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「おう、あれが皖城か。
小城のくせに粘ってるそうじゃねェか」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「ええ。守将が優秀で、
幾度となくあっしらの攻撃をはね返してます」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「ほう。そんなら軍師サマはどうやって陥落させるつもりだ?」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「孫権艦長の本隊が合流したのなら、小細工は必要ないでしょう。
四方から総攻撃を掛けて一気に落とします」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「さすが呂蒙サンは話がわかるわー。
じゃあオレが一番乗りっつーことで」


挿絵(By みてみん)
凌統りょうとう
「おっと甘寧! お前ばっかりにいいカッコはさせないぞ!
おれが故郷で待つ婚約者に、
一番乗りを土産として届けてやるんだ!」


挿絵(By みてみん)
孫韶そんしょう
「フゥー! 待ちな。
艦長に御指名いただくのは江東ナンバーワンの俺だぜ。
引き立て役は脇に退いてろ」


挿絵(By みてみん)
賀斉がせい
「なんと見苦しい争いであるか……。
諸君には優雅さが足りないようだ。
かくなる上はワガハイが華麗に皖城を攻め落としてご覧に入れよう」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「……じゃあみなさんには、
東西南北それぞれの城門攻撃をやってもらいましょうか」


挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)

「「「「おう!!!!」」」」


~~~皖城~~~


挿絵(By みてみん)
朱光しゅこう
「来たか……。
どうやらこれが俺の最期の戦いになるようだな。
迎え撃て! ありったけの矢を放ち、石を落とせ!」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「は? どこ狙ってんデスカ? 当てる気あるんデスカ?」


挿絵(By みてみん)
凌統りょうとう
「ここはおれに任せてお前たちは先に行け!
大丈夫、必ず後から駆けつけるさ……」


挿絵(By みてみん)
孫韶そんしょう
「オッケーイ!
まずは射手を狙え! 俺の進撃路を確保しろ!」


挿絵(By みてみん)
賀斉がせい
「魏軍よ、ワガハイの美しき剣の舞を冥土の土産に見せてやろう」


挿絵(By みてみん)
朱光しゅこう
「くっ……。さすがは江東の精鋭だ。
だが魏王に任された皖城はやすやすと落とさせんぞ!
――西の防備が薄い! 一隊は援護に回れ!」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「チョリース。甘寧一番乗りみたいな?」


挿絵(By みてみん)
朱光しゅこう
「とうとう突破されたか!
だがこの朱光をたやすく討てると思うな!」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「脇役がうるせーんデスけど?」


挿絵(By みてみん)
朱光しゅこう
「な!? そ、その武器はなんだ……。
ぐはあああっ!!」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「ボードも知らないなんて人生やり直したほうがよくね?
あ、朱ナントカ討ち取ったりー」


挿絵(By みてみん)
凌統りょうとう
「くそ! 先を越されちまった!」


挿絵(By みてみん)
賀斉がせい
「…………美しくない」


挿絵(By みてみん)
孫韶そんしょう
「上客を逃がしたか……。
俺は帰るから残党の片付けはお前らに任せるぜ!」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「……オレらも強くなったもんだな。
あっという間に攻略しちまったぜ」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「皖城くらいで苦戦していたら先が思いやられますからね。
合肥を攻略できるかどうか、それが問題です。
ま、この勢いならどうにかなるんじゃないかと、
あっしは思いますがね」


~~~合肥城~~~


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「オレは打って出るぜ。
おとなしく守りを固めるなんざ、オレの流儀には合わねーんだよ」


挿絵(By みてみん)
李典りてん
「無謀ですね、はい。我々の兵力は2千にも足りません。
魏王の援軍を待つべきです、はい」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「そうかい。だったらテメーは城に籠もってりゃいい。
オレは半数を引き連れて、孫権軍に先制攻撃を仕掛けてくるぜ」


挿絵(By みてみん)
李典りてん
「……魏王が我々三人に合肥を任せた時に、
なんと仰られたか忘れたようですね、はい。
張遼、李典、楽進の意見を必ず一致させよと言ったはずです、はい」


挿絵(By みてみん)
楽進がくしん
「うんうん。オイラも覚えてるよ」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「合肥の総大将はオレだ。総大将の意見が聞けねーってんだな」


挿絵(By みてみん)
李典りてん
「民を乱暴な統治で締めつけて、
大量の住民流出を招くのが総大将の仕事ですか。
いったい誰のせいで2千ぽっちの兵しか集められなかったと
思ってるんですかね、はい」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「言ってくれるじゃねーか……。
おい楽進、てめーはどう思うんだよ。
戦うのか。臆病風に吹かれて守んのか」


挿絵(By みてみん)
楽進がくしん
「うーん。オイラは難しいことはよくわかんないけど、
張遼より李典のほうが頭が良いのはわかるよ。
だから李典の意見のほうが正しいんじゃないかな」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「けっ。話にならねーな。
おい温恢。一言もしゃべってねーが刺史サマの意見はどうなんだよ」


挿絵(By みてみん)
温恢おんかい
「情けない、としか言いようがありませんな」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「なんだと?」


挿絵(By みてみん)
温恢おんかい
「私は劉馥りゅうふく殿のもとで、この合肥の発展に尽力してきた。
劉馥殿の亡きいま、孫権軍20万が迫る危機に対し、
一致団結して事に当たるのが当然であろう!
それをあなた方は味方同士で争って……。
劉馥殿が生きておられたらなんと言うだろうな!!」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「…………テメーの言うとおりだ。
おい李典、一時休戦だ」


挿絵(By みてみん)
李典りてん
「温恢殿に返す言葉もないです、はい。
張遼、私も言い過ぎた面があると認めましょう、はい」


挿絵(By みてみん)
楽進がくしん
「オイラたちは劉馥さんを知らないけど、
合肥を守りたいと思う気持ちはみんな一緒のはずだよ。
味方同士でいがみあってる場合じゃない。
みんなの力を合わせるんだ!」


挿絵(By みてみん)
蒋済しょうせい
「……話がまとまったようですね」


挿絵(By みてみん)
温恢おんかい
「酒臭いと思っていたらお前か。
魏王の遠征軍に同行していたお前が来たということは……」


挿絵(By みてみん)
蒋済しょうせい
「ええ。魏王の手紙を預かって、都から飛んで来たんですよ」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「曹操の旦那から手紙だと? 早く見せろ!
…………見ろよおめーら! 旦那も出陣しろと言ってるぜ!」


挿絵(By みてみん)
李典りてん
「……本当ですね、はい」


挿絵(By みてみん)
楽進がくしん
「もちろん籠城しなければ持ちこたえられないが、
まずは出陣して一撃を加え、孫権軍の出鼻をくじけ、か。
ふーん。オイラにゃ作戦の良し悪しはわかんないけど、
先制攻撃するってのは賛成だな」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「これで決まったな。とりあえず孫権軍をぶっ叩く!
後のことはそれから考えるとしよーぜ!」


~~~合肥 孫権軍~~~


挿絵(By みてみん)
駱統らくとう
「申し上げます。
楽進軍が前方で待ち構えています。その数およそ1千」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「たったの1千? おいおい、なんのつもりだそりゃ」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「合肥には2千ほどの兵しかいませんが、
それでも1千は少なすぎですね。楽進だけってのも腑に落ちない。
張遼や李典が伏兵で潜んでいると考えるべきでしょう」


挿絵(By みてみん)
徐盛じょせい
「全軍が出てきていたとしても、潜んでいるのは残り1千だろう?
それっぽっちで何ができる。ワシが踏みつぶしてやるわ!」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「どう思うよ呂蒙?」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「風もありませんから、火計も仕掛けられないでしょう。
問題は、まだ後続の部隊は渡河中で、
あっしらの手元にも5千程度の兵しかないことですが――」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「5千もありゃ十分だろ。行こうぜ呂蒙!
面舵いっぱい! 野郎ども突撃だ!!」


~~~合肥 孫権軍 本隊~~~


挿絵(By みてみん)
楽進がくしん
「ちっきしょう! オイラじゃ刃が立たないや!」


挿絵(By みてみん)
周泰しゅうたい
「おのれ逃げるか楽進!」


挿絵(By みてみん)
徐盛じょせい
「なんのために出てきたんだ貴様あっ! 首を置いていかんか!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「周泰さんと徐盛さんは楽進を追っていってしまいましたね。
潘璋さん、陳武、宋謙は辺りに気を配ってください。
あっしらはここで後続部隊の到着を待ちます」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「おうよ」


挿絵(By みてみん)
陳武ちんぶ
「承知したネ」


挿絵(By みてみん)
宋謙そうけん
「はっ!」


挿絵(By みてみん)
駱統らくとう
「……ああ! 楽進は合肥城に逃げ込まず、さらに北へと走っています。
周泰殿らもそれにつられていますよ!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「やはり策がありそうですね……。
まずい、あっしらの本隊が孤立しています。
前進して周泰さんらに追いつきま――」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「待ちやがれ孫権! ここがお前の墓場だ!!」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「張遼が現れやがった! 8百はいるぞ!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「周泰さんらの前衛が離れたから、あっしらの手元には3千弱。
これが張遼の狙いか!」


挿絵(By みてみん)
陳武ちんぶ
「艦長には指一本触れさせないアル!」


挿絵(By みてみん)
宋謙そうけん
「ここは通すものか!」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「おーっと退いていいのか?
おめーらの背後には李典が待ってるぜ!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「包囲の輪にはまったか……。
陳武、宋謙は1千の兵で張遼を足止めしろ!
潘璋さんは艦長をつれて後退を!
駱統は後続部隊に救援を頼みます!」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「こっちだ艦長!」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「ちっきしょう!」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「邪魔だあっ!!
1千ぽっちでオレを止められると思ったか!!」


挿絵(By みてみん)
宋謙そうけん
「ぐわああああっ!!」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「こちとら東方戦線に回されて出番が無くてむかついてんだよ!!」


挿絵(By みてみん)
陳武ちんぶ
「やられたアルうううううう!!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「陳武と宋謙が秒殺だと!?
張遼の武勇がこれほどとは……一生の不覚!」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「雑魚はどいてろ! 待ちやがれ孫権んんんん!!」


~~~合肥 凌統軍~~~


挿絵(By みてみん)
凌統りょうとう
「あれ? 上陸したけど……艦長の本隊はどこだ?
先に行っちまったのか?」


挿絵(By みてみん)
駱統らくとう
「凌統! 急げ! 艦長が敵に襲われている!」


挿絵(By みてみん)
凌統りょうとう
「マジでか! わかった、すぐに行く!」


挿絵(By みてみん)
李典りてん
「今です、火を放ちなさい、はい」


挿絵(By みてみん)
凌統りょうとう
「ああっ! おれたちの乗ってきた船が……」


挿絵(By みてみん)
駱統らくとう
「それに橋も落とされた!
まずいぞ、完全に孤立してしまった……」


挿絵(By みてみん)
凌統りょうとう
「……駱統、ここは任せていいか?
おれは軽騎兵だけをつれて艦長を助けに行く。
なあに、すぐに戻るさ」


挿絵(By みてみん)
駱統らくとう
「わかった! 李典は私に任せろ!」


挿絵(By みてみん)
李典りてん
「甘く見られたものですね、はい。片付けなさい」


挿絵(By みてみん)
駱統らくとう
「槍働きはできないが、時間稼ぎくらいはしてやる!
弓隊は前へ!」


~~~合肥 呂蒙軍~~~


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「ぐっ!」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「やるな呂蒙とやら!
それだけの腕がありながら、なぜ軍師なんかしてやがる!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「こっちのほうが、よりお国のために貢献できると思いましてね」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「だったらそれは勘違いだ。
曹操の旦那の策にまんまとはまりやがって。
テメーに軍師は務まらねーんだよ!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「そうか、これは曹操が立てた策略か……。
あっはは。こいつは傑作だ!」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「何がおかしい?」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「おかげで吹っ切れましたよ張遼さん!
あっしはアンタに負けたわけじゃない。曹操に負けたんだ。
それなら諦めが付くってもんだ!」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「ごちゃごちゃとわけのわからねーことを!」


挿絵(By みてみん)
凌統りょうとう
「呂蒙! ここはおれに任せろ!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「来てくれたか凌統!
だが気をつけろ、張遼は想像以上の強敵だ!」


挿絵(By みてみん)
凌統りょうとう
「呂蒙こそ、背後にゃ李典がいるから気をつけろ。
船を焼かれたし橋も落とされたんだ。
なんとか艦長の逃げ道を探してくれ」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「わかった。死ぬなよ凌統!」


挿絵(By みてみん)
凌統りょうとう
「あの娘からプロポーズの答えを聞くまで死にはしないよ!」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「どけよ小僧!」


挿絵(By みてみん)
凌統りょうとう
「命に代えてもここは通さない!!」


~~~合肥 孫権本隊~~~


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「逃げてんじゃねえよ雑魚どもが!!」


挿絵(By みてみん)
谷利こくり
「は、潘璋! 我が軍の兵士を斬り殺すとはどういうつもりだ!」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「あん? お言葉ですがねえ谷利さんよ!
こいつらは艦長を守ろうともせずに、
我先にと逃げようとしてたんだ。
そんな連中を放っといたら士気に関わる。
だから殺した。文句あっか?」


挿絵(By みてみん)
谷利こくり
「……お前の言うとおりだ」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「俺様は兵士を立て直す。
あんたはあんたのやることをやんな。
――オラオラ、俺様に殺されたくなかったら
敵に向かえよ雑魚どもが!!」


挿絵(By みてみん)
谷利こくり
(……単に嬉々として殺しているだけにも見えるんだがな)


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「大変だぜ谷利! 船も橋もすっかり焼かれちまってるぜ!」


挿絵(By みてみん)
谷利こくり
「敵は我々より二手三手、先んじているようだ。
だが道はある。あそこをご覧あれ」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「……マジかよ。
あの焼け残った橋から、焼け残った船まで飛べって言うのか?
その後はどうするつもりだ?」


挿絵(By みてみん)
谷利こくり
「船に火を放つ」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「は?」


挿絵(By みてみん)
谷利こくり
「火を盾にして敵の追撃を防ぐのだ。
もうすぐそこまで韓当殿や甘寧殿の船団が近づいている。
火の盾で時間を稼ぎ、援軍の到着を待つか、
もしくは泳いで彼らの船まで行こう」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「ははっ。孫策の兄貴でもこんな無茶はしなかったろうな……。
それにしても谷利、おめェ今日はずいぶんと頭が回るじゃねェか」


挿絵(By みてみん)
谷利こくり
「俺ではない。こんなこともあろうかと
呂蒙が俺に策を預けてくれたんだ」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「……そうか。呂蒙のヤロー、いったいどこまで――」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「そこか孫権! 逃がすかっつーの!」


挿絵(By みてみん)
李典りてん
「駱統は片づけました。次は孫権です、はい」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「やべえ! みんなやられちまったのか!?」


挿絵(By みてみん)
谷利こくり
「背後には敵だ。もうやるしかないぞ艦長!」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「クソがっ! それしかねェならやってやらああああ!!」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「なにィ!? 焼け残った船に飛び移っただと?」


挿絵(By みてみん)
李典りてん
「しかも船や橋に自ら火を放ちましたね。
参りました。これでは追撃できません、はい」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「正気かよあいつら……」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「ここが正念場だ! 働け雑魚ども!!」


挿絵(By みてみん)
駱統らくとう
「陣を立て直せ! 槍隊は前へ出ろ!」


挿絵(By みてみん)
凌統りょうとう
「待てよ張遼! おれはまだやられちゃいねえぞ!」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「ヤロー……あれだけ痛めつけたのにまだ動けんのかよ。
孫権が無理ならこいつらだけでも息の根止めてや――」


挿絵(By みてみん)
李典りてん
「待った。合肥城から火が上がってますよ、はい。
城を攻められているようです」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「なんだと? チッ。城にはほとんど兵が残ってねーからな。
万が一落とされたら全てが台無しだ」


挿絵(By みてみん)
李典りてん
「孫権軍には大打撃を与えました。ここが引き際でしょう、はい」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「聞こえてっか孫権! 曹操の旦那が到着したらテメーの最期だ!
それまでによーく首を洗っとけよ!」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「っきしょう。言いたい放題しやがって……」


挿絵(By みてみん)
谷利こくり
「艦長の首を獲れなかった以上、奴らの敗北だ。
ただの負け惜しみだと聞き流せ」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「……だが陳武や宋謙は討たれちまった。
自分の戦下手さにヘドが出そうだぜ!」


挿絵(By みてみん)
駱統らくとう
「艦長! ご無事ですか?」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「オレは無傷だ。駱統こそ酷い顔してるじゃねェか」


挿絵(By みてみん)
駱統らくとう
「私は泥の中に転んだだけです。
それより凌統が…………」


挿絵(By みてみん)
凌統りょうとう
「痛てて……。わりい艦長、ちょいとドジっちまった」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「凌統! こっぴどくやられてんじゃねェか」


挿絵(By みてみん)
凌統りょうとう
「張遼は強かったよ……。でも艦長が無事で良かった。
なあに、ちょっと休めば大丈夫さ。
あ、あれ。おかしいな……。
なんだか辺りが暗くなってきたけど、もう夜なのかい?」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「や、やべェ! 早く凌統を医者に見せねえと!」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「艦長ーー! 無事かーー!?」


挿絵(By みてみん)
潘璋はんしょう
「後続の艦隊が到着したぜ。早いとこ乗り込もうや」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「駄目だ。まだ呂蒙や周泰、徐盛が戻ってねェ」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「あっしならここです。周泰さんらとも合流しましたよ」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「無事だったか呂蒙! どこで何してやがった!」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「合肥の城に火を放って張遼らの目を引き付けました。
城壁をちょっと焦がしただけですが、
うまく引っ掛かってくれましたね」


挿絵(By みてみん)
徐盛じょせい
「ワシらもただでは帰って来んわ!
逃げる楽進にたっぷりと矢を浴びせてやったぞ!」


挿絵(By みてみん)
周泰しゅうたい
「逃げるのが下手だったなあいつ」


挿絵(By みてみん)
谷利こくり
「我々もいいようにやられていただけではない、ということだ。
艦長、この雪辱は合肥を落とすことで晴らすとしよう!」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「谷利、オレのセリフを取るんじゃねェよ。
――転んでもただじゃ起きねェ。それがオレたちだ。
この次は合肥を落とし、さらに曹操に目にもの見せてやろうぜ!」


~~~合肥 曹操軍~~~


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「――孫権君が降伏を申し出てきただって?」


挿絵(By みてみん)
華歆かきん
「はい。漢王室を推戴する魏王に逆らう愚を悟ったと言っています」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「白々しい。
孫権はこれ以上我々とやり合っても益がないと判断しただけだ」


挿絵(By みてみん)
蒋済しょうせい
「亡き劉馥殿が改修した合肥の防御は万全でした。
兵糧や武器の備蓄は数年の籠城に耐え、
城壁も補修され、長雨の対策もされています。
城兵の数倍もの孫権軍とて攻め落とすことはかないませんでした!」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「劉馥が入るまで合肥はただの空き城に過ぎなかった。
全ては彼ひとりから始まったんだ。
彼は僕の期待をはるかに超える結果を見せてくれたよ」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「それにしても孫権が降伏とは結構ですな!
これで魏王の中華統一ももはや目の前でしょうな!」


挿絵(By みてみん)
賈詡かく
「その意見には承服しかねますな。
小生らにも長江を越えて、多くの兵力を温存している
孫権の領地を制圧する余力はない。
降伏と言っても体の良い名ばかりで、
足元を見られたと言うべきでしょうな」


挿絵(By みてみん)
華歆かきん
「未確認ですが、孫権の重臣が病没したという情報も入っています。
このあたりが引き際と考えたのでしょう」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「亡くなったのはおそらく従軍していない魯粛君か程普君だろう。
ふむ。国の柱石である彼らを失ったのなら、
僕でも降伏を考えるだろうね」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「そ、それで降伏を受け入れられるのですか?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「これ以上戦っても益がないのは僕らのほうも同じだよ。
朱光君が斬られ、楽進君も深手を負っているしね。
合肥を守りきれればそれで十分さ」


挿絵(By みてみん)
楽進がくしん
「えへへ……。かっこ悪いとこ見せてごめんよ。
負けたふりして逃げるなんて、慣れないことはするもんじゃないね……」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「しゃべると傷に障るよ。黙っていたまえ。
それにしても……正直言って、今の孫権君はすこし怖いな」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「怖い?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「考えてもみたまえ。
赤壁の戦いの際にはあれだけ抗戦か降伏かで揺れた孫権君が、
今回はあっさりと降伏を選んだのだよ。
これがどういうことかわかるかい?
乱暴な言葉を使えば、今の彼は
降伏することなんて屁とも思ってないんだよ。
あの孫権君がしたたかさを身に付けつつあるんだ。
こんなに怖いことはないよ……」


~~~合肥 孫権軍~~~


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「曹操はオレらの降伏を受け入れて撤退したか……」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「ですがこれは一時の平穏でしょう。
機が満ちれば、再び曹操は大軍を催して攻め寄せます」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「おめェに言われるまでもねェよ。
……それにしても魯粛のヤローは最期まで大胆不敵だったな。
曹操に降伏しろ、なんて遺言を聞いた時にゃあ、
開いた口がふさがらなかったぜ」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「あっしのような凡人にはとうてい考えの及ばない、
突き抜けた思考を持つ男でした。
実に惜しい人を亡くしたもんですよ……」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「まあ、オヤジといい兄貴といい周喩といい、
早死にすんのはオレらの伝統みてェなもんだ。
魯粛が死んだからにゃあ、後任はおめェだぜ呂蒙。
おめェは長生きしろよ」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「あっはは。まあ努力してみますよ。
――建前上とはいえ、曹操には降伏しましたから、
次に狙うべきは荊州でしょう。
なんとか関羽さんから荊州を奪う手立てを考えます」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「おうよ。
……呂蒙、その前に考えるべき問題があるんだけどよ。
ある意味、曹操や関羽よりもずっと厄介な問題だ。
そっちはどうしたもんかな」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「何の話ですかね?」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「……曹操に降伏しちまったことを、
都で待ってる張昭にどう言い訳するよ?」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「………………」


~~~~~~~~~


かくして合肥の戦いは痛み分けに終わった。
一方、西では国内を固めた劉備が、ついに北上を開始しようとしていた。
狙うは魏軍が陥落させたばかりの漢中。先陣を切った張飛は意気揚々と進撃するが……。

次回 〇七一   劉備の逆襲
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