挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
アイコン三国志 作者:小金沢

第六章 天下三分の計

67/125

〇六六   その名は錦馬超

~~~雒城らくじょう~~~


挿絵(By みてみん)
孟達もうたつ
「あたしの古い友人に霍峻かくしゅんって男がいましてね。
ここから北に行った所にある葭萌関かぼうかんって砦を守ってるんだ。
これが馬鹿の付くくらい真面目な男で、冗談なんて一切口にしない。
そんな彼が「孟ちゃん、俺の砦を馬超が攻めてくるよ」
なんて言うんだ。
あたしは「よせや~い。馬超が来るわけないだろ」ってね。
だって馬超は漢中かんちゅうにいるんだ。
葭萌関を攻めてくるわけがない。夢でも見たんだろってね。
その時は思ったんだ。
でも霍峻は「本当だよ。本当なんだよ」ってしつこく言う。
あたしも彼の正直さはよく知ってるからね。
これはおかしいぞ。本当に馬超がいるんじゃないかって
だんだん思ってきてね」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「あわわわわわわわわ」


挿絵(By みてみん)
孟達もうたつ
「そしたら霍峻が「孟ちゃんあれだよ!」って急に叫んだ。
あたしはびっくりして彼の指差す方を見た。
でも誰もいない。だ~れもいない。誰もいないんだ。
てっきり冗談だと思ってね。
あたしは「おどかすなよ~」って笑った。
でも霍峻は笑ってないんだ。
真剣な顔のまま「馬超が来る。馬超が来るんだよ」って
繰り返すんだ。あたしはだから
「どこから来るんだよ。馬超はどこから来るんだよ!」って。
彼に聞いた。そしたら彼は……」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「彼は…………?」


挿絵(By みてみん)
孟達もうたつ
「お前の後ろだあああっ!!!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ぎゃあああああああああああああ!!!」


挿絵(By みてみん)
孟達もうたつ
「本当に馬超の軍が攻めて来ていたと。そういうお話です……」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「長い! 長すぎるぜよ!
つまり、葭萌関に馬超が攻めてきたと、それだけの話じゃな?」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「曹操を窮地に陥れたっていうあの馬超ね。
これは劉璋と戦ってる場合じゃないわよ。急いで迎撃しないと」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「そうだ。貴様らはさっさと葭萌関に向かえ」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「し、諸葛亮!?」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「亮さん! 来てくれたんか!」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「貴様らでは馬超に勝つことはできぬからな。
余がじきじきに采配を振るってやろう」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「お、おまんが諸葛亮か……。
噂に聞いてたより強烈な奴じゃな」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「あいかわらず神出鬼没のバケモノみたいな男ね……。
でも残念だけど諸葛亮、アンタの出番はないわよ。
馬超なんてアタイが踏んづけてやるんだから!」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「ほう。貴様なら余の力を借りずとも馬超を破れると?」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「馬超ってのは策もなんもない、猪武者らしいじゃないの。
それに豪傑と戦えると聞くと、
喜んで一騎打ちに応じるって言うわ。
それなら兵も策もいらないわ。
アタイが馬超を討ち取ってやるわよ!」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「貴様が馬超を一騎打ちで破る……?
クックックッ……これは傑作だ。面白い冗談ではないか」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「なにがおかしいのよ!!」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「ならば問おう。貴様はこれまで一騎打ちで誰を討ち取ってきた?
さぞや名のある将の首を挙げてきたのだろうな」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「んぐ……。そ、そうね。
いちいちそんなこと覚えちゃいないけど、たとえば……。
ま、まず鄧茂とうもでしょ。
そ、それに郝萌かくぼう。あと魏続ぎぞくとか……」


挿絵(By みてみん)
黄月英こうげつえい
「鄧茂(笑)。郝萌(笑)。魏続(爆)」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「そ、そうだわ! 呂翔りょしょうも討ち取ってるわよ!」


挿絵(By みてみん)
黄月英こうげつえい
「呂翔(核爆)」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「これはこれは。さすが劉備軍の重鎮、世に名高き張飛将軍だ。
燦々たる実績であらせられるな。
――おお、よく見ればそこに趙雲がいるではないか。
参考までに聞くが、劉備に仕官してから
張飛の半分も経っていない貴様は今までに誰を斬った?」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「自分は大した実績ないッスよ。無名の相手ばかりッス。
呂曠りょこう晏明あんめい夏侯恩かこうおん淳于導じゅんうどう張繍ちょうしゅう高覧こうらん
あと侯成こうせい何儀かぎ邢道栄けいどうえい陳応ちんおう鮑隆ほうりゅう――」


挿絵(By みてみん)
黄月英こうげつえい
「ちなみに私は張勲ちょうくん曹純そうじゅんを殺してるです」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「う、うっさいわね! だまんなさいよ!
アタイだってそこにいる厳顔も、
あの張任だって、その気になれば討ち取れてたのよ!」


挿絵(By みてみん)
厳顔げんがん
「………………」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「それにアタイは官軍にいた頃は
一つの戦で八百八人の兵の首を挙げて――」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「要するに弱い者いじめが得意なのか」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「お前、意外としょぼいんだな」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「うるさいうるさいうるさーーい!!
見てなさいよ! アタイ一人で馬超の首を持ってきてやるんだから!!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ち、張さんが怒って出て行っちまったぞ。
本当に馬超さんと戦いに行ったんじゃろか……。
たしかに言われてみれば張さんの実績はあんまり大したこと無いけど、
ちょっと酷いんじゃないか亮さん」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「馬鹿め。
勝ち戦続きであの偽女は天狗になっていた。
油断せぬよう少々、お灸を据えて鼻をへし折ってやっただけだ」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「ということは、馬超の相手は張飛に任せるのか?」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「言うまでもない。馬超の蛮勇に正面から立ち向かえる者がいるなら、
それに任せれば話が早いではないか。
余は貴様ら暇人と違い忙しいのだからな」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「…………と、とにかくここはワシが引き受けるから、
おまんらは張飛の後を追い、葭萌関に急ぐぜよ!」


~~~葭萌関 馬超軍~~~


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「おのれ葭萌関め! 馬超の攻撃をしのぐとは見事だ!」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「すんまへん殿、葭萌関に劉備の援軍が入るのを防げんかった。
援軍を率いてる張飛ってのがえらい強くて歯が立たんわ」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「張飛か! その勇名は馬超も聞いたことがあるぞ!
特に誰か名のある大将首を獲っているわけではないが、
ものすごく強いとな!」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「……それって本当に強いのかしら」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「ならば本当に強いかどうか馬超の槍が確かめてやる!」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「はいはい。例によって待ちなさい。
アンタ一人で突っ込んだら危な――」


挿絵(By みてみん)
楊白ようはく
「見よ。葭萌関から誰かが一騎で出てきたぞ。
あれは噂の張飛ではないのか?」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「アタイの名は張飛!
馬超! 今すぐアタイと戦いなさい! 一騎打ちよ!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「おお! 張飛が馬超を呼んでいる! 今行くぞ張飛!」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「だから待ちなさいって!
せっかく敵の大将格がのこのこ出てきてくれたのよ。
遠くから矢を射かけて討ち取っちゃえばいいのよ」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「董白、君の言葉でもそればかりは聞けないよ!
そんな卑怯な真似は星になった父ちゃんが許さない!
馬超は正々堂々と一騎打ちをする!」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「で、でも敵の罠かもしれないし、
そうじゃなくてももしアンタが負けたら――」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「馬超は負けない!!」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「……あかん。病気で漢中に置いてきた龐徳がいればまだしも、
こうなった殿はもう止められへん」


挿絵(By みてみん)
楊白ようはく
「何を迷うことがある。要は馬超が勝てば良いのだ。
行け馬超。張魯師君のために戦うのだ」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「行くとも! 董白!
君のために張飛の首をかっ飛ばして見せるよ!」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「……その董白は別にそんなこと望んでないんだけど」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「行くぞ張飛いいいいいいいい!!」


~~~葭萌関 劉備軍~~~


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「馬超おおおおおおおお!!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「張飛いいいいいいいい!!」


挿絵(By みてみん)
霍峻かくしゅん
「あ、あれが音に聞く張飛殿か。
あの馬超と互角に打ち合うとは……」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「うんうん。どうじゃ、うちの張さんは強いじゃろ?」


挿絵(By みてみん)
鄧賢とうけん
「その調子よ張飛! 女のド根性見せてやんなさい!」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「本当に五分と五分だな。これはちょっと決着がつきそうにないぞ」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「い、いいのですか軍師殿? このままでは張飛殿に危険が――」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「良いも悪いもない。
なかなかの余興ではないか。貴様ももっと楽しめ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ほれ張さん右じゃ! いややっぱり左じゃ!
左に回り込め! 正面にも気をつけるんじゃぞ!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「アンタは! 黙って! 見てなさい!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「やるな張飛! 馬超とここまで戦えるのはお前で四人目だ!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「結構いるのね! アンタ実は大したこと無いんじゃないの!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「お前こそ大した将を討ち取っていないと聞いていたぞ!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「それ関中にまで知れ渡ってんの!?
だ、だったらそういうアンタは誰を討ち取ったのよ!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
郭援かくえん! 李通りつう! あと許褚とも互角に戦った!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「フ、フン……。まあまあやるじゃないのさ!
でもこれまで誰を討ち取ったかなんて関係ないのよ!
ここでアンタの首を挙げればいいんだから!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「同感だ!!」


~~~葭萌関 馬超軍~~~


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「……もう日が暮れてまうで。馬や武器を3回取り替えて、
食事休憩まで2回挟んで、それでも決着がつかん」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「………………」


挿絵(By みてみん)
楊白ようはく
「だがあれだけの相手だ。張飛とやらを討ち取れば、
劉備軍の士気は地に落ちるだろう。
そうなれば葭萌関を落とし、劉備軍を蹴散らすこともたやすい」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「大丈夫か姐御? 顔色が真っ青やで。帰ったほうがええ」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「…………あたしは馬超の戦いを見届ける」


挿絵(By みてみん)
楊白ようはく
「ヒッヒッヒッ。殊勝な心がけだ。
張魯師君のためにもせいぜい夫の勝利を祈るのだな」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「………………馬超」


~~~葭萌関 劉備軍~~~


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「きゃあ危ない!!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「何をやっとるんじゃ張さん!!」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「日が沈んで相手もろくに見えないのでしょう。
労も溜まっているしこれ以上戦うのは危険です!」


挿絵(By みてみん)
孟達もうたつ
「人間ってのは暗闇を恐れますからねえ。
あたしも以前、山に登った時に――」


挿絵(By みてみん)
霍峻かくしゅん
「孟ちゃんの長い話を聞いてる暇はない。
劉備殿、早く撤退命令を!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「もうちょっと見てたい気もするんじゃが……。
しかたない。撤退させとくれ」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「……駄目だな。ドラを鳴らしてもまったくの無視だ。
今の二人には雑音は聞こえないようだ。
これは劉ちゃんが自ら止めに入るしかないぞ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ええっ!? ち、張さんと馬超さんの間に割って入るんか?
わ、わしは嫌じゃぞ。誰か代わりに行ってくれんか」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「だが力ずくで止められそうな趙雲も黄忠も魏延も、
法正と一緒に雒城の守備に置いてきちまった。
いちおう義兄の劉ちゃんが命令するのが一番だろう」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「そ、そうじゃ、亮さんの知恵なら
二人を止められるんじゃないか?」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「余は肉体労働は好まぬ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「な、なら月英さん!」


挿絵(By みてみん)
黄月英こうげつえい
「嫌です。いやーん。月英こわーい。です」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
(女に頼ろうとしたぞこの男……)


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「お、お願いじゃ。後生じゃから誰か、誰か代わりに――」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「さっさと行け」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「うひゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「劉備!? ちょっとアンタ、馬で突っ込んできてどういうつもりよ!
ここは危ないから下がってなさい!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「だ、だって亮さんが的盧さんの尻をぶっ叩いて無理やり……」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「お前が劉備か? 何の用だ。見ての通り馬超たちは忙しい!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「そ、そのー。なんというか……。
もう暗いし、帰ったほうがいいってみんなが言っとるし……」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「子供か!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「うん? そういえば辺りが暗いな。これでは戦いづらい。
待っていろ、部下に火を持ってこさせる」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「そう来なくっちゃ!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「じゃ、じゃが――」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「なんやなんやお前は! ――劉備だと? 敵の大将がなんのつもりや。
一騎打ちの邪魔すんなら、わてが相手になるで!」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「馬超の邪魔をするな!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ひいっ! わ、わしはそんなつもりじゃないぞ。
ただ、こう暗くては戦えぬからもう辞めたほうがいいと――」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「だから灯りを用意すると言っている!
馬岱! すぐに篝火を百本用意しろ!」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「いや……劉備はんの言うことももっともや。
今日はここまでにして、明日改めて戦ったらどうや?」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「いいえ。すぐに火を用意しなさい。
言ったはずよ。あたしは最後まで見届けると」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「董白…………」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「べっぴんさん…………」


挿絵(By みてみん)
李恢りかい
「待て! この勝負はここまでだ!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「次から次へと誰だ!
んん? よく見れば父ちゃんの旧友の李恢じゃないか。
劉備軍に降ったと聞いているが今さら何の用だ」


挿絵(By みてみん)
李恢りかい
「馬超、お前が劉備殿と戦うと聞いてあわてて飛んできたのだ。
諸葛亮殿は何も言わずいなくなるのだから困る……。
とにかく間に合ってよかったぞ。
お前たちは心得違いをしている。なぜ劉備殿と戦うのだ?」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「張飛を倒すためだ!」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「あかん。また目先にだけ神経が行っとる。
……ええと、張飛を倒し、劉備を倒し、さらに劉璋を倒し、
益州を制圧するんが目的やで」


挿絵(By みてみん)
李恢りかい
「そんな瑣末な目的は聞いていない。お前たちの最終目的はなんだ」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「…………曹操を倒すことよ」


挿絵(By みてみん)
李恢りかい
「ならばなぜ劉備殿と戦う?
劉備殿こそ長年にわたり曹操と戦ってきた方ではないか!
お前たちは目先の利にとらわれ、張魯に踊らされているだけだ。
劉備殿とともに曹操と戦うことこそが、真に歩むべき道であろう。
早く目を覚ませ!」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「むむむ」


挿絵(By みてみん)
李恢りかい
「何がむむむだ!
お前や董白がついていて、なぜ馬超に道を誤らせる?
死んだ馬騰も草葉の陰で泣いているぞ!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「父ちゃんが……泣いている……?」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「……李恢の言う通りね。
あたしたちは本当の目的を見失っていたわ。
劉備、聞いての通りよ。アンタに降伏するわ。
受け入れてもらえるかしら?」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「も、もちろんじゃ! 強い人やべっぴんさんは大歓迎じゃぞ!
……断ったらこの場で斬られちまいそうじゃし」


挿絵(By みてみん)
李恢りかい
「董白のことだ。それも計算に入れているのだろう。
馬超、お前もそれで良いな?」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「よくわからないが馬超は董白に従うだけだし、
父ちゃんを泣かせるようなことはしない!
それに劉備陣営に入ればいつでも張飛と戦えそうだ!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「ずいぶんと虫のいい話ね。でもまあ、アンタたちなら歓迎す――」


挿絵(By みてみん)
楊白ようはく
「今だ! うなれ業火よ!!」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「な!?」


挿絵(By みてみん)
楊白ようはく
「ヒッヒッヒッ。馬超よ、お望み通り火を用意してやったぞ!」


挿絵(By みてみん)
李恢りかい
「くっ! すっかり火に囲まれてしまった」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「しまった! この展開は予想できたはずなのに
あたしとしたことが……」


挿絵(By みてみん)
楊白ようはく
「ご苦労であったな馬超よ。
劉備をおびき寄せてくれた礼に、お前もろとも地獄へ送ってやる」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「おのれ裏切ったな楊白!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「先に裏切ったのはアンタの方でしょ!
……って突っ込んでる場合じゃなかったわね。やばいわよこれ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「あわわわわわわわわわ」


挿絵(By みてみん)
楊白ようはく
「ヒッヒッヒッ。裏切り者の馬超はもちろん
劉備まで討ち取ったとあれば、師君もさぞお喜びに――」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「くだらぬ」


挿絵(By みてみん)
楊白ようはく
「へ?
……お、おれの業火の術が……扇の一あおぎで……消え……た?」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「興醒めだ。余興を楽しんでいたところに水を差しおって」


挿絵(By みてみん)
黄月英こうげつえい
「火を消したのだから水を差したのは御主人様の方だと思うです」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「黙れ。殺せ」


挿絵(By みてみん)
黄月英こうげつえい
「はいです。殺すです」


挿絵(By みてみん)
楊白ようはく
「く、来るな! な、なぜだ! なぜ火が放てぬ!?
ひ、ヒィィィィィィィイイ!!」


挿絵(By みてみん)
黄月英こうげつえい
「殺したです。11回刺したら死んだです。
手から火を出してたですけど仙人じゃないみたいです」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「当然だ。
余ではなく劉備を先に葬ろうとする愚者が仙人になれるものか」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「助かったぞ! さすが亮さんじゃ!」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「あ、アンタが諸葛亮……? と、とりあえず礼を言っとくわ」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「貴様の礼など不要だ。それよりもすぐに成都へ進撃しろ」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「今すぐ成都へ? ずいぶん急じゃないの」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「降伏したという話が伝わるより先に馬超が成都へ現れるのだ。
クックックッ……。劉璋め、さぞや肝を潰すであろうな」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
(こいつのほうが曹操よりよっぽどラスボスっぽいで……。
もしかして、えらいヤツに降ってもうたんやないか)


~~~成都~~~


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「劉璋! 聞こえているか!?」


挿絵(By みてみん)
劉璋りゅうしょう
「な、なになに? 誰かがぼくを呼んでるよー!」


挿絵(By みてみん)
秦宓しんふく
「あれは――馬超!!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「馬超は劉備に力を貸すことに決めた!
もはやお前たちに勝機はないぞ!」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「むう……。黄権こうけんは南方の防衛に向かっておるし、
戦える将がいない。たしかに厳しいな」


挿絵(By みてみん)
龐羲ほうぎ
「龐徳はどこだ! なにゆえ我々を裏切った!?」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「龐徳は置いてきた!
冷たいようだが、病でこの戦いにはついて行けない!」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「わてらの真の目的は曹操の打倒や。
目的を同じにする劉備はんと組むのは当然のこっちゃ。
悪く思わんといてや」


挿絵(By みてみん)
龐羲ほうぎ
「くっ…………」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「成都は完全に包囲されてるわ。
おとなしく降伏しないなら一斉攻撃させてもらう」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「だ、そうだ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「劉璋さんやーい。悪いことは言わんから降伏してくれんかのう?
今さらじゃけど、わしは劉璋さんと戦いとうないんじゃ」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「本当に今さらだけどな」


挿絵(By みてみん)
劉璋りゅうしょう
「どどどどどどうすればいいの!? ぼく怖いよー……」


挿絵(By みてみん)
許靖きょせい
「こ、降伏しましょう!
馬超が敵に回ったらどうしようもありません!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「さっきから馬超馬超ってアタイのことも話題に出しなさいよね!
その馬超と互角に戦った張飛もいんのよ!」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「及ばずながら趙雲もいるッス!」


挿絵(By みてみん)
厳顔げんがん
「劉備軍だけではない。
すでに益州軍の重鎮たちも多くが降っておる」


挿絵(By みてみん)
雷銅らいどう
「俺たちもあんたらとは戦いたくねえ」


挿絵(By みてみん)
呉蘭ごらん
「我々からも劉備殿に口添えいたす。心配せず降られよ」


挿絵(By みてみん)
呉懿ごい
「はいはい、それがいいですよ」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「降るか戦うか早く決めろ! 馬超は気が短いんだ!!」


挿絵(By みてみん)
劉璋りゅうしょう
「怖いよー。えーん。えーん」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「………………ここまで、か」


~~~~~~~~~


かくして錦馬超は劉備に降った。
劉備軍は益州の首都・成都に迫り大勢は決した。
天下三分の計、その第一歩がいま刻まれようとしていた。

次回 〇六七   天下三分の計
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ