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アイコン三国志 作者:小金沢

第六章 天下三分の計

66/125

〇六五   雒城の戦い

~~~張飛軍~~~


挿絵(By みてみん)
厳顔げんがん
「さっさと首をはねんか!
益州には国に殉ずる将はおっても、降伏する将はおらん!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「………………」


挿絵(By みてみん)
厳顔げんがん
「……縄など解いてなんのつもりじゃ。
こ、これ。なぜ捕虜の儂に頭など下げおる?」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「年寄りを敬うのは当然のことよ。
ましてや立派な将軍だったらなおさらね。
厳顔将軍、偉そうにおとなしく降伏しろなんて
命令してごめんなさい。だからこうしてお願いするわ。
どうかアタイたちに力を貸してくれないかしら」


挿絵(By みてみん)
厳顔げんがん
「むう……。いや、儂のほうこそ失礼つかまつった。
貴殿をただの侵略者と思い、いささか言葉が過ぎたやもしれん。
どうか許されよ」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「とんでもないわ。
さあ、将軍はもう自由の身だから帰っても構わないわ。
またアタイたちと戦うというなら、正々堂々と受けて立つから」


挿絵(By みてみん)
厳顔げんがん
「……いや、気が変わった。
張飛殿と言ったな。聞かせてくれんか。
劉備殿というのはどういう御方か。なぜ儂らと戦うのか。
貴殿になら聞いてみたい……」


~~~諸葛亮軍~~~


挿絵(By みてみん)
劉封りゅうほう
「張飛将軍は敵将の厳顔を降し、
その道案内により快進撃を続けているそうです。
また別路から侵攻中の趙雲将軍も、各地の城を攻略しているとのこと」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「まずは順調、であるな」


挿絵(By みてみん)
李恢りかい
雒城らくじょうのほうはどうなっている?」


挿絵(By みてみん)
劉封りゅうほう
「敵方に成都せいとから多くの援軍が加わり、
また龐統軍師を失ったことで攻撃を見合わせています」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「フン。龐統抜きでは荷が重かろう。
だが敵を足止めできれば上出来だ。
そのまま臆病者の亀のように防備を固めていろと伝えよ。
じきに余が成都を落とす」


挿絵(By みてみん)
李恢りかい
「それにしても妙ですな。
劉璋は雒城には主力を回しながら、
こちらには大した戦力を送ってきません」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「当然だ。余が劉備をおとりに成都を落とすのを狙っているように、
彼奴らも余を無視し、劉備さえ討てば良いと考えている。
そしてその考えはいたって正しい」


挿絵(By みてみん)
李恢りかい
「なるほど。主君の劉備様さえ討てば、
我々は退却を余儀なくされますからな」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「違う。彼奴らは余に勝ち目はないが、
無能の劉備になら勝ち目はあるということだ。
ましてや側に龐統のいない劉備ごときならな」


挿絵(By みてみん)
李恢りかい
「………………」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「このまま劉備がおとなしく守備に徹していれば問題ない。
だがあの今世紀最大の無能のことだ。
そろそろ余計なことをしでかすに違いない。
余は急ぎ成都に迫るとともに、一つ手を打っておくとしよう」


~~~雒城~~~


挿絵(By みてみん)
呉懿ごい
「このまま雒城の守備を固めていても、
諸葛亮の別働隊に成都を落とされては元も子もありません。
どうにかして劉備を討ち取る策を講じましょう」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「このまま守りを固めていても
成都が落とされたら終わりだああああ!!
陣にこもったきりの劉備をおびき出して殺さなくてはいかんぞ!」


挿絵(By みてみん)
劉璝りゅうかい
「張任の言うとおりタイ! 何か策はあるのか」


挿絵(By みてみん)
呉懿ごい
「そうですね。
たとえば我々のほうから打って出て、わざと敗戦を重ね、
劉備軍の進撃を誘い出すのはいかがでしょうか。
雒城を落とせると踏めば、彼らも動くことでしょう」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「俺たちのほうから攻撃を仕掛け、わざと連敗するのはどうだ?
軍師の龐統を討たれたせいで今は慎重になっているが、
雒城を落とせる可能性があれば、奴らも外に出てくるだろう。
そうすれば隙ができる!」


挿絵(By みてみん)
雷銅らいどう
「それはいい考えだな! さすが張任だぜ!」


挿絵(By みてみん)
呉蘭ごらん
「ならば俺と雷銅がおとり役を引き受けよう。
援軍の俺たちが弱いと踏めば、ますます進撃を考えるだろうからな」


挿絵(By みてみん)
劉璝りゅうかい
「そうと決まったらさっそく行くタイ!
――おっと、忘れるところだった。総大将の呉懿殿もそれでいいか?」


挿絵(By みてみん)
呉懿ごい
「はいはい、いいですよ」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「行くぞ貴様らああああ!!」


~~~涪城ふうじょう~~~


挿絵(By みてみん)
孟達もうたつ
「これまでだ~れも出て来なかった雒城から、
ぽつりぽつりと人が出て来るんだ。
あれ、おかしいな~。あれはなんだろうなあ~と思ってたら、
その数がどんどん増えてくる。
一人が二人に、二人が四人に。四人が八人に。
どんどん増える。どんどんどんどん増える。
敵が出撃してきたんだ! ってあたしは思ってね。
その旗を見に行った。敵がお~きな旗を持っている。
それがバサバサバサバサ! って風に揺れてるんだ。
よ~く目を凝らしてみたら、呉蘭って書いてあるんだ。
雷銅って書かれた旗もある。
呉蘭と雷銅といえば、この前に敵に加わった援軍じゃないかって。
援軍の二人なんだな~。それであたしはあわてて逃げ帰ってきたと。
そんなお話です……」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「お、おう……。偵察ご苦労じゃったな孟さん。
な、なんだか冷えてきた気がするのう。ちょっと毛布を貸してくれんか」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「とにかく敵が出てきたんなら、こいつは願ったりかなったりだ。
城に閉じこもられてたらどうしようもないが、
外に出てきた兵なんて儂らの敵じゃないぞ!」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「その呉蘭と雷銅ってのはどんな将なんだ?」


挿絵(By みてみん)
鄧賢とうけん
「技の雷銅・力の呉蘭、
なんて呼ばれるくらい腕はめっぽう立つけど、頭は悪いわ。
奴らが単独で動いてるなら簡単に踏んづけられるはずよ」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「……だが急に出撃してきたのが気になるき。
こいつは罠だと思うぜよ」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「しかし罠にはめようと考えても、
城にこもったきりの奴らにどんな策があるのだ?
呉蘭と雷銅の他に伏兵は出てきているのか?」


挿絵(By みてみん)
孟達もうたつ
「あたしもそれが気になりましてね。
雒城の裏手のほうに回ってみた。
樹が生い茂って、昼間なのにくら~い山道になってるところに、
小さなほこらがあるんだ。
道端にぽつんと、ち~さなほこらが立ってる。
あれ、これはなんだろな~と思ってのぞいて――」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「だからおまんの話は長すぎるき。
……つまり伏兵はいないと。
呉蘭と雷銅だけが出てきて、ワシらの陣に迫ってると。
ますます怪しいぜよ」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「とにかく敵が迫っているなら迎撃しなくてはならん。
殿、ここは俺に任せてくれ」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「おーっと、儂を差し置いてこしゃくな!
この黄忠が弓が大将首を射止めて見せよう!」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「貴様らの出る幕はない。ここはギヱンが――」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「いや、わしが出る」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「と、殿……」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「わしは龐さんを殺されといて、
このまま手をこまぬいとるのは嫌じゃ。
龐さんの弔い合戦がしたいんじゃ。
そのためにはわしが自ら打って出て、
何がなんでも雒城を落とすんじゃっていう、気持ちを見せたい」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「し、しかし――」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「よくぞ言った殿!! 止めはせんぞ!
軍師殿の仇討ちをしたい気持ちは、儂らも一緒なんだからな!」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「龐統殿を守れなかった俺は、借りを返さなくてはいかん。
俺もお供させてくれ!」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
(……これは罠だ。だがすまんな龐統。
今のワシには彼らを止めることはできんぜよ……)


~~~雒城 付近~~~


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「やはり敵の罠じゃった……。
連戦連勝に気を良くして深入りしたのが運の尽き、
すっかり敵に囲まれてしまったぜよ」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「伏兵に次々と攻撃され、我が軍の兵は散り散りになっている。
なんとか包囲網を突破し、涪城へ戻らなければ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「わしが罠だと知らずに、
調子に乗って攻めまくったのがいけないんじゃ。
すまんかったのう、法正さん」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「詫びなどいらん。それより周囲に気をつけるき。
流れ矢も飛んでくるぜよ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「……龐さんも流れ矢に当たって、死んでしもうたそうじゃな」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「心配するな殿!
俺が、俺がついていながら軍師を守れなかったんだ。
二度とあんなことにはさせん!」


挿絵(By みてみん)
劉璝りゅうかい
「こっちだ! 劉備の旗が見えたぞ!」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「見つかったぞ! 殿は早く離脱するんだ!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「あわわわわわわわわ!」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「射て! 逃げられる前に矢を浴びせろおおおお!!」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「命に代えてもここは通さん!!」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「殿! こっちじゃ!!」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「な、なんのこれしき……。く、くそ。ぐはあああああっ!!」


挿絵(By みてみん)
劉璝りゅうかい
「やったか!?」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「いや……これは卓庸だ。身を捨てて劉備を逃がすとはな」


挿絵(By みてみん)
劉璝りゅうかい
「……裏切り者ながら立派な男だ。手厚く葬ってやれ」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「おう。劉備はまだそう遠くまで行っていない。
追うぞおおおお!!」


~~~劉備軍~~~


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「はあ、はあ。
もう駄目じゃ……どこまで逃げても敵が待ち構えとる」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「情けないことぬかすな。諦めたらそこで終わりぜよ!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「……なあ法正さん。あんたはわしに降ってまだ日が浅い。
わしをふん縛ってつれてけば、
裏切りの罪も赦されるんじゃないか?」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「馬鹿なことを言うな!
龐統が死んだいま、おまんの軍師はワシぜよ。
軍師が戦を捨てることは、ましてや主君を裏切ることはない!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「……龐さんも、亮さんも、法正さんも、
わしが無能なばかりに苦労をかけるのう」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「くだらんことを考えちょる暇があったら――」


挿絵(By みてみん)
呉懿ごい
「おやおや。これは劉備殿。
こんなところにいらっしゃいましたか。探しましたよ」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「その声は呉懿か!
殿! ここはワシが食い止めるから早く逃げるぜよ!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「い、嫌じゃ! わ、わしのせいで今度は法正さんが死んでしまう!
わしは逃げん!」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「この、馬鹿殿が!!
おまん、どうしようもない馬鹿ぜよ……」


挿絵(By みてみん)
呉懿ごい
「おとなしく降ってくれれば手荒い真似はしませんよ。
さあさ、早くこちらへ――」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「ちょーーーーーーーっと待つッスよ!
先輩には指一本ふれさせないッス!!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「り、龍さん!? なぜここに!?」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「諸葛亮先輩が、劉備先輩が危ないから
一足早く助けに行けって命じたッス。
間に合ってよかったッスよ!」


挿絵(By みてみん)
呉懿ごい
「うわああああっ!!」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「じ、状況説明ついでに呉懿を一撃で……。
お、おまんは何者じゃ?」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「サーセン、申し遅れたッス。自分は趙雲ッスよ。
でもこの呉懿って人、強いッス。
刃はかわして、槍の柄で打たれて気絶してるだけッスよ。
今のうちに縛っておくッスね」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「さすが龍さんじゃ! 龍さんが来てくれれば百人力じゃぞ!」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「あざーす! 他のみんなも張飛先輩や陳到先輩が
助けに行ってるんで、じきに救出できるはずッス。
自分は劉備先輩を涪城まで護衛するッスよ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「張さんも来とるんか! ほうか、ほうか……」


~~~益州軍~~~


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「劉備に援軍が到着しただと?
さては南方を侵攻していた別働隊が合流したんだな」


挿絵(By みてみん)
劉璝りゅうかい
「誰か味方が捕らえられたという情報も入っている。
どうする? 退くか?」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「退くわけにはいかああああん!!
まだ劉備軍の隊伍は乱れている。
今をおいて劉備を討つ機会はなああああい!!」


挿絵(By みてみん)
劉璝りゅうかい
「そうだな。ならば俺は援軍を足止めする。お前は劉備を追え!」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「奴らは最終的には涪城へ逃げ込むに決まっている。
そこを迎え撃ってやるうううう!!」


~~~涪城 付近~~~


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「……それにしても劉備軍、恐るべしだな。
援軍が加わったとはいえ、あれだけの包囲を破られるとは……」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「遅かったじゃない。待ってたわよ」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「ぬ!? 貴様は何者だああああ!?」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「涪城へ逃げ込む劉備を待ち構えるつもりだったんでしょ?
でも残念、そんなことはお見通しなの。ここで止まってもらうわよ」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「俺の考えを見破るとは見事だああああ!!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「ま、本当に見破ったのはうちのいけすかない軍師サマだけどね。
自分は戦場にいないくせに、よくわかるものだわ。
アイツ本当に化け物じゃないかしら」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「何をぶつくさ言っている! 邪魔だああああ!!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「アタイに勝とうなんて百年早いのよ!!」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「ぐふううっ!! ふ、不覚……」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「急所は外してあげたわよ。
フフン、劉備のバカに良い手土産ができたわ」


~~~涪城~~~


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「張さん! わしは……わしは……。おーいおいおい……」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「ち、ちょっとなに号泣してんのよ」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「龐統や卓庸を失い、殿は弱気になって無理をしていたぜよ。
おまんを見て緊張の糸が切れたんじゃろう」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「ほらほらみっともないわね。しゃんとしなさいよ!
引っ捕らえてきた連中の処遇とか、
いろいろアンタが決めなきゃいけないんだからね」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「おう……おう……」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「まずは自分が捕らえたこの人ッス。
劉璋先輩の一族らしいんスけど、どうするッスか」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「たしか呉懿さんじゃったな。
どうじゃ、わしに力を貸してくれんかのう?」


挿絵(By みてみん)
呉懿ごい
「はいはい、いいですよ」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「ず、ずいぶんあっさりと承諾するんですね……」


挿絵(By みてみん)
鄧賢とうけん
「呉懿は頼まれたら嫌と言えない性格なのよ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「それは良かった!
――黄さんと魏延さんも、乱戦のさなかに
敵将を捕らえてきてくれたそうじゃな」


挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)

「………………」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「呉懿さんは快く降伏してくれたぞ。二人も降ってくれるじゃろ?」


挿絵(By みてみん)
雷銅らいどう
(……どうする呉蘭?)


挿絵(By みてみん)
呉蘭ごらん
(今回の戦で多くの兵を失った。
逃げ帰ったところで勝機はないし、命の保証もない。
見れば先に降った厳顔や鄧賢も厚遇されているようだし……)


挿絵(By みてみん)
雷銅らいどう
(そうだな。降伏を望まれているうちに降るべきだろう)


挿絵(By みてみん)
呉蘭ごらん
「……我らも劉備殿に降り、新たな益州作りに協力いたそう」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「そうじゃろうそうじゃろう!
さあさあ、この調子で張任さんもわしに――」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「断る」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「へ?」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「他の者はいざしらず、俺は貴様に降る気はさらさらない。
さっさと首を斬れええええ!!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「待ちなさいよ。せっかくアタイが命は助けてあげたのに、
粗末にするんじゃないわよ」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「知るか。助けてくれと頼んだ覚えなど無ああああい!!」


挿絵(By みてみん)
厳顔げんがん
「……張任はこういう男じゃ。望むようにしてやってくれ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「むう…………」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「雷銅、呉蘭。……呉懿。俺は二君に仕えることはない。
だがお前たちはお前たちの道を行くがいい。
……これからの益州を頼む」


挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)

「………………」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「法正、厳顔、孟達、鄧賢。
俺はお前たちを恨まん。良い勝負だった。
お前たちにも益州を頼むぞ。
……さあ、言いたいことはもう言った。早く斬れええええ!!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「張任さん…………」


~~~雒城~~~


挿絵(By みてみん)
劉璝りゅうかい
「そうか……。張任は死を選び、雷銅と呉蘭は降ったか」


挿絵(By みてみん)
張翼ちょうよく
「呉懿将軍もです」


挿絵(By みてみん)
劉璝りゅうかい
「先の戦で多くの兵も失った。もはや勝機は無いタイ」


挿絵(By みてみん)
張翼ちょうよく
「成都に援軍を要請しましょう!
劉備軍の南を進んでいた部隊も大半がこちらに移ってきました。
南方の防衛部隊もこちらに回せます。雒城はまだまだ落ちません!」


挿絵(By みてみん)
劉璝りゅうかい
「お前の言うとおりタイ。
多くの犠牲を出せば、まだまだ戦える。
だが、それも時間の問題タイ。最終的には益州は劉備の手に落ちる」


挿絵(By みてみん)
張翼ちょうよく
「…………」


挿絵(By みてみん)
劉璝りゅうかい
「益州は新しい時代を迎えるタイ。
劉備軍はもちろん、益州の人々の力が必要になるだろう。
そのためには、ここで犠牲を出すのは得策ではない。
それに、新しい時代には俺のような旧領主の一族は邪魔なだけだ。
俺も張任と同じ道を選ぶ。張翼、後は頼んだぞ。
俺が死んだらすぐに開城するタイ」


挿絵(By みてみん)
張翼ちょうよく
「り、劉璝将軍!!
城壁の上から身を投げてしまわれるとは……。
将軍の遺志は無駄にはいたしませんぞ。
門を開け! 我々は劉備軍に降るぞ!」


~~~成都~~~


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「雒城が落ちたか……」


挿絵(By みてみん)
劉璋りゅうしょう
「ど、どうするの? 劉備ちゃんが成都まで攻めてきちゃうの?」


挿絵(By みてみん)
黄権こうけん
「すでに雒城と成都の間にある綿竹関めんちくかん
李厳りげんが詰めてるタイ。
南方の部隊は俺が迎え撃つタイ!」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「フン。李厳が信用できるものか。
あっさり寝返るんじゃないか?」


挿絵(By みてみん)
許靖きょせい
「有力な将のほとんどは劉備に降伏した。
我々には張飛や趙雲、降伏した雷銅や呉蘭と
満足に戦える将はおらん。かくなる上は――」


挿絵(By みてみん)
秦宓しんふく
「かくなる上は我々も降伏するしかないと言いたいのか?
否! 諦めるのはまだ早い。戦える将ならいるではないか」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「……張魯のことを言っているのか」


挿絵(By みてみん)
許靖きょせい
「張魯!? ま、まさか宿敵の張魯に援軍を求めると言うのか?」


挿絵(By みてみん)
秦宓しんふく
「背に腹は変えられん。
それに益州が落ちれば次は張魯の漢中かんちゅうの番だということは、
張魯もよくわかっているだろう」


挿絵(By みてみん)
黄権こうけん
「だがそんな消極的な理由で、
俺たちのために本気で戦ってくれるとは思えんタイが?」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「ならば本気で戦う理由がある者に、
利を説き、エサをちらつかせればいい。
……たとえば、張魯のもとにいる馬超にな」


挿絵(By みてみん)
許靖きょせい
「馬超!?」


挿絵(By みてみん)
秦宓しんふく
「曹操によって本拠地の関中を追われた馬超は、
新たな根城を求めている。
劉備軍を撃退し、奪った土地はくれてやると言えば、
喜んで本気で戦うことだろう」


挿絵(By みてみん)
許靖きょせい
「わ、我ら益州の土地を馬超に与えると言うのか……?」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「だから背に腹は変えられんと言っただろう。
まずは劉備を撃退する。そのことだけを考えるのだ」


挿絵(By みてみん)
秦宓しんふく
「張魯の腹心に楊松ようしょうという強欲な男がいる。
楊松に賄賂を贈り、援軍を出すよう働かせる。さらに――」


挿絵(By みてみん)
龐羲ほうぎ
「ここで私の出番なのだろう?」


挿絵(By みてみん)
秦宓しんふく
「話が早くて助かるな。
龐羲、お前は従弟の龐徳を説得し、馬超の側にも根回ししてくれ」


挿絵(By みてみん)
龐羲ほうぎ
「わかった。やってみよう」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「曹操をも苦しめた馬超ならば、必ずや劉備を打ち破ることだろう」


挿絵(By みてみん)
劉璋りゅうしょう
「よ、よくわからないけどみんながんばれー!」


~~~~~~~~~


かくして雒城は落ちた。
多くの将を奪われた益州の打った秘策は、馬超の来援。
ついに劉備、諸葛亮と馬超が激突する

次回 〇六六   その名は錦馬超
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