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アイコン三国志 作者:小金沢

第六章 天下三分の計

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〇六四   落鳳坡に死す

~~~ギヱン軍~~~


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「もうすぐ冷苞の陣が見えてくる」

挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「くっくっくっ……。黄忠よ、思い知るがいい。
貴様が惰眠をむさぼっている間に、
我がギヱンが貴様の獲物である冷苞を屠るのだ」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「抜け駆けのみならず、攻撃相手の横取りとは……。
命令違反で処罰されても知らんぞ」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「降将ふぜいが偉そうなことを言うな。
だいたい他人事ではないぞ。道案内したお前も同罪だ。
だが案ずるな。手柄を立てればその程度の命令違反など見逃される」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「俺もそう願ってるよ。
――まずい、敵影だ! 気づかれたぞ!」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「ぐふふ。遅かったでゲスな。早起きして待ってたゲスよ」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「チッ! 私の妙計を看破するとは見事だ!
だがギヱンを止めることはできん!」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「オォォォォォォォォォォン!!!」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「な、なんゲスかこの化け物は!?」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「やれ! 一人残らず血祭りに上げろ!」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「こ、こんな化け物にはかなわないでゲスよ!
に、逃げろーーっ!!」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「はっはっはっはっはっ!
他愛もない! 私の力を思い知ったか!」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「なーんちゃって」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「へ?」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「その化け物のことはこっちも把握してるでゲス。
鄧賢! 出番でゲスよ!」


挿絵(By みてみん)
鄧賢とうけん
「待ちかねたわよ! 楊儀さんと言ったかしら?
あなたたちはすでに包囲されてるわよん」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「ば、馬鹿な……。
ギヱン戻れ! 私を守るんだ!」


挿絵(By みてみん)
鄧賢とうけん
「その化け物は火で囲うのよ! 獣は火を恐れるわ!」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「ぐぅぅぅぅぅぅぅ……」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「おいアンタ、包囲されて殺されるか、
それとも逃げ帰って命令違反で処刑されるか。
どっちがいい?」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「じ、冗談ではない!
私という才能が失われたらどれだけの損失だと思っているのだ!
貴様の命に代えても私だけは守らんか!」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「……とんでもない奴だな。
まあ、寝返ったばかりで功を焦った俺も悪かった。
地獄まで付き合うよ」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「ぐふふ。さあ、覚悟を決めるでゲスよ!」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「お主がな」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「げげっ!? い、いつの間に俺の背後に!?
ぎゃああっ! し、尻に! 尻に矢が! 矢が!!」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「こ、黄忠!? な、なぜここに?」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「フン。お主が何か良からぬことをやらかしそうだったから、
陣を見張らせていたのだ。
案の定、抜け駆けして包囲されるとは間抜けな奴め」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「感謝するぞ黄忠殿!」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「ベ、別にお主らが心配だったわけではないからな!」


挿絵(By みてみん)
鄧賢とうけん
「ジジイが加わったからってなんなのよ!
そいつも殺しなさい!」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「かっかっかっ。儂をただのジジイと思うてか!
喰らえッ!!」


挿絵(By みてみん)
鄧賢とうけん
「いやーーっ!! あ、あちしのほっぺたに!
女の命の顔に矢があああ!!」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「ほれ、今だ! 引っ捕らえろ!」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「と、鄧賢が捕らえられたでゲス!
もう無理でゲス。逃げるでゲス!」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「逃がすなギヱン!!」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「フシャアァァァァッ!!」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「ひえええええええっ!!」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「待て、殺すな。システム停止!
……よしよし。敵将は捕獲したほうが高得点だからな」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「敵兵は散り散りになって雒城らくじょうへ逃げていった。
戦果は十分だろう。新手が来ないうちに引き上げよう」


~~~涪城ふうじょう~~~


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「――という経緯で私は敵将・冷苞を捕らえるという
大戦果を上げたのである!」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「なんの! 儂は無様に包囲された楊儀を助けたついでに、
鄧賢を捕らえる超戦果を上げたぞ!」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「……ま、黄の字はお見事でやしたが、
楊儀さんはちょっと褒められやせんね」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「ざっとかぞえて5つは命令違反を犯しとるからな」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「な……んだと?」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「楊儀殿を処罰するなら、俺も連座させてくれ。
違反と知っていて道案内をしたのだから当然だろう」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「まあ、敵将を捕らえてくれたわけじゃから、
罪と功のとんとんでええんじゃないか?」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「し、処罰はされないのですか? それでは他の者に示しが……」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「でも戦は始まったばかりじゃというに、
楊儀さんや卓庸さんが抜けたら困るじゃろ。
そうじゃな、二人は黄さんにお詫びせい」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「む……。こ、黄忠将軍。
危ういところを救われたことは認める。
今回のところは感謝いたそう」


挿絵(By みてみん)
卓庸たくよう
「将軍の一矢がなければ討たれていた。この御恩は忘れませぬ」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「フン。味方だから救けただけで、
お主らを救けようとしたわけではないからな!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ほれほれ、楊儀さんはもう一個詫びることあるじゃろ」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「も、もう一個?
……わ、私は戦には不慣れな科学者ゆえ、
命令を失念したうえ道に迷い、敵に包囲されてしまった。
だがこれも全ては敵の不意をつき、
我が軍に勝利をもたらすためである。
その思いは将軍も同じであろう。どうか寛大に見ていただきたい」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「フン、儂の思いのほうが強いんだからな!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「孫さん、これで良いかのう?」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「私には否も応もありません。お見事なお裁きです」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「わしらは敵中におる。仲良うせんと孤立してしまうぞ。
まあ、焦らずのんびり行こうじゃないか」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「それで殿、捕虜の二人はどうするぜよ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「おお、忘れるところじゃったぞ。
そうじゃな、解放してあげるんじゃ」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「せっかく捕らえたのに逃がすのですか!?」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「わしらは益州を侵略しに来たわけではないぞ。
曹さんに対抗するため、益州の力を譲ってもらいたいんじゃ。
じゃから無益な殺生はしとうない。
どうじゃ二人とも、雒城に戻って
他のみんなを説得してくれんかのう?」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「そ、それは賛成でゲス!
城に帰って劉備様の御心を伝えて説き伏せてくるでゲスよ!」


挿絵(By みてみん)
鄧賢とうけん
「あ、あのー。
できれば……あちしはこのまま降伏したいかな、なんて。
帰ったら張任のヤツにどやされて、
最悪、殺されちゃうかもしんないし……」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「おお、それは大歓迎じゃぞ。
法正さんや孟達さんら、降伏してわしらに力を貸してくれる人は
たくさんおるからな」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
(だ、だったら俺も帰らず降ったほうが……。
い、いや。まだ劉備が勝つとは決まったわけじゃないでゲス。
見たところ、こいつらの陣には大きな弱点があるでゲスし……)


挿絵(By みてみん)
鄧賢とうけん
「冷苞、アンタはマジで帰るの? 殺されても知らないわよ」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「お、俺は帰るでゲス。
帰ってみんなを説得してくるでゲス。それじゃあ、さらばでゲス!」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「……あの男、きっと戻って来ませんよ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「へ? なんで? 説得してきてくれるって言っとったぞ?」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「………………」


~~~雒城~~~

挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「冷苞! どのツラ下げて帰ってきたああああ!?」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「ま、待つでゲス。剣を下ろして俺の話を聞いて欲しいでゲス。
かくかくしかじかで鄧賢の馬鹿は裏切ったけど、
俺は牢屋の番人を斬り殺して逃げてきたゲス。
それに劉備軍を破るための手土産もあるでゲスよ!」


挿絵(By みてみん)
劉璝りゅうかい
「手土産だと? 抜け目ないお前のことタイ。
ただ逃げ帰ってきたわけではあるまい。
何か考えがあるんだろうな」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「もちのろんでゲス!
観察したところ劉備軍は低地に陣取ってるでゲス。
大雨を待ち、河を決壊させれば奴らはたちまち水の底でゲス!」


挿絵(By みてみん)
張任ちょうじん
「……なるほど、それはいい策だな。
成都に援軍を要請したが、それを待つまでもない。
我らだけで一気に決着をつけるぞおおおお!!」


~~~涪城~~~


挿絵(By みてみん)
孟達もうたつ
「涪城の地下に、今は使われてない牢屋があるんですね。
暗くて狭い牢屋ですよ。古い牢屋なんだ。
あたしの友人が『孟ちゃん、そこから声が聞こえるよ』って言うんだ。
『よせや~い。冗談だろ』って返したけど、彼の顔が真剣なんだ。
だったら見に行ってやるよってわけで、さっき。
ついさっきだ。見に行ったんだ。
そしたら聞こえるんだ! 本当に!
だ~れもいない牢屋の奥から『劉備を……。劉備を呼べ……』って!
あたしと友人は顔を見合わせてね。
『孟ちゃん、こんなことってあるんだね』って――」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「あわわわわわわわわわわ」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「……つまり、誰かが牢屋にいて、
劉の字を呼んでるってわけですかね」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「わ、わしは行かんぞ! 断じて行かんからな!」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「だったらやつがれが見てきやすよ。孟の字、案内してくだせえ」


~~~涪城 地下牢~~~


挿絵(By みてみん)
??
「やっと来たか!
……んん? お前は劉備ではないな」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「おや、本当に人がいやすね。やつがれは龐統って者ですよ。
劉の字に用があるとか。
ま、その前に名乗っていただけると助かりやすがね」


挿絵(By みてみん)
彭羕ほうよう
「俺は彭羕という者だ。わけあって獄につながれたが、
そのまま忘れ去られたようだ。
泥水をすすり、ネズミや虫を食ってこれまで生きてきたんだ」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「そいつぁお気の毒に。
それでそんなご面相になられたんですかい?」


挿絵(By みてみん)
彭羕ほうよう
「この顔は生まれつきだ!!」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「失礼しやした。
やつがれも褒められた面相じゃありやせんのでご勘弁を。
……で、用事ってのはなんですかい?」


挿絵(By みてみん)
彭羕ほうよう
「お前ら、死ぬぞ」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「……その顔で、いや牢屋の中で骨と皮だけになってるお人に
言われると説得力がありまさぁ。
何か意見があるんなら、伺いましょうや」


~~~益州軍~~~


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「ぐふふふふ。この大雨を待ってたでゲスよ。
この堤防で水を貯めて、劉備の陣を一気に……」


挿絵(By みてみん)
劉璝りゅうかい
「おい! いま変な音がしなかったか?」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「さあ? 工事の音じゃないでゲスか」


挿絵(By みてみん)
劉璝りゅうかい
「いや……これは馬の蹄の音タイ! 敵襲タイ!」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「敵襲!?」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「かっかっかっ。水攻めだと?
そんな下らぬ策を見抜けぬ儂らと思うてか!」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「敵は包囲の中だ。奴らを殲滅しろ、ギヱン」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「オォォォォォォォォォン!!」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!」


挿絵(By みてみん)
劉璝りゅうかい
「これではどうしようもない。雒城まで退くタイ!」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「ま、待ってくれゲス! 俺を置いてかないでくれゲス!!」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「冷苞がそっちに逃げたぞ!」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「ウァァァァァァァァァオ!!」


挿絵(By みてみん)
冷苞れいほう
「うんぎゃあああああああ!!」


~~~劉備軍~~~

挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「それにしても助かったぞ彭羕さん!
わしらの陣が危ないと教えてくれなかったら一大事じゃったわ」


挿絵(By みてみん)
彭羕ほうよう
「まったくだ。法正や孟達がついてるのに気づかないとはだらしねえ」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「文官のおまんに言われなくても気づいてたぜよ。
水攻めしてくるのを逆に利用しようと思ってたのに、
先に言われただけじゃき」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「文官!?」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「その顔で文官とはな……」


挿絵(By みてみん)
彭羕ほうよう
「顔は生まれつきだ!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ま、まあそれはともかく、みんな良くやってくれたのう。
特にギヱンさんは冷苞さんを討ち取ったそうじゃな。
褒美をやらんといかんな。
えーと。ギヱンさんの名前はどういう字を書くんじゃったっけ?」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「字など無い。人造人間に字など必要ないからな」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「字がない? でもそれは不便じゃろ。
こうして褒美の目録を書くのも困るし、
ギヱンさんの旗も作れんじゃないか。
――ほんじゃあ、わしが字を付けてやろう。
そうじゃな。魏延、なんていうのは強そうじゃないか?」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「……魏は先年、曹操が封じられた国名じゃき。縁起が悪いぜよ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ほうなんか? でも魏延ってかっこよくないかのう。
鬼とか入ってるしギヱンさんにぴったりじゃろ」


挿絵(By みてみん)
魏延ぎゑん
「………………」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ほれほれ、魏延さんの顔も心なしかうれしそうじゃ!」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「人造人間に表情など無い」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「わはは。細かいことは言いっこなしじゃ。
どれ、今夜は大勝利を祝って久々に宴会でもするかのう!」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「劉の字ちょいと待った。
みなで酒を飲むのはかまいやせんが、
大々的に騒ぐのはやめてくだせぇ。
やつがれらは他人の国を奪おうとしてる立場でさぁ。
侵略者が馬鹿騒ぎしてるのを民や劉璋の家臣が見たら、
良くは思いやせんよ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ほうほう……。そういうもんなのか。
ほんじゃあ大宴会は益州を無事に奪い取ってからにしよう!
劉璋さんや益州のみんなと一緒に騒ぐなら構わんじゃろ?」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「へい。その時にはやつがれも
何日でもお付き合いさせていただきまさぁ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「龐さんは物知りじゃから、
今みたいにわしに至らんことがあったら、どしどし言っとくれ。
ああ、みんなで盛大に飲む日が楽しみじゃのう……」


~~~夜 劉備軍~~~


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「……劉の字は、やつがれが思ってたよりも大きいお人でさぁ。
あれは良い君主になる。劉璋よりも、孫権や曹操よりも」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「……そうかのう?」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「ははは。法の字はまだ驚いてるでしょうな。
あんなにいいかげんで、馬鹿で愚かで無能なお人はそうはいない。
でも大きい人でさぁ。法の字もすぐに良さがわかりやすよ」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「せっかく寝返ったんじゃき。そうでないと困るぜよ」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「……やつがれは若い頃から
根無し草を気取って、各地を放浪してやした。
でもこうして一つ所に留まるのも悪くないと、今は思ってやす。
劉の字みたいな大きな樹に寄りかかって、
一緒にのんびり空を眺めるのもいいもんだと。
――さて、ちょいと出かけやすんで、留守を頼みやすよ」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「こんな夜更けにどこに行くんじゃ?」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「先の水攻めもそうでやすが、
話に聞いてるだけじゃ益州の複雑な地理に対応できやせん。
自分の目と耳で、あちこち偵察してきやすよ」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「しかし一人で行ったら危険じゃき」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「卓庸さんに案内してもらう約束でさぁ」


挿絵(By みてみん)
法正ほうせい
「……おまんの心配をするだけ無駄だったぜよ」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「それじゃあしばらくよろしく頼みまさぁ」


~~~数日後 劉備軍~~~


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「雒城に成都から援軍が到着したじゃと!?
そいつは一大事じゃ! はよう龐さんを呼んどくれ!」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「軍師殿はまだ視察から戻っていません」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「そ、そうじゃったな。
ほんなら法正さんを……いや、みんなを集めとくれ。
みんなで相談せんといかん!」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「そうあわてることはないぞ、劉ちゃん。
龐統の護衛をしていた卓庸がいま戻ってきた」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「そうか! さすが龐さんじゃな!
援軍が到着するのを見越して、ぴったり連絡を送ってきおった。
龐さんに任せておけば、わしはなーんも心配いらんな。
どれどれ早速、卓庸さんの話を聞くとしよう……」


~~~~~~~~~


かくして鳳雛は地に落ちた。
一方、伏龍は南から着々と歩を進め、成都へ迫りつつあった。
だが鳳雛を失った傷は深く、劉備の身には危機が忍び寄っていた。

次回 〇六五   雒城の戦い
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