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アイコン三国志 作者:小金沢

第六章 天下三分の計

62/125

〇六一   関中の女たち

~~~建業けんぎょう~~~


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「曹操が濡須じゅしゅに攻めて来るだとォ?
そりゃ本当か?ヤローは関中の制圧を終えたばかりだろ」


挿絵(By みてみん)
魯粛ろしゅく
「ウイッシュ。ガチもガチな話ッス。
この前、馬超からの依頼で合肥がっぴを軽く攻めたんでえ、
その報復ってヤツみたいッスねえ。
赤壁ん時にも劣らない大軍を率いてるって噂ッス」


挿絵(By みてみん)
吾粲ごさん
「曹操軍は都の近くに巨大な溜め池を造り、
そこで水軍の訓練をしてきました。
赤壁の敗戦の痛手から立ち直り、
濡須を攻め落とす自信があるのでしょう」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「赤壁の仇を濡須で討つってことか。
へへっ。腕が鳴るじゃねェかよ」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「待たれよ! まさか孫権殿が
自ら迎え撃つつもりではないじゃろうな?」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「オレが行かなくて誰が行くっつーんだよ。
周瑜も、濡須を守ってた太史慈も、軍師の張紘ちょうこう
病死しちまって、戦力は不足してんだぜ。
それとも張昭が出張ってくれんのか?」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「ワシは戦は不得手じゃ! しかし孫権殿も戦の経験は足りぬ。
ここは濡須を守る周泰しゅうたい董襲とうしゅう
徐盛じょせいに任せられよ」


挿絵(By みてみん)
魯粛ろしゅく
「もちろんそこに援軍を加えるッス。
孫瑜そんゆ様を大将としてえ、黄蓋さんに韓当さんは確定っしょ。
それともう一人、個人的に参謀として推挙したい者がいるんスが……」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「誰だそりゃ? おめェは周瑜の後釜なんだ。遠慮しねェで言えよ」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「あっしです」


挿絵(By みてみん)
虞翻ぐほん
「呂蒙だと? 無学のお前がなぜ軍議の場にいるんでゲスか」


挿絵(By みてみん)
魯粛ろしゅく
「やんちゃだった昔の蒙ちゃんとは違うッス。
学問に目覚めて、ガチな軍師に成長したッス」


挿絵(By みてみん)
呂蒙りょもう
「あっはは。そいつは買いかぶり過ぎでしょう。
ですが、これからは槍働き以外のことでも
お役に立てるつもりでいますんでね。
ひとつ戦場でお試しください」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「ほーう。てェした自信じゃねェか。
魯粛が言うならオレは信じるぜ。
そんなら呂蒙はオレのそばにいてあれこれ献策してくんな」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「……孫権殿、なぜ自分も出陣することが
前提になっているのですかな?」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「わはは。そうかてェこと言うなよ。
――野郎ども碇を上げろ! 出航の準備だ!!」


挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)

「「「「「「おう!!!!!」」」」」」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「孫権殿! まったく! 少しはワシの話を聞きなされ!!」


~~~曹操軍 遠征軍~~~


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「……さっきから浮かない顔をしているな、華歆よ。
やはり旧主の孫権と戦うのは気が進まないのか?」


挿絵(By みてみん)
華歆かきん
「そんなことはない。
かつて孫家に仕えていた私が、
経験を買われ孫権と戦う際に駆り出されるのは当然のことだ。
孫家から丞相に鞍替えした時から覚悟はできていた」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「ならば何を悩んでいる?
せっかく丞相の左右に従う軍師団に選ばれたのだぞ。
荀攸殿が病に倒れ、婁圭ろうけいのジジイは失脚。
さらに賈詡かく殿が関中に残っているから
繰り上がっただけとはいえ、喜ぶべきことではないか」


挿絵(By みてみん)
華歆かきん
「繰り上がり当選はお前も同じだろうが」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「フフン、それはどうかな?
私は前回は留守居役を命じられたが、
今回は遠征への同行を命じられたのだ。
これは丞相が、やはり遠征には王朗の頭脳が必要だと
考えられた証拠ではないか?」


挿絵(By みてみん)
華歆かきん
「……王朗に留守番させたら不安だと考えた可能性もあるぞ」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「わっはっはっ。負け惜しみはよせ。
軍師団には長く合肥がっぴを守っていた蒋済しょうせい
若僧のくせに選ばれている。
蒋済とお前は、対孫権のために選ばれたに過ぎんのだ。
私とは違うのだよ私とは!」


挿絵(By みてみん)
華歆かきん
「わかったわかった。そんなことはどうでもいい。
――私はこたびの遠征が解せぬのだ」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「何が解せぬのだ?
水軍の訓練がようやく終わり、満を持して赤壁の復讐に臨むのだ。
濡須を落とせば遷都したばかりの孫家の首都・建業はもはや目の前。
濡須攻めは戦略的にも当然だろう」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「華歆が言っているのはそうではない。
遠征すること自体に疑問があるのだろう」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「き、聞いていたのか劉曄」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「そんな大声で話していたら嫌でも聞こえる」


挿絵(By みてみん)
蒋済しょうせい
「劉曄殿だけじゃなく、俺にも聞こえていましたよ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「もちろん僕の耳にもね」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「丞相! い、いや、これは、
そもそも不平不満を唱えていたのは華歆のほうでして、つまり」


挿絵(By みてみん)
華歆かきん
「……丞相、お言葉ですが聞かせて下さい。
軍の主力は関中に遠征したばかり、
それも馬超らに手痛い打撃を受けており、備えは万全とは言えません。
それなのになぜ孫権と戦うのですか?
漢中に逃げた馬超を追うのならまだしも、なぜ五体満足の孫権を――」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「都にいたくなかったのさ。
遷都したばかりで、ぎょうの都は居心地が悪いんだ。
――それに、都にいると荀彧を思い出してしまう」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「………………」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「まあそれは僕の個人的な心情だ。
孫家は周瑜君や張紘君、太史慈君が亡くなり、
程普君や朱治君が引退と、多くの屋台骨を失ったばかりで、
統制が取れていない。今こそ攻め時だと考えたのさ。
せっかく整えた水軍や、新しい軍師団の力も試したいしね」


挿絵(By みてみん)
華歆かきん
「私のあさはかな考えだったら申し訳ありません。
丞相の口振りからすると、濡須の攻略が
本当の狙いではないようにうかがえます。
もしや、遠征の裏に何かはかりごとが……?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「どうだい劉曄君、新しい軍師殿は頼れそうじゃないか」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「たしかに。荀攸の抜けた穴は私が埋めるとして、
賈詡の代わりは華歆に任せられそうだ」


挿絵(By みてみん)
華歆かきん
「すると……」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「お察しの通り、この戦は陽動作戦さ。
僕らが東へ向かえば、必ず彼らが釣り出される。
そう、関中の残党、永遠の反逆児たちがね……」


~~~冀城きじょう~~~


挿絵(By みてみん)
韋康いこう
「わかった。民の命には変えられん。おとなしく降伏しよう」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「そうだ! やっと馬超たちに逆らう愚かさを思い知ったか!」


挿絵(By みてみん)
韋康いこう
「だが約束通り、民はもちろん、私や配下の者には手出しするなよ」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「しつっこいわね。わかったからとっとと城門を開けなさいよ」


挿絵(By みてみん)
韋康いこう
「いいか、殺すなよ。絶対に殺すなよ。絶対に絶対だぞ。
――よし、門を開けろ!」


挿絵(By みてみん)
楊昂ようこう
「ご苦労。…………死ね」


挿絵(By みてみん)
韋康いこう
「ぎゃああああああ!!!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「何をするんだ楊昂!?」


挿絵(By みてみん)
楊昂ようこう
張魯ちょうろ師君に逆らう者には死、あるのみだ」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「……まあ、あれだけ念入りに前振りされたらやりたくなるわな」


挿絵(By みてみん)
楊阜ようふ
「き、貴様ら……約定を違えるつもりか!」


挿絵(By みてみん)
楊昂ようこう
「案ずるな。城主の首さえ取れば、貴様らを殺すまでもない。
貴様らと民はせいぜい師君のためにこき使ってやろう。
ヒッヒッヒッ」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「外道が……」


挿絵(By みてみん)
趙昂ちょうこう
「くっ…………」


挿絵(By みてみん)
王異おうい
(あんた、やめときな。
ここで斬りかかったって無駄死にするだけじゃ)


挿絵(By みてみん)
趙昂ちょうこう
(しかしこのままじゃ、関中一帯は再び馬超の手に落ちちまうぞ!)


挿絵(By みてみん)
王異おうい
(ウチがそんなことにはさせん。
見たところ、馬超と張魯の仲も一枚岩というわけじゃないけん。
ヤツらの間にくさびを打ち込んでやるけんのう……)


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「………………」


~~~冀城 王異の私室~~~


挿絵(By みてみん)
王異おうい
「あんたも関中の女じゃから知っとろうが、
関中のモンはみんな頑固じゃ。
寒さで脳味噌が凍っとるからな。なかなか言うことを聞かん」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「さんざん苦労してきたって口振りね」


挿絵(By みてみん)
王異おうい
「ウチの亭主はそん中でも図抜けた頑固者じゃ。
口では降伏した言うても、心のなかじゃ納得しとらん。
じゃからついつい反抗的な態度を取っちまうんじゃ」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「……韋康が斬られた時、
あなたの旦那さん、趙昂が刀に手を掛けたのを見たわ。
それは叛意があったからじゃなく、
本能的にやっただけと言いたいのね」


挿絵(By みてみん)
王異おうい
「そうじゃそうじゃ。やっぱりあんたは賢い娘じゃの。
亭主にはウチからきつく言い聞かしておく。
じゃから、今度のことは大目に見てくれんか」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「あたしの旦那だって似たようなものよ。
いえ、もっと単細胞だわ。
あなたがしっかり手綱を握ってくれるんだったら、
咎め立てはしないつもりよ」


挿絵(By みてみん)
王異おうい
「おおきに。あんたは娘っ子とは思えんくらい偉い人じゃな。
見たところ、馬超はんの軍勢をしきってるのはあんたじゃろ。
同性として誇らしいのう」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「あなたこそ、弓を取らせたら右に出る者のない
女傑だという噂をかねがね聞いているわ。
……あたしは天涯孤独の身で、
女の知己なんて数えるほどしかいないの。
あなたとは仲良くやっていけたらいいと願ってるわ」


挿絵(By みてみん)
王異おうい
「関中の馬鹿な男どもを支えられるのはウチら女しかおらん。
こっちこそよろしく頼むけんのう」


~~~祁山きざん~~~


挿絵(By みてみん)
楊阜ようふ
「鍾繇殿や曹彰殿下は羌族と、
夏侯淵将軍は韓遂とにらみ合い、身動きが取れぬ。
このままでは関中は再び馬超の手に落ちてしまう。
姜叙、お前の力が必要なんだ」


挿絵(By みてみん)
姜叙きょうじょ
「ううううう…………」


挿絵(By みてみん)
楊阜ようふ
「すでに裏では趙昂が兵を集めている。
夫人の王異も馬超らを油断させるため
息子を人質に差し出すなど画策している。
あとは多くの私兵を持つお前が味方についてくれれば、
必ずや反乱はうまく行くだろう」


挿絵(By みてみん)
姜叙きょうじょ
「で、でももし失敗すれば、
我々も韋康と同じ目に遭うのではないか?
な、なあ楊阜。この話は聞かなかったことにするから、
ぼくを計画に巻き込むのは考え直して――」


挿絵(By みてみん)
姜夫人きょうふじん
「こんの馬鹿息子がああっ!!」


挿絵(By みてみん)
姜叙きょうじょ
「か、母ちゃん!?」


挿絵(By みてみん)
姜夫人きょうふじん
「おめえは曹操丞相に受けた恩を忘れたんか?
楊阜殿に掛けた迷惑を覚えとらんのか?
楊阜殿はおめえをかばって深手を負い、
馬にも乗れなくなったんじゃろうが。
いざという時に恩返しもできねえようなヤツは
息子でもなんでもねえ。さっさと出て行け!」


挿絵(By みてみん)
姜叙きょうじょ
「うううううう……」


挿絵(By みてみん)
楊阜ようふ
「ご、御母堂。あなたは病に臥せっていると聞いています。
どうか無理をなさらずに」


挿絵(By みてみん)
姜夫人きょうふじん
「いま無理をせずにいつ無理をするんじゃ!
こんの馬鹿息子のケツをぶっ叩いて、
しゃきっと立たせんことにはおちおち寝てもいられんわ!
姜叙! やれんのかやれないのかどっちなんじゃ!?」


挿絵(By みてみん)
姜叙きょうじょ
「や……やるよ! やるよ母ちゃん!
ぼくだって母ちゃんの息子だ! やってやんよ!」


挿絵(By みてみん)
姜夫人きょうふじん
「それでこそおれの息子じゃ!
国のために戦死したお父も草葉の陰から見守っとるぞ!
しゃきっと立たんかい!」


挿絵(By みてみん)
姜叙きょうじょ
「うん!!」


挿絵(By みてみん)
姜夫人きょうふじん
「そうと決まったら旅支度をせんといかんな。
ほれほれ、早く用意をせんか」


挿絵(By みてみん)
姜叙きょうじょ
「え? 旅支度ってなんだい母ちゃん」


挿絵(By みてみん)
姜夫人きょうふじん
「これじゃから男どもは頼りにならん!
おれが馬超の人質になるんじゃ。
そうすればお前が反乱しようなどとは疑わんじゃろ」


挿絵(By みてみん)
姜叙きょうじょ
「そ、そんなことをしたら母ちゃんが反乱の時に殺されちまうよ!」


挿絵(By みてみん)
姜夫人きょうふじん
「それがどうしたんじゃ!
大義をなすためにはババアの首の一つや二つ、
喜んで差し出すのが当然じゃろうが!」


挿絵(By みてみん)
姜叙きょうじょ
「か、母ちゃん。ぼ、ぼくは……ぼくは……。
おーいおいおいおいおい……」


挿絵(By みてみん)
楊阜ようふ
(董白に王異といい、この御母堂といい関中の女は強すぎる……)


~~~冀城~~~


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「楊阜、趙昂、姜叙の兵はすでに城内の要所をおさえている!
もはや撤退するしかなかろう」


挿絵(By みてみん)
楊昂ようこう
「フン。こうもたやすく足元をすくわれるとは
音に聞く錦馬超も大したことはないな。
我々は張魯師君のもとへ帰る。後始末は任せた」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「あんにゃろ……。元はと言えばあいつが
無駄に韋康を殺すから反感を買ったんやろうが!」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「愚痴を叩くのは後にしなさい。
王……反乱の首謀者どもは祁山に逃れて指揮をとっているそうよ。
そいつらを叩けば城を取り戻せるわ」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「そうか! ならば馬超は首謀者を討つ!」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「さあ、退路を断たれる前に逃げるわよ」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「…………董白?」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「何よ。今は一刻を争ってるの。さっさと行きなさいよ」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「いや、なんだか君が
さみしそうに見えたから、ちょっと気になって」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「……余計なお世話よ!
こんな時に限って気を回してる暇があったら、
さっさと敵の後を追いなさい!」


~~~祁山 曹操軍~~~


挿絵(By みてみん)
趙昂ちょうこう
「張魯から差し向けられていた援軍を率いていた楊昂は撤退したが、
その際に火を放ち、人質は残らず殺されたそうじゃ……。
おお……息子よ! 父を許してくれ!」


挿絵(By みてみん)
姜叙きょうじょ
「母ちゃん……。うううううう……」


挿絵(By みてみん)
王異おうい
「泣いてる暇があったら防戦の準備を整えるんじゃ!
子供はまた産めばええ。親が子より先に死ぬのは当たり前じや。
今は馬超と戦うことを考えんかい!」


挿絵(By みてみん)
趙昂ちょうこう
「お、おう。お前は強いのう……。
よっしゃ。姜叙、楊阜! 女に負けてばかりじゃいられんぞ。
今度はわしら関中の男の強さを見せつけてやるんじゃ!」


挿絵(By みてみん)
姜叙きょうじょ
「お、おう! やってやるけんのう!」


挿絵(By みてみん)
楊阜ようふ
「……だが意気が盛んなだけでは勝つことはできん。
夏侯淵将軍に反乱の成功を知らせ、連携を図らなければ」


挿絵(By みてみん)
閻温えんおん
「その役目はわしに任せんしゃい。
馬超の陣を突破して、連絡をつけてやるけんのう」


挿絵(By みてみん)
楊阜ようふ
「張魯の援軍を失い、馬超の兵は決して多くない。
夏侯淵将軍が駆けつければ、馬超を挟撃し、打ち破れるだろう。
頼んだぞ、閻温!」


~~~祁山 馬超軍~~~


挿絵(By みてみん)
閻温えんおん
「………………」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「えらいこっちゃで。
夏侯淵はいったん韓遂との戦いを切り上げて、
わてらの背後を襲おうとしとるそうや。
夏侯淵が来る前に祁山を落とさんと、わてらに勝機はあらへん」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「閻温さんと言ったかしら?
貴重な情報を提供してくれてありがと。
ついでにちょっと協力してくれないかしら。
うまく行ったら命は助けてあげてもよくてよ」


挿絵(By みてみん)
閻温えんおん
「あ、ありがたい……。助けてくれるならどんなことでもしよう」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「簡単なことよ。
これから祁山のお味方に向かって、
夏侯淵の援軍は来ないって言ってくれればいいだけ」


挿絵(By みてみん)
閻温えんおん
「お安い御用だ。さあ、早くつれていってくれ」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「なんや。骨のない使者でんなあ。
――ほれ、ここからなら祁山の兵にもよう聞こえるやろ。
さっさと言わんかい」


挿絵(By みてみん)
閻温えんおん
「……楊阜! 趙昂! 王異! 姜叙!
同志よ! 夏侯淵将軍は間もなく馬超の背後を襲う!
それまでの辛抱だ!」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「!?」


挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)

「「「「うおおおおおおおおっ!!!!」」」」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「……やられたな」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「この……また騙したわね! こいつを殺しなさい!
こうなったら強引にでも祁山を陥落させるのよ!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「おう! 馬超は敵を倒す!!」


挿絵(By みてみん)
楊阜ようふ
「者どもひるむな! 援軍は来る! それまで持ちこたえろ!」


挿絵(By みてみん)
趙昂ちょうこう
「ここが踏ん張りどころじゃ! ド根性見せんかい!」


挿絵(By みてみん)
姜叙きょうじょ
「母ちゃんが、犠牲になった人質や閻温が見守っとる!
恐れることはない!」


挿絵(By みてみん)
王異おうい
「馬超! あんたら覚悟しいや!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「……敵軍の士気は上がりに上がっている。
これではとうてい崩すことはできん」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「うるさい! 何が何でも祁山を落とすのよ!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「ああ! 馬超は勝つ!!」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「……らしくないで姐御。
あんさんの頭に血が上ったら、わてらはどうしようもない。
落ち着いてここは冷静な判断をするんや」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「くっ……。
撤退! いったん漢中に撤退するわ!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「わかった! 馬超は董白を逃がすために
殿軍を務めつつ敵を全滅させる!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「殿は我が頃合いを見て撤退させる。馬岱殿は奥方を頼む」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「ああ。殿は任せたで。
さあ、早く逃げるんや姐御」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「………………王異」


~~~~~~~~~


かくして馬超の逆襲は楊阜らの抵抗により失敗に終わった。
だが反逆児の牙は抜け落ちることなく、馬超は漢中に戻り再起の目を窺う。
その頃、東では曹操と孫権が赤壁以来の邂逅をしていた。

次回 〇六二   濡須口の戦い
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