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アイコン三国志 作者:小金沢

第六章 天下三分の計

58/125

〇五七   馬超の智略

~~~関中かんちゅう~~~


挿絵(By みてみん)
侯選こうせん
「どうした曹操、無様に逃げ回ることしかできないのか」


挿絵(By みてみん)
鍾繇しょうよう
「フン、どこに目をつけておるのだ。
ワシらは逃げておるのではない。
馬超を目指して突き進んでおるのだぞ!」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「こちらの作戦を声高に明かすな」


挿絵(By みてみん)
楊秋ようしゅう
「曹操だーーッ! 曹操が来たぞーーッ!」


挿絵(By みてみん)
徐晃じょこう
「前方にも伏兵だ。ここは拙者が引き受けた!」


挿絵(By みてみん)
楊秋ようしゅう
「邪魔ーーッ! するなーーッ!」


挿絵(By みてみん)
徐晃じょこう
「丞相の覇道を阻む愚か者よ、我が斧のサビとなるがいい!」


挿絵(By みてみん)
李通りつう
「丞相! 後方の兵の一部が勝手に離脱しているそうだ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「逃げたいなら好きにさせればいいよ。
もっとも、案内もなしに逃げ切れるとは思えないがね」


挿絵(By みてみん)
李通りつう
「このままでは殿軍が少なくなってしまい危険だ。
俺が後方に下がり督戦してこよう」


挿絵(By みてみん)
梁興りょうこう
「曹操逃げる。おれ追う。おれ追いつく。曹操死ぬ」


挿絵(By みてみん)
婁圭ろうけい
「左からも敵の増援じゃ! いったい何匹いるんじゃ!?」


挿絵(By みてみん)
荀攸じゅんゆう
「妙ですな。まるで我々が退却ではなく、
進撃を選ぶと知っていたような伏兵の配置です。
それも次々と新手を繰り出すこの策は……」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「十面埋伏の計だね。
関中にこれほどの策士がいるとは寡聞にして知らなかったよ」


挿絵(By みてみん)
鍾繇しょうよう
「おるはずがない!
関中に十面埋伏の計など使える者はおらん!」


挿絵(By みてみん)
成宜せいぎ
「成・宜・参・上! これより正義を執行する!」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「言ったそばから新手のお出ましだぞ」


挿絵(By みてみん)
??
「待てい!」


挿絵(By みてみん)
成宜せいぎ
「む!? この登場の仕方は……」


挿絵(By みてみん)
??
「天へと続く覇道を妨げる者よ。時の声を聞け!
もはや勝利は定まっているぞ!
人、それを天命と言う」


挿絵(By みてみん)
成宜せいぎ
「何者だ!」


挿絵(By みてみん)
張郃ちょうこう
「お前たちに名乗る名はない! 張郃クラッシュ!」


挿絵(By みてみん)
成宜せいぎ
「やはり張郃か! 手合わせしたかったぞ!」


挿絵(By みてみん)
張郃ちょうこう
「その格好は俺の猿真似か? だが剣技までは真似られるかな!」


挿絵(By みてみん)
婁圭ろうけい
「ええい、張郃め。この大変な時にノリノリで応戦しおって!」


挿絵(By みてみん)
李堪りかん
「おっと、ここから先へは通しはせんぞ!」


挿絵(By みてみん)
曹仁そうじん
「どけどけいッ! 曹仁様のお通りだ! 道を空けろ!!」


挿絵(By みてみん)
鍾繇しょうよう
「伏兵が現れるたびにこちらの戦力を削られておる!
そろそろ持ちこたえられなくなるぞ!」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「ふむ。せっかく馬超君のところまでたどり着いても、
戦える兵がいなければ話にならないね」


挿絵(By みてみん)
婁圭ろうけい
「なにを呑気なことを――」


挿絵(By みてみん)
張横ちょうおう
「来た来た。曹操曹操。終わりだ終わりだ」


挿絵(By みてみん)
鍾繇しょうよう
「右から八つ目の伏兵じゃ! 誰が応戦するんじゃ!?」


挿絵(By みてみん)
杜畿とき
「ま、待て! 何をするつもりだお前は!?」


挿絵(By みてみん)
丁斐ていひ
「兵がいなけりゃ牛や馬を使えばいいだろうが。
牛馬を解き放って敵に突入させんだよ」


挿絵(By みてみん)
杜畿とき
「やめろ! 牛馬がいなければ兵糧輸送がままならん!」


挿絵(By みてみん)
丁斐ていひ
「死んじまったら飯も食えないんだぜ?
まずはここを生き残るのが先決だろうが!
……どうせ俺の牛じゃねえしよ」


挿絵(By みてみん)
張横ちょうおう
「牛牛。馬馬。邪魔邪魔」


挿絵(By みてみん)
荀攸じゅんゆう
「何者かが輸送部隊から牛馬を解き放ち、敵軍に突入させました!
敵は牛馬や兵糧を略奪しようとして足並みを乱しています」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「いい機転だね。誰かは知らないが礼を言うよ。
楊阜君、そろそろ馬超君の軍は見えてこないのかい?」


挿絵(By みてみん)
楊阜ようふ
「前方に見えたぞ! 馬超の本陣だ! 一軍が布陣している。
だが……あれは馬超の副将の龐徳だ。馬超の姿が見えんぞ」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「敵は罠に落ちた。これで仕上げだ。行くぞ!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「かかったな曹操! 馬超はこっちだ!」


挿絵(By みてみん)
婁圭ろうけい
「前方から龐徳! 後方から馬超!
罠じゃ! 挟み撃ちじゃ!」


挿絵(By みてみん)
李通りつう
「くっ! 待て馬超! 俺が相手だ!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「無駄だ! この馬超の熱く燃える正義の槍を
受け止めることはできない!」


挿絵(By みてみん)
李通りつう
「ぐわああああっ!」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「李通が討たれたぞ。後衛は総崩れだ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「……ここまで読んでいたとはね。
だけど僕だってまだ切り札を残しているよ。
許褚君、馬超君は任せた」


挿絵(By みてみん)
許褚きょちょ
「心得た!」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「龐徳君には……黄鬚きひげ。君の出番だよ」


挿絵(By みてみん)
曹彰そうしょう
「うおおおおお! 待ってましたあああ!!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「なんと。我と馬超には兵を出さず、将が単騎で突撃だと?」


挿絵(By みてみん)
許褚きょちょ
「馬超の首さえ挙げれば終わりだ! 雑魚はどけ!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「どけどけ! 兵士は手を出すな! 許なんとかは馬超が討つ!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「まずい、馬超様が挑発に乗ってしまった。
これでは挟撃の意味がない」


挿絵(By みてみん)
曹彰そうしょう
「よそ見してる余裕あんのか?
虎殺しの黄鬚とは僕様のことだああああ!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「こ、この男……できる!」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「今なら馬超君の本陣は空だ。一気に襲うよ」


挿絵(By みてみん)
婁圭ろうけい
「し、しかし急襲しようにも我が軍は総崩れで混乱して――」


挿絵(By みてみん)
楊沛ようはい
「陣を立て直せ!
丞相の前でみっともねえ姿をさらす野郎は俺が殺す!
さらさなくても殺す! 目についた奴から殺す!」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「狼狽している暇があったら混乱の収拾に努めろ、というわけだな。
見よ、楊沛があっという間に兵を落ち着かせたぞ。
楊沛に殺されるくらいなら、敵と戦うべきだとな」


挿絵(By みてみん)
婁圭ろうけい
「むむむ……」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「婁圭君は楊沛君に殺される前に隠れておくといいよ。
おかげで陣も立て直せたようだ。それにそろそろ――」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「殿は無事か! 助けに来たぞ!!」


挿絵(By みてみん)
賈詡かく
「どうにか間に合ったようですな。
将軍、丞相は無事なようですから、
小生らは馬超の本陣を襲撃……聞こえていないようですな」


挿絵(By みてみん)
朱霊しゅれい
「ならば我々だけでも馬超の本陣を襲うとしよう」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「夏侯淵君、よく来てくれた。そろそろだと思っていたよ。
僕は大丈夫だから許褚君を助けて馬超君を追い払ってくれたまえ」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「わかった!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「我らの背後に回していた別働隊が、もうここまで来ていたのか……」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「龐徳! わての手勢だけじゃ本陣を守れんぞ。
戦果は十分だから引き上げるで!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「了解した。韓遂かんすい殿の守る潼関どうかんまで退却するぞ!」


挿絵(By みてみん)
曹彰そうしょう
「逃がすかあああ!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「ここから先へは進ませぬ!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「やるな! この馬超の槍をここまで防いだのはお前が初めてだ!
だがまだまだァッ!!」


挿絵(By みてみん)
許褚きょちょ
「ぬううううん!」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「殿! もう曹操軍に十分、打撃は与えた。
ここは引き上げるんや!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「ちょっと待っていろ馬岱! こいつを片付けたら馬超も続く!」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「だからそんな暇はないっての!
もう残ってるのは殿の手勢だけなんやぞ!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「手を出すな馬岱! やっと面白くなってきたところだ!」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「あいかわらず二つ以上のことを同時に考えられへんのやから……。
問答無用!」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「は、離せ馬岱! まだ決着がついていない!」


挿絵(By みてみん)
許褚きょちょ
「………………」


~~~潼関~~~


挿絵(By みてみん)
成公英せいこうえい
「曹操軍の死傷者は1万にのぼり、
対する我が軍の諸侯は全員が無事です」


挿絵(By みてみん)
韓遂かんすい
「想像以上の大戦果だな」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「なにが大戦果なものか!
あと一息であの許なんとかという将を討ち取れたものを!」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「……曹操の護衛なんて討ちもらしたって構わないでしょうや」


挿絵(By みてみん)
韓遂かんすい
「馬超の軍がちゃんと背後を襲っていれば、
曹操の首も獲れたかもしれんが、まあ贅沢は言うまい。
もともと前線に築いた陣は捨てる予定だった。
あとは予定通りに、潼関で曹操軍を迎え撃とう」


挿絵(By みてみん)
??
「……なにが予定通りだか」


挿絵(By みてみん)
韓遂かんすい
「こ、これは奥方殿」


挿絵(By みてみん)
??
「曹操は十面埋伏の計で意表を突かれながらも、
道中で多少の兵を失おうと、あたしらの本陣にたどり着く頃には、
夏侯淵の別働隊と合流して、十分な兵力を確保できると計算していた。
そのうえうちのヤドロクの性格を熟知して、
豪傑を向かわせれば無力化できると把握してもいた。
予定通りに事を進めているのは曹操のほうじゃなくて?」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「でも、一万の兵を失ったことは曹操にとっても痛手に――」


挿絵(By みてみん)
??
「本当に痛手を被っていたら、
漢中かんちゅう下弁かべんに向かわせた部隊を呼び戻してるわよ。
一万の兵を失ってなお、あたしらに勝てると踏んでるから、
現有勢力のまま潼関に進撃してるんじゃないのよ」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「……ごもっともだな」


挿絵(By みてみん)
??
「わかったらへらへらしてんじゃないわよ。
後手を踏んでるのはあたしらのほうよ。
そこんとこ、よく考えときなさい」


挿絵(By みてみん)
馬岱ばたい
「へ、へい!」


~~~潼関 馬超の居室~~~


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「君の話は難しくてよくわからないが、
馬超たちは勝ったのか? 負けたのか?」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「負けてはいないわ。
でもあいつらが浮かれてるほど勝ってもいない。
ちょい勝ちってところね」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「そうか勝ったのか!
やはり曹操などこの馬超の正義の槍の前には恐れるに足りん!」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「……あんたのその単純さが時々うらやましくなるわ」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「褒めてくれるのか! ありがとう妻よ!」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「……まあいいわ。それよりこの先の戦のことを話しましょ。
曹操の首は挙げられなかったけど、
まずまず順調にここまでは来ているわ。
潼関はあたしらが守り、城外に布陣させた
関中十部の諸侯に曹操の後方を襲わせる。ここからが肝心よ」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「ふーん。それで馬超は誰と戦えばいいんだい?」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「あんたは曹操と戦うの。
曹操さえ追い回せばいいのよ。わかった?」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「わかった!
……でもさっきの許なんとかが出てきたら、
決着をつけるために戦ってもいいよな?」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「ダ・メ・よ。曹操だけ追いなさい。
あんたは誰のために曹操と戦ってるの? 誰の仇を取るためなの?」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「もちろん君のためだよ董白!
君のお祖父様の家臣を殺した、にっくき曹操を倒すんだ!」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「そうよ。だったらあたしの言うことだけを聞きなさい。
いいわね?」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「もちろんだとも!」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「………………。
いいわ、これ以上あんたと話してると頭痛が起きそう。
――司馬懿! あんたの出番よ。次の策を出しなさい」


挿絵(By みてみん)
司馬懿しばい
「………………はい。お呼びですか奥様。
わたしのことをお忘れではなかったのですね。
このまま呼ばれずに放っておかれるのかと思っていました」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「十面埋伏の計は見事だったわ。
行き倒れのあんたを拾ってやった甲斐があったわね」


挿絵(By みてみん)
司馬懿しばい
「はい。虫けらのように死んでいくしかなかったわたしを
お救い下さった、命の恩人である奥様には感謝の言葉もありません。
奥様が死ねといえば即座に死んで見せます」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「つまんない礼はいいから策を出しなさいよ。
次の策はなんなの? あるんでしょ?」


挿絵(By みてみん)
司馬懿しばい
「あります。
策を出せないわたしになんて生きる価値はありませんから……。
もし策がなかったら、こうしてのこのこ恥知らずにも
顔を出したりせず、部屋の片隅で舌を噛んでそっと息絶えています」


挿絵(By みてみん)
董夫人とうふじん
「不景気なひとりごとはどうでもいいから、策よ策!」


挿絵(By みてみん)
司馬懿しばい
「も、申し訳ありません。
次に余計なことを言ったら首をはねてください。
ああっ! そんなご面倒な真似をさせるわけには行きません。
剣を与えてくだされば自分で首をはねます! 自己解決いたします。

――は、はい。次の策ですね。
次なる策は四方から曹操の背後を襲います。
それも火の手のないところからの一斉蜂起です。
これで必ずや曹操軍は不意を突かれ、瓦解することでしょう……」


~~~~~~~~~


かくして緒戦は馬超ら関中十部軍が制した。
戦いの舞台は潼関に移り、董白の復讐の刃、司馬懿の策の冴え、
そして馬超の正義の槍が、曹操をかつてない窮地に陥れようとしていた。

次回 〇五八   潼関の戦い
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