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アイコン三国志 作者:小金沢

第六章 天下三分の計

55/125

〇五四   孫家の女

~~~許昌きょしょうの都~~~


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「あはは。劉備と孫権の妹が結婚とは参りましたね。
両軍が結束したらますます厄介なことになりそうだ」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「フン。そんなことにはなりそうもないという口振りじゃな」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「あはは。引退したとはいえ程昱殿の慧眼は衰えませんね。
見抜かれちゃいましたか。
――孫権、いや片腕の周瑜は若さに似合わず老獪な男です。
ただの政略結婚ではなく、劉備を陥れる計略が裏に潜んでいるでしょう」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「あわよくば共倒れになってくれればいいんじゃがな。
そうすれば楽に中原統一にこぎ着けられる」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「おやおや、これは程昱殿とは思えない穏便な意見ですね。
引退して丸くなってしまわれたんですか?」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「フン。現役ならいざ知らず、一線を退いたら後進の者には
楽をしてもらいたいと思うのは当然じゃろう。
だいたい年寄り扱いするでないわ。
ワシは頭脳が衰えたから引退したわけじゃないぞ」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「……やはり、孔融こうゆう殿の処刑が引退の理由ですか」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「フン。理由の一つではあるな。ワシはこの通り口の減らない男じゃ。
殿に余計な口を叩いて、孔融のような舌禍を招かんとも限らんわい」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「殿はそのような方ではありません!
あれは孔融殿が、亡くなった曹沖そうちゅう様を
ないがしろにするようなことを言ったからで――」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「孔融はあのとおりの男じゃったが、
あくまでも儒学者としての意見を述べただけじゃ。
それで処刑はやり過ぎだろうて」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「……私も殿に再考を求めました。
しかし、こと賞罰にかけては
いったん命じたことを引き下げることはできないと――」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「いや、お前や殿を責めているわけではない。
処刑されずとも、遅かれ早かれ孔融は身を滅ぼしていたじゃろうよ。
ワシもそろそろ引退しようと思っておったんじゃ。
いい機会だったというだけじゃ」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「………………」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「それよりお前の身のほうが心配じゃ。
殿と儒学者どもの間で板挟みになってるんじゃろ?
顔色が優れんぞ。ろくに寝ておらんのじゃろう」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「あはは。心配はいりませんよ。
今は殿も都に留まってくれていますし、
私の仕事は格段に減っています。
程昱殿こそ、引退して気が抜けて、
ぽっくり逝ってしまわぬように用心してください」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「フン。憎まれ口を叩きおって……」


~~~会稽 劉備軍~~~


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「劉備先輩にも困ったッス。
尚香先輩に夢中で、すっかりメロメロになってるッス。
荊州に帰る気がなくなったんスかね?」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「その可能性はおおいにあるな。
劉ちゃんはあのとおりのんきな性格だから、
毎日遊んで暮らせればいいと思っておる」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「しかしいつまでもここに逗留しているわけにはいきません。
曹操も今は鳴りを潜めていますが、いつ動き出すことか……」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「でも明日も明後日もずーっと先まで、
孫権先輩の重臣たちとの宴会の予定が入ってるッス。
それを勝手に取り消したら劉備先輩、激怒するんスよね……」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「へそを曲げられたら、ますます帰る気をなくすぞ。
諸葛亮の言ってたとおり、そろそろバッサリ斬っちまうか?」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「お、お待ちください。
軍師はたしか、このような時に備え、
御友人を頼るように言っていました」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「ウスッ。その友人に連絡を取りましたッス。
そろそろ来てくれるはずなんスけど――」


挿絵(By みてみん)
??
「えーと。やつがれを呼び出したのはあんたさんらかい?」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「おっ。ひょっとしてアンタが諸葛亮先輩の友人の」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「おお、やっぱりそうかい。
やつがれは龐統ってもんだ。よろしくやってくだせぇ」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「龐統!?
そ、その名はたしか軍師の異名である伏龍と並び称される――」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「ああ、鳳雛ほうすうかい?
いかにもやつがれの異名でさぁ。
もっとも、あの薄気味悪い諸葛亮の奴と
いっしょくたにされるなんて、いい迷惑ですがね」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「諸葛亮先輩の友人ではないんスか?
あ、サーセン。自分は趙雲っていう者ッス」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「雲の字かい。そっちは簡の字と孫の字と。
気が向いたら覚えときまさぁ。
で、誰が誰の友人だって?
よせやい、諸葛亮に友人なんているわけねえでしょうよ。
ああ、馬良ばりょうとかって変人がいたな。
あれは変人同士で気が合ってるだけでさぁ。
やつがれは違いやすよ」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「馬良といえば白眉はくびの異名で知られる荊州一の名士です。
軍師は馬良とも知己だったのですか……」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「あんたと諸葛亮の関係はおいといて、知恵を貸してくれるんだろ?
これこれこういうわけで、うちらは困ってるんだ。どうにかしてくれ」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「ふーん。劉備の家臣でもないやつがれに、劉備をどうにかしろと?
諸葛亮の奴はあいかわらず無理難題を押し付けるねぇ」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「諸葛亮は困ったらあんたを頼れと丸投げしとった。
そういえばあんたのことを荊州一いい男だとも言っとったぞ」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「けっ。この通りの面相のやつがれに、ただの皮肉でさぁ。
都合のいい時だけ持ち上げやがって」


挿絵(By みてみん)
諸葛均しょかつきん
「龐統さん、お久しぶりです」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「し、諸葛均殿? いつの間においでなさったのですか?」


挿絵(By みてみん)
諸葛均しょかつきん
「兄はそろそろみなさんが困られて、
龐統さんを頼る頃合いだと思い、
私に手助けに行くように命じたのです」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「諸葛亮はとうとう千里眼まで身につけたんかい?
どんどん化け物じみてくるなあいつ……。
ともかく扇動の名手の均の字が来たなら、やることは決まったかな。
それじゃあみなさんらにも手伝ってもらいやすぜ。
なーに。難しいことじゃありやせん。
ちょいと一芝居打ってもらうだけでさぁ……」


~~~会稽 軍議場~~~


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「曹操が荊州と合肥がっぴ方面から南下を開始しただと?」


挿絵(By みてみん)
諸葛瑾しょかつきん
「はい。赤壁の敗戦の雪辱を晴らすため、
数十万の軍勢を動かしたそうです」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「荊州は劉備のヤローに任せるとして、問題は合肥だな。
合肥のすぐ南、濡須じゅしゅの防備はどうなってる?」


挿絵(By みてみん)
魯粛ろしゅく
徐州じょしゅう攻めに失敗した呂範りょはんさんと、
太史慈たいしじが守ってるッス」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
周泰しゅうたい董襲とうしゅう
それに蒋欽しょうきんを援軍に向かわせろ。
場合によっちゃあオレも出るぜ」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「フッ。それには及ばない」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「あぁん? 戦下手のオレじゃ足手まといだって言いてェのか?」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「そういう意味ではない。
曹操の南下は、まやかしだと言っているのだ」


挿絵(By みてみん)
諸葛瑾しょかつきん
「まやかし?」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「私が集めた情報によると、
曹操の目は南よりもむしろ西に向いている。
彼らはいまだ赤壁の敗戦で受けた痛手から立ち直ってはおらず、
水軍の整備も進んでいない。
あの曹操がそんな不完全な陣容のまま、南下を企てるだろうか?」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「前置きはいいから結論だけ言えや」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「曹操の南下は、諸葛亮が流した偽情報だ。
これは曹操に備えるためという名目で、
劉備を荊州へ帰すための策だ」


挿絵(By みてみん)
諸葛瑾しょかつきん
「しかし、実際に合肥から多くの民が
戦乱を避けて濡須へと避難していますよ。
これは戦の兆候ではありませんか?」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「合肥の守将だった劉馥りゅうふくが没し、
代わって入った張遼は、強引な統治を進めていると聞く。
圧政を嫌った民を諸葛亮が扇動したのだろう。
長坂の戦いの際にも、諸葛亮は民を意のままに操り、
曹操に対する盾とした。扇動はお手のものだ」


挿絵(By みてみん)
諸葛瑾しょかつきん
「はっはっはっ。弟はずいぶんと暗躍しているようですね」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「諸葛センセーは、劉備一人を取り戻すために、
そんな大掛かりな策を講じてるってのか?
にわかには信じらんねェ話だな」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「劉備らが荊州刺史として担ぎ上げている劉琦りゅうきが、
重病で危篤に陥っているという情報もつかんでいる。
劉琦を失えば、劉備らが荊州を占領している大義名分も薄れてしまう。
一刻も早く劉備を奪回したいのだろう」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「ふーん。オレの知らねェ情報をそうバンバン出されちゃあ、
ぐうの音も出ねェな。
だがどうするよ? 劉備を骨抜きにして、
あわよくば吸収合併しちまうって策は諦めんのか?」


挿絵(By みてみん)
魯粛ろしゅく
「劉備を孫権さんの一族に迎え入れ、
軍勢を丸ごといただいちゃうってのが最善でしたが、
諸葛亮さんが動き出したらそうはいかないッスね。
いっそのことバッサリ行っちゃいましょうか?
あ、尚香さんがいるからダメか」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「いや、尚香も孫家に生まれたからにゃあ、
いつでも家のために死ぬ覚悟はできてんだろうよ。
いざとなったら遠慮はすんな。バッサリ行っちまえ」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「そう話を急ぐな。必ずしも殺す必要はない。
劉備は我々の手の内にあるのだ。
要は劉備を江東から出さずに――。
なんだこの声は。外が騒がしいぞ。何かあったのか」


挿絵(By みてみん)
厳畯げんしゅん
「い、一大事です! こ、この軍議場が包囲されています!」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「包囲だと!? さては劉備のヤローだな!
先手を打ってくるたァいい度胸だ。
だが包囲されるまで駐屯軍は何をしてやがったんだ!?」


挿絵(By みてみん)
厳畯げんしゅん
「そ、それが――」


挿絵(By みてみん)
孫尚香そんしょうこう
「おいバカ兄貴!」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「なっ!?」


挿絵(By みてみん)
孫尚香そんしょうこう
「聞いてんのかよバカ兄貴!
てめェ、おれの旦那に手ェ出そうたァいい度胸じゃねェか」


挿絵(By みてみん)
諸葛瑾しょかつきん
「も、もしや包囲軍を率いているのは……」


挿絵(By みてみん)
孫尚香そんしょうこう
「おれだよ! この軍議場はおれたち劉備軍が包囲した!」


挿絵(By みてみん)
魯粛ろしゅく
「劉備軍ってことはあ、劉備さんもそこにいるんスかあ?」


挿絵(By みてみん)
孫尚香そんしょうこう
「へっ。敵に答えてやる義理はねェな」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「……尚香、てめェも孫家の女なら、
家のために死ぬ覚悟はできてるはずだ。
おとなしく劉備をオレたちに引き渡しな。
さもねェと躊躇なく殺すぜ。
嫁いで十日と経ってねェ相手にどこまで義理立てする気だ?」


挿絵(By みてみん)
大喬だいきょう
「十日だろうと三日だろうと関係ありません」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「あ、義姉上までいんのか!?」


挿絵(By みてみん)
大喬だいきょう
「私も嫁いで一年と経たずに孫策様に先立たれました。
ですがこの想いは今も、これから先も孫策様とともにあります。
夫婦とはそういうものです」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「あー。その、なんだ。オレはいま尚香と話してんだ。
わりィが義姉上は、ちょっと下がっててくんねェかな」


挿絵(By みてみん)
小喬しょうきょう
「いいえ、下がりません」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「し、小喬……」


挿絵(By みてみん)
小喬しょうきょう
「孫権様、あなたの立場もわかりますが、尚香の気持ちも考えずに、
夫婦の仲を裂こうなどという考えには賛同できません」


挿絵(By みてみん)
魯粛ろしゅく
「……さすがに二喬様は討てないッスよね」


挿絵(By みてみん)
孫尚香そんしょうこう
「兄貴はさっき、孫家の女なら死ぬ覚悟があるかと言ったな。
あるに決まってんだろ!
孫家の女は、旦那のためなら兄貴と一戦する覚悟は
いつでもできてらァ!」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「くっ……。
まさか尚香がここまで劉備のヤローに惚れ込んでるとはよォ」


挿絵(By みてみん)
孫尚香そんしょうこう
「どうしたバカ兄貴!
おれが邪魔なら正々堂々と一騎打ちしようじゃねェか!
弓腰姫きゅうようきとうたわれた、
おれの弓の腕を恐れねェなら出てこいや!」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「………………」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「待て孫権殿。ここで尚香殿を討ってなんになる?
小喬は夫として私が討つとしても、大喬殿まで手にかけるのか?」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「………………チッ」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「それに劉備の姿が見えないのが気にかかる。
おそらく劉備はすでに、この都から脱出しているに違いない。
劉備の後を追うのが先決だ」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「……あいつらは劉備が逃げるまでの時間稼ぎをしてるってことか」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「外の諸葛亮の陽動に気を取られて、
内の動きに気づかなかった私の失策だ……」


挿絵(By みてみん)
呉国太ごこくたい
「権や。あなたの負けですよ」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「お、オフクロ!」


挿絵(By みてみん)
呉国太ごこくたい
「あなた方が尚香たちと戦うなら、私も敵に回ります。
孫家の女の怖さは、よく知っているでしょう?」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「フッ。ご母堂まで出てきてはかなわないな」


挿絵(By みてみん)
呉国太ごこくたい
「確かに権や尚香をたきつけたのは私ですが、
娘の結婚を政治利用するのは感心しませんね。
それに……私も婿殿を、劉備殿を気に入りました」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「へ?」


挿絵(By みてみん)
呉国太ごこくたい
「なんですかその顔は。
母と娘の男の好みが同じでも不思議はないでしょう?」


挿絵(By みてみん)
孫尚香そんしょうこう
「オフクロ! 危ねェから早くそこを離れろ!
おれの矢でとばっちり食らっても知らねェぞ!」


挿絵(By みてみん)
呉国太ごこくたい
「私は構いませんから、よく狙いなさい。
旦那さんの敵を、しっかりとね」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「……そういやあ孫策の兄貴が言ってたっけな。
尚香はオレたち兄弟の中で一番、オヤジに似てるってよォ。
けっ。見てみろよ弓ィ構えたあの男勝りの勇姿を。
ガキんときに見た、オヤジそっくりじゃねェか……」


~~~会稽 西~~~


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「やつがれの策なんて、ぜーんぶ無駄になっちまいやしたね」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「たしかに尚香様のおかげで脱出できたようなものですが、
しかし尚香様に全て打ち明けて協力を仰ごうと考えたのは、
龐統様ではありませんか」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「別にいばることじゃありやせんよ。
やつがれは江東に長いこと住んでて、
あんたさんらよりも、尚香さんの気性を知ってただけのことでさぁ」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「それにしてもやっこさんには驚かされたな。
まさか自分が孫権の城を攻めるから、その隙に逃げろと来るとは。
まったくたいした女だ」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「お言葉に甘えて出てきちゃったッスけど、
尚香先輩は大丈夫ッスかね」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「なーに心配はいりやせんよ。
孫権の二人の義姉までついてってんだ。
孫権もあの二人にまで手を上げることはないでしょうよ」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「むしろ問題は……」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ぐおー。ぐおー」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「……目が覚めたら劉備先輩、激怒するでしょうね」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「尚香に勧められるままに浴びるように飲んどったからな。
まあ、江東を脱出するまでは起きやせんよ。
起きても当分は二日酔いだ。どうとでもごまかせる」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「それにしてもいい女でしたなあ。
旦那のために命まで張る、あんないい女を
置いてかなくちゃならんとは、実に惜しい」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「でも、尚香先輩は劉備先輩の
どこにあんなに惚れ込んだんッスかね?
言っちゃ悪いけど劉備先輩ってどこからどう見ても駄目人間なのに」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「……お前がそれを言うか」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「おっ。諸葛均殿が追いついて来ましたよ」


挿絵(By みてみん)
諸葛均しょかつきん
「まずは首尾よく行きましたね。
孫権は追っ手を差し向けてきましたが、
尚香様の反乱鎮圧に手間取って、だいぶ後手を踏んでいます。
尚香様も無事に孫権と和解したようですよ」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「均の字こそご苦労でさぁ。不発に終わった扇動だったが、
合肥の住民を大勢、江東に移住させたそうで」


挿絵(By みてみん)
諸葛均しょかつきん
「曹操陣営には大打撃だったでしょう。
扇動も無駄ではなかったと思いますよ」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「それじゃあ、孫権の追っ手は自分が引き受けるッス。
お気をつけて、先に行っててください」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「趙雲も気をつけて。
――ところで、龐統様はどうなさるのですか?
我々に同行しているところを見ると、
このまま劉備様に仕えてくださいますか?」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「やつがれがあんたさんらに協力してたことも、
おいおい露見しちまうでしょうからね。
まずいことになる前に、劉備さんにご厄介になろうかと
思ってやすが、構いませんかね」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「こっちは大歓迎だぞ。うちには頭脳派が少ないから助かる」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「そいつはありがてえ。
諸葛亮のヤツにも、手伝わせた報酬をもらわないとな」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「うーん。むにゃむにゃ。えへへ。
尚香さんや、もうちっとこっちゃ来い……」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「……劉備様の置かれた状況を
的確に表す言葉があった気がするのですが」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「知らぬは亭主ばかりなり」


挿絵(By みてみん)
龐統ほうとう
「だな」


~~~~~~~~~


かくして劉備軍は周瑜の罠を脱した。
孫尚香に策を阻まれた周瑜は、見果てぬ夢のため、ついに立ち上がる。
だが彼の背後には死神の影が迫っていた。

次回 〇五五   美周郎の夢
+注意+
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