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アイコン三国志 作者:小金沢

第六章 天下三分の計

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〇五二   荊州南部攻略戦

~~~荊州けいしゅう 江夏こうか~~~


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「今回の作戦は速度が命だ。
貴様らには全速力で荊州南部の四郡を落としてもらう」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ってことは亮さん、部隊を四つに分けるのか?」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「当然だ。周瑜が南郡なんぐん城を落とす前に、
四郡を横からかすめ取らねばならぬ。
四郡を順繰りに攻める時間の余裕はない」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「それなら一郡はアタイに任せなさいよ!
兵は3千も貸してくれれば十分だわ!」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「自分にも任せてくださいッス!
兵は張飛先輩と同じく3千で十分ッス」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「おっ。関さんの手も上がったぞ!
ほんなら関さんも3千もありゃ十分か?」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「いや、この五本の指は、関羽は5百もあれば十分である!
――という意味だと父は言いたいのです」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「ご、5百?」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「!?」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「……いくら関さんでも5百は少なすぎじゃありゃせんか?
関さん本人もびっくりしとるみたいじゃぞ」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「この関羽に二言はない!
――と父は自信満々です」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「関羽が関平をにらんでるのは気のせいかな?」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「クックックッ。本人が5百でいいと望んでいるんだ。
その通りにしてやろうではないか。
ならば残る一郡は、余と劉備が引き受けてやろう。ありがたく思え。
どの郡を攻めるかはくじ引きで決める。さっさと引け」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「……なんで四郡を攻めるのにくじが五本あんのよ?」


挿絵(By みてみん)
黄月英こうげつえい
「当たりが出たら御主人様の代わりにもう一郡を攻められるです」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「…………」


~~~荊州南部 零陵れいりょう~~~


挿絵(By みてみん)
劉度りゅうど
「こ、こ、降伏しないのか?」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「一戦も交えずに降ったら、曹操丞相に合わせる顔がない」


挿絵(By みてみん)
劉度りゅうど
「ど、ど、どうせ劉備に降れば丞相と会うことはなくなる。
面子を気にしている場合ではないぞ!」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「私とて面子だけでものを言っているわけではない。
勝機があるから、戦えと言っているんだ」


挿絵(By みてみん)
邢道栄けいどうえい
「そのとおり!
劉備軍なんてオラの大斧でちょちょいのちょいだーーッ!!」


挿絵(By みてみん)
劉度りゅうど
「た、たしかに邢道栄は強いが、関羽や張飛に歯が立つのか?
お前は邢道栄を買いかぶっているだけではないのか?」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「邢道栄の武勇を頼りにしているだけではない。
桂陽けいよう武陵ぶりょう長沙ちょうさ
他の三郡と連携して戦うのだ。
四郡が力を合わせればいくら劉備とはいえ――。

おい、邢道栄はどこだ。いつの間に出て行った?」


挿絵(By みてみん)
劉度りゅうど
「し、知らん。も、もう出撃したのではないか?」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「馬鹿者が!
あいつひとりで向かっていってどうにかなる相手では――」


挿絵(By みてみん)
邢道栄けいどうえい
「あんぎゃあああああっ!!!」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「邢道栄は討ち取ったッスよ! おとなしく降伏するッス!」


挿絵(By みてみん)
劉度りゅうど
「あわわわわわわ。言わんこっちゃない。
言わんこっちゃないぞ!」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「……お前は降伏するなりなんなり好きにしろ。
私は長沙に向かい、迎撃の準備をする」


挿絵(By みてみん)
劉度りゅうど
「そ、そうか。わかった。
――降伏する! 劉備軍よ! 私はおとなしく降伏するぞー!!」


~~~零陵 劉備軍~~~


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「それでは自分は桂陽の攻撃に向かうッス!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ご苦労じゃったな!
龍さんが当たりを引いてくれたおかげでわしらは戦わずに済んだぞ」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「お安いご用ッス! それでは行ってくるッス!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「零陵はこのまま降伏した劉度さんに任せるとして、
わしらはどうしようかの亮さん」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「長沙へ後詰めに向かう」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「関さんが向かった長沙か。
たしかにいくら関さんでも5百ぽっちの兵じゃ不安じゃもんな」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「それだけではない。何やらネズミがうろちょろしているようだ。
長沙に関しては他に妙な噂も聞くし、
単細胞の関羽だけでは足元をすくわれかねん」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ふーん。まあ細かいことは亮さんに任せるから、好きにやっとくれ。
そういやあ、武陵に向かった張さんが
そろそろ攻撃を開始した頃合いじゃな。
元気にやっとるじゃろうか」


~~~荊州南部 武陵ぶりょう~~~


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「アタイに立ち向かってくるなんていい度胸じゃないのさ!
せっかくだから名前を聞いたげるよ」


挿絵(By みてみん)
金旋きんせん
「俺は武陵にその人ありと知られた金旋だ!
我が剣の奥義、とくと味わうがいい!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「………………」


挿絵(By みてみん)
金旋きんせん
「どうしたどうした! 我が剣の冴えに言葉も失ったか!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「………………いや、あんまりにもしょぼくて言葉が出ないだけよ」


挿絵(By みてみん)
金旋きんせん
「へ?」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「はあ……。アンタ、それでよくアタイに挑む気になったわね。
かわいそすぎて殺す気も無くなるわ。見逃してやるから帰んなさいよ」


挿絵(By みてみん)
金旋きんせん
「な…………!?
さ、さては俺の剣技にビビって、命乞いをしているのだな!
だ、だが俺はそんなに甘くな――」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「うっさい」


挿絵(By みてみん)
金旋きんせん
「ああああっ!?
お、お、俺の剣が真っ二つに……。
あわわわわわわ。お助けええええ!!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「だから助けてやるって言ってるじゃないの。
おとなしく降伏しなさい!」


挿絵(By みてみん)
金旋きんせん
「も、も、門を開けろ! は、早く俺を中に入れ――。
うぎゃあああああっ!?」


挿絵(By みてみん)
鞏志きょうし
「……だから俺はやめろと言ったのだ」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「あらま。アンタ、金旋の部下なんじゃないの?
金旋を射殺なんかしちゃってどういうつもりよ」


挿絵(By みてみん)
鞏志きょうし
「このたびの無謀な戦いは、身の程知らずの金旋の勝手な判断によるだ。
我々ははじめから張飛殿に歯向かうつもりはなかった。
勝ち目のない戦をして民を苦しめてもしかたないからな。
我々の身はどうなっても構わん。どうか領民には寛大な処置を願う」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「へえ。なかなか見上げた根性じゃないのさ。
気に入ったわ、アタイから劉備に取り成したげる。
悪いようにはしないわよ」


挿絵(By みてみん)
鞏志きょうし
「それともうひとつ。金旋の遺体を弔わせて欲しい。
領民のためやむなく討ったが、
しがない猟師だった俺を取り立ててくれた恩がある」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「アンタ……。んふふ。いいオトコじゃないのさ」


~~~荊州南部 桂陽けいよう~~~


挿絵(By みてみん)
陳応ちんおう
「お前が趙雲か!
この三叉の矛がお前に会うのを楽しみにしていたぞ!」


挿絵(By みてみん)
鮑隆ほうりゅう
「長坂の戦いでは名を上げたそうだが、
桂陽の両巨頭と呼ばれた我々のコンビネーションには敵うまい!」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「ウスッ。自分の名前を知ってもらってて光栄ッス」


挿絵(By みてみん)
鮑隆ほうりゅう
「ぎゃああああああ!!」


挿絵(By みてみん)
陳応ちんおう
「…………へ?」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「あ、サーセン。まだ自己紹介が途中だったッスか?
もう終わったもんだと思って、突っ掛けちゃいました」


挿絵(By みてみん)
陳応ちんおう
「あ……あ……」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「さあ、紹介を続けてくださいッス。終わったら戦うッス」


挿絵(By みてみん)
陳応ちんおう
「………………退け! 退けーーい!」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「あれ? 戦わないん……スか?」


~~~桂陽~~~


挿絵(By みてみん)
趙範ちょうはん
「わ、わ、私が太守の趙範でございます。
さ、さ、先程は部下がとんだ無礼を働きまして……」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「いやいや、こっちこそ挨拶が終わってないのに
突いちゃって申し訳ないことしたッス。
ところでさっきの方はどこッスか? 戦いの続きをやりたいんス」


挿絵(By みてみん)
趙範ちょうはん
「め、め、滅相もない! 陳応は深く反省しております!
将軍に歯向かおうなどとは金輪際、思わないでしょう!」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「? よくわからないッスけど、戦わないなら残念ッス。
それじゃああんた方は降伏してくれるんスね?」


挿絵(By みてみん)
趙範ちょうはん
「も、も、もちろんですとも!
部下が勝手に暴走しただけで、
もとより劉備様に逆らうつもりはありませんでした!」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「それはよかったッス。
おとなしく降伏してくれれば、悪いようにはしないッスよ」


挿絵(By みてみん)
趙範ちょうはん
「あ、あ、ありがとうございます!
ど、ど、どうか将軍のほうからも、
劉備様に取り成しをしていただければと……。
そ、そ、そこでささやかながら将軍のために
宴席の準備を整えてあります」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「任務中なんで結構ッス」


挿絵(By みてみん)
趙範ちょうはん
「か、か、固いことをおっしゃいますな!
酒だけではなく美女も用意してあります。
私の亡き兄の未亡人ですが、これがすこぶる良い女でして――」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「いまなんて言ったッスか」


挿絵(By みてみん)
趙範ちょうはん
「え、え、え?」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「あんたは兄嫁を自分に差し出すつもりッスか!
いったいなにを考えてるッスか!
恩知らずとはあんたのためにある言葉ッス!!」


挿絵(By みてみん)
趙範ちょうはん
「ひ、ひ、ひいいいいい!」


挿絵(By みてみん)
陳応ちんおう
「し、将軍、どうか落ち着かれ――」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「あんたは引っ込んでるッス!」


挿絵(By みてみん)
陳応ちんおう
「ぎええええええ!!」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「あ。しまったッス。つい槍が出ちゃったッス」


挿絵(By みてみん)
趙範ちょうはん
「あ、わ、わわわわわわわわわ」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「泡吹いて卒倒しちゃったッス。
なんか悪いことしちゃったッスね……」


~~~荊州南部 長沙ちょうさ~~~


挿絵(By みてみん)
韓玄かんげん
「零陵、武陵、桂陽の三郡はすでに落ち、
この長沙にも関羽が向かっているだと……?」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「ああ。劉備軍の動きは予想以上に早かった。だがまだ打つ手はある」


挿絵(By みてみん)
楊齢ようれい
「まあ、ヒーロー不在の時代だから
自然と俺への期待がでかくなるのはわかる。
でも俺一人で劉備軍を倒すのは楽じゃないんだぜ?」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「……誰もお前一人になど期待しておらん。
聞けば関羽の率いている軍勢はわずか5百だという。
5百の小勢ならば、いかな関羽といえども
戦って勝つことは不可能ではない。
関羽を捕らえ、人質にして劉備と交渉するのだ」


挿絵(By みてみん)
韓玄かんげん
「むうう……」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「かっかっかっ! 何を迷っているのだ韓玄殿!
この儂にお任せあれば、すぐに関羽の首を持ち帰ってやるぞ!」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「……いや、首を獲ったら交渉もなにもできなくなる。
捕らえるだけでいいのだ」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「ならばなおさら簡単な話だ!
この黄忠が矢が関羽の乗騎を射抜く!
落馬したところを捕縛すればよかろう!」


~~~長沙 関羽軍~~~


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
廖化りょうか
「わずか5百の兵で長沙を落とす……。
そんな離れ業は関羽将軍にしかできねえよなあ!
すげえよなあ将軍は!」


挿絵(By みてみん)
陳到ちんとう
「廖化殿、泣くのは無事に長沙を落としてからにいたそう」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「我が父の武名はあまねく天下に轟いている。
長沙は戦わずして降伏するやもしれん」


挿絵(By みてみん)
周倉しゅうそう
「……というわけには行かなかったようですぜ。
長沙の軍勢が前方に布陣していやす」


挿絵(By みてみん)
楊齢ようれい
「関羽・イズ・デッド!
ジミヘンはギターを燃やしたが、今の俺はすでに炎に包まれている。
それっぽっちの小勢で俺を倒せると思ったら大間違いだぜ!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「荊州南部の三郡はすでに落ちた!
おとなしく降伏すれば命だけは見逃してやろうと思っていたが、
この関羽の前に立ちはだかるならば容赦はせぬぞ!
……と父は叫ぼうとしている」


挿絵(By みてみん)
楊齢ようれい
「長沙の人々には俺の純粋なロックに
輝かしい希望を見つけて欲しいと思ってる。
さっさとかかってこいよヒゲ入道が!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「…………(#・∀・)ムカッ」


挿絵(By みてみん)
廖化りょうか
「おおっ! 関羽将軍が自ら飛びかかったぞ!」


挿絵(By みてみん)
陳到ちんとう
「――いかんッ!」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「不意打ち御免ッッ!!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「!?」


挿絵(By みてみん)
赤兎馬せきとば
「ヒヒィィィィィィン!!」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「なにィッ!?
我が百発百中の矢をかわすとは……なんという馬じゃ!」


挿絵(By みてみん)
楊齢ようれい
「フ●ッキン・アロー! な、なに外してんだよクソジジイ!!」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「我が矢をかわせる馬がいるとは夢にも思わなんだ。
その燃えるような赤い毛並み……噂に聞く赤兎馬か!」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「父を不意打ちするとは卑怯者め! その白髪首を置いていけ!」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「かっかっかっ! なにも卑怯ではないぞ青二才。
弓の名手が弓を用い、不意打ちできるなら
不意を打つのは、当たり前のことだ!」


挿絵(By みてみん)
周倉しゅうそう
「もっともですが、いばることではないでしょうや」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「楊齢、ここはひとまず逃げるぞ!」


挿絵(By みてみん)
楊齢ようれい
「退却は好きだね。っていうよりも退却が俺を求めてる」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「関羽、この勝負は後日に預け――うおおおおっ!?」


挿絵(By みてみん)
廖化りょうか
「あのジジイ、馬が負傷して転げ落ちたぞ!
ざまあみろ! 天はお前の卑怯な行いを許さなかったんだ!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「ど、どうした関羽……? 儂を斬らんのか?」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「……先の不意打ちは、赤兎馬が矢をかわしてくれたもの。
お主の落馬は、馬が負傷してくれたもの。
これは我とお主の戦とは言えぬ!
勝負もせずに首をいただくほどこの関羽は浅ましくない!
……と父は思っている」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「関羽…………」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「儂の名は黄忠! 今日のところはお主の厚意に甘えてやろう!
だ、だが勘違いするなよ! お主の武人の誇りに儂も応えただけで、
次に会った時には首を頂いてやるんだからな!」


~~~長沙~~~


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「こ、これはどういうつもりだ韓玄殿!? なぜ儂を捕縛するのだ!」


挿絵(By みてみん)
韓玄かんげん
「どういうつもりだとは俺のセリフだ!
自信満々に出ていきながら関羽を捕らえられなかったのみならず、
命を助けられておめおめと逃げ帰ってきただと?」


挿絵(By みてみん)
楊齢ようれい
「世の中には大切なものが3つある。愛と友情だ。
このクソジジイ、愛と友情を見失い
関羽に内通してるに決まってるぜ!」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「濡れ衣だ!
儂は関羽のことなんてなんとも思ってないんだからな!」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「……内通しているかどうかはともかく、
信用できない者を前線に出すわけには行かん。
韓玄よ、黄忠の代わりになる将がいると聞いたが本当か?」


挿絵(By みてみん)
韓玄かんげん
「あ、ああ。少し風変わりな奴だが、力は保証しよう」


挿絵(By みてみん)
馬鈞ばきん
「ヒヒヒ。人の大発明をつかまえて風変わりとはご挨拶だネ」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「とうとうこの時が来ましたね。博士の叡智が天下に示される時が!」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「お前らは何者だ?」


挿絵(By みてみん)
馬鈞ばきん
「さすらいの天才科学者とその助手だヨ。
韓玄の支援を受け研究をしている。
ワタシの発明品が必要なのだろう?」


挿絵(By みてみん)
韓玄かんげん
「お、おう。奴は使えるのか?」


挿絵(By みてみん)
馬鈞ばきん
「無論だ。ワタシの頭脳に不可能はないヨ」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「――――――」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「これは人間……なのか? それとも人形か?
まったく生気が感じられん」


挿絵(By みてみん)
馬鈞ばきん
「人造人間ギヱンだ。ヒヒヒ。生気が感じられんのは当然のこと。
まだシステムを起動していないからネ」


挿絵(By みてみん)
楊齢ようれい
「しすてむ?」


挿絵(By みてみん)
韓玄かんげん
「とにかくこいつなら関羽を倒せるんだろうな?
こういう時のために、お前に研究費を与えてギヱンを造らせたのだぞ!」


挿絵(By みてみん)
馬鈞ばきん
「ヒヒヒ。払っただけの働きはしてやるヨ。
ここをこうして……ほら、これでシステム起動だ」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「………………」


挿絵(By みてみん)
楊齢ようれい
「う、動いた」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「馬鹿者! いまのギヱンに近づくな!」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「ガォォォォォォォォォォン!!!!!」


挿絵(By みてみん)
楊齢ようれい
「な、何しやがるこのマザフ●ッカー!
や、やめろ! やめてくれ!
助けてママ! ぐわああああああああっ!!」


挿絵(By みてみん)
韓玄かんげん
「よ、よ、楊齢を素手で八つ裂きに……。
うわあ! 来るな! 来るな!
来るなああああああぎゃああああああああ!!」


挿絵(By みてみん)
馬鈞ばきん
「言わんこっちゃない。
こいつはワタシと楊儀以外の近づいた者を
殺すようにプログラムされているんダ」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「ひ、人を喰ってる……。な、なんという……。
太守である韓玄を殺すとはどうしてくれるのだ!」


挿絵(By みてみん)
馬鈞ばきん
「科学の発展に犠牲はつきものだヨ。
要はギヱンが劉備軍を殲滅すればよいだけの話だ」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「ウォォォォォォォォォ!!!!!」


挿絵(By みてみん)
馬鈞ばきん
「ヒヒヒ。初の実戦投入の相手が関羽とはネ。
いいデータが取れそうだ……」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「………………」


~~~長沙~~~


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「ギャァァァァァァァァァァオ!!!!!」


挿絵(By みてみん)
廖化りょうか
「な、なんだありゃ!? 四つ足の化け物が暴れまわってるぞ!」


挿絵(By みてみん)
陳到ちんとう
「あれは人か魔か……」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「こ、このままでは総崩れになる。
父上、ここはいったん退いて――」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………ッ」


挿絵(By みてみん)
周倉しゅうそう
「関羽将軍が化け物に飛びかかっちまいましたぜ!」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「たとえ化性の物が相手であろうと、
この関羽が背中を見せることはないということですね父上!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「!?」


挿絵(By みてみん)
廖化りょうか
「あ、あのバケモノ、なんて野郎だ!
将軍の青龍偃月刀せいりゅうえんげつとうを爪で弾いたぞ!」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「すばらしい! すばらしいぞギヱン!」


挿絵(By みてみん)
馬鈞ばきん
「いや……あの関羽という男、想像以上だネ。
よく見てごらん、ギヱンを押し返しているヨ」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「……ッ! ッ! ッッ!」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「グルルルルルルルル!!」


挿絵(By みてみん)
馬鈞ばきん
「あの偃月刀と馬が厄介だネ。
プログレッシブ・ネイルだけでは武装が足りないな。
機動性ももっと上げないと――」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「は、博士! 武装に関しては後で考えましょう。
このままではギヱンが……」


挿絵(By みてみん)
馬鈞ばきん
「そうだネ。もう関羽のデータは十分だ。
ギヱン、関羽は放っといてその部下を皆殺しにするんだ」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「ゲェェェェェェェ!!」


挿絵(By みてみん)
廖化りょうか
「あ、あの野郎、将軍に勝てないと見てこっちに来るぞ!」


挿絵(By みてみん)
陳到ちんとう
「兵士は逃げよ! 拙者らが時間を稼ぐ!」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「くっ……! 来い! 関羽の子は逃げぬ!!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「………………ッッッ!!!」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「オォォォォォォォォン!!」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「おすわり」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「!?」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「なっ!? ギヱンが緊急停止しただと? 活動限界か?」


挿絵(By みてみん)
馬鈞ばきん
「いや。内部電源にはまだ余裕があるはずだヨ。
……あの白衣の男にシステムを強制停止させられたんだ」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「………………」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「いい子だ」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「      」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「ギ、ギヱンのシステム完全に停止しました。
再起動に応じません!」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「諸葛亮殿! どうしてここに……?」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「面白いおもちゃがあると聞いてな。
ククク……これはたしかに興味深い」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「は、博士! どちらへ行かれるのです?」


挿絵(By みてみん)
馬鈞ばきん
「キミは何者だネ? どうやってギヱンを停止させた?
開発者として話を聞きたい」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「ほう、これは貴様が造ったのか。
なんということはない。余は全知全能だからだ」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
「ひ、非科学的な……」


挿絵(By みてみん)
馬鈞ばきん
「……人造人間とはいえ、ギヱンも人に、いや動物に近い存在だ。
ケモノの本能でキミの力を悟り、従ったというところかナ」


挿絵(By みてみん)
楊儀ようぎ
(関羽も恐れず戦ったギヱンが、この優男を恐れただと……?)


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「犬は主に従う。ただそれだけの話だ。
――この犬を余に譲れ。さすれば命は助けてやろう」


挿絵(By みてみん)
馬鈞ばきん
「……まだまだギヱンは開発途上だ。
ワタシたちに研究を続けさせてくれるなら、譲ってあげるヨ」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「よかろう。これはいい手駒になる」


挿絵(By みてみん)
ギヱン
「      」


~~~長沙~~~


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「太守の韓玄は死に、ギヱンとやらも奪われた。
もはや打つ手はないか……」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「それにしても牢に入れられとった儂を
解き放ってよいのか劉巴殿?」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「あなたを投獄した韓玄は死んだ。好きにするがいい」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「とにかくいつかこの礼はするぞ!
――ん? どこへ行くのだ? 劉備に降らんのか」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「私は曹操の配下だが、敗れたいま、
曹操のもとへ帰るわけにもいかん。
だからと言って劉備に仕えるのも気が進まぬ。
誰にそそのかされたにしろ、あの男は荊州の民を裏切ったのだからな。
私は益州えきしゅうへでも流れるさ」


挿絵(By みてみん)
黄忠こうちゅう
「そうか……。
儂は関羽に借りを返さねばならん。
劉備というよりも関羽に降ろうと思う。
道は分かれても、お主のことは忘れないからな!」


挿絵(By みてみん)
劉巴りゅうは
「ああ……。達者でなじいさん」


~~~~~~~~~


かくして劉備軍は荊州南部の四郡を落とした。
長く雌伏の時を過ごしてきた劉備は、ここに大きな力を手に入れたのである。
そんな劉備のもとへ、孫権から意外な申し出が届けられようとしていた。

次回 〇五三   弓腰姫の婿
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