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アイコン三国志 作者:小金沢

第五章 赤壁の戦い

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〇四九   赤壁の戦い

~~~荊州けいしゅう 赤壁せきへき~~~


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「まずは濃霧に包み、曹操水軍の連携を断つ。
クックックッ。この下らぬ書物も存外、役に立ったな」


挿絵(By みてみん)
太平要術たいへいようじゅつの書


挿絵(By みてみん)
黄月英こうげつえい
「仙人からぶんどった妖術書を使ってるだけなのに、
さも自分には不思議な力があるように見せかけるなんて
さすが御主人様です」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「これはまぎれもない余の力だ。
それにこの書はもらい受けたものであり、強奪した覚えはない」


挿絵(By みてみん)
黄月英こうげつえい
「そういえばそうです。
もらう前に23回刺しただけで、もともとくれようとしてたです。
勘違いです。てへぺろです」


挿絵(By みてみん)
馬謖ばしょく
「舌を出すな。かわいくねえんだよ」


挿絵(By みてみん)
黄月英こうげつえい
「馬謖にかわいく思われたくなんてないです」


挿絵(By みてみん)
諸葛亮しょかつりょう
「黙れ。気が散る。死ね」


挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)

『嫌です』


~~~赤壁 荊州水軍~~~


挿絵(By みてみん)
蔡瑁さいぼう
「……霧が出てきたな」


挿絵(By みてみん)
蔡中さいちゅう
「霧なんて珍しくもないだろ」


挿絵(By みてみん)
蔡和さいか
「で、でもこれはちょっと尋常じゃないぞ。
天変地異の前触れか?」


挿絵(By みてみん)
張允ちょういん
「なにを馬鹿なことを。
前触れだとしたら、それは孫権が滅びる前触れだ。
ついに曹操丞相が中華を統一する。時は来た! それだけだ」


挿絵(By みてみん)
蔡瑁さいぼう
「…………なに言ってんだおま」


挿絵(By みてみん)
蔡和さいか
「へ? お、おい蔡瑁様?」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「チョリース」


挿絵(By みてみん)
蔡中さいちゅう
「な!? お、お前は――」


挿絵(By みてみん)
蔡和さいか
「て、敵だ――」


挿絵(By みてみん)
張允ちょういん
「ば、馬鹿な――」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「腕を上げたな甘寧。絶叫される前に殺すなんて良い手際だ」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「久々に蘇飛サンと仕事できるから張り切ってんデスよ。
元気そうじゃん?」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「お前こそ。関羽将軍に拾ってもらった縁で、
お前とまた働けて俺もうれしいぜ」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「テンション上がるわー。
んじゃ、荊州水軍の旗艦で曹操軍の中を遊覧と行きますか!」


~~~赤壁 曹操軍~~~


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「それにしてもすごい霧じゃな。
荊州ではこのくらい珍しくないのか?」


挿絵(By みてみん)
徐福じょふく
「……いや、ここまでの濃霧は経験がない」


挿絵(By みてみん)
荀攸じゅんゆう
「! じ、丞相。この風は……」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「東南の風だね。
情報ではまだ十日ほどは吹かないはずだったのでは?」


挿絵(By みてみん)
徐福じょふく
「そのはずです。霧といい風といい不可解だ……」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「まあ天は気まぐれなものさ。
しかし霧と風が一度にそろうのは、ちょっと解せないね。
何者かの意思を感じるよ」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「見えました! 黄蓋の船です!」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「…………濃霧と東南の風を計ったように寝返りか。出来すぎだね。
本当に降伏だったら気の毒だが、念には念を入れておこう。
黄蓋君の船を沈めたまえ」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「ああ。射てッ!!」


挿絵(By みてみん)
荀攸じゅんゆう
「矢が弾かれます! あれは小船に偽装しているが軍船です!」


挿絵(By みてみん)
賈詡かく
「我が軍の艦に衝突しましたぞ。……火を放っていますな」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「やはり偽装投降か。この風では延焼は免れない。
蔡瑁君、張允君に命じて船を離させるんだ」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「そ、それが先刻から蔡瑁らに連絡がつかなくなっています」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「なんじゃと? しかしあれを見てみい。
こっちに向かってくるのは荊州水軍の旗艦、
蔡瑁の船ではないのか?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「……どうやら先手を取られたようだね」


挿絵(By みてみん)
荀攸じゅんゆう
「丞相、まさか――」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「ヒャッホー! 曹操はそこか!」


挿絵(By みてみん)
賈詡かく
「奇襲ですな。
あの様子では彼らだけではなく、
我が軍の懐深くにまで敵に入り込まれていると見ていいでしょう」


挿絵(By みてみん)
許褚きょちょ
「殿! ここは危険だ! 早くこちらへ!」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「お前が先走って叫ばなければ、
もうちょい近寄れたんだがな……」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「これが叫ばずにいられるかっての! イクぜ!!」


~~~赤壁 孫権軍~~~


挿絵(By みてみん)
魯粛ろしゅく
「……ガチで東南の風を吹かせたんですけど。
ぶっちゃけ諸葛亮って何者なんスか」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「今は詮索している暇はない。
望みどおりに東南の風が吹いたのならば、それに乗じるまでだ」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「さあ、曹操様の首を頂戴に伺いましょう」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「野郎ども! 面舵いっぱい! 突撃するぜ!」


挿絵(By みてみん)
周泰しゅうたい
「行くぞ。黄蓋殿を見殺しにするな」


挿絵(By みてみん)
徐盛じょせい
「ワシに続けえええええ!!」


挿絵(By みてみん)
蒋欽しょうきん
「逃げるな曹操でごわす!」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「私も前線で指揮をとる。後方支援は任せた」


挿絵(By みてみん)
魯粛ろしゅく
「ウィッシュ」


~~~赤壁 曹操軍~~~


挿絵(By みてみん)
徐晃じょこう
「ここまで逃げればひとまず安心であろう」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「やれやれだね。後方に残っていた君が来てくれて助かったよ」


挿絵(By みてみん)
徐晃じょこう
「いや、もしものことがあればいち早く丞相のもとへ駆けつけるよう、
荀彧じゅんいく殿に言われていたのだ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「……そうか。さすが荀彧君だ。
彼がいればこんなことにはならなかっただろう。
まったく自分が情けないよ」


挿絵(By みてみん)
荀攸じゅんゆう
「いいえ、丞相が素早く全軍撤退を決断なさったから、
これだけの被害で済んだのです。
主だった将や軍師の無事も確認しています。
戦線はすぐに立て直せるでしょう」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「しかし軍船のほとんどを焼き払われてしまった。
これでは孫権君を攻められないよ。
この戦いは僕の惨敗さ」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「ならば次はどこまで撤退するかだな。荊州を捨てるか?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「それでは孫権君にご奉仕しすぎだよ。
劉備君だって黙っちゃいないだろう。
せめて襄陽は手元に残しておきたい。
徐晃君、すぐに向かってくれたまえ」


挿絵(By みてみん)
徐晃じょこう
「拙者にそのような大役を……心得た!」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「荊州南部の四郡は諦めるしかないかな……。
あとは南郡なんぐんに入れた曹仁君にできるだけ粘ってもらおう。
それより心配なのは東だ。孫権君だけじゃない。
僕の敗北を聞けば揚州の不穏分子が動き出すだろう」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「じ、丞相! ぜ、前方に軍が見えます!」


挿絵(By みてみん)
許褚きょちょ
「何者だ!?」


挿絵(By みてみん)
文聘ぶんぺい
「……劉表の旧臣、文聘だ。
戦いに来たのではない。降伏に来た」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「君が文聘君か。噂に聞いているよ。
よく来てくれた。僕に降伏してくれるんだね」


挿絵(By みてみん)
文聘ぶんぺい
「劉表に誓った忠義を、
劉表亡きいまどこへ向ければよいか悩んだ。
いろいろ考えたが、あなたに勝つ方策はないようだ。
おとなしく降伏したい」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「それは光栄だ。でもいいのかい?
ご覧のとおり僕らは敗残兵で数も少ない。
今なら討ち取れるかもしれないよ」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「じ、丞相……」


挿絵(By みてみん)
文聘ぶんぺい
「……あなたを討ち取って、その後はどうすればいい?
私はそんな器用な人間ではない。
劉表の跡を継いだ劉琮りゅうそうと同じように、私も降るだけだ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「わかった。降伏を受け入れよう。
早速だけど任務についてくれるかい。
江夏こうかの劉備君が襄陽や南郡をうかがわないように
牽制してくれたまえ」


挿絵(By みてみん)
文聘ぶんぺい
「承知した」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「多くの兵や将を失ったが、
代わりに文聘君ら荊州の人士を多く獲得した。
土地は孫権君に、民は劉備君に譲ったが、人材は僕のものだよ。

……でも不思議な戦いだった。長坂といい赤壁といい、
常に何者かの意思が介在しているようだった。
ちょっと詩的な表現だけど、
邪悪な何者かに見つめられているような心地がしていたよ」


挿絵(By みてみん)
徐福じょふく
「……その邪悪な存在に心当たりがあります」


挿絵(By みてみん)
賈詡かく
「ほう。それは何者ですかな」


挿絵(By みてみん)
徐福じょふく
「おそらく俺が劉備に紹介した、"伏龍"諸葛亮孔明……」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「伏龍! あの伏龍が劉備についておるのか!」


挿絵(By みてみん)
徐福じょふく
「……他人に仕えることなどない男だと思っていたが、
たしかに俺もあいつの気配を感じていました。
俺はとんでもない力を劉備に与えてしまったのかもしれない……」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「なるほど、伏龍か。
兵も領土も軍師もない、ないない尽くしだった劉備君が、
ようやく手に入れた新たな力だね。
今回は伏龍にしてやられたのだとしても、
とんとん拍子に統一できるほど、この中原は狭くないということさ。
いい勉強になったよ。
さあ、都に帰ってこれからのことを考えるとしよう」


~~~赤壁 孫権軍~~~


挿絵(By みてみん)
魯粛ろしゅく
「諸葛亮は霧に紛れていつの間にか劉備のもとへ帰ったようスね」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「あの霧は自分が無事に帰るための煙幕でもあったというわけか。
つくづく用意周到な男だ」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「あの人を人とも思わぬ横暴な態度! 霧やら風やらを操る妖かしの術!
生かしておいては必ず大きな災いとなるぞ!」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「わかってますよ。だが逃がしてしまったものはしかたない。
曹操と戦うために我々も必死だったのです」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「まったく……どうなってもワシは知らんぞ!」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「まあまあ、何はともあれ大勝してよ、
あの曹操を追い返したんだ。大戦果じゃねェか。
黄蓋も周瑜も甘寧も闞沢もみんなよくやってくれたけどよ、
オレは殊勲者は魯粛だと思ってるぜ」


挿絵(By みてみん)
魯粛ろしゅく
「光栄ウィッシュ」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「おめェが諸葛亮のヤローをつれてきて
みんなを挑発しなけりゃ、やる気にならなかったもんな。
おめェにはなんかお礼をしねえとな。
とりあえず下馬でも手伝ってやろうか?」


挿絵(By みてみん)
魯粛ろしゅく
「ぶっちゃけこの程度の小さな勝利でお礼なんか不要ッス。
それより殿が皇帝になった暁には、
凱旋する俺や周瑜を立派な馬車で迎えて、
ガチで頭の一つも下げて欲しウィッシュ」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「はっはっはっ! そりゃあいい! 
そん時は土下座でも逆立ちでもなんでもしてやらあ!」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「皇帝……土下座……な、なんという不敬な……
この大馬鹿者たちは……ッッ」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「あれ、張昭がまたのびちまったぜ。
久々の戦場で疲れがたまってたんかな。
誰か医者を呼んでくんな!」


~~~~~~~~~


かくして曹操の中原統一の野望は赤壁の地に潰えた。
諸葛亮は妖かしの霧の彼方に去り、周瑜の眼は南郡に向けられる。
一方、次なる戦いは早くも東方で始まろうとしていた。

次回 〇五〇   城塞都市・合肥
+注意+
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