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アイコン三国志 作者:小金沢

第四章 官渡の戦い

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42/126

〇四一   北へ

~~~并州へいしゅう~~~


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「逆賊め!
この馬超の正義に熱く燃える槍を受け止められると思ったか!」


挿絵(By みてみん)
郭援かくえん
「ぐおわああああっ!!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「若、お見事だ」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「フン、呂布の再来などと言うから
どれほどの物か楽しみにしていたが、ただの雑魚だったぞ。
これでは呂布も噂ほどではないな!」


挿絵(By みてみん)
杜畿とき
(郭援が噂ほどではなかっただけだろうな)


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「この勢いをかって袁煕、袁尚の首を挙げる! ついて参れ!」


挿絵(By みてみん)
龐徳ほうとく
「いいえ若、それは曹操の役目だ。
我らの働きは郭援を討つだけで十分。そうだろう杜畿殿?」


挿絵(By みてみん)
杜畿とき
「んー。まあ、そりゃそうだな」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「なんと歯がゆいことだ!
中途半端にしか戦えず馬超の槍は哭いているぞ!」


挿絵(By みてみん)
賈逵かき
「物足りないならあちらで敵の残党に味方が囲まれています。
それを救出しましょう」


挿絵(By みてみん)
馬超ばちょう
「わかった! うおおおおっ! 馬超がいま行くぞ!」


挿絵(By みてみん)
張既ちょうき
(あれだけ出陣を渋っていたのに、
それにしてもこの男ノリノリですね。
――馬騰が退き、馬超の代になったいま、
彼が我々に従い続けるのか不安ですね……)


~~~青州せいしゅう~~~


挿絵(By みてみん)
袁譚えんたん
「ま、待て! 見逃してくれれば褒美を与えるぞ。
悪い話じゃないだろう? なあ?」


挿絵(By みてみん)
曹純そうじゅん
「見苦しいなアンタ。死んどけよ」


挿絵(By みてみん)
袁譚えんたん
「ぎゃあああああっ!!!」


挿絵(By みてみん)
曹純そうじゅん
「袁譚は討ち取った! 命が惜しい奴は降伏しな!」


挿絵(By みてみん)
郭図かくと
「こ、こ、こ、降伏しよう!
私は今すぐ降伏するぞ! 降伏するとも!」


挿絵(By みてみん)
曹純そうじゅん
「アンタはもっと見苦しいな。
殺してえとこだけど、降伏する奴を斬るのも――」


挿絵(By みてみん)
郭図かくと
「うぎぇぇぇぇぇっ!!」


挿絵(By みてみん)
臧覇ぞうは
「なんと見苦しい男だ! 地獄に落ちるがいい!!」


挿絵(By みてみん)
曹純そうじゅん
「………………」


挿絵(By みてみん)
臧覇ぞうは
「ん? どうかしたか曹純?」


挿絵(By みてみん)
曹純そうじゅん
「いや。手間が省けた」


~~~幽州ゆうしゅう~~~


挿絵(By みてみん)
袁煕えんき
「………………」


挿絵(By みてみん)
袁尚えんしょう
「兄ちゃんしっかりしろ!
郭援も袁譚のバカ兄貴も殺されて、曹操軍が迫ってるんだ!」


挿絵(By みてみん)
袁煕えんき
「わ、私の、必勝の策が、あっさりと……」


挿絵(By みてみん)
袁尚えんしょう
「兄ちゃん! 次の策は!?
…………なんもないの!? マジで!?」


挿絵(By みてみん)
焦触しょうしょく
「……どうやらここらが潮時だな。
俺は曹操に降るから、後はよろしく」


挿絵(By みてみん)
袁尚えんしょう
「な!? こ、この薄情者め!
お前なんかこっちから願い下げだバーカバーカ!
ええい、呂曠りょこう! 呂翔りょしょう
兄ちゃんをつれてオレたちも逃げるぞ!」


挿絵(By みてみん)
袁煕えんき
「………………」


挿絵(By みてみん)
袁尚えんしょう
「…………あ、あれ? 呂曠? 呂翔?
ま、まさかあいつらも寝返ったのか!?
くそう! どうすりゃいいんだ!?」


挿絵(By みてみん)
沮鵠そこく
「閣下! 曹操軍はもはや目の前です。
一刻も早くお逃げください!」


挿絵(By みてみん)
袁尚えんしょう
「に、逃げたいのはやまやまだけど、
兄ちゃんがこんな状態でどうすりゃ――」」


挿絵(By みてみん)
袁煕えんき
「………………蹋頓とうとん


挿絵(By みてみん)
袁尚えんしょう
「え?」


挿絵(By みてみん)
袁煕えんき
「蹋頓。キット、守ッテ、クレル」


挿絵(By みてみん)
袁尚えんしょう
烏丸うがん族の王の蹋頓を頼ればいいんだね?
わかった、蹋頓の所へ逃げよう。
まさか曹操も万里の長城を越えてまで追ってこないもんね……」


挿絵(By みてみん)
許攸きょゆう
「ヒャッハー! 袁尚ちゃん、年貢の納め時でちゅよーwwwww」


挿絵(By みてみん)
沮鵠そこく
「許攸か! 裏切り者がよくもおめおめと顔を出せたものだな!」


挿絵(By みてみん)
許攸きょゆう
「裏切り者?なにそれおいしい?
そーら、ぼくがかんがえた超人たちよ! 
袁尚たちを皆殺しにしちゃいなちゃ~~いwwwww」


挿絵(By みてみん)
沮鵠そこく
「………………」


挿絵(By みてみん)
許攸きょゆう
「………………あ、あれ?
み、みんなどこに行ったのかな? かな?」


挿絵(By みてみん)
沮鵠そこく
「……どうやらその性格のおかげで、
曹操軍の中でも嫌われていたようだな。
年貢の納め時はお前のほうだ!」


挿絵(By みてみん)
許攸きょゆう
「なん……だ……と? ち、ちょっと待って! タンマ!
ちょwwww 痛いwwww
死ぬこれwwwww てか死んだwwwww」


挿絵(By みてみん)
許褚きょちょ
「七三バカの始末は済んだか?
ご苦労だったな。お礼に皆殺しにしてやろう!」


挿絵(By みてみん)
沮鵠そこく
「袁尚閣下! ここは俺が引き受けます!」


挿絵(By みてみん)
許褚きょちょ
「……お前の閣下とやらはとうの昔に逃げ去ったようだぞ」


挿絵(By みてみん)
沮鵠そこく
「そうか。それはよかった。
ならば後は、父と同じように主君に殉じるだけだ。
沮授そじゅが一子・沮鵠が参る!」


挿絵(By みてみん)
許褚きょちょ
「あの沮授の子か! いい覚悟だ! 来い!」


~~~幽州~~~


挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)
呂曠りょこう       呂翔りょしょう
『袁煕、袁尚は万里の長城を越え、
烏丸うがん族のもとへ落ち延びたようです』


挿絵(By みてみん)
焦触しょうしょく
「袁熙は烏丸王の蹋頓とは以前から交流を結んでいた。
追い詰められてなりふり構わず異民族を頼ったのだろう」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「長城の向こう側か。
それはまた随分と遠くまで逃げたものだね」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「ひっひっひっ。それだけ殿が怖いんじゃろう」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「もう中原へ戻ってくることはないだろう。
我々も引き上げようぞ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「うん? 王朗君は一足先に帰りたいのかい?
それじゃあ誰かに送らせてあげるよ」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「え? と、殿は引き上げないのですか?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「もちろん。ここまで来て袁煕君たちの顔も見ないで帰れるもんか。
それに烏丸族にも挨拶しておかないとね」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「し、秦の始皇帝でさえ烏丸に備え万里の長城を築き、
それより北へと行こうとはしなかった……。
そ、それなのに殿は……」


挿絵(By みてみん)
賈詡かく
「簡単な話だ。我が殿は始皇帝よりも上だということだ。
万里の長城など越えるべき壁にすぎぬ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「さすが、始皇帝より上らしい僕を殺そうとした
賈詡君は良いことを言うね」


挿絵(By みてみん)
賈詡かく
「ぐ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「おっ。聞いたか諸君? 賈詡君が絶句したよ。これは珍しい。
これだけでもはるばる北までやって来た甲斐があったね」


挿絵(By みてみん)
荀攸じゅんゆう
「烏丸族と戦うならば、情報が必要です。
黒山賊が交流を結んでいたはずですから、つれて参りましょう」


挿絵(By みてみん)
張燕ちょうえん
「――ああ、蹋頓なら知っている。敵に回したら手強い相手だ」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「勝算はあるのか?」


挿絵(By みてみん)
張燕ちょうえん
「奴らは険しい山岳地帯を、まるで平地のように騎馬で疾走できる。
まずは足止めすることが肝心だ。その役目は我々に任せてもらおう。
なに、交流があったといっても経済的な理由でだ。
遠慮をするつもりはない」


挿絵(By みてみん)
左髭丈八さしじょうはち
「あの蹋頓が相手とはヒゲが鳴るわ!」


挿絵(By みてみん)
張雷公ちょうらいこう
「ガオォォォーーーーン!!」


挿絵(By みてみん)
張繍ちょうしゅう
「み、耳が……」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「ふむ、頼もしい限りだね。
それじゃあ先陣は張燕君たちにお願いするとしよう」


~~~烏丸~~~


挿絵(By みてみん)
蹋頓とうとん
「むうううん!!」


挿絵(By みてみん)
左髭丈八さしじょうはち
「ぐああああっ!」


挿絵(By みてみん)
蹋頓とうとん
「うおおりゃああああ!!」


挿絵(By みてみん)
張雷公ちょうらいこう
「うおおおおおおぉぉぉん!」


挿絵(By みてみん)
張燕ちょうえん
「な、なんという男だ!
あ、あの二人をあっさり片付けてしまうとは……ッ!?」


挿絵(By みてみん)
蹋頓とうとん
「次はお前か!」


挿絵(By みてみん)
張燕ちょうえん
「黒山の同志を残し、俺までここで死ぬわけにはいかん!
退け! 退けーい!」


挿絵(By みてみん)
蹋頓とうとん
「逃がすかあッ!!」


挿絵(By みてみん)
??
「待てい!」


挿絵(By みてみん)
蹋頓とうとん
「!?」


挿絵(By みてみん)
??
「文化の光届かぬ北の果て、恐れを知らぬ男あり。
人それを野蛮と言う」


挿絵(By みてみん)
蹋頓とうとん
「何者だてめえ!」


挿絵(By みてみん)
張郃ちょうこう
「お前たちに名乗る名はない! サンライズボンバー!」


挿絵(By みてみん)
高覧こうらん
「一人で突っ走るな張郃!」


挿絵(By みてみん)
蹋頓とうとん
「俺様の鉄鎖を喰らえ仮面野郎!」


挿絵(By みてみん)
張郃ちょうこう
「ぐっ! なんという重い一撃だ……」


挿絵(By みてみん)
高覧こうらん
「敵はそいつだけではない、囲まれるぞ!」


挿絵(By みてみん)
蹋頓とうとん
「もう遅い。包囲は成ったぞ。者ども掛かれ!」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「張郃君たちを殺させはしないよ。合図を送りたまえ」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「突撃の合図だ! ヤローども蹋頓の背後を襲え!」


挿絵(By みてみん)
蹋頓とうとん
「ほほう。包囲されたのは俺様の方だったか。
ならばこれ以上の戦いは無用。退くぞ!」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「チッ! マジで丘をものともせずに騎馬で駆け上がりやがる。
とても追いつけねーぞ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「話には聞いていたが、見ると聞くとでは大違いだね。
あれでは張遼君でも追いつけはしない。
しかたない、策を練り直して――」


挿絵(By みてみん)
荀攸じゅんゆう
「殿! あ、あれを!」


挿絵(By みてみん)
郭嘉かくか
「…………」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「あ、あいつ蹋頓の真ん前に立ちふさがって何をする気だ?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「やめるんだ郭嘉君!」


挿絵(By みてみん)
蹋頓とうとん
「なんだこのヒョロヒョロした男は? 死にたいのか!」


挿絵(By みてみん)
郭嘉かくか
「…………」


挿絵(By みてみん)
蹋頓とうとん
「こ、こいつ丸腰のくせに全く動じていない。何か罠があるのか?
ええい、矢を放て!」


挿絵(By みてみん)
郭嘉かくか
「…………」


挿絵(By みてみん)
蹋頓とうとん
(! 矢を何発か浴びても一歩も動かんだと?
こ、こいつは人か魔か……。
このまま正面から突っ込んでもいいものか……)


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「止まったな」


挿絵(By みてみん)
蹋頓とうとん
「ぐわあっ!? こ、この一瞬の迷いが……命取りか……」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「郭嘉のダンナ!
た、たしかに一瞬でも動きを止めてくれりゃ、
討ち取ってみせるって言ったけどよ。
こんな無茶するとは思ってなかったぜ!」


挿絵(By みてみん)
郭嘉かくか
「御苦労……」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「お、おいしっかりしろダンナ!」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「郭嘉君……。早く手当てをするんだ!」


挿絵(By みてみん)
賈詡かく
「む。曹操殿、周囲を見られよ。これは……」


挿絵(By みてみん)
李典りてん
「いつの間にか包囲されていますね、はい」


挿絵(By みてみん)
曹洪そうこう
「馬鹿な! 蹋頓の部下は逃げ散ったのにどこからこんな大軍が……」


挿絵(By みてみん)
張燕ちょうえん
「これは烏丸の軍だけじゃねえ! 北方の異民族の連合軍だ!
こんな混成軍を率いられるヤツといえば、一人しかいねえ……」


挿絵(By みてみん)
閻柔えんじゅう
「ご名答。張燕。久しぶり」


挿絵(By みてみん)
張燕ちょうえん
「やはりお前か!
曹操、この男は閻柔といい、
各地の異民族と深いつながりを持つ男だ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「君が閻柔君か。名前は常々うかがっているよ。
こんな物騒な大軍をつれていったい何の用かな」


挿絵(By みてみん)
閻柔えんじゅう
「蹋頓。遺言。預かった。代わり。伝える」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「蹋頓の遺言だと? なんだそれは。さっさとしゃべれ!」


挿絵(By みてみん)
閻柔えんじゅう
「蹋頓。自分の死。予測。だから。
自分の首。手土産。曹操。帰れ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「ふむ。烏丸の王である自分の首を差し出すから、
それで満足して引き上げろと言うんだね。
しかし僕たちは袁煕君たちを追って、はるばる訪ねてきたんだ。
蹋頓君の首をもらっただけでは帰れないよ」


挿絵(By みてみん)
閻柔えんじゅう
「袁煕。袁尚。いない。追い返した。
公孫康こうそんこう。逃げた」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「袁煕たちは公孫康のもとへと逃げたのじゃな?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「そうか。それならこれ以上の戦いは無意味だね」


挿絵(By みてみん)
閻柔えんじゅう
「帰れ。早く。さもなくば。包囲。殲滅」


挿絵(By みてみん)
曹仁そうじん
「お前、俺たちを脅すつもりか!?」


挿絵(By みてみん)
閻柔えんじゅう
「逆。包囲。される。我々。
殲滅。される。我々。曹操。伏兵。用意」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「そう、よく気づいたね。
すでに君たちは僕の伏兵に包囲されている。
帰れ、さもなくば我々を殺しそれを手土産に帰れ、というわけか。
気に入ったよ閻柔君。
君のその覚悟に免じて、ここは兵を引くとしよう」


挿絵(By みてみん)
閻柔えんじゅう
「感謝」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「ただし、君たちが今後もし、
僕やその眷属に弓引くことがあれば――。
僕は何度でもここに舞い戻ってくる。
それだけは覚えておいてくれたまえ」


挿絵(By みてみん)
閻柔えんじゅう
「承知。曹操。恐ろしい。知っている。我々。逆らわない」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「なに、敵対さえしなければ、よき隣人でありたいと思っているよ。
それじゃあ閻柔君、他の諸君にもよろしく頼む」


挿絵(By みてみん)
閻柔えんじゅう
「さらば」


挿絵(By みてみん)
荀攸じゅんゆう
「――引き上げましたな。
まったく、一時はどうなることかと思いました」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「そ、それにしても、いつの間に伏兵を用意していたのですか。
さすがは殿だ!」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「伏兵だって?
そんなものが用意してあれば、郭嘉君を負傷させたものか!」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「へ?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「閻柔君は僕を買いかぶってくれたのさ。
いもしない伏兵を恐れて兵を引いたのか、
それとも、僕たちを殺して報復を受けることを恐れ、
伏兵が怖いという逃げる口実を作ったのか、
そこまではわからないけどね」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「郭嘉は都に帰す手はずを整えた。我々は袁煕を追おう」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「いや、それには及ばない。公孫康君は目端の利く人だからね。
きっと、僕たちの代わりに手を下してくれることだろう」


挿絵(By みてみん)
夏侯惇かこうとん
「どういうことだそりゃ?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「僕たちも郭嘉君といっしょに都に帰ろう、という話さ。
諸君、長旅ご苦労さん」


挿絵(By みてみん)
夏侯惇かこうとん
「?? お、おう……」


~~~遼東りょうとう~~~


挿絵(By みてみん)
袁尚えんしょう
「お、おいお前! 公孫康!
俺たちをこんな目にあわせてどうなるかわかってるのか?」


挿絵(By みてみん)
公孫康こうそんこう
「どうなるのですか?」


挿絵(By みてみん)
袁尚えんしょう
「お、俺は名族の後継者だぞ! パパの、袁紹の息子なんだぞ!」


挿絵(By みてみん)
公孫康こうそんこう
「ははは。それはすごい。
ではではそういうわけで、そろそろ覚悟はよろしいでしょうか?」


挿絵(By みてみん)
袁尚えんしょう
「や、やめろ! 殺してやる! 殺してやるぞ!」


挿絵(By みてみん)
公孫康こうそんこう
「どうぞどうぞ。両手両足縛られたその状態から
殺せるのでしたら、どうぞご自由に」


挿絵(By みてみん)
袁尚えんしょう
「くそ! 殺せ! 誰かこいつを殺せ!
兄ちゃん! 助けて兄ちゃん!」


挿絵(By みてみん)
袁煕えんき
「アハハハハハハハハ。アハハハハハハハハ」


挿絵(By みてみん)
公孫康こうそんこう
「ははは。兄上は一足先に旅立たれたようですな」


挿絵(By みてみん)
公孫度こうそんど
(息子め、あの鬼畜っぷりはいったい誰に似たのやら……)


挿絵(By みてみん)
袁尚えんしょう
「わーんわーん。怖いよ! やだよ!
この部屋寒いよ! 毛布が欲しいよ!」


挿絵(By みてみん)
公孫康こうそんこう
「よしよし。首と胴が離れたらもう寒くありませんからね」


挿絵(By みてみん)
公孫度こうそんど
(それにしても晩飯はまだだろうか……)


~~~許都きょと~~~


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「…………」


挿絵(By みてみん)
荀攸じゅんゆう
「…………」


挿絵(By みてみん)
賈詡かく
「…………」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「諸君はみな、僕と同年輩か、それとも年上だ。
そんななかで郭嘉は、飛び抜けて若かった」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「…………」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「品行方正な男ではなかった。人の模範になる男でもなかった。
でも、とても頼りになる男だった。
中華統一がなった暁には、僕は郭嘉に後を任せるつもりだったんだ」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「…………」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「郭嘉は不治の病に侵され、
烏丸の討伐が最期の戦いになるとわかっていた。
だから一命を賭して、蹋頓とうとんを討ってくれたんだ。
無理をしなければ、戦いには出られなくても
もう少し長生きできたものを、僕のために命を投げ出してくれたのさ。
そんな彼のことを忘れられるものか!」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「…………」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「惜しいよ。痛ましいよ。悲しいよ、郭嘉……。
また忘れられない人が増えてしまった。
でも僕らは前に進まなくてはいけない。
去っていったみんなも、それを望んでいるだろうからね」


挿絵(By みてみん)
夏侯惇かこうとん
「おう、その通りだ!」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「では報告を聞こう。
公孫康こうそんこう君は読み通り、
袁煕えんき君たちの首を送ってきてくれたね」


挿絵(By みてみん)
董昭とうしょう
「はい。恭順の証として、大量の貢物とともに
袁煕、袁尚えんしょう兄弟の首が届けられました」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「公孫康君の目の黒いうちは、僕らに逆らおうとは考えないだろう。
じゃあ次に、孫策君が急死して跡を継いだ孫権君はどうしているかな」


挿絵(By みてみん)
張紘ちょうこう
江夏こうか黄祖こうそを攻めているぞ。
父と兄の仇だからはりきっておるぞ」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「それは好機じゃ。手薄になった孫権の本拠地を襲ってしまおう」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「たったいま郭嘉の葬儀が終わったばかりなのに、
他人の不幸に乗じるなんてさすが程昱君だね」


挿絵(By みてみん)
張紘ちょうこう
「それはあまり賢い選択ではないぞ。
孫権にはむしろ恩を売るべきだぞ」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「フン、孫権の間諜の言葉に耳を貸す必要はないぞ。
程昱殿の言うとおり、この隙を見逃す手はない!」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「あはは。そう結論を急がれるな。
我々は――といっても私は従軍してませんが。
あはは――大規模な遠征を終えたばかりです。
今すぐに長江を攻め下る余裕はありませんよ」


挿絵(By みてみん)
韓浩かんこう
「ああ。兵糧も十分じゃない。
袁紹との戦いで、烏巣うそうを焼き払わなければ
飢え死にしていたのを忘れたか」


挿絵(By みてみん)
李典りてん
「それに大河を渡るなら軍船も必要です、はい。
もちろん水軍もですね、はい」


挿絵(By みてみん)
劉曄りゅうよう
「大きな溜め池を作り、そこで軍船の建造と水軍の鍛錬をしている。
もうすこし時間が欲しいところだな」


挿絵(By みてみん)
賈詡かく
「それ以前に、孫権の背後を襲うには
揚州ようしゅうを渡らなくてはいかぬ。
袁術えんじゅつの残党が跋扈していたはずだが、
今はどうなっているのかな」


挿絵(By みてみん)
荀攸じゅんゆう
「揚州の平定に向かわせた劉馥りゅうふく殿は、
空き城に目をつけ、そこを拠点にしようとしています。
次第に人が集まり始め、袁術の残党たちも
警戒して何度か攻め寄せたのですが、
そのたびに撃退されて、今では劉馥殿に従う素振りを見せているとか」


挿絵(By みてみん)
満寵まんちょう
「あ、あれっぽっちの兵で残党を撃退しているのか」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「それなら下手に手出しはせず、
劉馥君に任せきりにしたほうが良さそうだね」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「ならばどこを攻めればいい? 漢中かんちゅうか?
それとも北に戻って公孫康を討つか?」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「あはは。わざわざ遠出してまで
敵を作りに行くことはないでしょう。そんなに焦らないでください」


挿絵(By みてみん)
曹仁そうじん
「荀彧、さっきからお前は遠征に反対してばかりだな!
なにか他に考えがあるのか!」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「それはもちろんです。
私はみなさんと違って都に残っていましたから、
策を練る時間はたくさんありましたからね。
我が軍のとるべき最良の道をお教えしてあげますよ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「それは大きく出たね。軍師様の案をうかがおうじゃないか」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「はい! 我が軍は――荊州けいしゅうを攻めましょう!」


挿絵(By みてみん)
曹洪そうこう
「荊州!」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「荊州はいいですよ。船があります。操舵に長けた水軍もいます。
これをそっくりいただいてしまえば、
わざわざ我々が新しく水軍をこしらえる必要はありません。
戦に慣れていない彼らは、
大軍で攻め寄せれば、すぐに降伏するでしょう。
荊州の人馬と兵糧をそっくりいただいてしまい、
それを使って孫権を攻めるのです」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「なるほど。自前の水軍を持つ荊州をおさえれば、
孫権君とも互角以上に戦えるだろうね。
遠征続きで疲れている兵士たちも温存できるし、いいことずくめだ。
それになんといっても、荊州は人材の宝庫だ。
いずれは荊州を手にしたいと僕もかねがね思っていたよ」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「それでは殿!」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「うん、僕たちは荊州を攻める。
そのための準備を整えてくれたまえ」


~~~~~~~~~


かくして名族の血脈は北の大地で果てた。
北方の統一を成し遂げた曹操の次なる目標は荊州。
荊州の命運は? そして日の出の勢いの曹操を止める者は現れるのか?

次回 〇四二   髀肉の嘆
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