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アイコン三国志 作者:小金沢

第四章 官渡の戦い

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〇三七   小覇王の死

~~~~~~


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
官渡かんとの戦いで袁紹を破った曹操は、
追撃をかけずにそのまま都へと引き上げたそうじゃ」


挿絵(By みてみん)
張紘ちょうこう
「兵糧を失った袁紹軍は大半の兵が脱走したり、
曹操に降伏したそうだぞ。
袁紹は敗戦の失意から立ち直れず、病の床についたと聞くぞ。
もう曹操は手を下す必要はないぞ。
待っていれば袁紹軍は勝手に瓦解するぞ」


挿絵(By みてみん)
虞翻ぐほん
「しかし曹操にしては消極的な作戦でゲス。
戦勝の勢いをかって、一息に押し潰せばいいのに」


挿絵(By みてみん)
華歆かきん
「それは逆だ。
曹操が攻め寄せれば、追い詰められた袁紹軍は結託して抵抗する。
曹操はそれを恐れているに違いない」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「フッ。曹操は袁紹が死ぬのを待っているのだろう。
彼らは幼なじみだという。
曹操は我々ほど袁紹を甘く見ていないのだ。
坐していれば袁紹が死ぬのなら、それに越したことはない」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「じゃが袁譚えんたん袁煕えんきの大軍はそっくり残っておる。
彼奴らはそれぞれ東西の戦線を担当していたから、兵糧も失っていない。
それを放置したまま引き上げるとは、
まったく曹操は何を考えているのやら――」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「聞いてくりゃいいじゃねェか」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「は?」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「ここでぎゃーぎゃー議論してるヒマがあったらよ、
誰か都に行って曹操に聞いてくりゃいいじゃねェかっての」


挿絵(By みてみん)
張紘ちょうこう
「それはごもっともだぞ。
直接聞くのは無理でも、都なら情報も集まるぞ。
名目は孫策殿に官位を与えてくれと、
献帝陛下にお願いすることでいいぞ。どれ、私が行ってくるぞ」


挿絵(By みてみん)
華歆かきん
「それなら私もおつれください! 宮中に上がるのが夢でした」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「おう、行ってこい」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「都とはいえ敵地に乗り込むのを、
散歩に行くかのように言いおって……。
孫策殿もお前たちもまったく!」


~~~呉郡ごぐん~~~


挿絵(By みてみん)
許貢きょこう
「皆の者、干ばつに苦しむのは今日までだ!
呉郡太守の私が于吉大仙人を呼んできた。
于吉様が雨を降らしてくださるぞ!」


挿絵(By みてみん)
于吉うきつ
「アブラカタブラピンポンパンノポンキッキ……ビビデバビデブー!」


挿絵(By みてみん)
許貢きょこう
「見よ! 雨だ! 雨が降ってきたぞ!
于吉様の力を思い知ったか!
さあ、于吉様にお礼のお布施をするのだ!
はっはっはっはっはっ!」


挿絵(By みてみん)
朱治しゅち
「そこまでだ! お前たち、淫祀邪教を広めたかどで逮捕する」


挿絵(By みてみん)
許貢きょこう
「な、なんと? これは言われのないことを。
于吉様は善意から雨を降らし、
人々は善意からお布施をしているだけですよ?
それに人々のためになることをしているのに、
淫祀邪教とは言いがかりです!」


挿絵(By みてみん)
朱治しゅち
「江東ではお前たちの信者がはびこり、
于吉にお布施は払っても税金は払わない者が急増している。
お前たちは治安を乱しているのだ」


挿絵(By みてみん)
許貢きょこう
「それはいけませんなあ。
信者の方々には私から納税もするよう言い含めておきましょう」


挿絵(By みてみん)
朱治しゅち
「信者にはお布施と納税を要求し、自分たちは私腹を肥やすのか。
言い訳はたくさんだ。お布施は没収し、教団には解散してもらう」


挿絵(By みてみん)
許貢きょこう
「こ、これは権力の横暴だ!
信者の皆さん、こんなことが許されるのですか!?」


挿絵(By みてみん)
朱治しゅち
「……我々を取り囲んでなんのつもりだ?」


挿絵(By みてみん)
許貢きょこう
「いいえ、何もいたしません。ですが于吉様の仙術が、
たとえばあなたの身に災いを起こすかも知れませんなあ」


挿絵(By みてみん)
朱治しゅち
「……我々を皆殺しにして、それを于吉の呪いによるものと偽るのだな」


挿絵(By みてみん)
于吉うきつ
「スーイスーイスーダララ……ギッチョンチョンノパーイパイ」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「手ぬりィよ朱治」


挿絵(By みてみん)
朱治しゅち
「こ、これは孫策様。御自ら出てこられるとは」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「仙人とやらがいるなら、ぜひ見てみてェと思ってな。
でもがっかりだぜ。こんな真っ黒な曇り空じゃ、
于吉がなんもしなくたって雨くらい降らァな。
朱治を呪い殺すのかと思ったら、
信者どもは武器を片手に忍び寄ってるしよ」


挿絵(By みてみん)
許貢きょこう
「そ、孫策様が出てきたのなら話は早い。
今すぐ兵を引き上げてください。
さもなくば、孫策様にも于吉仙人の呪いが――」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「ふーん」


挿絵(By みてみん)
許貢きょこう
「がああああっ!?」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「ほれ于吉、仙術とやらでこの許貢の生首を、
胴体に元通りくっつけてみろや。
太守の任を忘れて、民をいじめて
金儲けすることしか考えてねェバカの首をよ」


挿絵(By みてみん)
于吉うきつ
「オ……オッペケペッポーペッポッポー……アジャラカモクレン」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「てめェらが劉繇りゅうようんとこにいた
笮融さくゆうの指示で動いてんのは知ってんだよ。
笮融の居場所を吐け。そしたら見逃してやんよ」


挿絵(By みてみん)
于吉うきつ
「ナ……ナンジャラモンジャラ……ホニャラカピー!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「うるせェよ」


挿絵(By みてみん)
于吉うきつ
「ぎゃあああああ!!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「見たかおめェら! こいつは仙人でもなんでもねェよ。
オレの手刀で死んじまう、ただのジジイだぜ。
おめェらは騙されてたんだよ!」


挿絵(By みてみん)
朱治しゅち
「そ……孫策様、すこし強引ではありませんか?」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「こうやってさっさと片付けちまえば、
笮融のヤローはあわてて逃げ出す。
あわてればどこに隠れてようと尻尾を出すだろうよ」


挿絵(By みてみん)
朱治しゅち
「そ、そうですな。ではすぐに笮融を探す手配を――」


挿絵(By みてみん)
呉沌ごとん
(おのれ孫策……許貢様と于吉様の仇!)


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「ぐうっ!?」


挿絵(By みてみん)
朱治しゅち
「孫策様!?」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「矢でオレを狙ってやがったか……。
やべえ、毒矢だぜこいつは……」


挿絵(By みてみん)
朱治しゅち
「げ、下手人を探せ! い、いやそれより先に孫策様の手当てだ!」


~~~呉~~~


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「だから軽挙妄動を慎めとワシは常日頃から言っておったのだ!
なぜ孫策殿が自ら出ていったのだ!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「そう怒鳴るなよ……背中の傷口に響くだろうが……。
オレは笮融に殺されかけてんだ。
そん時は影武者が代わりに死んじまった。
だからオレ自ら仕返ししなきゃ気が済まなくてよォ……」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「たかが影武者の仇討ちに、主君が乗り出すとは……。まったく!」


挿絵(By みてみん)
董襲とうしゅう
「孫策様を撃った者は捕らえました。
拷問して笮融の潜伏場所も吐かせましたので、
じきに笮融も捕まるでしょう」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「そうか。オレのしたことが無駄にならなくてよかったぜ……。
ところでおい、周瑜はいるか?」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「ここだ。孫策、お前まさか目が……」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「いや、見えてるぜ。
ただよォ、おめェらの顔が全員、于吉に見えるんだ」


挿絵(By みてみん)
呂範りょはん
「孫策……!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「ははっ。やべえな……アイツ、本当に妖術師だったんじゃねェか?
呪いだけはマジで使えたんかもな……」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「そ、孫策しっかりしろ!
いま名医の華佗かだを探しているんだ」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「おっ。おめェがあわててるとこは初めて見るな。
ケガして良かったぜ。
そうだ、華佗はいいから孫権のヤツを呼んでくれ。すぐにだ」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「兄貴、オレならここにいんよ」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「ああ、そのちょっと若い于吉がおめェだったか。
おめェ、まだ19歳だったよな。
オレが袁術に兵を借りて、決起したのが20歳んときだ。
それよりゃ1つ若いけど、
おめェはオレよりしっかりしてるから大丈夫だ」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「なんだそりゃ。ひょっとして遺言なのか兄貴?」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「おう、遺言だ。ははっ。やっぱりおめェはすげェや。
オレが死ぬってのにぜんぜん動じてねェな。驚いてねェのか?」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「オヤジがいきなり死んだ時には驚いたけどよ。
兄貴は矢で撃たれてるし、こうして寝込んでるじゃねェか。
ああ、やっぱりって感じだな」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「聞いたかみんな? 権はたいした大物だぜ!
これなら心配いらねェや。オレよりもっといい当主になれそうだ……」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「そ、孫策殿! 何を弱気なことを!
孫策殿には教えなければならぬことが、
まだ700は残っておるのだぞ!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「700もあんのか。そりゃだりィな……。
そいつぁ、代わりに権に教えてくんな」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「えー。マジかよ兄貴」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「そいつも含めておめェには苦労をかけるな……。
長生きしろよ、権。オヤジやオレを見てわかったろ?
早死にされると、こんなに迷惑なんだ」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「本当だよ。勘弁してくれよな」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「周瑜、張昭。
後はおめェらが中心になって、まあなんとかしてくれや。
700の続きは、あの世で聞くからよ。先に待ってんぜ張昭……」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「孫策殿……。必ずや、必ずや!」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「私の命に替えても孫家を守ってみせる!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「頼もしいこった。
きっとオヤジも、こんな気持ちで死んだんだろうな……。
なーんも、心配いらねェや……」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「旦那様!」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「艦長!」


挿絵(By みてみん)
黄蓋こうがい
「殿…………」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「…………馬鹿野郎が」


挿絵(By みてみん)
孫権そんけん
「兄貴、任されたぜ。まあ、なんとかして見せるよ。
……だりィけどな」


~~~江夏こうか~~~


挿絵(By みてみん)
笮融さくゆう
「……どうにか振り切ったか。集合場所はここだな」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「あんたが笮融か? ご苦労だったな」


挿絵(By みてみん)
笮融さくゆう
「……孫家の兵に追われている。安全な隠れ家を提供してくれ」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「わかった。一番安全な所につれていってやれ、甘寧」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「ウェ~イ。あの世行きだー!!」


挿絵(By みてみん)
笮融さくゆう
「!? …………ば、馬鹿な……」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「さすが劉表りゅうひょう様だな。
うさんくさい教祖と組んで大丈夫かと思ったが、
まさか孫策を殺してくれるとは。
利用価値がなくなったら、あっさり笮融も
殺しちまうってのもさすがだ」


挿絵(By みてみん)
黄祖こうそ
「………………」


挿絵(By みてみん)
甘寧かんねい
「でも孫策が待ってるあの世じゃさー、
一番安全とは言えなくね?」


挿絵(By みてみん)
黄祖こうそ
「黙れ。帰るぞ」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「はい。
笮融の首は国境線で捕らえたと言って、孫家に送っておきます。
これで孫家の目をごまかせればいいがな……」


~~~~~~~~~


かくして孫策もまた父・孫堅と同じく短い生涯を閉じた。
後を継いだ孫権は弱冠19歳。
孫家の行く末に待つのは闇か、それとも光か?
新当主・孫権は早くも決断を迫られていた。

次回  〇三八   孫権の船出
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