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アイコン三国志 作者:小金沢

第四章 官渡の戦い

34/125

〇三三   皇帝への道

~~~汝南じょなん~~~


挿絵(By みてみん)
劉安りゅうあん
「それでは私は肉の下ごしらえをしてきます。
ごゆっくりどうぞ……」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「劉安さん、いつも家を貸してもらってすまんのう」


挿絵(By みてみん)
劉安りゅうあん
「私も曹操と戦うお手伝いがしたいのです。
遠慮はなさらずに……」


挿絵(By みてみん)
劉辟りゅうへき
「曹操め、袁紹と我々に挟み撃ちされてはたまらんと、
増援を送ってきたようだに」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「袁紹よりは楽に潰せるアタイたちを、
先に潰そうってんでしょ。的確な判断ね」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「それにしても、こうして劉辟さんと一緒に戦ってると、
わしらまで黄巾賊になった気がするのう」


挿絵(By みてみん)
劉辟りゅうへき
「あんたは黄巾党に入ったんじゃなかったのか?
俺はそのつもりだったんだがに」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「わしは恐れ多くも皇族の末裔じゃぞ!
黄巾賊になんか入るものか」


挿絵(By みてみん)
劉辟りゅうへき
献帝けんてい陛下と同じ劉姓ってだけで
皇族になれるなら、俺も皇族だに」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ははは。違いないのう。
それにしても劉辟さんはつくづく変わった人じゃな。
皇族なのに黄巾賊に入るわ、
曹さんとこにいる青州黄巾軍にも加わらんわ。
袁紹さんに味方せず、青州黄巾軍に加わってりゃ
楽できたんじゃないんか?」


挿絵(By みてみん)
劉辟りゅうへき
「そりゃそうだに。たとえばあんたらをふん縛って
曹操のもとにつれてけば、莫大な褒美がもらえるだに」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「あっはっはっはっはっ。…………冗談じゃろ?」


挿絵(By みてみん)
劉辟りゅうへき
「ギリギリで冗談だがに。
俺は劉姓だからってだけじゃなく、陛下を守るために戦ってるだに。
黄巾賊に入って世直ししようとしたのも、
曹操に逆らってるのもそのためだに。
だから、俺と同じく陛下のために戦ってるあんたは殺さないし、
青州黄巾軍にも加わらないだに」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「ふーん。意外と熱い男なのね、あんた」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「惚れたのか張さん」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「悪いけどアタイ好みの面相じゃないわ。
……ギリギリだけどね」


挿絵(By みてみん)
劉安りゅうあん
「さあ、新鮮な肉が焼けましたよ。
たくさんありますから召し上がってください……」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「おお、これは美味そうじゃな!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「そういえば劉安、奥さんはどうしたのよ?
最近見かけないけど体調でも悪いの?」


挿絵(By みてみん)
劉安りゅうあん
「ええ。すこしね。ご覧のように……」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「は?」


挿絵(By みてみん)
龔都きょうと
「劉辟! 曹操軍が攻めてきたぞ! それも今までにない大軍だ!」


挿絵(By みてみん)
劉辟りゅうへき
「やれやれ。落ち着いて飯も食わせてくれんだに」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「ち、ちょっと待っとくれ。せめてこの肉を食べ終わるまで――」


~~~汝南~~~


挿絵(By みてみん)
劉辟りゅうへき
「ぐわあああっ!!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「劉辟さん!」


挿絵(By みてみん)
劉辟りゅうへき
「こ……ここまでだに。り、劉備。あんたは無事に逃げるだに……」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「アンタ、陛下を守るんでしょ!
こんなとこで倒れていいの!?」


挿絵(By みてみん)
劉辟りゅうへき
「その役目は……あんたらに任せるだ……に……」


挿絵(By みてみん)
朱霊しゅれい
「クックックッ。黄巾賊の首領は討ち取った。一気に蹂躙するのだ」


挿絵(By みてみん)
満寵まんちょう
「敵は浮き足立っているぞ! かかれいッ!!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「朱霊のヤツ、共闘したこともあるってのに遠慮なしね!」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「あいつにそんなことは期待できないだろ。
さあ、早く逃げるぞ」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「し、しかし曹操軍の中を突破して
袁紹と合流するのはもう不可能です」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「そうじゃ、今度はどこに逃げればいいんじゃ?
だいたいどこまで逃げてもわしは
曹さんに追い掛け回されとるんじゃぞ」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「じゃあ張繍ちょうしゅうみたく曹操に降る?
アタイたちは張繍みたいに多くの兵を持ってないし、
同じように許されるとは限んないけど」


挿絵(By みてみん)
糜竺びじく
「はっはっはっ。そんな一か八かの博打は御免こうむりたいですな」


挿絵(By みてみん)
龔都きょうと
「と、とりあえず背後に逃げるのだ。
まだ背後に敵は現れていな――ぎゃあああああっ!!」


挿絵(By みてみん)
曹仁そうじん
「俺たちに手抜かりはないぜ!
劉備! どうやらここがお前の死に場所のようだな!」


挿絵(By みてみん)
糜芳びほう
「そ、曹仁が背後に現れたアル! 退路がないアル!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「劉備! アンタがぐずぐずしてるからよ!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「わしはここで死ぬのか……? 劉辟さん……」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「先輩! こっちッス!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「趙雲!?」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「こっちに逃げるッス! 援軍が来てるッス!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「え、援軍じゃと?」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「…………ッ!!」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「関羽ここにあり! 命の惜しくない者は前に出よ!
……と父は叫びたいのを我慢しています」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「関羽! どうしたのよその軍勢は!?
3千はいるじゃないの!」


挿絵(By みてみん)
周倉しゅうそう
「関羽将軍を慕い、黄巾賊の残党やら
ゴロツキやらが集まったんでさあ」


挿絵(By みてみん)
裴元紹はいげんしょう
「劉辟が殺されたって?
それじゃあ仇討ち合戦と行こうじゃねえか!」


挿絵(By みてみん)
陳到ちんとう
「この場は拙者らが引き受けた。
貴君らは荊州けいしゅうへ逃れられよ」


挿絵(By みてみん)
廖化りょうか
「ゴロツキ連中のつてをたどって、
荊州の劉表りゅうひょうに渡りをつけたんだ。
劉表はあちこちから人材を集めてるからな。
喜んで迎えてくれるってよ! ありがたいな!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「わ、わかった。荊州じゃな」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「自分が血路を切り開くッス! 先輩は後ろに続いて下さい!」


挿絵(By みてみん)
曹仁そうじん
「おのれ関羽! 夏侯惇が危惧していた通りだ!
やはり我々の災いになったな!」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「…………ッッ!」


挿絵(By みてみん)
満寵まんちょう
「関羽は曹仁将軍に任せろ! 我々は劉備を追う!」


挿絵(By みてみん)
朱霊しゅれい
「逃がすなよ満寵。追い詰め、切り裂き、屠るのだ」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「おどきなさい! 関羽とアタイがそろえば無敵なんだから!!」


~~~汝南 西~~~


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「そうか……公ちゃんも死んじまったのか」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
公孫瓚こうそんさん先輩が亡くなって、自分は行き場を失ったッス。
でもその時、劉備先輩の言葉がよみがえりました。
だからここに来たッス。
先輩、今でも先輩は、いずれは皇帝になると思ってるッスか?」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「皇帝に……」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「正直、驚いたッス。死ぬほど大胆不敵なことを言ってるのに、
先輩の目には迷いも恐れも見えませんでした。
地位も兵も、失礼ッスけど力もないのに、
なんでこの人はこんなことが言えるんだろうと不思議でした」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「バカだからよ。
バカだから迷いも恐れも身の程も知らないの」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「バカでもいいッス。
自分は先輩と一緒に、バカな夢を追いかけてみたいッス。
だから先輩、もう一度聞かせて下さい。
まだ先輩は、皇帝になるつもりッスか?」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「なる。皇帝陛下に、わしはなる!」


挿絵(By みてみん)
孫乾そんけん
「即答した……」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「……本当にバカね」


挿絵(By みてみん)
糜竺びじく
「あっはっはっ。でもそんなバカな夢が、
だんだんと実現に近づいてると思いませんか?
こんなに多くの人が集まり、曲がりなりにも兵も手に入れて、
曹操相手に戦いながらなんだかんだで生き延びています」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「集まったのはゴロツキばっかりだけどな」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「大将の劉備がゴロツキみたいなもんだもの。
しょうがないじゃない。
……ほら、関羽。アンタも何かこのバカに言ってやりなさいよ」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「…………」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「言わんのかい!」


挿絵(By みてみん)
関平かんぺい
「我が兄者への思いは言葉にできるものではない!
……と父は思っています」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「前から思ってたけど、それは関平が思ってることでしょ。
関羽はなーんにも考えちゃいないわよ。
劉備とおんなじバカなのよ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「それじゃあバカなわしや関さんと最初から
ずっと付き合ってる張さんも、大したバカじゃな」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「アンタにだけはバカ呼ばわりされたくないわ!!」


挿絵(By みてみん)
周倉しゅうそう
「……なんだか随分とにぎやかなとこに入っちまいやしたなあ」


挿絵(By みてみん)
陳到ちんとう
「たしかに騒がしい。だが、嫌いではない」


挿絵(By みてみん)
廖化りょうか
「曹操や袁紹に仕えるより、気楽そうでいいじゃないか」


挿絵(By みてみん)
裴元紹はいげんしょう
「黄巾賊の雰囲気にそっくりだもんなこいつら」


挿絵(By みてみん)
趙雲ちょううん
「……やっと自分の居場所を見つけた気がするッス。
自分は皇帝になる劉備先輩を守る槍になって見せるッス!」


~~~~~~~~~


かくして劉備は流浪の身に戻ったが、多くの仲間を手に入れた。
劉備は荊州で再起を図ることとなるが、それは後の話である。
一方、曹操と袁紹にはついに激突の時が迫っていた。

次回 〇三四   官渡の戦い
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