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アイコン三国志 作者:小金沢

第三章 人中の呂布

27/125

〇二六   呂布、最後の戦い

~~~徐州じょしゅう 下邳かひ城 曹操陣営~~~


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「夏侯惇君が敗れたそうだね」


挿絵(By みてみん)
曹洪そうこう
薛蘭せつらんを討ち取って追撃を掛けたが、
高順こうじゅんの反撃を受けていったん下がっただけだ。
曹操様がからかってくるだろうから、
戦略的撤退だと言ってやれ、とのことだ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「僕の嫌味が予測できるなら、まだ余裕はありそうだね。
援軍は必要ないだろうからそのままがんばれと伝えてくれたまえ」


挿絵(By みてみん)
曹洪そうこう
「……また夏侯惇の血圧が上がりそうだな」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「荀攸君、下邳城の呂布君の様子は?」


挿絵(By みてみん)
荀攸じゅんゆう
「ときおり城門を開いて中から打って出てきますが、
我々に一撃を加えるとすぐに退却します。
そのため警戒して包囲の輪が少し遠巻きになっています」


挿絵(By みてみん)
韓浩かんこう
「これだけ包囲が緩くなっては、
城内への補給を遮断することもできないぞ。兵糧攻めは無理だ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「しかし相手が呂布君では怖がるなというのも無理だろう。
荀彧君、なにか打つ手はないかな」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「……あるにはありますが、
正直言ってあまり使いたくない手です」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「それなら遠慮なく言ってくれそうな郭嘉君に聞くとしよう」


挿絵(By みてみん)
郭嘉かくか
「水」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「……なるほど水攻めか。
たしかに兵は呂布君を恐れるが、水は何者をも恐れない」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「しかし水攻めは兵はもちろん民をも苦しめます」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「呂布君ならばそのあたりの配慮はしてくれると期待できる。
僕たちも食料や薬、住居の確保など戦後の手当ては厚くしよう。
それでいいかい荀彧君?」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「あはは。もとより私は殿の考えに異は唱えませんよ。
ましてや殿はもう呂布との戦いではなく、その後のことをお考えだ。
戦の先のことを考え、敵の民のことまで思いやる。
もはや勝ったも同然ですな!」


~~~徐州じょしゅう 下邳かひ城内~~~


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「……jslas908ll;」


挿絵(By みてみん)
陳宮ちんきゅう
「私は島国で育ちました。水は友人であり、恐るべき敵でした。
しかしこのように水が悪意を持って
襲いかかってきたのは初めてです」


挿絵(By みてみん)
楊奉ようほう
「これでは城外からの補給も、
外にいる高順たちとの連携も無理だ。
こっちから打って出ることもかなわねえ。八方ふさがりだ」


挿絵(By みてみん)
成廉せいれん
「いえ、兵の士気は高く、領民も今のところは落ち着いています。
木材を調達して小さな舟を造れば、状況を打開できます」


挿絵(By みてみん)
侯成こうせい
「……のんきなことだ。
舟ができあがる前に餓死するか、溺れ死ぬかに決まってる」


挿絵(By みてみん)
成廉せいれん
「侯成! やる前から諦めるな!
呂布将軍がいらっしゃる限り、逆転の目は常にあるのだ!」


挿絵(By みてみん)
侯成こうせい
「…………」


~~~下邳城内 侯成 自室~~~


挿絵(By みてみん)
魏続ぎぞく
「簡単な話だ。呂布がいなくなりゃいいんだ」


挿絵(By みてみん)
宋憲そうけん
「俺たちはよくも悪くも呂布の武勇が頼りだからな。
呂布さえ倒れれば、ひとたまりもねえ」


挿絵(By みてみん)
侯成こうせい
「……だがあの呂布をどうやって倒す?
正味な話、俺たちや部下が何人集まっても
あいつを殺すのは無理だ」


挿絵(By みてみん)
宋憲そうけん
「寝込みを襲ったらどうだ?」


挿絵(By みてみん)
魏続ぎぞく
「……それで殺せる自信があるならやってみろ」


挿絵(By みてみん)
宋憲そうけん
「い、いや遠慮しとく」


挿絵(By みてみん)
侯成こうせい
「酒で酔い潰そうにも、
あいつは戦いの最中には一切飲まねえし……」


挿絵(By みてみん)
魏続ぎぞく
「待て! 誰だそこにいるのは!」


挿絵(By みてみん)
陳登ちんとう
「話は聞かせてもらった。安心しろ、私は味方だ」


挿絵(By みてみん)
侯成こうせい
「お前も反乱に加わるつもりか?」


挿絵(By みてみん)
陳登ちんとう
「反乱などするつもりはない。……いや、そうあわてるな。
わざわざ反乱など起こさずとも、呂布は殺せると言っているのだ」


~~~徐州 下邳城~~~


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「shkllsai9779k!?」


挿絵(By みてみん)
陳宮ちんきゅう
「侯成に魏続、宋憲らが舟で城を抜け出し、敵に囲まれただと?」


挿絵(By みてみん)
成廉せいれん
「馬鹿な。これは罠だ。罠に決まっている!
奴らは曹操に寝返ったのです!」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「……jslsdf98jasoi」


挿絵(By みてみん)
陳宮ちんきゅう
「ミ、ミスター侯成は我々の窮地を救うため、
命がけで脱出したのかも知れません」


挿絵(By みてみん)
成廉せいれん
「呂布将軍! 彼らは不満を募らせていました。
これはあなたを陥れようと――」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「ksdflsdo;:k898」


挿絵(By みてみん)
陳宮ちんきゅう
「しかし彼らは私の部下です。そして私に助けを求めているのです。
それを見殺しにすることは紳士の行いではありません。
ましてや彼らは三人もいるのです!」


挿絵(By みてみん)
成廉せいれん
「将軍……あなたはどこまで馬鹿なのだ」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「sahjlla9787ksl;」


挿絵(By みてみん)
陳宮ちんきゅう
「みなさんに迷惑はかけられません。
私は単身で彼らを助けに行きます。
上手く私が帰ることができたら、戦いを続けましょう。
もし帰らなければ、ミスター曹操に降伏してください」


挿絵(By みてみん)
成廉せいれん
「……将軍! 私もおともします!」


挿絵(By みてみん)
陳宮ちんきゅう
「無論、私もです」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「…………」


~~~徐州 下邳城 曹操陣営~~~


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「陳登君の言葉は本当だったようだね」


挿絵(By みてみん)
荀攸じゅんゆう
「ま、まさか呂布があのような見え見えの策にかかるとは」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「いかに呂布でもあれっぽっちの兵で、
それも水の上で何ができるものか。
ほれ、あっさり包囲されてしまったぞ」


挿絵(By みてみん)
韓浩かんこう
「……愚かな」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「たしかに愚かだ。でも見たまえ。
彼らは裏切ったとわかりきっている侯成君たちを
救うために、本気で戦っている。
なんと愚かで、なんと美しい主従なんだろう……」


~~~曹操陣営 医務室~~~


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「……ここは?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「気がついたかい張遼君。ここは僕の陣営だよ」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「あんた、曹操だな。オレは捕らえられたのか……」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「手荒な真似をして悪かったね。
君は生け捕りにしたかったんだ」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「あんだけ殴られて生きてるほうが奇蹟だぜ。
……で、他の連中はどうした?
高順は? 陳宮は? 成廉は?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「みんな死んだよ」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「そうかい。呂布将軍の後を追ったか。
侯成なんかに騙されてよ。最後まで大馬鹿野郎だよあの人は」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「呂布君が戦死したと聞くや、
君たちは戦意を喪失したみたいだね」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「あったりめーだ。
オレたちはあの人に惚れ込んでついてったんだからよ。
あの人がいなくなっちまったら何の意味もねーんだ。
侯成とか一部の馬鹿だけだよ、あの人に歯向かったのは」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「その呂布君を失って、君はこれからどうするんだい?」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「白々しいことを……。あんた、人材を集めるのが趣味なんだろ。
それでオレを生け捕りにして、
部下にしようって考えてやがるんだ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「その通りさ。部下になってくれるかい?」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「へっ。呂布将軍とは別の意味で素直なヤローだ。
断りてーところだが、高順にも言われちまった。
お前はまだ若い。生き延びろ。
呂布軍の残党は侯成には任せられない。
お前が率いろ、ってな」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「…………」


挿絵(By みてみん)
張遼ちょうりょう
「しかも高順のヤロー、オレを殴りやがった!
オレが無駄に抵抗して死なねえように、
あいつがオレを気絶させたんだ!
まったく、どいつもこいつもよ……」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
臧覇ぞうは君も僕に降ってくれた。
今後は君と臧覇君に、呂布軍の残党を任せるよ」


~~~一日前 曹操陣営 牢獄~~~


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「…………」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「気分はどうだい? 呂布君」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「!?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「ああ、少しだけど君の国の言葉を話せるんだ。
若い頃に陳宮君と付き合いがあって、君の国の言葉を習ったからね。
ゆっくりなら理解できると思うよ。
二人きりだからのんびり話そうじゃないか」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「それではまずお願いがあります。
私の部下と、徐州の民を許してください。
この戦いは私が始めたもので、彼らに責任はないのです」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「わかった。許そう」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「ミスター侯成たちを厚遇してあげてください。
彼らは私に不満を抱きやむをえず寝返ったのです。
全ては私が悪いのです」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「わかった。厚遇しよう」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「ありがとうございます」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「それで、君はどうしたいんだい?
僕は君自身の話を聞きたいんだ」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「私は負けたのです。敗軍の将に語ることはありません」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「わかった。じゃあ君を解放しよう」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「それはいけません! ミスター曹操、私を斬りなさい。
私の存在はいつかあなたを危機に陥れます。
あなたは皇帝を擁し、覇道を歩むのでしょう?
それならば私の存在は邪魔なだけです」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「……何も恐れず、何も望まず、何も傷つけない。
そんな君がどう邪魔になると言うんだい?」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「私が一つだけ自負していることがあります。それはこの武勇です。
私の強大すぎる武勇を悪用しようと考える人は跡を絶ちません。
そうして私は故郷を去り、この地に流れ着いたのです」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「しかし、君の運命は変わらなかった」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「……知らない土地で過ごすためには誰かの助けが必要でした。
はじめはミスター丁原ていげんでした。彼を手伝いました。
彼が死に、ミスター董卓を手伝いました。
しかし彼は紳士ではありませんでした」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「君は斬れすぎる剣だ。
収めるべき鞘をも両断し、どこにも留まることができない」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「だから私を殺しなさいと言っているのです」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「わかった。殺そう」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「よくぞ決意してくれました。私はあなたを恨みません。
むしろ感謝しています。私を止めてくれてありがとうございます」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「ああ。呂布は死ぬ。ここで死ぬんだ」


~~~二日後 徐州西部~~~


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「…………」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
(呂布は死んだ。呂布と名乗っていた男はここで死んだ。
僕の前にいるのは、名前も知らない異人だ。
この国の皇帝に代わって命じる。異人よ、故郷へ帰りたまえ)


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
(…………アルトリウス、それが私の名です)


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
(わかった。アルトリウス、さらばだ)


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「…………」


挿絵(By みてみん)
陳宮ちんきゅう
「将軍!」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「!?」


挿絵(By みてみん)
陳宮ちんきゅう
「本当にご無事だったのですね。
曹操を疑うわけではないが、
本当に我々やあなたを解放するとは思わなかった」


挿絵(By みてみん)
高順こうじゅん
「だが、我々はもう死人だそうです。
死人に居場所はない、国外へ去れとのことだ」


挿絵(By みてみん)
成廉せいれん
「呂布将軍のお供ができるなら、
どこへなりとついていきましょう」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「…………」


挿絵(By みてみん)
陳宮ちんきゅう
「それなら成廉や高順殿にも、
将軍の国の言葉を覚えていただかないといけませんな」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「…………アーサー」


挿絵(By みてみん)
陳宮ちんきゅう
「え?」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
「sadfhklsa98as;;jh」


挿絵(By みてみん)
陳宮ちんきゅう
「親しい者はアーサーと私を呼びました。
呂布と名乗っていた男は死んだのです。
ぜひこれからはそう呼んでください」


挿絵(By みてみん)
高順こうじゅん
「わかりました。今後はそういたします」


挿絵(By みてみん)
成廉せいれん
「アーサー、我々はあなたに仕える騎士です。
あなたを王のように敬い、命をかけて守りましょう」


挿絵(By みてみん)
高順こうじゅん
「アーサー王か。それはいい。
一度死んだ身の我々には恐れるものなどない。
アーサー王を本当に王位につけるまで盛り立てようぞ!」


挿絵(By みてみん)
呂布りょふ
(…………神よ、感謝します。彼らに出会えたことを)


挿絵(By みてみん)
陳宮ちんきゅう
「あ、化粧を取られるのですか?」


挿絵(By みてみん)
アーサー王
「ええ。もう自分を偽る必要はありませんから……」


~~~~~~~~~


かくして呂布は死んだ。
かつて呂布と名乗った男とその騎士はのちに伝説となるが、
それは別の話である。
一方、各地に割拠していた群雄たちにも滅びの時が訪れようとしていた。

次回 〇二七   世に英雄は二人きり
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