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アイコン三国志 作者:小金沢

第三章 人中の呂布

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〇二二   江東の小覇王

~~~曲阿きょくあ~~~


挿絵(By みてみん)
劉繇りゅうよう
「孫策め、調子に乗ってこの曲阿まで攻め寄せるとは、
つくづくバカな男よ。
兵たちも混乱からようやく落ち着いてきた。
こうして守備を固めていれば何もできまい」


挿絵(By みてみん)
許劭きょしょう
「さよう。私が見出した樊能や于糜を
素手で殺したなどという妄言も収まるでしょう」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「妄言ではない! 私は兵たちに確かめた。
彼らは本当にそれを見たのだ」


挿絵(By みてみん)
張英ちょうえい
「ええい! いつまで臆病風に吹かれて幻を見ているのだ!
お前がいたら我が軍の士気が下がる。偵察にでも出ていろ!」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「はっ…………」


~~~曲阿 孫策軍~~~


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「3万の兵で亀みてェに城にこもられちゃあ、
さすがになんにもできやしねェな」


挿絵(By みてみん)
朱治しゅち
「先の大勝利で多くの敵兵が降伏しましたが、
まだまだ敵との兵力差は大きいですな」


挿絵(By みてみん)
張紘ちょうこう
「挑発しておびき寄せようとしているのだが、
なかなか上手く行かないぞ」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「ここであれこれ考えててもしかたねェや。
ちょっくら城の裏手に回って、隙でもねェか見てくるぜ」


挿絵(By みてみん)
黄蓋こうがい
「殿! お一人で行かれては危険です!」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「まったく落ち着きのない……早く連れ戻せ!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「ふーん。どこの城壁も手入れが行き届いてんな。
さすがは皇族サマ、金があるんだろうよ」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「!? まさか……あれは孫策!
こんな所で出くわそうとは偵察に来ていた甲斐があったぞ。
孫策! 私と勝負だ!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「あぁん? 誰だか知らねェが、
オレの前に立つなら死ぬ覚悟はできてんだろうな!」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「笑止! この双槍に対して徒手空拳では近づけまい!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「やるじゃねェか! だが馬を狙ったらどうなるかな!」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「うおおっ!? 素手で私の馬を……だが!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「チッ。こいつ馬から降りても強ええじゃねェか!」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「やはり地上戦では孫策に分があるか……ッ」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「旦那様! ご無事ですか!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「来んな程普! これはオレとこいつのケンカだ!」


挿絵(By みてみん)
黄蓋こうがい
「そういう訳にはいかぬ! 貴様、殿から離れろ!」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「ここまでか……孫策、勝負は後日に預けたぞ!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「邪魔が入っちまって悪ィな。おい、お前の名は?」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「我が名は太史慈! 名乗り遅れた非礼を許せ」


挿絵(By みてみん)
蒋欽しょうきん
「孫策どん! ケガはないでごわすか?」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「タイシジか……。へへっ。久々に骨のある相手だったぜ」


~~~曲阿~~~


挿絵(By みてみん)
張英ちょうえい
「なんと! 孫策と一騎討ちしておきながら、
おめおめと逃げ帰ってきたのか!」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「面目ない。
だがあの男、私が望めばまた一騎討ちに応じるだろう。
その時には必ず首を挙げてみせる」


挿絵(By みてみん)
劉繇りゅうよう
「総大将が一騎討ちに応じる?
何をバカなことを。お前は夢みたいな話ばかり――」


挿絵(By みてみん)
笮融さくゆう
「……孫策ごときにいつまで手こずっているのだ劉繇」


挿絵(By みてみん)
薛礼せつれい
「キャーー笮融様!」


挿絵(By みてみん)
許劭きょしょう
(付近の村人から絶大な支持を受けている教祖の笮融か……。
あいかわらず気味の悪い男だ)


挿絵(By みてみん)
笮融さくゆう
「……聞けば孫策という男、素手で戦ったり、
一人で偵察に出たりと大胆不敵な性格。
……うかつに独りきりになったところを襲えばよいではないか」


挿絵(By みてみん)
劉繇りゅうよう
「し、しかし皇族に連なる私が、
そのような卑怯な手を使うわけには……」


挿絵(By みてみん)
笮融さくゆう
「……そのために我が来たのだ。
すでに手は打った。孫策は我の手の者が討つ」


挿絵(By みてみん)
劉繇りゅうよう
「お、おお。そうか。いつもすまぬな。
孫策を殺してくれればお布施は弾むぞ」


挿絵(By みてみん)
薛礼せつれい
(さすが笮融様、なんて手際がよろしいのかしら……)


~~~曲阿 西部~~~


挿絵(By みてみん)
呉景ごけい
「こっちだ孫策、この丘からなら城の中までよく見えるぞ」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「ほーう。丸見えだなこりゃ」


挿絵(By みてみん)
于茲うじ
(太史慈に襲われたばかりだというに、
また3人きりで行動とは愚かな……)


挿絵(By みてみん)
周泰しゅうたい
「む……。殿、気をつけろ。誰かいる」


挿絵(By みてみん)
于茲うじ
「気づいたか。
だが遅い! シャアアアアッ!!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「ぐああっ!」


挿絵(By みてみん)
于茲うじ
「シャアアアアッ! シャアアアアッ!」


挿絵(By みてみん)
周泰しゅうたい
「ぐううっ!! き、貴様……」


挿絵(By みてみん)
于茲うじ
「まだ動けるのか。
しぶとい奴め! シャアアアアッ!」


挿絵(By みてみん)
周泰しゅうたい
「がああっ!
と、殿にはこれ以上、指一本触れさせぬ。ぐぬぅぅぅぅ!!」


挿絵(By みてみん)
于茲うじ
「わ、私の爪が喰い込んで外れぬ。
や、やめろ。ギャアアアア!!」


挿絵(By みてみん)
呉景ごけい
「孫策! 周泰! 大丈夫か!」


挿絵(By みてみん)
于茲うじ
「この爪には猛毒が塗ってある……。
もはや助かるまい……グボォッ」


~~~曲阿 孫策軍~~~


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「ああ……また旦那様を亡くしてしまうなんて……」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「ちきしょう! ちきしょおおおおう!!」


挿絵(By みてみん)
張英ちょうえい
「くっくっくっ。孫策軍め、身も世もなく泣き崩れておるわ。
さあ、葬列を襲って孫策の死体を奪ってやれ!!」


挿絵(By みてみん)
薛礼せつれい
「うおおお! 笮融様バンザーイ!」


挿絵(By みてみん)
黄蓋こうがい
「今だ! 撃てッ!!」


挿絵(By みてみん)
張英ちょうえい
「な、なに! 反撃してきただと。
だが孫策のいない敵など烏合の衆だ。蹴散らしてやれ!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「へーえ。誰がいねェんだって?」


挿絵(By みてみん)
張英ちょうえい
「そ、孫策!?」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「てめェらが襲ったのは、ありゃオレの影武者だ。
周泰が影武者とは思えねェくらい必死に守ったから、
すっかり騙されやがったな。
城から出てきたてめェらなんか怖くもなんともねェぜ」


挿絵(By みてみん)
薛礼せつれい
「さ、笮融様の秘策が失敗するなんて……」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「影武者の仇は取らせてもらうぜ!」


挿絵(By みてみん)
薛礼せつれい
「ぎゃあああ! 笮融様バンザーイ!」


挿絵(By みてみん)
張英ちょうえい
「ば、バカな! そんなバカな!」


挿絵(By みてみん)
蒋欽しょうきん
「待て! 首を寄越すでごわす!」


挿絵(By みてみん)
張英ちょうえい
「うぎゃああああああっ!!」


~~~曲阿~~~


挿絵(By みてみん)
劉繇りゅうよう
「生きていた張英が我が軍に殺され、影武者が降伏しただと?」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「生きていた孫策に張英が殺され、
我が軍の兵のほとんどが降伏した、だ」


挿絵(By みてみん)
笮融さくゆう
「……勝負あったな劉繇。
……我は逃げるぞ。達者でな」


挿絵(By みてみん)
劉繇りゅうよう
「ああっ笮融! お前まで私を見捨てるのか……」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「私が殿軍を務める。いまのうちに逃げられよ」


挿絵(By みてみん)
劉繇りゅうよう
「ど、どこに逃げればよいのだ。
暖かい寝床はあるのか? うまい食べ物は?」


挿絵(By みてみん)
許劭きょしょう
「そんなものは知らぬ!
私の最大の過ちは劉繇、お前に仕えたことだ。
……太史慈よ、お前の言葉を信じなかった我々が愚かであった。
孫策がこれほどの男だとはな」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「いや、そんなことはどうでもよい。貴殿も早く逃げるのだ」


挿絵(By みてみん)
許劭きょしょう
「劉繇に仕えた私の目など当てにはならんだろうが太史慈、
見たところお前の命数はまだ尽きておらん。
命を粗末に散らすでないぞ」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「……わかった」


挿絵(By みてみん)
劉繇りゅうよう
「ああ……私はどうすれば…………」


~~~曲阿 城門前~~~


挿絵(By みてみん)
黄蓋こうがい
「殿! 曲阿にこもっていた劉繇軍は大半が離散したようです。
あとは味方を逃がすために残った、あの一軍だけですな」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「今や数万の大軍にふくれ上がったオレたちに、
あれっぽっちで立ちふさがるなんて根性のある奴だぜ。
あの軍を率いているのはきっと……」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「孫策! もはや逃げも隠れもせぬ。私と一騎討ちしろ!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「やっぱりおめェだったか太史慈!」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「私が敗れれば後ろにいる兵は全員降伏する。
だが私が勝ったら、全員を逃してやってくれ」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「どっちにしろ、配下は生き残らせてェってことか。
わかった、その条件でいいぜ!」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「孫策殿!
このようなバカげた一騎討ちなどワシは認めんぞ!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「いいや、オレは認めるぜ! うおぉぉぉぉ!!」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「ぬうぅぅぅぅん!!」


~~~~~~


挿絵(By みてみん)
厳白虎げんはくこ
「孫策軍5万が向かってきているだと!?
た、たしか最初は3千ほどではなかったのか」


挿絵(By みてみん)
虞翻ぐほん
「そうでゲス。降伏した劉繇軍や、
付近の豪族を次々と加えてそこまで増えたでゲス」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「人々は孫策を『江東の小覇王』ともてはやしているそうだ」


挿絵(By みてみん)
厳白虎げんはくこ
「ご、5万の敵となど戦えるものか!
俺は孫策と和睦するぞ!」


挿絵(By みてみん)
王朗おうろう
「私は逃げぬ。会稽かいけいを陛下に任されたのだ」


挿絵(By みてみん)
虞翻ぐほん
「あいかわらず王朗殿は真面目でゲスなあ」


挿絵(By みてみん)
厳白虎げんはくこ
「そ、そうか。ならばもはやお前と会うことはあるまい。
孫策に殺されても知らんからな!」


~~~呉 西部 孫策軍~~~


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「厳白虎が和睦を申し出てきた?」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「厳白虎様といえば『東呉の徳王』を名乗り、
圧政を布いていると聞きます」


挿絵(By みてみん)
呂範りょはん
「さんざん民を苦しめておいて、
いざとなったら真っ先に和睦か。典型的な小者だな」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「まあまあそう言うなよ。
ここに通してやんな、オレが話を聞いてやんぜ」


挿絵(By みてみん)
朱治しゅち
「……殿が何か企んでいる顔をしているように思えるのは、
私の気のせいですかな」


~~~呉 西部 孫策軍~~~


挿絵(By みてみん)
厳白虎げんはくこ
「がっはっはっ。さすがは今をときめく小覇王殿!
話がわかりますなあ」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「そういうアンタも面白い男だな。気に入ったぜ」


挿絵(By みてみん)
厳白虎げんはくこ
「いやいや孫策殿にはかなわぬ。
これからも対等な付き合いをよろしく頼みますぞ」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「対等?」


挿絵(By みてみん)
厳白虎げんはくこ
「がっはっはっ。……へ?」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「へーえ。アンタとオレは対等なのか。そりゃ驚いた」


挿絵(By みてみん)
厳白虎げんはくこ
「そ、孫策殿……?」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「オレはアンタの十倍近い5万もの大軍を持ってるし、
民を苦しめたこともねェ。そんなオレとアンタが対等なのか」


挿絵(By みてみん)
厳白虎げんはくこ
「そ、それは……」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「はっはっはっ! 冗談だよ冗談。
なんせアンタは身の程知らずにも降伏じゃなくて、
和睦を申し出てきたんだ。劉繇を倒したおかげで、
江東の豪族はほとんどがオレに降ったが、
会稽の王朗はアンタよりも兵が少ないのに、
職務を守って抵抗してやがる。
一方アンタは保身のために我先にと和睦だってよ。立派なもんだぜ。
戦えば一瞬でオレが勝つけども、
同盟相手なんだからそりゃ対等な立場だよなあ」


挿絵(By みてみん)
厳白虎げんはくこ
「が、がはは……」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「ところでアンタは、見かけによらず俊敏なんだってな。
たとえば何ができんだ?」


挿絵(By みてみん)
厳白虎げんはくこ
「た、たとえばそうですな、飛んできた矢を、
こう座ったままの姿勢でサッとかわすことができます!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「そいつぁすげェ!
じゃあ矢じゃなくて短剣でもかわせんのか?」


挿絵(By みてみん)
厳白虎げんはくこ
「もちろんですとも!」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「試してやらァ」


挿絵(By みてみん)
厳白虎げんはくこ
「ごほぉぉぉっ!?」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「なんでェ。かわせなかったじゃねェか。
おい、死体を片付けといてくんな」


挿絵(By みてみん)
張昭ちょうしょう
「孫策殿……なんと趣味の悪い……」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「こいつほどじゃねェよ。
さあて、あとは王朗をどうにかすりゃあ、敵はいなくなんな。
王朗は立派な野郎だから殺したくねェ。
手加減して攻撃してよ、どうにか降伏させてくんな」


挿絵(By みてみん)
張紘ちょうこう
「王朗殿の説得は私に任せるのだぞ」


~~~~~~~~~


かくして孫策は快進撃で江東を制した。
その頃、張飛のもとに身を寄せた呂布に、思いもせぬ波乱が待ち受けていた。
流浪の主従に安息の時は訪れないのか?

次回 〇二三   裏切りの呂布
+注意+
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