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アイコン三国志 作者:小金沢

第三章 人中の呂布

16/125

〇一五   青州黄巾軍

~~~北海ほっかい~~~


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「劉備殿! あれが黄巾賊の首領だ!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「張さん! 関さん!
敵は泡を食っとるぞ! 今じゃ!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「アンタに言われるまでもないわ! 雑魚はどいてなさい!」


挿絵(By みてみん)
管亥かんがい
「く、くそ! 太史慈とやらめ、援軍をつれて戻ってきたか!
だがこの俺様をそう簡単に――」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「…………ッ!!」


挿絵(By みてみん)
管亥かんがい
「うぎゃああああああ!!」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「おお、さすが関さんじゃ! 一刀両断じゃぞ!」


挿絵(By みてみん)
太史慈たいしじ
「首領を失えば残りは烏合の衆だ。あとは俺が引き受けよう。
劉備殿らは孔融殿に会って行ってくれ」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「わかったわ。孔融はあっちよ劉備」


挿絵(By みてみん)
孔融こうゆう
「ご苦労であったぞ劉備とやら。
お前のおかげで黄巾賊は逃げ出した。
孔子曰く『孔融に親切にせよ』と申す。善徳を積んだな」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「いや、首領を倒したら黄巾賊め、あっという間に逃げちまった。
あんまり戦う気はなかったんじゃないかのう」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「違うわよ! この張飛様の勇名を恐れたのよ!」


挿絵(By みてみん)
簡雍かんよう
「たしかに張飛が全速力で走ってきたら誰でも逃げるわな」


挿絵(By みてみん)
関羽かんう
「…………っ」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「笑ってんじゃないわよ関羽!
――それより孔融、アンタに頼んだこと忘れてないでしょうね」


挿絵(By みてみん)
孔融こうゆう
「お前たちが朝廷からの使者を殴ったことを
取りなしてやれば良いのだろう?
孔子曰く『孔融は帝のお気に入り』と申す。お安い御用だ」


挿絵(By みてみん)
劉備りゅうび
「はっはっは。たまには人助けもするもんじゃのう。
気分もいいし、罪にも問われなくなりそうじゃと
良い事ずくめじゃ!」


挿絵(By みてみん)
張飛ちょうひ
「断ろうとしてたくせに……」


~~~しょう~~~


挿絵(By みてみん)
曹洪そうこう
「殿、朝廷からの使者はなんと?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「青州にはびこる黄巾賊を討て、とのことだ」


挿絵(By みてみん)
曹仁そうじん
「青州黄巾軍だと! 30万を超える大軍ではないか!」


挿絵(By みてみん)
夏侯惇かこうとん
「奴らは焦和しょうか劉岱りゅうたい
悪政を敷いていた太守から土地を奪い、独立を果たしたのだったな。
名声もなく、わずか5000ほどの兵しか持たぬ俺たちに
そんな勅命が下るとは……におうな」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「これはこれは……我々の泣き所を
よく知られているようですね。あはは」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「笑い事ではないぞ荀彧。
これは何かの間違いではないのか。
俺が都に上がり問いただしてこよう」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「待ちたまえ夏侯淵君。
せっかくの勅命じゃないか。光栄なことだよ。
僕は受けようと思う」


挿絵(By みてみん)
夏侯惇かこうとん
「正気か曹操! これは李傕りかくら董卓残党の罠だぞ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「いいや、都にいる彼らにはこれ以上何もできやしないさ。
あとは僕らと青州黄巾軍の戦いだよ。
韓浩君は鮑信ほうしん君に援軍を頼んでくれないか」


挿絵(By みてみん)
韓浩かんこう
「ああ、わかった」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「兵力の少ない僕らに、圧倒的な物量の黄巾賊を当てる。
たしかにうまい考えだ。
でも発想を逆転させれば、これは大きな好機じゃないかな。
そうだろう、荀彧君?」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「ええ。黄巾賊を降し、我々の兵力にしてしまいましょう」


挿絵(By みてみん)
曹仁そうじん
「な…………ッ!?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「荀彧君や多くの人材を手に入れた。次は兵力を増やす番だ」


~~~青州せいしゅう~~~


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「…………どう思う? 程昱君」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「そうじゃな……ただの黄巾賊にしてはちと強すぎはせんかのう」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「そもそもおかしな話ですよ。
いくら黄巾賊がもともとは一揆の類だとしてもです。
これほどの大軍がひとところに集まって、
こんな統率だった動きができるものですかね。
ましてや教祖様だってとっくに死んでるんですよ」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「優れた指揮官がおるな。間違いなかろう」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「彼らにいるのは指揮官だけじゃないよ。あれを見たまえ」


挿絵(By みてみん)
鮑信ほうしん
「曹操殿! 背後から伏兵の奇襲だ!」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「大軍を統率できる指揮官。そして僕らの裏をかき続ける軍師。
どうやら兵力だけじゃなくて、
新たな人材も手に入れられそうだね」


挿絵(By みてみん)
夏侯惇かこうとん
「それはここを逃げ延びてからの話だ! 早く逃げろ曹操!」


挿絵(By みてみん)
何儀かぎ
「青州黄巾軍の大頭目・何儀とは俺様のことだ!
逃すか曹操!」


挿絵(By みてみん)
許褚きょちょ
「ここは俺が守る。殿は逃げよ」


挿絵(By みてみん)
曹仁そうじん
「殿! 右手からも伏兵だ!」


挿絵(By みてみん)
何曼かまん
截天夜叉せってんやしゃ・何曼ここにあり!
いざ尋常に勝負!」


挿絵(By みてみん)
鮑信ほうしん
「奴は私が引き受けた。曹操殿は逃げよ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「すまない。頼んだよ鮑信君」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「ひょー! すげえ数の敵だな。
まあ、おれっちに任せて鮑信のダンナは下がってなよ」


挿絵(By みてみん)
鮑信ほうしん
「いや、殿軍は私が務める。于禁、お前は曹操殿を守れ」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「ダンナ……死ぬ気か?」


挿絵(By みてみん)
鮑信ほうしん
「私は曹操殿にとって必要な人材ではない。
だがお前は必要となるだろう。だから死ぬな。
そして私の代わりに、曹操殿の行く末を見届けるのだ」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
「……わかったよ。曹操はおれっちが命に代えても守ってやる。
でも、ダンナもできるだけ死ぬなよ」


挿絵(By みてみん)
鮑信ほうしん
「無論だ。さあ行け!」


挿絵(By みてみん)
何曼かまん
「逃げ遅れたな貴様。覚悟はいいか!」


挿絵(By みてみん)
鮑信ほうしん
「逃げ遅れたのではない。天下万民のため捨て石となるのだ。
天下のために必要なのは、鮑信ではなく曹操だからな!」


~~~青州 南部~~~


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「あはは。完全に包囲されてしまいましたな」


挿絵(By みてみん)
夏侯惇かこうとん
「何を笑っている! もともと勝ち目のない戦だったが、
鮑信も討たれ、いよいよもって進退窮まったぞ」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「諦めるのは早いぞ惇兄。要は大将首を取ればいいのだ。
俺が今から突撃して首を持ってきてやる」


挿絵(By みてみん)
曹仁そうじん
「待て待て夏侯淵! 敵は軍隊ではない、民兵だぞ!
大将なんていやしない!」


挿絵(By みてみん)
程昱ていいく
「否。大将がいなければここまで見事に兵を動かせんじゃろ。
大将はおるぞ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「ついでに軍師もだね。
それじゃあそろそろ行くとしようか」


挿絵(By みてみん)
曹洪そうこう
「どこへ行くんだ?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「もちろん降伏勧告をしにさ」


挿絵(By みてみん)
韓浩かんこう
「こ、降伏勧告だと?
我々を完全に包囲した、数十倍の敵に?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「敵ではない、民だ。考えてもみたまえ。
どうして民を守るべき立場の僕らが、
民と戦わなくてはいけないんだい?
彼らは行き場を失い、うろたえているだけだよ。
だから丸ごと受け入れてあげればいいのさ」


~~~青州黄巾軍 陣営~~~


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「そう目くじら立てないでくれ。
僕らはご覧のとおり十人足らずで、しかも丸腰だ。
その気になればいつだって捕らえられるだろう?」


挿絵(By みてみん)
卞喜べんき
「何を企んでいるか知らんが、
我々の指導者に会わせるわけにはいかん。
命が惜しければ立ち去るがいい!」


挿絵(By みてみん)
何儀かぎ
「待て卞喜。ことは俺たちが勝手に判断していい問題じゃねえ。
いちおう指導者にお伺いを立てよう」


挿絵(By みてみん)
??
「その必要はない。……久しぶりだな、曹操」


挿絵(By みてみん)
曹洪そうこう
「あ、あんたは!?」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「ただ者ではないと思っていたが……官軍の将軍様だったとはね。
道理で素晴らしい指揮だったわけだ。
でもなぜ君が黄巾賊を率いているんだい?」


挿絵(By みてみん)
鄒靖すうせい
「黄巾賊の討伐を命じられてた俺が、逆の立場になるなんてな。
俺だって不思議でならんよ。まあ成り行きってヤツだ」


挿絵(By みてみん)
何曼かまん
「鄒靖将軍は董卓に都を追われた後、ここ青州に流れ着き、
暴徒と化していた我々をまとめ上げてくれたのだ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「さすが官軍の中でも高潔さで知られた鄒靖君だ。
でも失礼だけど、君だけじゃないだろう?
少なくとももう一人、君に力を貸していた人がいるはずだ」


挿絵(By みてみん)
??
「私だ」


挿絵(By みてみん)
鄒靖すうせい
「郭嘉! 寝ていろと言っただろう」


挿絵(By みてみん)
郭嘉かくか
「会いたかった」


挿絵(By みてみん)
鄒靖すうせい
「お前が曹操にか? ――こいつは郭嘉。
俺の軍師として知恵を貸してくれていた。
肺が悪くてあまりしゃべると咳き込むから、言葉数が少ないんだ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「僕も君に会いたかったよ。
兵力の差を最大限に活かした見事な用兵だった。
あれではいくら兵の練度で勝っていても太刀打ちできない」


挿絵(By みてみん)
郭嘉かくか
「3万」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「ああ、たしかに僕に3万の兵があれば
もう少しマシな戦いができただろう。
でも君相手に3万じゃちょっと心もとないな。
5万は欲しいところだ」


挿絵(By みてみん)
郭嘉かくか
「火計」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「そりゃあ火計を使えば5千でも何とかなったかも知れない。
でも僕は君たちを殲滅に来たわけじゃない。
できれば戦いたくはなかった。
君たちだってそうだろう?」


挿絵(By みてみん)
郭嘉かくか
「火の粉」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「降りかかる火の粉は払うか。
君の言うことはいちいちもっともだね」


挿絵(By みてみん)
夏侯惇かこうとん
(なんで話が通じるんだこいつら……)


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「気に入った! 兵の動かし方だけじゃない。
君という人物が気に入ったよ。
良かったら僕の側でその頭脳を発揮してくれないか」


挿絵(By みてみん)
郭嘉かくか
「黄巾軍」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「もちろん君だけじゃない。
青州黄巾軍30万、全員を迎えるさ!」


挿絵(By みてみん)
郭嘉かくか
「鄒靖」


挿絵(By みてみん)
鄒靖すうせい
「やれやれ。こんなことになるんじゃないかと思ったよ。
郭嘉、お前の好きにしろ。
どうせ俺じゃあ、お前抜きで曹操相手に戦えやしない」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「そんなことはない。今ここで僕たちを捕らえればいい。
僕の軍の重臣が全員そろってるよ。一瞬で勝負はつくさ」


挿絵(By みてみん)
曹仁そうじん
「と、殿……!」


挿絵(By みてみん)
何儀かぎ
「…………」


挿絵(By みてみん)
鄒靖すうせい
「意地の悪いことを言うな。
お前を捕らえ、首をはねて、その後はどうする?
そうやって討伐に来た全員の首をはねるまで続けるのか? 無理だ。

俺は曹操に降る。だが俺たちは軍隊じゃない。
異議のある者は去ってくれて構わないぜ」


挿絵(By みてみん)
卞喜べんき
「…………」


挿絵(By みてみん)
何曼かまん
「…………」


挿絵(By みてみん)
荀彧じゅんいく
「あはははは! さすが殿だ!
たった一人で30万人を降伏させてしまったわ!」


挿絵(By みてみん)
于禁うきん
(鮑信のダンナ……とんでもねえ相手に仕えさせやがったな……)


~~~~~~~~~


かくして曹操は30万の大兵を手に入れた。
一方、都を追われた呂布は流浪の日々を送っていた。
はたして最強の男は、新天地に辿りつけるのか?

次回 〇一六   流浪の呂布
+注意+
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