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アイコン三国志 作者:小金沢

第十一章 三国の終焉

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一一九   皇帝弑逆

~~~蜀 成都せいとの都~~~


挿絵(By みてみん) 劉禅りゅうぜん
「姜維は降格させたのに、敗北の原因を作った胡済こせいはお咎め無しでいいの?」


挿絵(By みてみん) 諸葛瞻しょかつせん
「ええ。構いませんよ」


挿絵(By みてみん) 劉禅りゅうぜん
「おっ、出たな面白い配合」


挿絵(By みてみん) 諸葛瞻しょかつせん
「元はと言えば閻宇えんう将軍が胡済将軍への伝達を間違えたのです。
閻宇将軍が減俸を名乗り出ている以上、胡済将軍に累を及ぼす必要はありません」


挿絵(By みてみん) 樊建はんけん
(閻宇は黄皓のお気に入りだ。わずかな減俸で処分をうやむやにし、
胡済に恩を売って仲間に引き込むつもりだろう)

挿絵(By みてみん) 黄皓こうこう
「それにファッキン姜維の降格はヤツが自分から言い出したことだからな。
ファーーック!! 無能の姜維め! 降格ごときで許されると思うのか!?」


挿絵(By みてみん) 劉禅りゅうぜん
「まあまあ、姜維もがんばってるんだし大目に見てあげなよ。
それより呉では独裁者のチンコが斬られたって? 残酷なことするなあ」


挿絵(By みてみん) 郤正げきせい
「チンコではありません。独裁者だった故綝こちんです。
成敗した皇帝の孫休そんきゅうは、孫綝そんちんを一族とは認めず、姓を「故」に改めさせたのです」


挿絵(By みてみん) 黄皓こうこう
「どうせ成敗された時にチンコも切り刻まれたに決まっておるわ!」


挿絵(By みてみん) 劉禅りゅうぜん
「それで姜維はどうしてるの?
都に戻ってきてないようだけど」


挿絵(By みてみん) 樊建はんけん
漢中かんちゅうに駐屯し魏の反転攻勢に備えています。
魏は司令官を陳泰から鍾会に交代し、これまでの専守防衛から、
蜀への侵攻へと方針を転換しつつあります」


挿絵(By みてみん) 劉禅りゅうぜん
「魏の侵攻かあ……。まあ姜維がいれば安心でしょ。
念のため張翼や廖化を漢中に送っておいて」


挿絵(By みてみん) 諸葛瞻しょかつせん
「さらに王含おうがん馬邈ばばくに後方を固めさせれば万全でしょう」


挿絵(By みてみん) 劉禅りゅうぜん
「ふ~ん。誰だっけそいつら?
まあ任せるから好きにしといてよ」


挿絵(By みてみん) 郤正げきせい
(どさくさに紛れて自分の一派を昇進させたか。悪知恵ばかり回る連中だ)


挿絵(By みてみん) 樊建はんけん
(諸葛瞻という男、諸葛亮丞相の落胤を主張するからには大した人物かと思ったが、
なんということはない。ただの俗物であったわ)


挿絵(By みてみん) 郤正げきせい
(ああ。丞相の名をかさに着ただけの無能だ)


挿絵(By みてみん) 樊建はんけん
(私腹を肥やすだけで、黄皓のように横暴に振る舞っていないだけマシだがな)


挿絵(By みてみん) 黄皓こうこう
「何をブツクサ言っているのだ! 陛下!!
ファッキンあやつらは謀叛を企んでいるようじゃ!
処刑してしまえ!」


挿絵(By みてみん) 劉禅りゅうぜん
「樊建や郤正がそんなこと企むわけないじゃん。
お前ら、黄皓の機嫌が悪いみたいだから今日は帰っていいよ」


挿絵(By みてみん) 樊建はんけん
「はっ! 失礼いたします」


~~~蜀 成都の都~~~


挿絵(By みてみん) 郤正げきせい
「陛下が以前と変わらず、誰にも惑わされていないのが救いだが、
このままでは先が思いやられるな……」


挿絵(By みてみん) 樊建はんけん
董允とういん殿や尹黙いんもく殿らお目付け役が没し、
費禕ひい殿が悪霊に取り憑かれた降将に暗殺されて以来、
代わりの丞相も見つけられていない。
人材不足が深刻なのは軍事だけではない」


挿絵(By みてみん) 郤正げきせい
「人材不足だけならまだいい。
政治は陛下が面白半分に登用した黄皓と諸葛瞻が、
軍事は奴らのお気に入りの閻宇が壟断し、屋台骨を傾けている」


挿絵(By みてみん) 樊建はんけん
「元より陛下は自ら何かをなさる方ではない。
臣下さえ優秀ならば、問題なく国を治められるだろうが……」


挿絵(By みてみん) 郤正げきせい
「まず差し迫った問題は魏軍だ。
呉からの援軍は期待できないのか?」


挿絵(By みてみん) 樊建はんけん
「呉は独裁続きで傾けた国力を立て直しているさなかだ。
荊州方面を治める陸抗りくこうは、魏の羊祜ようこと不可侵条約を結び、
兵を動かさないことで均衡を保っている。
援軍どころか外征に乗り出す力も無いだろう」


挿絵(By みてみん) 郤正げきせい
「全ては姜維の双肩に掛かっているということか……」


挿絵(By みてみん) 譙周しょうしゅう
「わーっ! すいません、前が見えずにぶつかってしまいました!」


挿絵(By みてみん) 樊建はんけん
「いや、我々も話に夢中で不注意だった。
……それにしてもすごい書物の山を運んでいるな。
そんなのを抱えていては前が見えないのも無理はない。少し手伝おう」


挿絵(By みてみん) 譙周しょうしゅう
「ありがとうございます!
実は最近、ぼくちんにも弟子ができまして、すごい才能の持ち主なんですよ!
読んだものを片っ端から吸収しまして、
真綿が水を吸うように、とはこのことかと驚いています」


挿絵(By みてみん) 郤正げきせい
「ほう、譙周殿にそこまで言わせるとは。
その書物の山も弟子のために用意したのですな。
名前はなんというのですか?」


挿絵(By みてみん) 譙周しょうしゅう
陳寿ちんじゅです。
このままいけば、それこそ歴史に名を残すほどの逸材に育つんじゃないかなあ……」


~~~魏 洛陽らくようの都 宮廷~~~


挿絵(By みてみん) 司馬孚しばふ
「無謀です! あまりに無謀です!
はっきり申し上げて万に一つの勝機もありません!」


挿絵(By みてみん) 陳泰ちんたい
「決意は堅いでしょうが、どうか考え直してください」


挿絵(By みてみん) 曹髦そうぼう
「君達の言い分はわかるし感謝もしている。
だが僕は曹一族の長として、立たねばならないんだ!」


挿絵(By みてみん) 陳泰ちんたい
「世の中なにが起こるかわかりません。
今ここで全ての可能性を断つことに、賛成なんてできませんよ」


挿絵(By みてみん) 曹髦そうぼう
「僕が一族の最後の一人だとは限らない。
僕が斃れれば全てが終わるわけじゃない」


挿絵(By みてみん) 司馬孚しばふ
「……少なくとも、次の皇帝の候補でしょう曹奐そうかん様に、
陛下ほどの器量はありません。
あなたが死ねば曹一族は、魏は終わりです」


挿絵(By みてみん) 曹髦そうぼう
「だからと言って傀儡のまま指をくわえて見ていろと?
司馬昭の心は道行く誰もが知っている。
時機が満ちればいずれ僕を廃位し、魏を乗っ取るだろう」


挿絵(By みてみん) 陳泰ちんたい
「だからと言って逆に御自分から仕掛けるってのは、完全に自殺行為ですよ。
……正直この話も司馬昭には筒抜けでしょう。
それがわかってるから、陛下はまず俺らの自由を奪ってから決起を打ち明けた」


挿絵(By みてみん) 司馬孚しばふ
「しびれ薬に引っ掛かるとは不覚だ!
陛下がそこまで思い詰めていることに気づかなかったとは……」


挿絵(By みてみん) 曹髦そうぼう
「僕が決起したと知れば、君達は必ず手を貸してくれると思っていた。
だから先手を打って君達の動きを封じさせてもらった。
……君達を巻き込みたくなかった。だが僕の決意は聞いて欲しかったんだ」


挿絵(By みてみん) 陳泰ちんたい
「陛下……アンタは大馬鹿野郎だ!」


挿絵(By みてみん) 曹髦そうぼう
「司馬昭の首が獲れるなんて思ってないよ。
ただ僕は魏の皇帝として、独裁者に一矢報いたいだけだ。
……それじゃあ行ってくる」


挿絵(By みてみん) 司馬孚しばふ
「陛下ーーーッ!!」


~~~魏 洛陽の都~~~


挿絵(By みてみん) 賈充かじゅう
「藪から棒に司馬昭様を出せだなどと、
いくら陛下の御言葉でも聞き入れかねます」


挿絵(By みてみん) 曹髦そうぼう
「斬られたくなければそこをどけ!
……いや、君はとっくに兵の後ろに隠れているか。
君ごときに用はない。司馬昭を呼べ。
曹髦が決闘を申し込むと言っているのだ!」


挿絵(By みてみん) 賈充かじゅう
「やれやれ……。そうして応じない司馬昭様に恥をかかせようという魂胆か?
まるで児戯にも等しい浅はかな考えだ。覚えておきなさい。
一国の王たる者は、あなたのように自ら刃を振りかざしたりはしないものだ」


挿絵(By みてみん) 曹髦そうぼう
「君は項羽こうう光武帝こうぶていを知らぬのか?
偉大なる曹操や、呉の孫権も自ら武器を取ったと聞く」


挿絵(By みてみん) 賈充かじゅう
「これだから頭でっかちは困る。冥土の土産にこれも覚えておきなさい。
歴史は勝者が作るのだ。あなたの愚行はこう記されるだろう。
曹髦は錯乱し、皇后暗殺を企んだため誅殺された、と」


挿絵(By みてみん) 曹髦そうぼう
「なるほど。だがここに詰めかけた兵達はどうする?
全員を口封じするのか?
君や司馬昭直属の精鋭ばかりだ。殺すには骨が折れるしもったいないぞ」


挿絵(By みてみん) 成済せいせい
「あ、あっしらを殺すつもりなんですかい?」


挿絵(By みてみん) 賈充かじゅう
「こ、殺しはせぬ!
ええい、早くこの減らず口を黙らせろ!
成済、お前でいい。さっさとやれ!」


挿絵(By みてみん) 成済せいせい
「ええっ!? へ、陛下をあっしが殺すんですか……?」


挿絵(By みてみん) 賈充かじゅう
「こんな時のためにお前を飼ってやっていたのだろうが!
罪には問わぬからやれ! それとも渤海ぼっかいの東の果てにでも流されたいか?」


挿絵(By みてみん) 成済せいせい
「や、やりますよ! やりますったら!
へ、へ、陛下! あっしを恨まないでくださいよ!!」


挿絵(By みてみん) 曹髦そうぼう
「成済と言ったな」


挿絵(By みてみん) 成済せいせい
「へ、へい!!」


挿絵(By みてみん) 曹髦そうぼう
「覚えておこう。だから君達も僕の最期の姿を覚えておいてくれ……。
さあ、掛かってくるがいい!」


~~~魏 洛陽の都~~~


挿絵(By みてみん) 陳泰ちんたい
「陛下……どうか、どうか早まらずに……」


挿絵(By みてみん) 司馬昭しばしょう
「おやおや、どうしたんだい陳泰君。
フラフラじゃないか。さては二日酔いだな」


挿絵(By みてみん) 司馬孚しばふ
「し、司馬昭! へ、陛下は無事であろうな!」


挿絵(By みてみん) 司馬昭しばしょう
「これはこれは、叔父上まで深酒ですか?
少しはお年を考えてください」


挿絵(By みてみん) 陳泰ちんたい
「陛下は無事かと聞いている!」


挿絵(By みてみん) 司馬昭しばしょう
「ヘイカ……?
ああ、あの皇后様を暗殺しようと企んだ不届き者ですか。
とっくに始末しましたよ」


挿絵(By みてみん) 司馬孚しばふ
「なっ………………!?」


挿絵(By みてみん) 司馬昭しばしょう
「いやはや驚きました。
錯乱でもしたのか抜刀したまま宮廷に入ろうとしましたから、
衛兵と揉み合いになり相討ちになりましたよ。
成済とかいう優秀な衛兵でしたが、もったいないことをしたものです」


挿絵(By みてみん) 陳泰ちんたい
「くっ…………。
お前のことだ。現場には出ずに指示だけ下したのだろう。
陛下を殺させたのは賈充か? 今すぐここに連れてこい!
八つ裂きにしてやる!!」


挿絵(By みてみん) 司馬昭しばしょう
「賈充なら闖入者に怯えて部屋に閉じこもってるよ。
何をそんなに怒っている? 不届き者を成敗しただけだ
皇后様が無事だったことを喜びたまえ」


挿絵(By みてみん) 陳泰ちんたい
「……報いは必ずあるぞ。覚えておけよ」


挿絵(By みてみん) 司馬昭しばしょう
「はて、何の話だ?
そんなことより一刻も早く次の皇帝を決めなければならない。
錯乱しないような落ち着いた人物を選ばないとね。
叔父上にも手伝ってもらいますよ。
お言葉ですが、もう少し司馬一族としての自覚を持っていただきたい」


挿絵(By みてみん) 司馬孚しばふ
「……私はいつまでも魏の臣下だ」


挿絵(By みてみん) 司馬昭しばしょう
「なるほど。貴重なご意見です。
ああ、それにしても厄介なことだ。
また頭痛の種が増えてしまったよ」


挿絵(By みてみん) 司馬孚しばふ
「………………」


~~~魏 蜀討伐軍~~~


挿絵(By みてみん) 鍾会しょうかい
「ほう、都でそんな事件が起こったのか。
興味深いがこちらには影響ない。粛々と準備を進めよう」


挿絵(By みてみん) 師纂しさん
「はッ!」


挿絵(By みてみん) 鄧艾とうがい
「……鍾会に照会。
魏平ぎへい戴陵たいりょうどこに存在?
益州攻めるに二人は不可欠」


挿絵(By みてみん) 鍾会しょうかい
「魏平と戴陵? そんな三下は遠征に必要ない。
遠征軍には組み込まず、留守居役にしておいた」


挿絵(By みてみん) 鄧艾とうがい
「二人の経験、豊富な体験。
蜀軍倒せる将軍二人。留守番させては足元お留守」


挿絵(By みてみん) 鍾会しょうかい
「なかよし倶楽部の二人が恋しいのか?
益州攻略の司令官は私だ。私の裁量で遠征軍を選んだ。
これ以上不平を唱えるなら、いくら同格のお前でも容赦しない」


挿絵(By みてみん) 鄧艾とうがい
「………………」


挿絵(By みてみん) 唐彬とうひん
「そのくらいにしておけ。
味方同士で争っていても銭にはならないぞ」


挿絵(By みてみん) 胡烈これつ
「これつ は ようすをみている」


挿絵(By みてみん) 鍾会しょうかい
「鄧艾の副将には師纂を付ける。
外見はこんなだが頭の切れる男だ。魏平や戴陵などより使えるだろう。
師纂の意見をよく参考にするのだな」


挿絵(By みてみん) 師纂しさん
「よろしく頼む」


挿絵(By みてみん) 鄧艾とうがい
「わかった鍾会。これからショータイム。
益州攻め入り上げるぜ勝鬨、敵襲退け暴れる時々。
来週討ち入り敵さんドキドキ、毎週ため息さんざ――」


挿絵(By みてみん) 鍾会しょうかい
「さあ、さっさと準備を進めろ!」


挿絵(By みてみん) 鄧艾とうがい
「………………」


~~~蜀 漢中かんちゅう~~~


挿絵(By みてみん) 廖化りょうか
「姜維! ついに魏軍が動いたぞ!
間違いなくこの戦いで益州を制圧するつもりだ!」


挿絵(By みてみん) 張翼ちょうよく
「とうとう来ましたね。
これが乾坤一擲の戦いとなるでしょう。作戦はありますか?」


挿絵(By みてみん) 姜維きょうい
「……剣閣けんかくで籠城する」


挿絵(By みてみん) 廖化りょうか
「剣閣!? 馬鹿な、漢中をみすみす魏にくれてやるのか!?」


挿絵(By みてみん) 姜維きょうい
「剣閣まで退けば後方の城に詰めている馬邈や王含、
永安えいあんを守る閻宇とも連携が取れる。
成都から援軍が出れば、彼らとの合流もたやすい」


挿絵(By みてみん) 張翼ちょうよく
「確かに魏軍は今までにない大軍です。漢中で支えきれるかは微妙な線ですが、
だからと言って少し消極的には過ぎませんか?」


挿絵(By みてみん) 姜維きょうい
「漢中に釘付けにされ、その間に後方に兵を回されれば成都が危険だ。
野戦を挑みもし敗れても、一気に成都まで抜かれる。
剣閣を中心に防衛線を築くのが次善の策だ」


挿絵(By みてみん) 傅僉ふせん
「ホホホ。剣閣の背後は獣も通れぬ蜀の桟道。
いかな魏の精鋭といえども迂回はできませんね」


挿絵(By みてみん) 廖化りょうか
「……理にはかなっているな」


挿絵(By みてみん) 張翼ちょうよく
「蜀で最も優れた将は姜維さんです。
どの道、我々は従う他ありませんよ」


挿絵(By みてみん) 姜維きょうい
「私を信じてくれることに感謝する。
さあ、剣閣でただ魏軍にさよならを言う練習をしよう」


~~~~~~~~~


かくして曹髦は魏と一族に殉じた。
そして鍾会の尽きぬ野望は蜀に迫り、
姜維は最後の戦場に向かう。

次回 一二〇   蜀漢最後の戦い
+注意+
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