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アイコン三国志 作者:小金沢

第二章 魔王・董卓

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〇一一   玉璽のゆくえ

~~~しょう~~~


挿絵(By みてみん)
鮑信ほうしん
「ここが曹操殿の故郷であるか。ようやくたどり着いたな」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「ここまで来られたのは君と王匡おうきょう君のおかげだよ」


挿絵(By みてみん)
鮑信ほうしん
「私はともかく、王匡の犠牲のおかげであろう。
まさか呂布に出くわすとは思わなかった。
王匡が足止めを買って出てくれなければ、全滅していただろうな」


挿絵(By みてみん)
夏侯惇かこうとん
「曹操! 無事だったか。
董卓軍にやられたと聞いたが、どうやら首はつながっているようだな」


挿絵(By みてみん)
曹仁そうじん
「曹洪も無事か! 俺に代わりよく殿を守ってくれた!」


挿絵(By みてみん)
夏侯淵かこうえん
「手酷くやられたようだな。だがもう心配はいらん。
兵は集めたし、俺たちが殿に指一本触れさせはせん。
さあ、すぐに董卓の首級を挙げに行こう!」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「君たちは相変わらずだね。安心したよ。
でも焦ることはない。準備を整えてから再起を図ろう。
この敗戦で僕らに決定的に足りない物がわかった。
まずはそれを集めるのさ」


挿絵(By みてみん)
曹洪そうこう
「ああ、俺にも身にしみてわかったぞ!
金だ! 金が足りないんだ!
金さえあれば兵も集まる。外交も有利に進むし、
官位だってもらえる」


挿絵(By みてみん)
韓浩かんこう
「違う、米だ。あんたたちに足りないのは米だよ」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「……失礼だが、君は誰だい?」


挿絵(By みてみん)
韓浩かんこう
「王匡の下にいた韓浩だ。
王匡が呂布に捕らえられる前、
曹操殿の力になるようにと命じられた」


挿絵(By みてみん)
鮑信ほうしん
「やはり王匡は捕らえられたのか……」


挿絵(By みてみん)
韓浩かんこう
「そんなことより米だ。米さえあれば金も兵も民も集まる。
屯田策を行い、他国よりも大量の米を確保すれば、
常に優勢に戦えるだろう」


挿絵(By みてみん)
曹操そうそう
「……金も米も兵も大事だ。
だがもっと大事な物がある。それは人だよ。
君たちが頼りにならないと言ってるんじゃない。
君たちのように頼りになる人材をもっともっと集めるんだ」


~~~揚州ようしゅう~~~


挿絵(By みてみん)
袁遺えんい
「……袁術、なんのつもりだ?」


挿絵(By みてみん)
袁術えんじゅつ
「見ればわかるザンしょ? 袁遺には死んでもらうザンス。
揚州刺史の座はユーにはもったいないザンス」


挿絵(By みてみん)
袁遺えんい
「わかった。お前に刺史の座を譲ろう」


挿絵(By みてみん)
袁術えんじゅつ
「おんや~? ずいぶんあっさり降参するザンスね?」


挿絵(By みてみん)
袁遺えんい
「戦ではお前や袁紹には勝てないからな。
だが袁術、強すぎる欲望は身を滅ぼすぞ。
人間は寝床と本さえあれば幸せに生きられるのだ。
お前たちは分不相応なものを求めている」


挿絵(By みてみん)
袁術えんじゅつ
「ミーに説教とはいい度胸ザンス! 死ぬがいいザンス!」


挿絵(By みてみん)
袁遺えんい
「私はただの学者上がりだぞ。
放っておいたところで、お前に害は及ぼさん」


挿絵(By みてみん)
袁術えんじゅつ
「ユーは腐っても袁家の人間ザンス。
ユーにその気がなくても、ユーを担ぎ上げようとするヤツが
出てきたら厄介ザンス」


挿絵(By みてみん)
袁遺えんい
「……これも袁家に生まれた宿命か。
わかった、殺すがいい。
だが一つだけ願いを聞いてくれ。
読みさしの本を、私の棺の中に入れてくれないか?」


挿絵(By みてみん)
袁術えんじゅつ
「ごちゃごちゃうるさいザンス! 早く殺すザンス!!」


挿絵(By みてみん)
袁遺えんい
(名門・袁家も、この男たちによって絶やされるのか……)


~~~東郡とうぐん~~~


挿絵(By みてみん)
橋瑁きょうぼう
「り、劉岱殿……。こ、これはいったいなんの真似ですかな?」


挿絵(By みてみん)
劉岱りゅうたい
「知れたことを! お前を殺して東郡を乗っ取ってやる!」


挿絵(By みてみん)
橋瑁きょうぼう
「そ、そんな……。
我々は董卓追討軍として一緒に戦った同志ではありませんか!」


挿絵(By みてみん)
劉岱りゅうたい
「同志? はっはっはっ。これだから名士は頭が悪い!
今は乱世であるぞ。弱肉強食は世の習いだ。
袁遺も袁術に殺されたばかりではないか!」


挿絵(By みてみん)
橋瑁きょうぼう
「そ、それならばおとなしく東郡を明け渡しますから、
どうかお見逃しを――」


挿絵(By みてみん)
劉岱りゅうたい
「それはならん!
お前ら名士は実力はないくせに名声だけはあるからな。
お前を生かしておいたら、力を蓄えて復讐してくるかもしれん」


挿絵(By みてみん)
橋瑁きょうぼう
「け、決してそのようなことは――うわあああああああ!!」


挿絵(By みてみん)
劉岱りゅうたい
「はっはっはっ! これで東郡は俺様の物だーーッ!」


~~~洛陽らくようの都 宮殿跡地~~~


挿絵(By みてみん)
孫堅そんけん
「宮殿も元通りとはいかねェが、ちったぁマシになったな。
こんなら陛下が戻ってきても、雨風くらいはしのげんだろ」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「はい。旦那様の心づくしに陛下も喜ばれることでしょう。
……ところで、お言葉ではございますが、
旦那様は今後はいかがなされるおつもりですか?」


挿絵(By みてみん)
孫堅そんけん
「とりあえずは長沙ちょうさに戻ろうと思う。
区星おうせいの野郎を適当に片付けちまったからな。
あの後どうなったか心配だしよ」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「董卓様に勝手に任命された官職ですから
放っておいてもよろしいのですが……。
責任感の強い旦那様は、職務をまっとうされるのですな。
流石でございます」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「艦長! ちょっとこっちに来てくれねえか」


挿絵(By みてみん)
孫堅そんけん
「どうした? おめェが青い顔するなんて珍しいじゃねェか」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「いや、それがよ……崩れた井戸を直してたら、
中からこんな物が見つかっちまったんだ」


挿絵(By みてみん)
玉璽ぎょくじ


挿絵(By みてみん)
孫堅そんけん
「これは……玉璽じゃねェか!!
陛下が使う印鑑、つまり皇帝の証だ。
韓当、とんでもねェ物を拾いやがったな」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「誰かが賊に奪われないように、井戸へ隠したんだろうな。
見なかったことにして埋め直しちまいましょうか?」


挿絵(By みてみん)
孫堅そんけん
「バカ野郎! これは陛下の持ち物だ。
オレたちが勝手にうっちゃっちまっていい物じゃねェよ。
それにもし悪用されたらとんでもねェことになっちまうぜ。
長安ちょうあんまで攻め上がって、陛下にお返ししてェところだが、
オレたちの戦力じゃ無理な話だ。
しかたねェ、当分はオレが預かるとしよう」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「そうと決まりましたら、
おかしな噂が立つ前にすぐに洛陽を離れましょう」


挿絵(By みてみん)
孫堅そんけん
「ああ。とっとと長沙に引き上げるぜ。
程普、悪ィが通り道になる荊州けいしゅうの領主サマに、
通行の許可を得てきてくんな」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「もしお断わりされてしまいましたら、いかがなさいますかな?」


挿絵(By みてみん)
孫堅そんけん
「そんときゃあ、宣戦布告してきてくんな」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「かしこまりました」


~~~荊州けいしゅう 襄陽じょうよう~~~


挿絵(By みてみん)
劉表りゅうひょう
「ええ、かまいませんよ。
荊州の兵は道を空けますから、どうぞお通り下さい。
孫堅さんにもよろしくお伝え下さい」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「快いご返事をありがとうございます。主人も喜ぶことでしょう。
それでは失礼致します」


挿絵(By みてみん)
劉表りゅうひょう
「……蔡瑁さん、蒯越さん。今のお話、どう思いますか?」


挿絵(By みてみん)
蔡瑁さいぼう
「いい機会だ。孫堅を騙し討ちにしちまおう。
あんな物騒なヤツが長沙なんて近くにいやがったら、
枕を高くして寝られないぞ」


挿絵(By みてみん)
蒯越かいえつ
「孫堅といえば謀略を好む男ですが、話自体に裏は無さそうですな。
後は殿の御心づもり次第です」


挿絵(By みてみん)
劉表りゅうひょう
「わかりました。
それではいつも通り、黄祖こうそさんに任せましょう」


~~~荊州 北部~~~


挿絵(By みてみん)
孫堅そんけん
「通るたびに思うんだがよ、荊州ってなァいい土地だな。
広いし、豊かだし、民も穏やかだ。
いつかここを領地にしてえもんだ」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「旦那様、誰の耳があるとも限りません。
滅多なことをおっしゃられますな」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「……他人の土地を通りながらいい気なものだな。
だがあの孫堅という男、ただの放言だけでは
済まされない雰囲気を持っている。
いつか本当に荊州を脅かす日が来るだろう。
劉表様が存在を危ぶまれるのももっともだ」


挿絵(By みてみん)
呂公りょこう
「細かいことはよくわからねえが、
要は孫堅を殺しちまえばいいんだろ? 腕が鳴るぜ!」


挿絵(By みてみん)
黄祖こうそ
「黙れ……射程だ……」


挿絵(By みてみん)
蘇飛そひ
「わかりました。射ち方、用意!」


挿絵(By みてみん)
黄祖こうそ
「…………………………射よ!!」


挿絵(By みてみん)
呂公りょこう
「死ね孫堅!!」


挿絵(By みてみん)
孫堅そんけん
「ぐあぁッッッ!?」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「旦那様ッ!!」


挿絵(By みてみん)
孫堅そんけん
「チッ……やってくれたな劉表」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「くそおっ! ただでは済まさんぞ! 襲撃者を探せ!」


挿絵(By みてみん)
孫堅そんけん
「やめろ、無駄だ。劉表の噂は聞いている。
襲撃者を捕まえたって、尻尾をつかませやしねェよ。
深追いしてこれ以上、犠牲を出すな……」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「旦那様! しっかりなさってください!」


挿絵(By みてみん)
孫堅そんけん
「いや……急所に当たっちまってらァ。もう助からねえよ……。
長沙にゃあ息子が、孫策そんさくがいる。
孫策と兄弟みてェに育った周瑜しゅうゆもいるんだ。
後はアイツらに任せな……」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「何を弱気なことを。孫策様も周瑜もまだ14歳だ。
艦長がいなけりゃ駄目だろうが!」


挿絵(By みてみん)
孫堅そんけん
「けっ。弱気なことを言ってんのはどっちだよ。
孫策を頼んだぜ……。……もっとも、アイツもオレみてえに
つまんねェ死に方しそうな性格してるがな……」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「だ、旦那様ぁぁぁぁッ!!!」


~~~長沙ちょうさ~~~


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「…………」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「…………」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「おかわいそうに。突然の訃報に言葉も無いようでございます」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「無理もねえ。俺たちだってまだ現実感がねえんだ。
艦長が……あの艦長が死んじまったなんてよ」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「………………ま、しかたねェわな」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「…………は? いま、なんとおっしゃられましたかな」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「だからしかたねェって言ったんだ。
親父は死んだ! もういねェ!
だったら次のことを考えようや」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「な、なんと…………」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「おい周瑜。おめえは江南の情勢に詳しかったな」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「ああ。この長沙にいる間、付近の情報を集めた」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「このあたりでいま、一番困ってる領主は誰だ?」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「フッ。困っている、とは孫策らしい表現だ。
そうだな、困っているといえば袁術だな。
董卓追討軍を離れてから、彼は中央の戦乱を避け、江東に移った。
袁遺から揚州を奪ったが、土地勘のない所に来て、
さぞかし困っていることだろう」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「だったら話は早ェや。オレらは袁術に降るぞ」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「そ、孫策様。
わ、私どもにもわかるようにお話いただけませんか」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「なんでえまだるっこしいな。
だからよォ。ええと。つまり、だ。
……めんどくせェや。周瑜、説明しろ」


挿絵(By みてみん)
周瑜しゅうゆ
「やれやれ孫策はいつもそうだ。――つまり、こういうことです。
今の私たちは弱い。西に劉表、北に大河、
南に異民族を抱え身動きすら取れません。
ならば東に目を向け、困っている方に恩を売り、
その間に力を蓄えるのです」


挿絵(By みてみん)
孫策そんさく
「つーこった。すまねェなみんな。オレはまだ弱い!
でもよ、14歳のオレは弱いが、たとえば五年後、
19歳のオレはそうとは限らねェぜ。もうしばらく、
オレがみんなを率いられるくらいになるまで、我慢してくれ。
それまでは、袁術の下で働こうや」


挿絵(By みてみん)
韓当かんとう
「待とう! 俺はいつまでも待つぞ!
孫策新艦長とともに戦える日をな!」


挿絵(By みてみん)
程普ていふ
「なんと、なんと旦那様。孫策様は、そして周瑜は、
これほどの思慮深さを身につけておられたのですか……」


~~~~~~~~~


かくして江東の虎・孫堅は死んだ。
だが虎の遺伝子を継ぐ男は、静かにその牙を研いでいた。
一方その頃、北方でも風雲は急を告げようとしていた……。

次回 〇一二   界橋の戦い
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