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アイコン三国志 作者:小金沢

第十一章 三国の終焉

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一〇八   公孫淵の野望

~~~魏 洛陽の都~~~


挿絵(By みてみん) 馬鈞ばきん
「つまり水の力と天秤を利用して、自動で床が上下する仕掛けだヨ」


挿絵(By みてみん) 曹叡そうえい
「ほう。それは面白いね。ぜひやってくれたまえ。
それとこっちの設計図なんだけど――」


挿絵(By みてみん) 楊阜ようふ
「…………陛下。
お言葉ですが、馬鈞殿の発明をいちいち取り立てて
宮殿を造営していたら、いくら資金があっても足りませんぞ」


挿絵(By みてみん) 高堂隆こうどうりゅう
「問題は資金だけではにゃい。
動員しゃれた民も、ひっきりなしに工事が続き怨嗟の声をあげておりましゅぞ!」


挿絵(By みてみん) 曹叡そうえい
「わかっているよ。だから農閑期の民で、希望した者しか動員していないじゃないか。
なるべく負担は掛けていないはずだよ。それに報酬もきちんと払っているさ」


挿絵(By みてみん) 楊阜ようふ
「……その報酬が多すぎて、財政が逼迫しているのです」


挿絵(By みてみん) 高堂隆こうどうりゅう
「民も働くには働くが、味をしめてもっと報酬を増やしぇと要求しておりゅのじゃ」


挿絵(By みてみん) 孫礼そんれい
「それに口さがない者からは、
陛下は中華統一もならないうちに宮殿造営に血道を上げている。
諸葛亮が死んだことで、もう天下に敵はないと思っているのだろうと
陰口を叩かれておりますぞ」


挿絵(By みてみん) 楊阜ようふ
「ん? 孫礼、お前虎の呪いは解けたのか? ちっとも叫ばないじゃないか」


挿絵(By みてみん) 孫礼そんれい
「蜀への遠征中に旅の僧侶から破呪の祈祷を受けたのだ。
費褘とかいう僧侶だった。おかげで助かった」


挿絵(By みてみん) 楊阜ようふ
「そうか。それは良かったがお前の個性が薄くなったな。
……んん? 費褘というのはたしか蜀の――」


挿絵(By みてみん) 高堂隆こうどうりゅう
「しょんなことはどうでもよい!
陛下! どうか考えを改めていただきたい。
お望みとあらばワシの皺首でもなんでも差し出しましゅぞ!」


挿絵(By みてみん) 曹叡そうえい
「君の生首なんかもらっても困るよ。まあ落ち着きたまえ。
君たちの言い分はわかった。
だがここまで造営を続けてきて、途中で投げ出したらそれこそみんなに恨まれるよ。
だから切りの良い所まででも――」


挿絵(By みてみん) 盧毓ろいく
「陛下! 一大事です!
遼東りょうとうの公孫淵がえん王を自称し謀叛を起こしたと急報が入りました!」


挿絵(By みてみん) 楊阜ようふ
「なんだと!? 公孫淵といえば公孫康こうそんこうの跡を継いだ息子だったな」


挿絵(By みてみん) 高堂隆こうどうりゅう
「呉と組んでにゃにやら不穏な動きを
していりゅと聞いておったが、ちゅいに謀叛しおったか!」


挿絵(By みてみん) 曹叡そうえい
「これは大変だ。至急、司馬懿君を呼んでくれたまえ。彼に討伐してもらおう」


~~~燕 遼東~~~


挿絵(By みてみん) 公孫恭こうそんきょう
「淵よ……。お前はもうすこし賢い男だと思っていたがな。見損なったぞ」


挿絵(By みてみん) 公孫淵こうそんえん
「何を言われるか叔父上。見損なったのは俺の方だ。
我が燕グループは15万の大軍を擁する大企業である。
これだけの社員を持ちながら中華の覇権を望まないとは愚かの極みだ!」


挿絵(By みてみん) 公孫恭こうそんきょう
「どうやらお前は兄上の、公孫康の遺訓を忘れてしまったようだ。
ただ遼東の保全を図り、身の丈に合わない多くを望むなという遺訓を」


挿絵(By みてみん) 公孫淵こうそんえん
「我が社の社訓は『365日24時間死ぬまで戦え』だ!
15万の社員が血眼になって働けば魏など恐れることはない!」


挿絵(By みてみん) 公孫恭こうそんきょう
「……もはや何を言っても無駄か。
どうせ幽閉された私には見守ることしかできない。
遼東の民をなるべく苦しませないことを祈るとしよう……」


~~~魏 洛陽~~~


挿絵(By みてみん) 楊阜ようふ
「は? 百万の兵を貸して欲しいだと?」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
「は、はい。路傍に生えた雑草の茎にしがみつく虫けらのような私でも、
百万の兵があれば万が一にも勝ちを拾うことができなくはないと思いま――」


挿絵(By みてみん) 毌丘倹かんきゅうけん
「そそそんな大軍がどどどこにあると言うのだだだ!!!」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
「ひいっ!! え、エコーの利いた声で怒鳴らないでくださいませ!!」


挿絵(By みてみん) 毌丘倹かんきゅうけん
「しし司馬懿殿には任せておけんんん。
ここ公孫淵の討伐は俺に命じてくれれれ!!!」


挿絵(By みてみん) 曹叡そうえい
「申し出はありがたいけど、やっぱり司馬懿君に任せるよ。
僕は司馬懿君ならやってくれると信じている。
百万は無理だけど4万の兵を出そう。毌丘倹君は先鋒を務めてくれたまえ」


挿絵(By みてみん) 孫資そんし
「ワタシも司馬懿殿を全力で補佐いたすのであ~る」


挿絵(By みてみん) 夏侯覇かこうは
「そうと決まったらさっさと行こうぜ。オレは手勢をつれて先行しよう」


挿絵(By みてみん) 黄権こうけん
「がはは。相変わらずせっかちタイな。おいどんもお供するタイ!」


挿絵(By みてみん) 劉曄りゅうよう
「実戦経験の薄い公孫淵の兵などいくらいても物の数ではあるまい。
行きに百日、戦闘に百日、休養に60日、帰りに百日で一年で片がつくだろう」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
「あわわわわわわ。た、たった4万で戦えなんてそんな無茶な話――」


挿絵(By みてみん) 毌丘倹かんきゅうけん
「つつつべこべ言うななな! おお置いていくぞぞぞ!!!」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
(置いていってくれてもいいのに…………)


~~~燕 遼東~~~


挿絵(By みてみん) 公孫淵こうそんえん
「なに? 魏軍に勝つのは無理だと?」


挿絵(By みてみん) 倫直りんちょく
「恐れながら申し上げます。
魏軍は蜀や呉との戦いに明け暮れ、
その練度は我々の兵と比べ物にもなりません」


挿絵(By みてみん) 賈範かはん
「それに司馬懿は悪魔のような諸葛亮を相手に互角に戦った名将です。
我々には彼の策謀に対抗できる軍師もおりません」


挿絵(By みてみん) 公孫淵こうそんえん
「それがどうした! 無理というのは嘘つきの言葉だ。
途中で諦めるから無理になるんだ。
諦めなければ無理なことなどない!」


挿絵(By みてみん) 公孫修こうそんしゅう
「第一、魏軍はたったの4万ぽっちだと言うではないか。
我々の3分の1以下だ! 負ける理由などどこにもない!
社長、倫直も賈範も我が社には不要な人材だ。
首を斬って戦の景気付けとしよう!」


挿絵(By みてみん) 倫直りんちょく
「お、お待ちくだされ!」


挿絵(By みてみん) 賈範かはん
「で、出すぎた真似をしました!
そ、それならば我々に呉への援軍を求める役目を与え――」


挿絵(By みてみん) 公孫淵こうそんえん
「斬られるのが嫌なら今すぐその八階の窓から飛び降りろ!
手伝ってやれ卑衍!」


挿絵(By みてみん) 卑衍ひえん
「喜んで!」


挿絵(By みてみん) 倫直りんちょく
「お、お、お許しを!!」


挿絵(By みてみん) 賈範かはん
「ひいいいいいいっ!!」


~~~魏 遠征軍~~~


挿絵(By みてみん) 孫資そんし
「公孫淵は延々と二十里にわたって塹壕を掘り、
ワタシたちを待ち構えているのであ~る」


挿絵(By みてみん) 黄権こうけん
「七日七晩徹夜の突貫作業で掘ったと、投降してきた兵が言ってたタイ。
残っている連中も疲れ切ってろくに戦えないだろう。今が攻撃の好機タイ!」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
「そ、そうですか。それではすぐに撤退の準備を……」


挿絵(By みてみん) 夏侯覇かこうは
「わかった! 公孫淵軍を撤退させる準備をしよう!
まずは俺が攻撃を仕掛ける!」


挿絵(By みてみん) 毌丘倹かんきゅうけん
「まま待てええいいい! せせ先鋒を命じられたのは俺だあああ!!!」


挿絵(By みてみん) 孫資そんし
「落ち着くのだ諸君。
いくら相手が疲労の極みにあったとしても、
塹壕に正面攻撃をしては大きな犠牲が出るだろう。
ここは敵の背後に半数の兵を回し、
塹壕から引きずり出すのはいかがであ~るか、司馬懿殿」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
「は、半数の兵ですか。すると私の手元に残るのは2万ぽっち……。
いけません! そんなことになるなら全軍を率いて背後に回りましょう!」


挿絵(By みてみん) 孫資そんし
「なるほど。いっそのこと全軍が背後をうかがう動きを見せれば、
敵はいやおうなく塹壕から飛び出てくるであろう。
さすがは司馬懿殿、妙案であ~る!」


挿絵(By みてみん) 夏侯覇かこうは
「ならば俺は伏兵を率い、のこのこ顔を出した敵を叩いてやる! 先に行ってるぞ!」


挿絵(By みてみん) 毌丘倹かんきゅうけん
「そそそれなら俺は真っ先に敵の背後に回るるる。
せせ先鋒の俺が動けば敵はそれにつられるだろううう!!!」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
(私は別にいなくてもいいのでは…………)


~~~燕 卑衍軍~~~


挿絵(By みてみん) 卑衍ひえん
「おのれ魏軍め!
よくも我々が汗水たらして築いた塹壕を華麗にスルーしてくれたな!」


挿絵(By みてみん) 楊祚ようそ
「ひ、卑衍将軍! 背後に伏兵が現れました!」


挿絵(By みてみん) 夏侯覇かこうは
「夏侯淵の子、夏侯覇とは俺のことだ!
親父譲りの百発百中の弓の腕、見せてやるぜ!」


挿絵(By みてみん) 卑衍ひえん
「ぐわっ!! な、名乗りを上げる前にもう撃っているではないか…………」


挿絵(By みてみん) 楊祚ようそ
「ひ、ひ、卑衍将軍が一発で……。た、退却だ! 退却しろーーッ!!」


~~~燕 遼東~~~


挿絵(By みてみん) 公孫修こうそんしゅう
「お、お前たちに預けた8万の軍が壊滅だと?
いったい何をやっているのだ!」


挿絵(By みてみん) 楊祚ようそ
「魏軍は装備も練度も我々とはケタ違いです。
しかもまるで自分の手足のように兵を動かし、
我々は翻弄されるばかりで――」


挿絵(By みてみん) 公孫淵こうそんえん
「弱音を吐くな!
劣勢で会社が大変なら、サービス残業をすればいいだけだ!」


挿絵(By みてみん) 公孫修こうそんしゅう
「今日を精一杯生きた場合を100%として、
さらに20%の無理をすれば勝てるだろ!」


挿絵(By みてみん) 楊祚ようそ
「し、しかし後方の兵糧庫も焼き払われてしまい、
兵士の士気は地に落ちておりまして――」


挿絵(By みてみん) 公孫淵こうそんえん
「本当に会社のためを思っているなら兵糧を使っている時間などないはずだ!」


挿絵(By みてみん) 楊祚ようそ
(だ、駄目だ。この父子には何を言っても通じない。
かくなる上は――)


~~~魏 遠征軍~~~


挿絵(By みてみん) 孫資そんし
「我々に降伏したいと。それは君たちの総意なのであ~るか?」


挿絵(By みてみん) 楊祚ようそ
「い、いえ。私の独断です。
公孫淵らは戦況を見ずにただ精神論を唱えるだけで、このままでは玉砕するしかありません。
兵を無駄死にさせるくらいなら、公孫淵父子の寝首をかいて、貴国に寝返ろうと――」


挿絵(By みてみん) 毌丘倹かんきゅうけん
「フフフンンン! 手ててぬるいななな!!!」


挿絵(By みてみん) 楊祚ようそ
「ひ、ひいっ!?」


挿絵(By みてみん) 夏侯覇かこうは
「ああ、手ぬるい。俺だったら公孫淵らの首を手土産にここに現れてるぜ。
寝首をかこうかどうか俺たちに相談したいって? 何をぐずぐずやってんだ!」


挿絵(By みてみん) 孫資そんし
「そもそも戦には5つの選択肢があ~る。
戦意があるときは戦う。戦意がなければ守る。
守れなければ逃げる。あとは降るか死ぬかであ~る。
降伏もできないあなた方には死、あるのみだ。帰って公孫淵にそう伝えなさい」


挿絵(By みてみん) 黄権こうけん
「おととい来るがいいタイ!」


挿絵(By みてみん) 楊祚ようそ
「あ、あ、あ……?」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
(とうとう私は発言の必要もなくなった……。
ま、まずい。このままでは私は働いていないことになる。
都に凱旋したら何もしていないと怒られて処刑されてしまうのでは……。
な、何か存在感を示すことをしなければ!)


~~~魏 遼東~~~


挿絵(By みてみん) 公孫恭こうそんきょう
「公孫淵と公孫修は斬られたか。私の首も所望か?」


挿絵(By みてみん) 孫資そんし
「あなたは戦に最後まで反対していたと聞いている。
そのくらい現状認識のできる方に遼東を統治してもらえれば助かるのであ~る」


挿絵(By みてみん) 公孫恭こうそんきょう
「わかった。私の目の黒いうちは遼東を反乱させることはない」


挿絵(By みてみん) 孫資そんし
「そう願っていますよ。
司馬懿殿、それでは遠征を終えて帰還するであ~る」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
「て、て、手ぬるいですな!」


挿絵(By みてみん) 夏侯覇かこうは
「は?」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
「こ、この遼東は往復にも一年かかるような僻地です。
もしまた反乱の火が上がれば我々はさらなる消耗を強いられます。
ここは火種となるものを未然に潰しておくべきでしょう!」


挿絵(By みてみん) 黄権こうけん
「と言うと――?」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
「遼東の男子を根こそぎ殺しましょう!
そうすれば今後、数十年にわたって反乱されることはなくなります!」


挿絵(By みてみん) 公孫恭こうそんきょう
「なっ――――!?」


挿絵(By みてみん) 毌丘倹かんきゅうけん
「言いいうじゃねえか大将ううう! 見みみ直したぜぜぜ!!!」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
「ど、どうですか? 私の意見に反対ですか?」


挿絵(By みてみん) 孫資そんし
「……司令官は司馬懿殿であ~る。
我々はその言葉に従うだけであ~る」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
(や、やった! これは私にしかできないことだ!
これで都に帰っても陛下や妻に怒られない!)


挿絵(By みてみん) 公孫恭こうそんきょう
(……これが魏のやり方か。甘く見ていたな。公孫淵も、私も)


挿絵(By みてみん) 夏侯覇かこうは
「………………」


~~~~~~~~~


かくして司馬懿の遠征軍は公孫淵の野望をたやすく挫いた。
だが都に帰った彼らを悲報が待っていた。
魏は大きな転換点へと差し掛かる。

次回 一〇九   斜陽
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