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アイコン三国志 作者:小金沢

第十章 秋風五丈原

102/125

一〇一   石亭・陳倉の戦い

~~~魏 徐州じょしゅう~~~


挿絵(By みてみん) 賈逵かき
「――私は反対ですな」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「ユーが反対しようが関係ありません。もう決定事項です。
ミーはミスター周魴しゅうほうの策に乗り呉軍を打ち破ります」


挿絵(By みてみん) 賈逵かき
「たしか赤壁の戦いの時、曹休将軍はあちらの合肥の守りにおいででしたな」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「黄蓋のことを言いたいのですか?
赤壁の戦いに際し、呉軍から偽装投降し
我が軍のバトルシップを焼き払ったと聞いていますよ。
周魴も同じだと? 彼のレターを読んでもまだ疑うのですか?」


挿絵(By みてみん) 賈逵かき
「こちらの周魴の書状に記された意見はもっともです。
軍事機密に属するはずの呉軍の配置を事細かに記し、
しかも的確に我々のとるべき進撃路を示しています。
周魴の寝返りが本当ならば、間違いなく我々は勝利を得られるでしょう」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「周魴は些細なことから罪に問われ、
髠刑(こんけい 罪人の烙印として強制的に剃髪させる刑)に処されています。
呉軍を恨む気持ちはリアルでしょう」


挿絵(By みてみん) 賈逵かき
「処刑されたと言っても、たかが髪を切られただけです。
――将軍、提案があります。こたびの戦は私が指揮を取りましょう」


挿絵(By みてみん) 張普ちょうふ
「なんだと? さては曹休様の手柄を横取りするつもりだな!」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「落ち着きたまえ張普君。
賈逵君は周魴の寝返りをトラップだと信じているから、
ミーの代わりにトラップにかかってやろうと言っているんだ」


挿絵(By みてみん) 賈逵かき
「そこまでおわかりならば、なぜ私の意見を聞かれないのですか」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「すでに呉を攻める詔勅もいただいた。
ここまで準備を進めてきて、今さらユーに役割を代わってもらうなんて
ミーのプライドが許さないよ」


挿絵(By みてみん) 賈逵かき
(……誇りのために多くの将兵を危機にさらすつもりか)


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「周魴の寝返りがリアルであれば、ノープロブレムだよ。
そしてミーはリアルだと確信している」


挿絵(By みてみん) 賈逵かき
「……わかりました。それでは私は手はず通り、
豫州よしゅうの兵を率いあちらから進撃します」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「イエス。周魴の待つ皖城かんじょうで落ち合いましょう」


~~~呉 寿春じゅしゅん~~~


挿絵(By みてみん) 孫権そんけん
「そうか。曹休のヤローは周魴の寝返りを信じたか。
へへっ。やったな陸遜!」


挿絵(By みてみん) 陸遜りくそん
「曹休さんに狙いを絞ったのが良かったよね。
あの人なんだかんだいってお坊ちゃまだから、甘い話に弱いんだよな~」


挿絵(By みてみん) 全琮ぜんそう
「だが想定していたより兵力は多いようだぞ。
徐州に加え豫州、荊州けいしゅうの兵も動員していると聞く」


挿絵(By みてみん) 陸遜りくそん
「ボクらが兵力で劣るのは当たり前の話だからしょうがないですよ~。
ここでも狙いを曹休さんだけにググッと絞って、
曹休さんを袋叩きにしちゃいましょ!」


挿絵(By みてみん) 徐盛じょせい
「そうと決まればもうじっとしておられん。ワシは先に行くぞ!」


挿絵(By みてみん) 朱桓しゅかん
「艦長、俺も行くぜ。ジジイに先を越されるわけにはいかねえ。
作戦は陸遜に任せっから、おって指示を伝えてくれ」


挿絵(By みてみん) 孫権そんけん
「おう、魏軍を盛大にもてなしてやんな。錨を上げろ! 出航だ!!」


挿絵(By みてみん) 陸遜りくそん
「はーい!」


~~~呉 皖城~~~


挿絵(By みてみん) 張普ちょうふ
「し、将軍! 皖城には陸遜の兵が入っています!」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「……賈逵の不安が的中したというわけですね。
陸遜の兵はメニーですか?」


挿絵(By みてみん) 張普ちょうふ
「めにい? 兵数のことならせいぜい5千くらいです」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「なるほど。罠だとわかっていても、アタックしたくなる小勢ですね。
しかし呉軍はミーたちが豫州、荊州の兵まで
結集しているとは知らないでしょう。
これは陸遜の首を挙げるチャンスですよ!」


挿絵(By みてみん) 張普ちょうふ
「よっしゃ! 俺に任せてくれ将軍!」


挿絵(By みてみん) 鮮于丹せんうたん
「り、陸遜将軍! 曹休軍はひるむことなく攻めかかってきますぞ!」


挿絵(By みてみん) 陸遜りくそん
「あはは。ボクらが小勢だから
罠にかかりながらでも勝てると思ってるんだよ。
ホントにお坊ちゃまだよね~。面白いくらい思い通りに動いてくれるよ」


挿絵(By みてみん) 吾粲ごさん
「じ、冗談を言っている場合ではありませんぞ!
我々の兵が少ないのは事実です!」


挿絵(By みてみん) 陸遜りくそん
「あれれ? そこはお前もボンボンだろ! ってツッコむところでしょ。
潘璋さんや呂範さんが生きてたら絶対そう言ってたよ。ノリが悪いなあ」


挿絵(By みてみん) 鮮于丹せんうたん
「で、ですから将軍!」


挿絵(By みてみん) 陸遜りくそん
「あわてなくても大丈夫だよ。城門のところを見てごらん」


挿絵(By みてみん) 周魴しゅうほう
「来た来た」


挿絵(By みてみん) 鮮于丹せんうたん
「あ、あれは周魴殿!? たった一人で城門の前に……」


挿絵(By みてみん) 吾粲ごさん
「し、しかも城門が開いていく…………ッ!?」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「ストーーーーップ!! ウエイトしなさい張普!」


挿絵(By みてみん) 張普ちょうふ
「すと? うえ? そ、そんなことより周魴です!
周魴が一人で待ち構えています!」


挿絵(By みてみん) 周魴しゅうほう
「これはこれは、曹休殿下ではありませんか。ようこそいらっしゃいました。
さあさあ、遠慮なく城にお入りください」


挿絵(By みてみん) 張普ちょうふ
「じ、城門を開きたった一人で立ちふさがるだと……!?
し、将軍! これは罠ですよ!」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「見ればわかりますよ! さっさとあの裏切り者をアローで射殺しなさい!」


挿絵(By みてみん) 周魴しゅうほう
「いやいや、私は誰も裏切ってなどいない。はなから呉の臣だ。
そしてそして、私に矢など通用しない。
ほらほら、私を殺したければ近づいていらっしゃい」


挿絵(By みてみん) 張普ちょうふ
「よ、よくも我々をコケにしおって……。
望み通り殺してやる!!」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「ち、張普! ウエイト! ストップ! ハウス!!」


挿絵(By みてみん) 朱桓しゅかん
「手遅れだ」


挿絵(By みてみん) 張普ちょうふ
「な!? い、いつの間に背後にんぎゃああああああ!!!」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「や、やはり伏兵が潜んでいましたか! 張普め、なんとフールな……」


挿絵(By みてみん) 朱桓しゅかん
「悪いな周魴。あいつがあんまり隙だらけだったんでつい横取りしちまった」


挿絵(By みてみん) 周魴しゅうほう
「構わん構わん、どうせ三下だ。その代わり曹休は私の獲物だぞ」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「くっ……。朱桓が出てきたがまだたったの二人。
しかしこの分では何人が潜んでいるかわかりませんね。
ここはエスケープしますよ!」


挿絵(By みてみん) 陸遜りくそん
「えへへ。思った通り曹休さんったら尻尾を巻いて逃げてくよ。
朱桓さんは一人で来てるのに、伏兵がたくさんいると騙されちゃってるよ~」


挿絵(By みてみん) 吾粲ごさん
「こ、これが空城の計というものですかな……。
いやはや、冷や汗をかきましたぞ」


挿絵(By みてみん) 陸遜りくそん
「それじゃあ曹休さんの背後に回ってる徐盛さんに合図を送って。
ボクらも出撃して挟み撃ちにしちゃいましょう!」


~~~魏 曹休軍~~~


挿絵(By みてみん) 徐盛じょせい
「往生際が悪いぞ曹休! ここがお前の墓場じゃああッ!!」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「これほどの伏兵が潜んでいたとは……。
しかしネバーギブアップですよ! ユーたち、ミーを無事に逃がしなさい!」


挿絵(By みてみん) 全琮ぜんそう
「お前は完全に包囲されている! 観念しろ!」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「こ、殺される……。み、ミーが、この曹休がこんなところで…………」


挿絵(By みてみん) 賈逵かき
「それっ! あちらの包囲が手薄だ! 突破して曹休将軍を救出しろ!」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「か、賈逵!? そこにいるのはミスター賈逵ですか!?」


挿絵(By みてみん) 賈逵かき
「どうにか間に合ったようですな。ご安心されよ、続々と援軍が到着しています」


挿絵(By みてみん) 曹洪そうこう
「痛い目に遭ったようだな曹休。
功を焦るとこういうことになる。まあ、俺が言えた義理じゃないがな」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「そ、曹洪様もおいででしたか。荊州のガードに着いていたのでは?」


挿絵(By みてみん) 曹洪そうこう
「今の荊州都督は俺じゃない。
曹仁の兄貴や徐晃が死んで、後任は司馬懿になったんだ。
暇だったから賈逵に呼ばれて助けに来てやった。
お礼を払えとは言わないが感謝しろよ」


挿絵(By みてみん) 曹休そうきゅう
「ふ、フン! 助けに来るのがトゥーレイトですよ!」


挿絵(By みてみん) 賈逵かき
「曹休将軍! 曹洪様になんということを――」


挿絵(By みてみん) 曹洪そうこう
「気にするな。ただの強がりだ。
……背中に矢が刺さってるぞ曹休。さっさと治療してもらってこい」


挿絵(By みてみん) 賈逵かき
「呉軍は十分な戦果を得ましたから、あまり無理はしないでしょう。
今のうちにあちらから退却しましょう」


~~~魏 洛陽の都~~~


挿絵(By みてみん) 曹叡そうえい
「ご苦労だったね曹真君。
曹休君は失敗したようだが、君は無事に蜀軍を退けてくれた」


挿絵(By みてみん) 曹真そうしん
「いや、蜀軍を撃退できたのは街亭の重要性に着目した司馬懿や、
馬謖軍を撃破した張郃殿のおかげです。
指揮官の私はおやつを食べながらそれを眺めていただけです。それに第一――」


挿絵(By みてみん) 曹叡そうえい
「第一、なんだい。言ってみたまえ」


挿絵(By みてみん) 曹真そうしん
「蜀軍は街亭を奪われ撤退しただけで、戦力の大半は温存しています。
いや、天水・南安・安定の兵を加え戦力は増強されたと言えます。
奴らは必ずや、遠からぬうちに再び侵略を再開するでしょう」


挿絵(By みてみん) 曹叡そうえい
「たかが一度勝っただけで喜んでいる場合ではないということだね。
ふむ。それならば君に聞こう。蜀軍は次にどこを攻めると思うんだい?」


挿絵(By みてみん) 曹真そうしん
「ズバリ、陳倉ちんそうです」


挿絵(By みてみん) 鍾繇しょうよう
「陳倉……? 確か朽ちかけた古城があったな。
あんな僻地を攻めてくるというのか?」


挿絵(By みてみん) 王朗おうろう
「それより街亭を奪い返しに来たり、
子午谷しごこくを突っ切って長安に攻め入る進路のほうが考えられるのではないか?」


挿絵(By みてみん) 曹真そうしん
「実を言うとこれは俺だけの意見じゃなくて、
司馬懿や楊阜の考えを合わせたものだ。
司馬懿、なぜ陳倉が攻められると思うのか話してくれ」


挿絵(By みてみん) 司馬懿しばい
「………………。はて? この場に私以外にシバイなるお人がいただろうか。
しかし魏の重臣が居並ぶ中で
私ごとき木っ端のような存在が意見を求められるわけはないし……」


挿絵(By みてみん) 曹真そうしん
「ああめんどくせえ! 楊阜、代わりに話してくれ」


挿絵(By みてみん) 楊阜ようふ
「はッ。――蜀軍の動員兵力は我々と比べはるかに少ない。
それは人口の不足から兵が足りないだけではなく、
世に蜀の桟道と呼ばれるように道が険しく兵糧の輸送がままならず、
多くの部隊を運用できないという理由もあるのだ」


挿絵(By みてみん) 華歆かきん
「なるほど。長く関中で益州の動向を見てきた
楊阜殿の言葉は説得力がありますな」


挿絵(By みてみん) 楊阜ようふ
「従って防備を固めた街亭や、子午谷を通って
一か八かの戦いを挑む力は蜀には無いと考える。
奴らの限られた戦力で落とせ、しかも我々の意表を突ける要地
――それが陳倉である」


挿絵(By みてみん) 劉曄りゅうよう
「妥当な考えだな。それでお前たちのことだ。もう備えもしてあるのだろう」


挿絵(By みてみん) 曹真そうしん
「ああ、すでに陳倉には郝昭かくしょうを入れ、城の改装をさせている。
関中では知らぬ者のない名将だ」


挿絵(By みてみん) 曹叡そうえい
「頼もしい限りだね。
曹真君に任せておけばなんの心配もいらない。吉報を待っているよ」


挿絵(By みてみん) 曹真そうしん
「はッ!」


~~~陳倉 蜀軍~~~


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「むむむ……まさか魏軍め、すでに陳倉の守りを固めていたとはな」


挿絵(By みてみん) 王平おうへい
「その守将のカクショウってなあ有名なのか?」


挿絵(By みてみん) 姜維きょうい
「関中に輝くその名……さながら明けの明星のごとし。
されど月見草のごとく密やかに咲けり」


挿絵(By みてみん) 梁緒りょうしょ
「隠れた名将ってヤツだぞ。特に籠城戦じゃ負け知らずだ」


挿絵(By みてみん) 馬忠ばちゅう
「ほう、それは厄介そうだな。なんか弱点でもないのか」


挿絵(By みてみん) 尹賞いんしょう
「私だ」


挿絵(By みてみん) 呂義りょぎ
「うおっ! 急にぬっと出るなよ! お前の顔はなんか怖ええんだからよ!」


挿絵(By みてみん) 尹賞いんしょう
「郝昭の弱点は知らんが、
私の部下に郝昭と同郷の男がいる。ヤツに説得させてみよう」


挿絵(By みてみん) 梁虔りょうけん
「…………説得に応じるようなヤツじゃなさそうだがな」


~~~陳倉~~~


挿絵(By みてみん) 靳詳きんしょう
「おーい郝昭! 私だ、靳詳だ。
ちょっと顔を出してくれないか。久々に話そうじゃないか」


挿絵(By みてみん) 郝昭かくしょう
けえんな」


挿絵(By みてみん) 靳詳きんしょう
「え?」


挿絵(By みてみん) 郝昭かくしょう
「てめえの魂胆はわかっている。俺を降伏させようとしても無駄だ。帰れ」


挿絵(By みてみん) 靳詳きんしょう
「ま、待て待て。お前は何か誤解しているぞ。
私は単に旧交を温めようと思って――」


挿絵(By みてみん) 郝昭かくしょう
「ほう。ならば入れてやらんでもねえが、本当に昔話をしてえだけか?
もし一言でも蜀に降れとかくだらねえことをほざけば、その場で首をはねんぞ」


挿絵(By みてみん) 靳詳きんしょう
「そ、それは、なんというか、その。
私も少しは仕事で来ている面もあるというか」


挿絵(By みてみん) 郝昭かくしょう
「靳詳、てめえとの付き合いは長げえからこうして紳士的に話してやってんだ。
だが私情を断てばてめえと俺は敵同士。話を聞く道理はねえ」


挿絵(By みてみん) 靳詳きんしょう
「か、郝昭! 私も友人として忠告するんだ。
蜀軍の兵力は数万、しかし見たところ陳倉には千人も詰めていまい。
全滅するよりも生きる道を選べ!」


挿絵(By みてみん) 郝昭かくしょう
「言いてえことはそれだけか。靳詳、この矢が見えんな。
俺はてめえを知ってんが、この矢はてめえを知らんぞ。
さあ、今すぐここを去れ。さもなくばてめえを射抜く!」


挿絵(By みてみん) 靳詳きんしょう
「郝昭…………。わかった、もう何も言わん。さらばだ!」


挿絵(By みてみん) 郝昭かくしょう
「…………すまねえな、靳詳」


~~~陳倉 蜀軍~~~


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「感動の再会は終わったか。ならばさっさと城を落とせ」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「はッ! 馬鈞殿の発明した攻城兵器を押し出します!」


挿絵(By みてみん) 馬鈞ばきん
雲梯うんてい衝車しょうしゃを改良してみたんだ。どうなるかネ」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「…………駄目ですな。
雲梯は火矢で、衝車は投石でどちらも城に取り付く前に破壊されています」


挿絵(By みてみん) 馬鈞ばきん
「ふむ。敵はどうやら兵器に万全の備えをしていたようだヨ。
城に近づけなければせっかくの改良も無駄だネ。アハハハハ」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「わ、笑いごとではあるまい!
丞相、いや右将軍! 次は工作部隊に地下から城へ潜入させます!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「どうせ城内には堀が張りめぐらされ、
全員溺れ死ぬだろうがそれも一興だ。やれ」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「…………や、やはり別の手を考えましょうか」


挿絵(By みてみん) 張翼ちょうよく
「後続部隊から連絡です! 我が軍の背後に曹真の大軍が現れました!」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「来たか! 陳倉の攻略に手間取っていれば、
曹真に背後を襲われ挟み撃ちになりますぞ!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「ならばとっとと城を落とせばいいだけだ。曹真は張嶷に足止めさせろ」


~~~陳倉 蜀軍~~~


挿絵(By みてみん) 龔起きょうき
「張嶷将軍! 曹真軍の先鋒が迫ってますぜ!」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「迎撃」


挿絵(By みてみん) 龔起きょうき
「見たところ3千程度か。
あれしきの相手に将軍が出るまでもない。俺が行こう!」


挿絵(By みてみん) 魏平ぎへい
「敵さん焦って飛び出してきたぜ。どっちがやるよ?」


挿絵(By みてみん) 王双おうそう
「ここは俺に任せてもらおう。
虜囚の辱めを受けた俺を曹真様は拾ってくれた。その恩に報いる時だ」


挿絵(By みてみん) 魏平ぎへい
「泣かせるねえ。それじゃあここは譲るぜ。行ってきな」


挿絵(By みてみん) 王双おうそう
「我が名は王双! 曹真様に仇なす者は俺が討つ!」


挿絵(By みてみん) 龔起きょうき
「俺は張嶷将軍の副将・龔起! いざ尋常に勝負だ! うりゃああっ!!」


挿絵(By みてみん) 王双おうそう
「なんだその槍は? 遅すぎて蝿が止まりそうだ! フン!」


挿絵(By みてみん) 龔起きょうき
「う、うおおっ!? こいつ鉄球使いか!」


挿絵(By みてみん) 王双おうそう
「ただの鉄球と思うな!
呉軍に捕らわれ狭い牢獄の中で磨き上げた我が奥義をとくと見よ!
必殺! 流星鎚ィィィィやああァァァァァ!!」


挿絵(By みてみん) 龔起きょうき
「な、なに!?
その場で回転して鉄球に遠心力を与えぶふぉおおおおおおおっ!!」


挿絵(By みてみん) 王双おうそう
「ァァァァァァァァァァッッッ!!!」


挿絵(By みてみん) 魏平ぎへい
「記録、84メートルってところか?
鉄球もろとも相手の顔面をふっ飛ばすなんて、何度見ても恐ろしい技だぜ」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「強敵……」


挿絵(By みてみん) 魏平ぎへい
「んん? 敵将のお出ましか?
王双は鉄球を84メートル先までほっぽり出しちまって丸腰だ。
今度は俺が相手になるぜ」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「覚悟」


挿絵(By みてみん) 魏平ぎへい
「おっと! へへっ。俺はアンタと接近戦をやるつもりはねえぜ。
俺の武器はこいつだ!」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「石礫…………」


挿絵(By みてみん) 魏平ぎへい
「そうさ、俺の得物は石ころさ。
弾数は無制限、当たりどころが悪けりゃ死ぬぜ。
そして俺は悪い所に当てるのが得意だ!」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「無駄」


挿絵(By みてみん) 魏平ぎへい
「大した剣の腕だな。
だが石ころだって何発も弾いてりゃ刀身が耐えられねえぜ。
そらそらそらあっ!!」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「無為」


挿絵(By みてみん) 魏平ぎへい
「! こいつは驚いた。剣の柄と鞘で弾いてやがる。
やべえ、俺の手には余る敵だったか」


挿絵(By みてみん) 王双おうそう
「魏平! 俺は譲った覚えはないぞ!」


挿絵(By みてみん) 魏平ぎへい
「おおっ! もう鉄球を拾って戻ってきたのか!」


挿絵(By みてみん) 王双おうそう
「待たせたな! 喰らええぇぇぇェェェッッ!!」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「入魂!」


挿絵(By みてみん) 魏平ぎへい
「り、流星鎚を正面から受け止めた!?
む、無茶だ! 鉄球を両断できるわけがねえ!」


挿絵(By みてみん) 王双おうそう
「ェェェェァァァァアアアアアッッ!!」


挿絵(By みてみん) 張嶷ちょうぎょく
「!? 不覚………………」


挿絵(By みてみん) 魏平ぎへい
「と、とんでもねえ剣士だがさすがに無茶だよな。
顔面直撃の軌道は反らしたものの、肩口に命中し気絶したぜ」


挿絵(By みてみん) 王双おうそう
「そのまま馬の背に乗って自軍のもとへ逃げていったか。
見よ、流星鎚が半ば両断されている。すごい男だ。
気絶した所を討つのは忍びない。見逃すとしよう」


挿絵(By みてみん) 魏平ぎへい
「まあこれで敵将を二人討ったも同然だ。蜀軍はさぞ慌てふためくだろうぜ」


~~~蜀 陳倉~~~


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「副将を討たれ張嶷は重傷か。
フン、大勢に影響はない。張嶷に代わり王平に曹真軍の相手をさせろ。
その間に総退却する」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「はッ。
…………え。そ、総退却!? 総退却するのですか?」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「後方で長雨が続き兵糧の輸送が滞っている。
さっさと陳倉を抜き、隴西ろうせいで麦を刈りしのぐ予定だったが、
いつまで経っても陳倉が落ちぬ。これ以上の戦は無為だ」


挿絵(By みてみん) 呉班ごはん
「長雨で兵糧が来ない?
はてさて、兵站を担当している李平さんからそんな連絡はありましたかな?」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「三日後には来る。余の言葉を疑うのか」


挿絵(By みてみん) 李恢りかい
「う、右将軍が仰られるならばその通りなのでしょう。
至急、総退却の準備にかかります!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「姜維、貴様には別命を与えてやる」


挿絵(By みてみん) 姜維きょうい
「出会いあれば別れあり。さよならだけが人生さ……」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「賢しらに余の考えを読むな。
フン。わかっているならとっとと行け。副将には魏延をつけてやる」


挿絵(By みてみん) 楊儀ようぎ
「え? あ、はい! す、すぐに起動いたします!」


挿絵(By みてみん) 諸葛亮しょかつりょう
「陳倉ごときにいつまでも構うことはない。
本隊は祁山きざんに向かう。クックックッ……。
これで曹休の首が獲れるとは思わぬが、なんの獲物がかかるか見ものだな」


~~~~~~~~~


かくして曹休は石亭に敗れ、蜀軍は陳倉を抜けずに撤退にかかった。
だが諸葛亮は転んでもただでは起きない。
追撃を狙う曹真の前には陥穽が待ち受けていた。

次回 一〇二   趙雲子龍
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