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13

滑走路から次々と航空機が飛び去っていくエンジン音がこだまする前哨基地。


そんな騒がしい前哨基地の司令部の執務室でカズヤは様々な作業に忙殺されていた。


エルザス魔法帝国の侵攻を阻み撃退したのが5日前。その際に大量に発生した捕虜の移送・収容作業、更には増えた部隊の再編成や“軍事国家パラベラム”としての組織作りに手間取り予定されていたカレン達との会談が遅れていた。


「ご主人様。会談のスケジュール調整をしてきました」


「あぁ悪いな、千歳。で何時になった?」


「2日後の正午に決まりました。あちらも復興作業に追われていてまだ忙しいそうです」


「そうか。あぁ、それと頼んでおいた報告書は出来たか?」


「はい。こちらに」


組織(一軍隊から一国家へ)の再編成に伴う階級の変更により大佐から中将に昇格しまたパラベラムの副総統や親衛隊長官等その他諸々の肩書きも持つことになった千歳からファイルを手渡されカズヤはすぐにそのファイルに目を通し始めた。


「そちらの報告書に書かれているように各艦艇の改装工事は順調に進んでいます」


「みたいだな」


現在パラベラム本土(第一基地があった島)では多くの計画が同時に進められていた。そのうちの1つが艦艇の大規模な改装工事である。


改装工事は主に第二次世界大戦時の艦艇に行われており今なおパラベラムの軍港のドッグでは対空兵器やレーダーなどの電子兵装の増設、果ては機関の換装などの近代化の改装工事が昼夜を問わず急ピッチで進行していた。また艦艇に限らずパラベラムの保有する旧式兵器は何かしらの改造、改良が行われている。


「さて、この後は……」


「会議ですね」


「……また会議か」


「致し方ありません。ご主人様の指示や認可が必要な案件が多いのですから」


「分かってるよ」


カズヤはブツブツと文句を言いながらも疲れた体を無理矢理動かし千歳と共に会議室に向かった。


カズヤと千歳が会議室に入ると中にいた部下が皆立ち上がり敬礼した。


「お待ちしておりました。総統閣下、千歳閣下」


「ご苦労、休め」


カズヤと千歳が答礼を返し席に着くと早速報告会議が始まった


「まず、偵察衛星及び高高度偵察機SR-71ブラックバード、無人偵察機RQ-1プレデター等が捉えた偵察写真がこちらになります」


情報部の中将がそう言って会議室におかれている大型モニターに何枚もの写真を写した。


「帝国領内に逃げ込んだ20万の兵力のうち10万程度はいまだに国境付近にある5つの砦に分散し待機している模様です。しかしあれだけの被害を受けた後なのでカナリア王国に対しての再侵攻はしばらくないと思われます。また帝国軍に潜入した諜報員からも我々の予想を裏付ける情報が上がってきています」


「ならしばらくの間こいつらは、ほっといても大丈夫そうだな」


カズヤが情報部の報告を聞いて考えを巡らせていると千歳が口を挟んだ。


「ご主人様、敵の居場所が分かっているならばB-52などの戦略爆撃機で敵を殲滅しておいた方がよろしいのでは?」


「いやあんまり手札を見せすぎるのも良くない。対応策を練られたら厄介だ」


「敵の技術力から見て、その心配はないと思いますが……」


「エルザス魔法帝国にはあの中二病野郎が居ることを忘れるなよ?奴の能力が分からない今、慎重過ぎるぐらいの行動でちょうどいいんだ」


カズヤの言葉を聞いて千歳が自分の発言を恥じるように言った。


「申し訳ありません。ご主人様。私の考えが足りませんでした」


「いや、いい。それより全員に言っておく。俺達の戦力がある程度充実したからと言っても気を抜くなよ?敵は何をしてくるか分からん。ましてやこの世界には魔法が存在しているんだ。俺達の予想出来ない兵器や戦術を使用してくる可能性は十分ある。そのことを今一度頭に入れておけ」


「「「「了解」」」」


カズヤが会議室にいる全員に喝を入れると皆立ち上がってカズヤに向け敬礼した。













――――――――――――




2日後、カレンとの会談の日カズヤはVH-60Nプレジデントホークに乗り護衛のAH-64Dアパッチ・ロングボウに護衛され城塞都市に向かった。


VH-60Nプレジデントホークが第一師団が設営した発着場に着陸すると城塞都市から迎えが来ていた。


迎えの兵士に案内されカズヤはすぐにカレンが待つ部屋へと通される。


案内された部屋の中に入るとカレンだけではなくカナリア王国の増援軍を率いて来たゼイル・アーガス伯爵を筆頭に数十人の貴族がカズヤのことを待っていた。


カレンがカズヤ達に席に着くように促し双方の簡単な自己紹介の後すぐに話が始る。


「では、始めましょうか」


カレンが場を仕切る形で口を開いた。


「まず、カズヤ(達)が一体何者なのか。それを教えてくれるかしら?」


「では、私が説明いたします」


カレンやゼイルが抱いている疑問に答えるべく千歳が口を開いた。


「我々は……」


「「我々は?」」


「軍事国家パラベラムに属する者です」


千歳大佐の言葉を聞いてカレンとゼイル伯爵は顔を見合せた。そしてゼイル伯爵が困った顔で言った


「すまない、千歳殿。我々はパラベラムという国の名を聞いたことがないのだが……」


「それは当然です。パラベラムは、ほんの数ヶ月前にこの世界に現れたのですから」


ゼイル伯爵の問い掛けに答えながら千歳は準備してあった資料を配りざわめく貴族達を無視して事前に決められたシナリオに沿って話を続けた。


「つまり我々の国、パラベラムは渡り人のように異世界からこの世界へ国ごと転移して来たということです」


「そんなまさか!?」


「渡り人の国!?前代未聞だぞ!?」


「あり得ん!!国ごとこの世界に現れるなど!!」


他の貴族達が口々に騒ぐ中カレンは千歳の嘘が織り交ぜられた説明を聞いてやはりという顔で言った。


「やっぱりそうだったのね……。そうでなければあんな強力な兵器を大量に持っているはずがないものね。それでカズヤはそのパラベラムのどの地位にいるの?将軍ぐらいかしら」


カレンはどことなく嬉しそうに顔を綻ばせにこやかにそう言った。だが次の千歳の言葉で部屋の中は静まり返った。


「ご主人様は総統閣下です。つまりパラベラムの国王に当たります」


「「「「……」」」」


部屋の中の音が一切なくなり沈黙が部屋の中を満たした。


「ちょ、ちょっと待って。カ、カズヤ……。彼女が言ったことは本当なの?」


5分ほどの沈黙の後。一番最初に再起動を果たしたカレンがカズヤに質問した。


「あぁ、本当だ」


「す、少し時間を頂戴――いえ、下さいませんか?」


そして今まで黙っていたカズヤが口を開きカレンの質問に対し肯定するとカレンの申し出により話し合いが一時中断された。


……まぁいきなり目の前にいるのは強力な兵器を大量に持っている他国の国王です。って言われたら狼狽えるわな


若いメイドに案内された待合室でカズヤが暇を潰すために色々と考えを巡らしていると話し合いが再開されることになった。


「これまでの数々のご無礼何卒お許し――」


「いやいや、気にしてないから普通に喋ってくれ」


だが部屋に入るなり畏まり床に膝をついて頭を下げるカレンを見てカズヤは戸惑いながらそう言ってカレンを立たせた。



「……分かったわ。それが、貴方の望みならそうしましょう」


そう言ってカレンはスッと立ち上がったが、カレン以外の人物はカズヤの不興を買うのを恐れてか皆床に膝をついたまま動こうとしなかった。














――――――――――――




「それにしてもまさか、貴方が国王――総統とはね……」


「ビックリしたか?」


「……あのねぇ!!ビックリしたか?じゃないわよ!!驚くに決まってるでしょう!!」


カズヤと千歳、それにカレンとマリアの4人だけになった部屋の中で話しは続けられていた。


「(カ、カレン様!!落ち着いて下さい!!見知った相手とはいえナガト殿は強力な軍隊を持つパラベラムの総統なのですよ!?万が一不興を買って外にいる兵を差し向けられれば我々は皆殺しにされます!!)」


マリアはカレンの物言いに慌てた様子でダラダラと冷や汗を流しながら言った。


圧倒的な強さを誇る兵器を用いて帝国軍に情け容赦なく徹底的な攻撃を加えたパラベラム軍の姿を目の当たりにしたマリアやカナリア王国側の人間はカズヤのことを恐れていた。


「(……そうね。少し頭に血がのぼっていたわ。でも大丈夫よ。マリアが危惧しているようなことをするような男じゃないわ。カズヤは)」


「(しかし!!万が一ということもあり得ます)」


「(分かったわ。ちゃんとするから)」


「(お願い致します)」


カレンとマリアの小声での話が終わったのを見計らってカズヤが口を挟んだ。


「もういいか?」


「ごめんなさい。続けて」


「それで正式にカナリア王国を訪問したいんだがいつならいい?」


「それは……陛下に聞いてみないと分からないから少し待ってくれないかしら」


「了解、なら使者を出すか。返答を待っている間にちょっと本国――パラベラムに戻ってもいいか?連絡将校と城塞都市を守る部隊はおいていくから」


「えぇ、いいわよ」


「そうだ。なんならカレンもパラベラムに来るか?」


「……私も行っていいの?」


カズヤが気まぐれにパラベラムに来ないかとカレンを誘うとカレンもパラベラムに行くことに乗り気だったためカズヤはカレンをパラベラムに連れて行くことにした。















――――――――――――




「……これは少し怖いわね」


カズヤの正体をカレンが知ってから2日後。パラベラムに向かうため搭乗した初めてのヘリ――VH-60Nプレジデントホークの機内でカレンは遥か眼下に広がる大海原を眺めながら小さく呟いた。


「まぁ初めて乗ったらそうだろうな。っとそろそろ見えてくるぞ」


カズヤの言った通り水平線の向こうに小さく島――軍事国家パラベラムが見えてきた。


「ねぇカズヤ。あれは何?」


カレンが海の上に規則的に浮かぶ無数の小さな粒を指差し言った。


「近づいたら分かるさ」


カズヤはそう言ってわざとカレンに粒の正体を教えなかった。


そしてプレジデントホークがその粒に近付いていくとカレンにもその正体が分かった。


「まさか!?カズヤあれは全部船なの!?」


「ご名答。今見えているのはパラベラムの海軍と沿岸警備隊が保有する艦艇だ」

カズヤ達の眼下には1000隻に近い様々な艦艇がズラリと海の上に並んでいた。


「ちょっとまって……。この距離からあれだけの大きさということは!?どれだけ大きいの!?」


「結構でかいぞ?なんなら降りて直接見るか?」


「降りられるの!?」


「あぁ出来るぞ。でもさすがに潜水艦に降りてくれと言われたら無理だけどな」


「……潜水艦?」


「そうかカレンが知るわけないか。えーと潜水艦は簡単に言えば海の中に潜れる兵器だよ」


カズヤの言葉を聞いても潜水艦がどのような物なのか想像が出来ないカレンは難しい顔で呟いた。


「海の中に潜る……」


「長くて2ヶ月程度はずっと潜っていられる奴もあるな」


「に、2ヶ月!?い、息はどうやってするの!?」


2ヶ月もの間ずっと潜っていられると聞いてカレンは驚いていた。


「うーん。言っても分からないと思うぞ。それよりもう着艦するぞ」


「えっ?」


カズヤとカレンがしゃべっている間にプレジデントホークは1隻の船に着艦しようとしていた。


そしてプレジデントホークが高度を落とし、とある船に着艦するとすぐに外からドアが開かれカズヤ達は機内から外に出た。


「ようこそ。我が艦にお越しいただ誠に光栄であります。長門総統閣下、千歳閣下。それにロートレック公爵殿。私は当艦――ニミッツ級航空母艦、1番艦『ニミッツ』の艦長ハリス大佐です。ささこちらへ」


外に出るなり艦長自らの歓迎を受けたが、カレンは『ニミッツ』のあまりの巨大さに息を呑んでいた。


またCH-47チヌーク2機に分乗しカレンの護衛として付いてきた兵士や城塞都市に増援として来たはいいが戦闘が既に終わっていたせいで暇をもて余していた貴族達(パラベラムの国力を見せつけるために連れてきた)はアゴが外れたかのように口を大きく開き唖然としていた。

これから超展開が増えていくかもしれません……

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