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10.5

城塞都市ナシストに近付く車両の一団があった。


「承知。ご武運を総司令殿」


『あぁ、軍曹もな』


そう言って舩坂軍曹はカズヤに向かって敬礼し別れを告げた。


そして第4分隊に配属されている車両(ハンヴィー×2。M1126ストライカーICV装甲車×1。M1128ストライカーMGS装甲車×2。73式大型トラック×2)計7両と共に南門を目指す。


……見えてきたな。


城壁に沿って平原を走ること数分ようやく南門が見えてきた。


南門には北門にいた敵兵の約2倍の数の兵士達が集結していたが、城塞都市から略奪品を運び出すことに夢中になっていて第4分隊の接近に気付くことはなかった。


「3、4番車。城門付近の敵に向け榴弾を2発撃て。我々が内部に突入した後は断続的に城門の外に白燐焼夷弾を撃って敵の増援を中に入れさせるな」


『『了解!!』』


2両のストライカーMGS装甲車は舩坂軍曹の命令に従いM68A1E4 105mm砲から榴弾を発射した。


「ん?なん――」


「おい、止まるな――」


略奪品を抱えた多くの兵士達が出入りしている所に突如、着弾した榴弾は一瞬にして数多くの兵士の命を奪い去る。


「だ、誰かぁぁーー!!助けて、助けてくれぇぇーー!!」


「俺の、俺の足がぁぁ!!足がないいぃぃ!?」


幸運にも(不運にも)生き残った兵士達は絶叫しのたうちまわる。


「今だ、突撃ィィーー!!」


突然の攻撃を受け多数の負傷者を出した帝国軍が混乱している間に舩坂軍曹達は城門を強行突破し城塞都市の内部へ突入を果たす。


「降車しろ!!戦闘開始ぃぃーー!!」


舩坂軍曹はそう叫んで乗っていたハンヴィーから飛び出すと三十年式銃剣を着剣した三八式歩兵銃を片手に敵の群れの中に1人で突っ込む。


「ムンッ!!」


「ギャアアアァァァーーー!!」


「弱い!!弱すぎるぞ!!」


何が起きているか分からずパニック状態に陥り逃げ惑う敵兵を薙ぎ倒しながら舩坂軍曹が声高らかに叫ぶ。


「ぐ、軍曹!!またですか!!1人で勝手に突っ込まないでくださいよ!!」


舩坂軍曹の副官である牧野兵長が分隊の指揮を取らずに暴れ回る舩坂軍曹に代わって分隊の指揮を取りながら呆れたように叫んだ。


「なに、お前が指揮を取っているんだから問題はなかろう」


牧野兵長の言葉に答えながらも舩坂軍曹は切りかかって来た敵兵2人のうち1人を三八式実包――6.5mmx50SR弾を心臓に撃ち込んで射殺。


そして、もう1人の斬撃を三八式歩兵銃で受け流すとそのまま銃床で敵の頭を殴り付け敵兵が思わずよろめいた隙をついて三八式歩兵銃の銃剣を胸に突き刺し鮮やな手つきで刺殺した。


「そういう問題じゃあないですよ!!それに、そんな旧式装備で突撃しないでください!!見てるこっちがハラハラします!!」


「旧式装備とはなんだ!!俺にはこの三八式歩兵銃が一番合っているんだ!!――おっと!?」


舩坂軍曹が敵を殺しながらも牧野兵長と喋っていると帝国軍が混乱から立ち直り反撃を開始。


10人程の銃兵が2列に並び舩坂軍曹目掛けて一斉に発砲した。


だが発砲の直前に自分が狙われていることに気が付いた舩坂軍曹は銃兵達が引き金を引くよりも早く物陰に身を隠し弾丸から身を守る。


「それに、総司令から直接戴いたこの三八式歩兵銃は手放せん!!」


身を隠した物陰から顔を覗かせ、銃兵達が急いで弾丸を再装填している様子を確認した舩坂軍曹は牧野兵長に向けそう言いながらも手を動かし、百式擲弾器と十年式手榴弾を取り出すと三八式歩兵銃に装着。


次いで物陰から飛び出し、依然として弾丸の再装填に手間取っている銃兵に向け十年式手榴弾を発射する。


「てっ」


舩坂軍曹の小さな号令とボンッという音と共に発射された十年式手榴弾は銃兵達の目の前で炸裂。


至近距離で十年式手榴弾の爆発を受けた上に自分達が手にしていた火薬が誘爆したため銃兵達はまとめて吹き飛んだ。


「直接って!?それは軍曹が三八式歩兵銃が使いたいって無理矢理、総司令に掛け合ったからでしょ!!総司令だって軍曹に言われて苦笑いしてたじゃないですか!!」


「そうだったか?ワハハ!!もう忘れた!!――ムッ!?」


銃兵を凪ぎ払った舩坂軍曹が百式擲弾器を外し新たに三八式実包5発を1セットにした挿弾子(クリップ)を三八式歩兵銃に再装填するため遊底を引いて挿弾子を装填し遊底を前方にスライドさせ戻そうとすると遊底被が引っ掛かり遊底が戻らなくなってしまった。


……不味いな。


舩坂軍曹が三八式歩兵銃の遊底をガチャガチャと動かし、手間取っているとそれを好機と見た敵兵達が叫びながら一斉に舩坂軍曹に向かって襲いかかる。


「「「帝国に従わぬ愚か者に死を!!亜人共に味方する異教徒に死を!!」」」


――ザシュ!!


「なんのこれしき!!」


そう言って舩坂軍曹は三八式歩兵銃を手放し腰に着けていた軍刀を居合いの要領で抜き放ち一瞬のうちに襲いかかって来た敵兵の首を跳ね飛ばす。


「「「――!?」」」


首を一瞬で跳ね飛ばされた敵兵達は切断面からおびただしい量の血飛沫を吹き出し、ドサッという音と共に地面に倒れた。


「ふん!!たわいもない」


舩坂軍曹はつまらなそうにそう吐き捨て軍刀に付いた血糊をピッと振り払うと鞘に収め地面に転がっている三八式歩兵銃を手に取る。


そして親衛隊員の背後から今まさに魔法を放とうとしていた魔法使いに向かって槍投げの要領で放り投げた。


――ドスッ!!


「うがっ!!」


三八式歩兵銃は真っ直ぐ舩坂軍曹の狙い通りに飛んで魔法使いの背中に突き刺さり心臓を貫く。


「ど真ん中……いや、少しズレたか」


ブツブツと言葉を漏らしつつ舩坂軍曹は息絶えた魔法使いの側まで行き、魔法使いの体を踏みつけ突き刺さっている三八式歩兵銃を引き抜くと叫んだ。


「もっと手応えのある敵はいないのか!!」


――チョンチョン。


敵兵を挑発するように舩坂軍曹が叫んでいると誰かがその肩をつつく。


それに気が付いた舩坂軍曹がそちらを向くと牧野兵長が呆れた顔で舩坂軍曹の肩をつついていた。


「あの……もう終わりましたけど……?」


「ムッ、そうか」


牧野兵長に言われて舩坂軍曹が辺りを見渡すと武器を捨て城門に向かって一目散に逃げていく敵の後ろ姿が見えた。


しかし、城門の外にはストライカーMGS装甲車が放った白燐焼夷弾の白燐が地面に残留し、未だに白い煙をあげながら燃え続けていたため逃げ出した敵兵達はその灼熱地獄の中に突っ込むことになった。


「アチチ!!」


「熱っ!?なんだ!?何なんだこの火は!!水をかけても火が消えないぞ!?」


「ガアアァァーー!!熱い!!熱い!!」


逃げる際に素肌に白燐がついてしまった不幸な兵士は水をかけても消えない火にもがき苦しんでいた。


ちなみに白燐による火傷は通常の火傷と異なり傷口の周囲が黄色くなりニンニクのような匂いを伴う。


また白燐は水をかけてもなかなか消えないため対処法は白燐が付いた皮膚ごと切り取らないといけないのだが、帝国軍本陣に逃げ帰った兵士達がそんなことを知っているはずもなく必死に自分の体に水をかけて火を消そうとしていた。


 

 

 








 

 

 



――――――――――――




帝国軍を撃退した翌日。



「おはようございます。軍曹」


「あぁ、おはよう」


昨日、制圧確保した城門付近で第4分隊は陣地を構築し一夜を明かしていた。


「どうぞ」


夜襲に備え夜通し見張りに就いていた舩坂軍曹のために牧野兵長が温かい飲み物を持ってきた。


「ありがとう」


舩坂軍曹は礼を言って牧野兵長から飲み物受け取り一息ついていた。


「……なぁ、兵長?聞きたいことがあるんだが」


「なんですか?軍曹」


「昨日の戦闘中に敵が言っていたことがどうも気にかかっているんだが、兵長はなにか知らないか?」


「なんて言っていたんですか敵は?」


「亜人共に加担する異教徒に死を……だったかな?奴等は宗教狂いの連中なのか?」


「あー微妙な所ですね。私も詳しくは知りませんが……確か敵さん――エルザス魔法帝国はローウェン教という宗教を国が信仰するよう推進していたはずです。そのせいで敵さんの宗教色が濃いのは事実ですが」


「ローウェン教というのはどんな宗教なんだ?」


「え〜と……。ザックリ言いますとローウェン教の神に存在していることを許されているのは人間だけで人間の模倣品である妖魔族や獣人族は滅ぶべきだ。または滅ぼすべきだ。とかなんとか」


「……なんともまぁ、過激な宗教だな。……ん?確か、帝国軍は魔物を使役していなかったか?魔物はいいのか?」


「さぁ?そこまで私も詳しく知りませんから……。あと……聞いた話ですと帝国の領土内にローウェン教の神が舞い降りたと言われている場所があってですね、そこは聖地と呼ばれていて神聖な場所として宗教狂いの狂信者共が聖地の管理・運営を任されて一種の自治区みたいになってるらしいです」


「そんな場所まであるのか……。ふむ、1つ疑問なんだが敵さんの信仰心の強さの度合いはどれくらいなんだ?総司令を崇めている千歳大佐レベルがゴロゴロいたら相当厄介なんだが……」


「それは大丈夫だと思いますよ。そうそう千歳大佐レベルの信仰心?を持つ人物はいないでしょうから。まぁ、宗教狂いの敵さんの信仰心が10なら総司令を慕う千歳大佐の信仰心(思い)は100ぐらいあるんじゃないですか?だってあの千歳大佐ですよ?総司令に何かあったら迷いなく敵に核を撃つような人ですよ?」


「なにもそこまでしないだろう。……と反論できんな、千歳大佐ならやりかねん」


「「……。アハハハハ!!」」


舩坂軍曹と牧野兵長がお互いに顔を見合せ笑っていた時だった。


「ッ!? 総員伏せろぉぉーーー!!」


笑うのを止め何かに気がついた舩坂軍曹がそう叫び驚いて目を丸くしている牧野兵長に飛び付き押し倒して地面に伏せた瞬間。


――ドガァァン!!


城門が突然跡形もなく吹き飛んだ。


猛烈な爆風と爆音に晒された舩坂軍曹と牧野兵長は一時的に意識を失う。


「――……ゲフッ、ゲフッ!!一体……何が?」


「ゴホッ、ゴホッ!!分かり……ません」


瓦礫に埋まった舩坂軍曹と牧野兵長が意識を取り戻し瓦礫の下から這い出して来たが口に入った砂埃で2人はむせていた。


「ゲフッ、ゲフッ!!牧野兵長、部下達の安否確認、急げ!!」


「ゴホッ、ゴホッ!!了解!!」


命令を受けた牧野兵長が走り去り舩坂軍曹がすぐ近くの瓦礫に埋もれていた兵士に手を貸して瓦礫の下から引き摺り出していると持っていた無線機からカズヤの声が聞こえてきた。


『――しろ!!第4分隊!!誰かいないのか!!おい!!舩坂軍曹!!応答しろ!!』


――ザー、ザー、ジッ


「ゴフッ、こちら、第4分隊……。ゴホッ、舩坂軍曹……。なんとか無事であります」


『そちらの状況は!!』


「はい。ゴホッ、第4分隊……死傷者多数……ですが戦闘は可能――」


辺りに舞っている土埃が口や鼻に入って何度もむせながら舩坂軍曹がカズヤに返事を返しつつも周りを見渡すと瓦礫の下から大小様々な傷を負いながらも続々と兵士達が這い出してきていた。


畜生……。


しかし舩坂軍曹の視線の先には瓦礫に半ば埋まりピクリとも動かない兵士の姿があった。


『第4分隊!!敵が来るぞ!!総員第2城壁まで後退!!急げ!!』


「総司令……。今からでは我々の退避は間に合いそうにありません。我々のことは……諦めて下さい」


『ドアホ!!誰が諦めるか!!お前達の退避が間に合わないならこちらから迎えに行ってやるから待っていろ!!死ぬんじゃないぞ!!』


――ブツリ。


カズヤのその声を最後に無線は切れた。


「今のは総司令ですか?」


部下の安否確認のため舩坂軍曹の側から離れていた牧野兵長が戻って来てそう言った。


「あぁ、我々を回収してくれるそうだ」


「……間に合いますかね?」


「分からん。それより状況は?」


戦闘準備を整えている舩坂軍曹は不安げな表情の牧野兵長に現状の報告を求めた。


「ハッ、城門付近に仕掛けたトラップ群は爆発で消滅、車両は爆風ですべてひっくり返っています。弾薬も73式大型トラックごと吹き飛び爆発したため残っている弾薬は手持ちの分だけです」


「そうか……。部下達は?」


「4名死亡、4名重傷、7名軽傷、2名行方不明です」


「被害甚大だな……」


報告を聞いた舩坂軍曹が愕然としていると敵の様子を見張っていた兵士が叫んだ。


「敵接近!!魔物が来るぞ!!」


「もう来たか……。牧野兵長!!」


「ハッ、なんでしょう?」


「指揮は任せた」


「ハッ!!……って軍曹はどこへ行くつもりですか!?」


「決まっているだろう。総司令が迎えに来る前に行方不明の2人を探してくる」


「えっ!!ちょっ!!待って下さい!!軍曹!?軍曹ぉぉーー!!」


牧野兵長の呼び止める声を無視して舩坂軍曹は軍刀を片手に突撃してくる魔物の群れに斬り込んで行った。






 

 

 




 

 

 



――――――――――――




っ、っ、……俺は一体?


体中から発せられる激痛で舩坂軍曹は目を覚ました。


魔物の群れに斬り込んだ後……行方不明だった2人の遺体を見つけて……。担いで撤退しようとした所から記憶が……ない。


舩坂軍曹がボーと白い天幕の天井を見上げていると布が擦れる音が聞こえて誰かが中に入って来る。


「あっ、目が覚めましたか?」


そう言って修道女の格好の女性は舩坂軍曹が寝ているベッドの横にあった椅子に座った。


「ここは……どこだ?」


「ここは帝国軍の本陣です。貴方は……捕虜になったんですよ」


「ッ!?……そうか。捕虜か……グッ!!オオォオォォ!!」


「動いてはだめです!!貴方は全身に酷い怪我を負っていてとても動ける状……態……じゃあ……」


だんだんと声が小さくなっていった修道女の目の前では寝返りを打つことさえ困難なはずの男が立ち上がり、何事もなかったようにスタスタと歩いていた。


そして傷だらけの舩坂軍曹は天幕の入り口を開けて外に出ると入り口の横に立っていた歩哨を殴り飛ばし歩哨が持っていた槍を奪い構えると叫んだ。


「貴様らの敵がここにいるぞ!!かかってこい!!そして俺を殺せ!!早く殺すんだ!!」


動くことすら不可能だと思われていた捕虜の男がいきなり暴れ出したことに驚いていた帝国軍の兵士達だったが、すぐに武器を構え舩坂軍曹に襲いかかった。



「ハァハァ、よ、ようやく死んだぞ。こいつ」


帝国軍の兵士が肩で息をしながら体中に矢を射られ止めに背中をバッサリと斬られて死んだ舩坂軍曹を前に得体の知れない者を見るようにそう言った。


「クソ、手こずらせやがって!!」


先程の兵士とは別の兵士がそう呟き辺りを見渡すと舩坂軍曹により殺された数十人の兵士の屍が転がっていた。


そこへ騒ぎを聞き付けたのか兵士達の壁を割って身の丈よりも大きな杖を持ち真っ白なローブを着た少女が現れる。


「これは一体何事ですか!?」


その一喝で兵士達は少女の存在に気が付き慌てて礼をとる。


「ハッ、実は捕らえた捕虜が暴れ出しまして……申し訳ありません。セリシア様、捕虜の抵抗激しく再び生け捕りにするのは不可能だと判断したため殺しました」


「……そうですか。この方にいろいろと聞きたいことがあったのですが……。致し方ありません」


そう言ってセリシアと呼ばれた少女は地面に横たわる舩坂軍曹を一瞥した後、身を翻しその場から去って行った。


残された兵士達はなんら罰が下されなかったことに安堵してホッと胸を撫で下ろした。


「……とりあえず死体を片付けるか」


「そうだな」


兵士達はそう言って舩坂軍曹の手足を持ち死体置き場に持っていくと死んだ仲間の死体と共に舩坂軍曹の遺体を死体置き場となっている穴の中に無造作に投げ捨てたのだった。



――ズリッ、ズリッ


見張りの兵士以外は全員眠りに就いている真夜中。


暗闇に包まれている帝国軍本陣ではそこかしこに設置されている篝火の火がパチパチと音をたてながら辺りをぼんやりと照らしている。


だが、そんな篝火の光を頼りに動く者がいないはずの死体置き場の穴の下から何かが這い上がって来るような音が聞こえていた。


――ズリッ、ズリッ、ガッ!!


「俺……は!!ま……だ死んで!!いない……ぞ!!」


死体置き場の穴から這いずり出てきたのは死んだはずの舩坂軍曹であった。


生命力の高さが成せる技なのだろうか、驚くことに舩坂軍曹の体の傷は全て塞がっていた。


しかし血を流しすぎたせいか舩坂軍曹の目は霞み耳は聴こえずらくなっていた。


「まだだ!!まっ……だ!!俺はっ……殺れるぞ!!」


塞がったとはいえ、完治した訳ではない傷のせいで思うように動かない体を必死に動かし蚊の鳴くような小さな声でそう言って、舩坂軍曹はゆっくりとしかし確実に地面を這って行く。


「ここっ……だっ!!」


1時間もかけて傷だらけの舩坂軍曹が辿り着いたのはマスケット銃や大砲に使う火薬が集められている天幕だった。


「今にっ……見てろ!!」


舩坂軍曹は天幕の中に侵入すると火薬の入った袋を幾つか手に取りまた先程と同じように地面を這いながら、そして火薬を地面に少しずつ撒きつつ死体置き場の穴まで戻る。


「ハァハァ……」


舩坂軍曹が死体置き場に戻った時には既に夜が明け空が明るくなっていた。


「ハァハァ……。くたばれクソ野郎共!!」


舩坂軍曹は火薬と一緒に持ってきた火打石で死体置き場まで撒いてきた火薬に火を着ける。


火の付いた火薬は撒かれた火薬の筋にそって火薬が備蓄されている天幕に向かっていく。


――ドンッ!!


そして辺りに爆発音が響き帝国軍が備蓄していた火薬の爆破に成功したことを知ると口元にニヤリとした笑みを浮かばせ舩坂軍曹は意識を失った。

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