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ルミナスの手によって使用弾薬が20mmから14.5mmに換装されたダネルNTW-20の銃声が響いた直後、木の上に陣取っていた敵の狙撃手がグチャグチャになった内臓をぶちまけながら地面に落下していく光景を目の当たりにしたカズヤはすぐさま行動に出た。


「よし。狙撃手は排除された!!総員、俺に続けぇッ!!」


そう叫んだカズヤはホルスターから引き抜いた45口径の自動拳銃――M1911コルト・ガバメントを振りかざし、背後にいるレイナや武装メイド、アマゾネス達に檄を飛ばすと、彼女達の返事を待たぬまま突撃を開始した。


「あっ、え!?ご主人様!?お待ちください!!先陣は我々が――」


「「「「オオオオオッ!!」」」」


皆の戦意を高めようと、いの一番に突撃を開始してしまったカズヤを諌めようとしたレイナの声を遮るようにアマゾネス達が気勢を揚げる。


そして、銃弾の雨をものともせず突き進んで行くカズヤの姿に感化されたアマゾネス達は、得物を片手に次々と駆け出していく。


「ッ、あぁ、もう!!脳筋のアマゾネス共が!!――レイナ隊!!ご主人様に続け!!ご主人様に敵を近付けさせるな!!」


「「「「了解!!」」」」


味方兵力の大部分を占めるアマゾネスがカズヤに続いてしまったため、最早この流れを止めることが不可能だと悟ったレイナは苦々しい顔で事態の収拾を諦めると、揮下の武装メイド隊と共に突撃を敢行しカズヤの元に急いだ。


「敵を分断し各個撃破する!!押して押して、押しまくれ!!」


重力魔法を展開し雨あられと降り注ぐ敵弾を防ぐ壁役のカズヤが戦線を無理やり押し上げ、レイナやルミナス、武装メイド隊が遠距離、中距離の敵兵を蜂の巣にしている間に、両刃槍や短刀を閃かせ敵の間合いに飛び込んだアマゾネス達が敵兵と乱戦を繰り広げる。


初戦では距離を詰める前に帝国軍が保有していた近代兵器に叩きのめされてしまったアマゾネス達ではあるが、距離さえ詰めてしまえば戦士としての働きを思う存分果たしていた。


「男の族長♪男の族長♪はじめての〜男の族長♪」


そんなアマゾネスの中で特に目覚ましい戦い振りを見せたのが、全裸で2本の両刃槍を振り回し暴れまわるアマゾネス――シュシュリであった。


「このッ!!ちょこまかと!!」


「お・そ・いッ♪は〜い、バ〜ラバラ♪」


「グァ!?」


カズヤの側にいたフィーネに手を出そうとした時に見せた高い身体能力を活かし、彼女はまるで獣のようにピョンピョンと飛び跳ねながら移動しつつ、獣人の帝国軍兵士を一方的に切り刻む。


「く、来るな!!この化物め!!」


「キャハハハッ!!ガォー!!化物だぞぉ〜♪」


「ふ、ふざけやがって!!これでも喰らえ!!」


「わっ、あぶない」


「何で弾丸を避け――ゴハッ!?」


「アハハハ♪きれいな噴水だぁ〜〜」


敵が自分達と同じ亜人種なだけあって、他のアマゾネス達が少し苦戦しているのを横目に、シュシュリだけはまるで玩具を弄んでいるかのような気楽さで敵兵の喉笛を掻き切っていく。


「なぁ、アマゾネスって実はみんなあんな風なのか?」


無邪気で情けがない子供のような――というよりも狂気染みた性格を見せるシュシュリの姿にカズヤは頬を引き吊らせつつ、自らの手で手当てを施しているアマゾネスに問い掛けた。


「アレが特殊なだけだ。アレと我々を一緒にしてくれるな」


どことなく照れた様子でカズヤの手当てを受けるアマゾネスが答える。


「それもそうか。よし、手当て完了。後方に下がって本格的な治療を受けておけ」


「……ふん。礼は言わんぞ」


カズヤの言葉に背を向けて答えたアマゾネスは手当てを受けた右腕を押さえながら、後方へと下がって行った。


さてと、そろそろ決着がつくかな?


何故か耳が真っ赤になっていたアマゾネスを見送ったカズヤは、狩る側と狩られる側が逆転した戦場に視線を向ける。


「ガァアアアアッ!!」


そんな時だった。


数発の5.56x45mm NATO弾を体に受け血みどろになった帝国軍兵士が死兵と化し、短刀を握り締めてカズヤに迫る。


「分隊!!奴を仕留めろ!!我らがご主人様に近寄らせるなッ!!」


「「了解!!」」


カズヤに狙いを定めた死兵に対し、レイナや武装メイドが銃弾を叩き込むが、頭から犬耳を生やしたその死兵は被弾をものともせず、己が握る刃をカズヤの身に突き立てようと死に物狂いで駆け続ける。


「クッ、ご主人様!!お下がり下さい!!」


「大丈夫だ。それにしても帝国軍に奴隷じゃない妖魔や獣人の兵隊がいるなんて――なッ!!」


銃弾では殺しきれない死兵を近接戦闘で始末しようと前に出たレイナを手で制したカズヤは短刀を振りかざして間合いに踏み込んで来た敵兵の右手を掴み、一本背負いを決める。


「グブッ!?ガ、ガァアアアア――ッ」


受け身が取れず、まともに地面に叩き付けられた敵兵が吐血しつつも素早く起き上がろうとした所にカズヤの重力魔法が浴びせられる。


直後、ブチッという嫌な音と共に敵兵の頭がぺしゃんこに潰れ脳ミソと血液の混合液が辺りに飛び散った。


「こうして戦っている今も信じられん」


頭部が消失し、ビクビクと手足を震わせる死体を余所にカズヤは戦場を睥睨しつつ、そう呟いた。


「――ご主人様」


「なんだ、レイナ?」


カズヤが特攻を仕掛けてきた敵兵を始末してから少しして、あらかたの敵兵を片付け武装メイド隊やアマゾネス達が掃討戦に移行しつつある中で敵兵の死体を検分していたレイナが険しい顔でカズヤに声を掛ける。


「これを見てください」


「これは……」


レイナの手によって服が剥ぎ取られた死体の体に無数の傷跡が刻まれているのを見たカズヤは少しだけ目を細める。


「少し引っ掛かるモノがあったので調べてみた所……この遊び(拷問)の跡からしてこいつらはやはり私と同じ元奴隷かと。そして、血の味からして純粋な妖魔や獣人では無く人間との間に出来た混血の者達だと思われます」


口に含んだ死体の血を吐き捨てながらレイナは頭部が消失している敵兵の死体に憐れむような視線を注ぐ。


「元奴隷か。しかし……奴隷から解放された奴等が帝国の為に戦うか?あれだけの執念まで滲ませて」


「それが謎だったのですが……この死体や他の死体をあらためてみると、どの死体も最近出来た傷跡が見当たりませんでした。ですから――」


「こいつらを奴隷から解放して懐柔した奴がいるな」


「……恐らくは」


考える事は皆同じという訳か……全く厄介な事だ。


しかし、士気のある妖魔や獣人が敵として出てくるとなると今後の戦闘での被害が増えてしまうな。


本土に戻ったら既に講じてある対策の強化を指示しておかないと。


レイナとの会話の中で滅亡間近の敵が妖魔や獣人を迫害するでなく利用する方向に舵を取っている事に気が付いたカズヤは苦虫を噛み潰したように表情を歪めた後、グッと引き締めた。


「――ん?」


「どうかされましたか、ご主人様?」


「いや、今……何か変な感じがしたような気がして――」


「て、敵の増援を確認ッ!!敵襲ッー!!」


虫の知らせのようなモノを感じ取ったカズヤが、キョロキョロと視線を周囲にさ迷わせていると悲鳴染みた大声が上がる。


声に釣られたカズヤがその方角を見やれば、逃げ散った敵兵を追撃していたはずの武装メイドやアマゾネス達が血相を変えて慌てて引き返して来る姿が目に入った。


そして、その背後。


いつの間にか高台の上に布陣して大砲やガトリング砲を設置し、攻撃の態勢を整えている二個中隊規模の敵兵の姿があった。


「しまった!!罠かッ!?」


目先の戦いに集中していたため、知らず知らずの内に自分達が障害物の少ない開けた場所に誘導されていた事に気が付いていなかったカズヤは、ここに到ってようやく自分が敵の思惑に嵌まってしまっている事を理解した。


「全員、逃げろ!!世界樹まで走――ッ!?」


集中砲火を浴び一網打尽にされてしまうのを防ぐため慌てて指示を出している途中、敵の中に仮面を被った全身黒ずくめの男を見付けたカズヤは、その瞬間まるで背筋に氷柱を突き刺されたような感覚を味わっていた。


何なんだ……あいつは……!!


今まで感じた事が無いような危機感と違和感を覚えたカズヤは総毛立たせながら仮面の男に視線を奪われていた。


どうしてこんなにも心がざわつく!!


奴は一体何者なんだ!!


どうしようもなく心をざわつかせる存在の一挙手一投足に目を奪われているカズヤをよそに、当の仮面の男はホルスターから回転式拳銃を引き抜くと、何も無いはずの空中目掛けて目にも止まらぬ早業で早撃ちを行った。


「奴は一体、何を……」


仮面の男の理解不能な行動に戸惑うカズヤだが、その直後にルミナスからもたらされた報告に目を剥いた。


『だ、弾丸が弾丸で弾かれました!!ご主人様ッ!!お逃げ下さい!!奴は異常です!!』


「なっ!?」


ルミナスがダネルNTW-20で放った弾丸が、あろうことか仮面の男が放った弾丸に迎撃されたと聞いてカズヤは自分の耳を疑った。


「――チィ!!」


しかし、カズヤに驚いている暇など無かった。


何故なら、仮面の男が回転式拳銃をホルスターに収めた後、ゆっくりと見せ付けるように右手を掲げたからだ。


「レイナ!!両翼に展開中のライナ達を連れて世界樹まで後退しろ!!ここは俺が食い止める!!」


「ご主人様!?何を――」


「いいから行けぇッ!!」


レイナ達を逃がそうとするカズヤの声が辺りに響いたのと同時に、掲げられていた仮面の男の右手が降り下ろされる。


直後、仮面の男の攻撃許可を受けた帝国軍部隊が一斉に攻撃を開始した。

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