頭蓋骨を捜せ
人間の骨格を求めて襲来した火星人は、手始めに頭蓋骨を奪っていった。
突如頭蓋骨を失った人間たちは驚き慌てた。転んだり、凍らせた豆腐の角にぶつけただけで脳が潰れてしまうのだ。そそっかしい者から順に命を落としていった。島国のとある都市では、ツッコミ禁止条例が制定された。
頭部偽装を施していた者たちの生存率は高かった。彼らの多くは年長者で、大抵が重要な地位に就いている。そのため混乱は最小限に食い止められた。
事態を重く見た人々は頭蓋骨の奪回を計画した。仮の頭蓋骨として、常時装着可能なPC製のヘルメットが開発された。
ヘルメットと装甲服で文字通り身を固めた人々は、全力で頭蓋骨を捜し求めた。火星人を発見次第捕獲し、アブダクションしたりキャトルミューティレイションして何とか情報を引き出そうとしたが、もとより骨抜きの火星人。ふにゃらへにゃらと矛先をかわし続けた。火星人焼きだけが大量に生産された。本場明石と比べても遜色ない美味さだった。
あれからどれくらい経っただろう。頭蓋骨の捜索は現在も続けられている。そしていつからか。人間の赤子は、PC製のヘルメットをかぶった状態で生まれてくるようになっている。
(完)