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魂を半分喰われたら女神様に同情された? 作者:柚月 雪芳
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753 演出が過ぎたり鼻が曲がりそうになったり

 光に包まれた通路を歩く。
 目的とする隠れ里まで距離はないものの、淡い光が霧のように視界を遮っている。

『少々やり過ぎたかな』

 エーベネラント組に動揺が見られる。
 【遠聴】を用いて原因を確認しているのだが。

「隠れ里って、この先なんだよな?」

「何にも見えないぞ」

「だ、大丈夫だろ。
 神官様が神様のお告げに出てきた場所だって言ってたし」

「そりゃそうなんだが……」

 歯切れ悪く話す騎士の1人が特に不安そうにしている。
 何か懸念することがありそうだ。

「どうしたよ?」

「我々が受け入れられないとか、あるんじゃないのか?」

 何故その発想に至ったかは不明だがビビっているのは明白だった。

『演出を意識しすぎたか……』

 お告げがあったのに何にもなしじゃ信憑性が薄いかと光の通路にしてみたのだが。
 結果的に思っていた以上の心理的効果を発揮してしまったらしい。

『凄いが行き過ぎると怖いになるってことだな』

 俺としては控えめにしたつもりだったのだが。
 自重するって難しい。

「どうしたら、そういう考えになるんだ」

「この村に入る前に戦ったのはゾンビだったんだろ」

「ヒガ陛下の話ではそうだったが、何の関係があるんだ?」

「ゾンビと言えば不浄のものだろ」

『何が言いたいのかと思えば、そういうことか』

 光の演出のせいで過剰反応されてしまったようだ。

「そういうことか……」

「どういうことだよ?」

 1人は気付いたようだが別の者は分からないようで首を捻っている。
 残りのエーベネラント組も気付いた者は少ないようだ。

「これから行くのは神様がその使いに利用させるような場所だぞ」

 気付いた側の騎士が指摘すると──

「あっ」

 1人が気付いた。

「俺たち清めたりしてないぞ」

 また1人。
 連鎖的に増えていく。

「言われてみれば……」

「おいおい、マズいじゃないか」

「どうするんだよ」

「このまま行ったら拒絶されたりとかあるんじゃないのか?」

「あるかもしれんな」

「否定できん」

「もっと早く気付いていれば……」

 そんなのある訳がない。
 うちの面子がアンデッドの矢面に立ったということを失念しているようだ。

 穢れを祓うなど、その都度やっているのに。
 特に食事の前などは浄化の重ね掛けをしていたくらいである。
 彼らが気付いていないだけだ。

『まあ、なるたけ気付かれないようにはしてたけどさ』

 俺がそれを説明しても良かったのだが……
 既に適任者が動いていた。

 定位置にしていた並びから音もなく外れてエーベネラントの騎士たちに近づく。
 このとき隣にいた人物は適任者がいなくなったことに気付いていなかった。
 本人としては意識してやっていることではないようだが。

 修行と一体化した長年の生活習慣と本人が持っている資質。
 それらが融合した結果であると推測できる。
 問題は騎士たちの真側にスルッと接近したにもかかわらず気付かれていないこと。

 そんな訳だから──

「心配ない」

 なんて急に話し掛けると──

「「「「「うわぁっ!?」」」」」

 カーターの護衛を務める騎士たちを飛び上がらせるほど驚かせてしまった。

 暗殺に対する訓練を受けているはずの彼らをして感知できなかった訳だ。
 張本人であるシーニュは無表情に騎士たちを見ているのだけど。
 そう、神官ちゃんである。

「怯える必要はない。
 神様はこれくらいのことで怒ったりしないから」

 この口振りからすると自分がビビらせたという認識はないようだ。
 何か勘違いしたとしか思えない発言をしているし。

 太鼓判を押された側の騎士たちは泡を食ったまま固まっている。
 まだまだ復帰できていなかった。

「びっ、びっくりしたぁ……」

 ようやく1人が言葉を発して再起動。
 まだ普通の調子には戻れていないのだけれど。
 が、これを切っ掛けに次々と他の騎士たちも復帰してくる。

「急に現れるんだもんなぁ」

「いつの間に……」

「心臓に悪いぜ、神官様」

 などと言われている当人は首を傾げていた。
 驚かれるような真似はしていないと言いたげだ。
 影が薄いことに対する自覚はないようだ。

『マジか……』

 こうまであからさまな反応をされて思い当たる節がないという態度が取れるとは予想外。
 天然なのか大物なのか判断の難しいところだ。

 ただ、慣れると苦笑するだけで済ませられるようだ。
 ゲールウエザー組は誰も動じていない。
 ダニエルなどは「またか」と言わんばかりに渋い表情をしてカーターに謝っているが。
 他の面子は苦笑するばかりで誰もフォローには回らない。
 いつものことだから問題ないと判断しているのだろう。

『まあ、成人しているしな』

 実は俺やトモさんと同い年だったりする。
 日本人だった時の年齢をカウントしなければだが。
 とにかく神官ちゃんはマイペースだ。

「この光は浄化の光」

 泡を食わされ安堵した直後のエーベネラント組に説明を始める。
 相手の都合とか状態はお構いなしだ。

「拒絶されたりなどはない」

 そういう説明がされているのにエーベネラント組が反応できずにいた。

「それ以前に、ヒガ陛下が節々で浄化していた」

『さすがに本職は気付くよな』

 騒がれるのも面倒なので薄く見えないように光魔法を発動していたんだが。
 向こうは専門家だから気付いて当然なんだろう。
 それ以外の面子には、ほぼ気付かれていないようだが。
 もちろんミズホ組は除いての話だ。

「そうなの?」

「私に分かる訳ないでしょ」

 護衛ちゃんと姉のやり取りを見てもこの通り。
 護衛騎士の面々は顔を見合わせて頭を振っている。

「そうなのか、ジョイス総長?」

 ダニエルも気付かなかった口だ。

「ええ、食事の前などは分かり易かったと思ったのですが」

 総長の返事に頷いて同意するナターシャ。
 後は全滅のようである。
 エーベネラントの騎士たちは未だ呆気にとられたままなので無反応だったが。

「安心してヒガ陛下について行くといい」

 シーニュは言い終わるとスルッと動き出す。
 騎士たちの返事など待っていない。

「「「「「はあ……」」」」」

 彼らが声を出した時には定位置にしていた総長の隣へと戻っていた。
 神出鬼没とは、まさにこのことだろう。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 少し歩くと光の霧が薄らいでくる。
 すると、いくつかの建物がおぼろげに見えてきた。

「アレは離宮じゃないか」

 カーターが喜んでいる。

「殿下の仰る通りだ……」

「凄いな、あんな大きなものを……」

「どうやって運んだんだ?」

 騎士たちは喜ぶよりも驚きの方が大きいようだ。
 まあ、人それぞれなんだが。

 いずれにせよ見知ったものがあることで建物に意識が向いている。
 そうでない面子は他のことが気になり始めていた。

「何か臭わない?」

「うん、臭う」

「キツいなー、この臭い」

「何なの?」

「分からないわよ」

 ゲールウエザーの護衛騎士たちがヒソヒソと囁き合っている。

『迂闊だったなぁ』

 シノビマスターの時は覆面だったせいで気付かなかったのだ。

『今度から匂いの完全遮断はしないようにしないとな』

 反省は大事だが、現状は時既に遅しである。
 とりあえず風魔法で散らすが、近づくごとに匂いはきつくなっていく。

「ハルさん、これってニンニクの匂いじゃないのか?」

 トモさんがそんなことを聞いてきた。
 あまりの激臭に耐えきれなかったようだ。
 せめて会話で気を紛らわせたくなったのだろう。

「みたいだな」

「この向こうにいる人たちから臭っているってことでいいのかな?」

「それしか考えられないね。
 おそらく大量に食べたんだと思うよ」

「自衛手段って訳か」

「だろうね」

「にしたって、やり過ぎは良くないと思うんだが」

「そういうことは向こうさんに言わないと」

「それもそうか」

 話をしながら歩いていると、光の霧を完全に抜けた。
 広場のようになった所に集団が待ち構えている。

「あれはっ」

 言うなりカーターが駆け出していた。

「「「「「殿下っ!」」」」」

 護衛している面々は大慌てである。
 完全に出遅れた形でどうにか走り始めた。
 普段なら考えられないミスではないだろうか。
 それだけ臭気に意識を塗り潰されていたという訳だ。

 まあ、そのお陰で──

「叔父様!」

「フェーダ!」

 互いに駆け寄った末の抱擁シーンを見ることができたのだが。

「感動するはずなんだけどさ」

「言いたいことは分かるよ、トモさん」

 簡単な風魔法で散らしきれない強烈な臭気が台無しにしていたからね。

「よくぞ無事だった」

「ええ、一時はどうなるかと思ったのですが」

 本人たちは、さほど気にしていないように見える。
 エーベネラントの人間は慣れているのかとも思ったが。
 騎士たちの脂汗を流して耐え抜こうとするような表情はそうではないと物語っている。
 どうにかしたいが、解決策が出てこない。

「どうすりゃいいんだ?」

 俺は途方に暮れてしまうばかりであった。
読んでくれてありがとう。

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